X国の元幹部だけどなんか質問ある? 作:逢瀬
アレから早1ヶ月……そこそこWWWという環境に慣れてきた気がする。
オペレートの練習については一般人並には出来るようになったという自負はある……ストーンマン、ファラオマンの二体よりもボンバーマンが私の練習に乗り気だったのは意外ではあったが。
他のWWWのオペレーター達とも少しは会話を行い、人となりは掴んだ。第一印象そのままという人間ばかりだったのもあるが。
私が好きに振舞っていてもDr.ワイリーは何も反応を示さないというのが一つ気掛かりではある……二週間ほど前から流石に気まずくなって細々としたインターネットのメンテナンスを自主的に行っているがソレに対しても何のアクションも見せてこない。
「という事なんだがDr.ワイリーから私についてなんか話を聞いてないか?」
『その流れデなンでオレに聞イてくンだヨ……』
今日のオペレート練習を終え、メンテナンスプログラムを走らせている間に手持ち無沙汰となったのでボンバーマンへと声を掛けてみる。
コミカルに表情を変えるコイツとは他の自立型ナビよりは話しやすいと感じている。と言うより選択肢が無いと言える。
何を言っているのかよく分からないストーンマンに難解すぎる言い回しのファラオマンに比べれば訛りがキツイがまだマシだ。
ボムの投射と地雷の設置だけというシンプルな戦闘能力もまた良い。適度に火力もある上にこちらのチップでサポートをするという形がオペレートの練習に適している。
「お前が今ここにいるからだよ。でだ、聞いてないか?」
『知らねぇヨ。ンな事ワイリー様から聞いた事ねぇだヨ』
職務に忠実だが、わりかし素直なコイツは嘘を吐く事はほぼ無い。
という事は泳がされている……と見て良いか。正式なWWWのメンバーでは無い私が組織に対して不都合な事をしないかと見ていい。
メンテナンスがてらに
オマケで何体かの最上級ウイルスのデータを蒐集、保存する事も出来た。これはメンテナンスついでにバスティングしていただけなのだが。
モデルVを手の中で弄びつつ、思考の飛躍を開始する……Dr.ワイリーには私の保護を頼んでいる。期間は凡そ半年程度だが素直に契約を守っているという事から義理を守る良識……いや、矜持はあると思われる。
こちらも一応は向こうに敬意を持って行動している。
手土産として渡したウッドプログラム……アレはウラインターネットの深層でWWWの構成員と思わしきナビが探し回っていたから手に入れてきたものだ。
強大な木属性のエネルギーを秘めたプログラムであり現実世界に影響を及ぼしかねない危険性を孕んでいる。木とは自然、気象コントロール装置に組み込めばその性能を引き上げる事も可能だろう……例えば、ウッドプログラムを組み込んだ気象衛星を飛ばして他国の環境維持システムをクラッキング。その後は強化されたシステムを用いて局地的に大雨を降らして洪水を引き起こしたり、逆に日照りにより干ばつを起こす事も不可能ではない。
そういう目的の為に手に入れたがっていたのかと思ったが、他の似たような三種のプログラムも求めている。
ヒノやあの派手な女性……イロアヤが愚痴っていた事から、それら三種のプログラムの捜索も難航しているようだ。
ウッドプログラム以外のプログラムの名称はそれぞれ、ファイア、アクア、エレキ……ネットナビの基本四属性と同じ物。単純にそれら全てを併せるにしても相殺して無だけしか残りはしない……いや待て。
無、まあ無属性という事は純粋なエネルギーとして取り出せない事も無い……狙いはそれか?
だが、エネルギーだけを取り出してもそれを何かしらの形に落とし込まねば危なくて取り扱う事は非常に難しい……面白くなってきた。
好奇心が擽られ始めた私の耳にメンテナンスプログラムの終了を伝えるアラームが届く。
「終わったみたいだな、調子はどうだ」
『悪かねェ、あンがとナ』
にっかりと笑ったボンバーマンはいつものように自分のテリトリーであるどこかのエリアに帰っていく。
残された私はモデルVに読み込ませていたメンテナンスの報酬として(無許可で)回収したボンバーマンのログデータを呼び出す。
ウラインターネットとWWW各施設への移動ログはスルー、戦闘ログの一部はモデルVの機能に落とし込む為にそのまま取り込ませる。
会話ログも目新しいものは無いと流し読みしている中で一つの言葉が目に飛び込む。
「軍事衛星……ねぇ」
そのワードが出た前後の会話を洗えば、最初に考えていたウッドプログラムの悪用方法なんて鼻で笑える計画が垣間見える。
軍事衛星のハッキングにより世界を終末に導く大戦争を引き起こす……壮大過ぎる。
世界を滅ぼすつもりなのかあの
……少なくとも今の私は世界が滅ぶのは良しとはしない。せっかくあの国から出たばかりなのだから外の国をもう少し見て回りたいし、あの国では体験出来ない事に触れてみたい。
だからといって、Dr.ワイリーに……WWWに反旗を翻すつもりもない。今の私はWWWに保護されている立場だ。請われれば力をある程度は貸すが、自分から手を貸すつもりはない。
機材の自主的なメンテナンスはノーカウントだ。家賃を払っている感じだからな。
「傍観者……という体で行くか」
「コソコソとデータを盗んでおいて何が傍観者じゃ」
…………飛び上がる程驚いたという経験は私が生まれてから初めてかもしれない。
振り返れば案の定、杖を突いたままこちらを見下ろす老いてなお眼光が衰えていないDr.ワイリー。
椅子から転げ落ちている私に向かって鼻を鳴らすと、自らも近くの椅子に腰掛けてからこちらにも座るようにと促してくる。
……遂に動いてきたようだが、どこまで私が知っているのを向こうは知っているのか。
「まあ良い、環境には慣れたようじゃな」
「一ヶ月も外に出ずにこの施設にいればそりゃ慣れるさ」
……情報の漏洩を防ぐ為、という理由も有るのだろうが流石に軟禁されているような物だ。ぶっちゃけていうと私は飽きている。
「そんなに風に今まで私を放置していたくせに、今更そちらから話しかけて来るなんてどういう風の吹き回しだ?」
「貴様は知りすぎたという訳じゃよ」
「
視線の温度が下がる。
ボンバーマンに何か仕込んでいたのか?
……目の前の老人一人を殺す事は簡単なように思えるが、相手はロボット工学の天才であるDr.ワイリーだ。
それこそあの手に持っている杖が変形して銃火器になるかもしれないし、壁から戦闘用のロボットが出てきてもおかしくは無い。
それにだ、殺してからこのWWWのアジトを抜け出すまでに他の構成員が必ず気づいて私へと報復を行うだろう。マハ辺りなんて怒り狂ってそれこそ火を吹きかねない。
さて、どうしたものか。
「そう殺気立つでない。早合点しおって……わしは話をしに来ただけじゃ」
やれやれと溜め息を吐くDr.ワイリーにうっすらと殺意が湧く。
「なら勘違いするような言葉を使うな。消しに来たのかと思ったのだが?」
「ふん、貴様如きを消すのにわざわざわし自身が姿を見せる必要もあるまいて」
「…………」
日本のことわざのぐうの音も出ないとはこの事だろう。ここは彼の本拠地なのだがら姿を見せずに私を殺す手段は幾らでもある。
苛立ち紛れにわざと大きな音を立てて椅子に座った様子の私を見てDr.ワイリーがまた溜め息を吐く。
「物は丁寧に扱わんか、これだから最近の若者は……」
「そう言うが私はそこまで若くは無い……
私の言葉に奴の眉が跳ねる……痛快だな。
「バイラス、貴様はDr.バイルの息子じゃな?」
「そうとも言えるしそうでは無いとも言える」
何事か考え始めるDr.ワイリー……まさかこの程度の情報で私の正体に気づいたのか?
サイコトランスミッションの理論を奴は知っている……その二つのデメリットも知っている筈だ。そのデメリットから逆算したとしても確証は無い筈だ。シラを切れば……凌げないことも無い……筈。
「バイラス……そうか、既視感はコレじゃったか」
ブツブツと呟いていたDr.ワイリーがこちらに向き直る。
「貴様は……」
結論から言おう。
全てバレたと。
天才をなめていた……まさか私がデータをつまみ食いした痕跡もヒントになるとは思いもしなかった。
「……私の正体を知ったようだが、それでどうする?言いふらすか?日本の科学省が私を知れば死にものぐるいで私を凍結しに掛かるだろうな。様々な物を巻き込んだとしても」
「そのつもりは今は無いわい。じゃが、貴様がわしの計画を邪魔だてしようとするならば……指が滑るじゃろうな」
「……望みは?」
「残り三種のプログラムの所在を探ってもらおう。貴様の情報を集める能力は間違いなくトップクラスじゃからな」
弱みを握られた私にそれを拒否する事は出来ない。
舌打ちと共に立ち上がり、部屋を出ようとする私の背にまた奴の言葉が投げられる。
「バイラスよ、他の者に会う前に口調を戻しておく事じゃな。奴の側に寄っておる」
「……へいへい、分かりましたよっと」
これでエグゼ本編前のお話は終わりです、ここからエグゼ無印編となります。
バイラスの正体は現状ほぼノーヒントです、情報収集能力というかハッキング(?)力がやたら高いくらいですね