X国の元幹部だけどなんか質問ある? 作:逢瀬
「ネットナビがいねぇなら自前のを組む前にオペレートの練習すんのはどうだ?」
というヒノの言葉により、そのまま彼と別れた私はWWW内のPCの一つの前に座る事となる。
ディスプレイには三体のネットナビ──特定のオペレーターを持たない自立型が映し出されている。
ブロックの塊が組み合わさったような、例えるならば立方体に手足を生やした異形のナビ──ストーンマン。
頑強そうなアーマーを装着し、肩口に導火線がチラリと見えている赤いナビ──ボンバーマン。
見た目はまさに古代遺跡風の棺桶としか言いようのない三体の中でリーダー格らしいナビ──ファラオマン。
その三体の名前をそれぞれ自己紹介されて直ぐにファラオマンが口を開く。
「汝、我らの力を所望すると?」
「正確には持ちナビ作るまでにオペレートの練習がしたいから付き合って欲しいってわけ。別にお前達に私の持ちナビになれとは言わない」
『ふむ』と呟き何かを考えるファラオマンだが……ネットナビに対して言うのもおかしいが、あまり芳しくない雰囲気を感じる。
実の所ネットナビを所有するつもりは、少なくとも現状は無い。
理由は単純に不要だからだ。
目の前の自立型ナビ達を見ているだけでも分かる。話に飽きて爆弾を取り出して中空に打ち上げて爆発する様を見て笑うボンバーマンに、先程から『ゴゴゴゴ』という言語とは思えない音を響かせているストーンマン……正直、個性的過ぎてコントロールする自信が無い。
そもそもプログラムに感情を持たせる理由が分からん……非合理的だ。
勝手に思考する道具、勝手に動く道具をどう信頼しろというのか……こちらの不都合に動く可能性、理想の動きをしない可能性、刃向かってくる可能性。
ああ、まさに"イレギュラー"の塊ではないか。
私のその悪感情を向こうも薄々察しているのだろう。
考えを纏め終わったらしいファラオマンは真っ直ぐに私を見る。
「汝、我らを従えるに足るか証を示せ」
「証?」
「力を示してみよ」
そう来るか……こちらにネットナビがいないという状態で力を示せとはまた無理難題を出してくる。
確か旅人に難題を吹っ掛けて答えられなければ食い殺す魔獣が古代にいたという話を聞いた事がある。そのオマージュなのか?
だが、コイツには確信がある。私にはインターネット上に干渉する何かがあると……これは遠回しなDr.ワイリーからの挑発にも思えるな。
『プラネットマンを捕獲した貴様の手の内を晒せ』
ファラオマンはそのメッセンジャーというわけか。
私の考え過ぎかもしれない……だが、こちらは庇護されている立場だ。
手札の一つは切っても良いだろう。
懐から取り出すのは白い金属片──父が基礎を作り上げ、私が完成させた
そのモデルVをPCのプラグイン端子に近付ける。
──プラグイン端子接続……complete
──擬似電脳体構築……complete
──人格データ、電脳体投射……ERROR
──人格データ、電脳体投射……complete
──モデルV.exe……transmission
一瞬、意識が黒に染まる。
そして瞬きをするよりも速やかに意識を取り戻した。
まず視界に映るのはバイザー越しに見る為に全体的に紫色に染まっている三体の自立型ネットナビ……そのどれもが目の前の
その中で一番に考える能力を取り戻したのはやはりスペックが一番高いのであろうファラオマンだ。
「まさか……パルストランスミッションか?」
「似て非なるものって奴だ。サイコトランスミッション、そう言えばDr.ワイリーも納得するだろうさ」
「…………」
「もうイいか?はヤくやラせてくれ」
物騒にも爆弾をまるでボールのように軽く投げては受け止めを繰り返すボンバーマンの言葉にファラオマンが頷いた。
それと同時にボンバーマンのバトルオペレーションプログラムが起動したようで、持っていた爆弾を放物線を描くように投げつけてくる……が、その数は放物線の途中で一気に増えて無数の爆弾の雨が降り注ぐ。
名前の通りの
下手に回避をするよりも迎撃に主を置く事とする。
指先から光弾──バスターを撃ち込んで中空にある間に爆弾を貫けばそのまま爆発が起こり、それが他の爆弾に誘爆して電脳世界の空が白く染まる。
と同時に、こちらに向かって爆弾を投げるのではなく蹴り飛ばしてくるのが確認出来た。
「見えてるんだよなぁ!!」
再度、バスターによる迎撃で爆弾を処理してやりながら本体を狙う……何発かは当たってはいるが所詮は豆鉄砲、チャージ無しの数発ではHP的にはろくなダメージにはならない。
こちらのバスターの威力が見掛け倒しなことに気づいて、器用にニヤリと笑ったボンバーマン……そのテクスチャに一瞬だがノイズが走る。
「威力が足らナいなァ!!そンな攻撃、いくラくらお、おOOOOOO??????」
「そこら辺のウイルスなら一発で十分なのに、流石はDr.ワイリー製だな……っと」
撃ち込んだ対象に不具合……所謂バグを発生させるのがこのバスターの性能だ。
対象の言語機能の破壊及び認識能力の低下と錯乱させる効果が有るので対複数は勿論、ネットナビ相手ならオペレーターとの意思疎通を破綻させる事が出来る。
混乱し、やたらめたらに辺りに爆弾を投げ始めるボンバーマン……他二体にも爆弾が投げつけられるがファラオマンは呼び出した棺桶で防ぎ、ストーンマンは見た目通りの硬さのようで直撃してもビクともしない。
私にも幾つかは向かってくるが迎撃をするまでもなく悠々と回避ができる。
狂乱のボンバーマンの動きが不意に止まる……全身にまで回っていたノイズが徐々に治まり初めた。
「あー!バグ修正が早過ぎるんだよ、クソ!!」
バスターを撃ち込んで凡そ八秒、次弾のチップ転送は間に合わない。
悪態と共に電脳体に内蔵してあるチップフォルダから先行転送してあった【エリアスチール】を発動させる。
瞬間、加速する体はボンバーマンに肉薄する。
呼び出すのはバスター以外のもう一つの武器、近接兵装である槍──デスピアスを振りかぶり、バグ修正中で無防備なその腹へと全力で叩き込む。
ボールのように弾むボンバーマンに追撃を叩き込もうと一歩踏み出した瞬間に怖気が走る。非科学的だが、その第六感とも言うべき感覚に任せて後ろに跳べば爆風がほんの少しまで私がいた場所に発生する。
そうしてる間にバグ修正が終わったようで、ボンバーマンからは油断が消えていた。
チカチカと何度か奴の目が点滅し、何かしらのバトルチップが使用された事が見て取れる……十中八九【ステルスマイン】だとは思う。
奴の投げつけてくる爆弾はバスターで迎撃可能だが、逆を言えば私のバスターは爆弾で止められる。完全な膠着状態だ、このまま撃ち合いを続けても勝負は決まらない……手札を一つ切る事としよう。
背後に展開するのはデスピアス……一度に精製出来る最大本数である六本、その全ての切っ先をボンバーマンに向けて発射する。
それに対応するように投げ込まれる爆弾がデスピアス達を爆風で弾き飛ばす。破壊される事無くあらぬ方向に飛び、地面に突き刺さったデスピアス達へとバスターを何度も撃ち込んだ。
「拡散しろ!!」
私の言葉通りに、バスターがデスピアスに触れた瞬間に拡散し電撃となって地面を這い迫る。
ステルスマインを処理しながら迫る電撃は単発攻撃であるバスターとは違い、爆弾での処理は不可能。ボンバーマン自身もそれを理解したのか舌打ちと共にジャンプするボンバーマンに指先を向けた。
「そうするしかないよなぁ!!?」
「舐めンな!!!」
バスターの連打を向こうも爆弾の連続投下で防ぐのは分かっていた。巻き起こる爆風がボンバーマンの姿を隠すが……空中にいるならば回避は行えない。
発動させたバトルチップ、【ポルターガイスト】により地面に突き刺さっていたデスピアスが再度飛ぶ。
爆風を切り裂き、六本の槍に貫かれる……次の瞬間には大爆発が起こり、バトルオペレーションプログラムが停止する。
ボンバーマンの姿は影も形もない、最後の一撃が致命傷となりデリートされたのだろう。
「バックアップはあるんだろ?」
「然り……汝の力、ここに示された。約束通りに従おう」
ごねるかと思ったが存外に素直なファラオマンに鼻を鳴らす。
まあ、こちらも命を掛けている……素直になってもらわなければ困るというものだ。
モデルV V1
HP:300
Vバスター 一発10点のバスター攻撃を三連射する、当たるとチップ破壊+混乱状態、シリーズ4以降ならばココロウインドウの状態を一定時間不安に固定させる
デスピアス・斬 一発50点のフミコミザン、範囲はドリームソードと同じ。
デスピアス・雷 HP150のデスピアスを敵味方エリアのランダムな位置に三本設置、設置されたデスピアスにVバスターが当たると十時方向に電気属性のダメージを50点。
V1での攻撃はこの三種のみでV2以降にさらに攻撃パターンが増えるタイプ。