悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME   作:MTHR

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 サブタイトルは仮面ライダーエグゼイド第21話をオマージュしております。

 今回はアンチ強めの回です。


EP10「thiefを追跡せよ!」

 今、トリステインでは“土くれのフーケ”と呼ばれるメイジの盗賊がいる。

 “錬金”の魔法を使い、頑強な扉や壁を粘土や砂に変え、密やかに忍び込み、盗み出す。例え“固定化”の魔法で守られていようが、その強力な“錬金”で打ち破り、ただの土くれへと変えてしまうその手口から名付けられた二つ名が“土くれ”。

 時にら30メイルはある巨大なるゴーレムを操り、貴族の屋敷を、別荘を粉々に破壊し粉砕し、大胆に盗み出す、正体不明にして強力なトライアングルクラスの土系統のメイジだ。

 

 犯行現場に壁に己の犯行の旨であるサインを残していく事もあり、平民貴族の間でも有名な盗賊である。

 

 その盗賊、土くれのフーケが次に目をつけた場所、それこそがトリステイン魔法学院であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シエスタを連れ戻した翌日、トリステイン魔法学院ではモット伯の屋敷で起きた事件の噂で持ちきりだった。

 

 生き残ったモット伯の屋敷の使用人の話では、突如空から巨大な竜や見たこともない化物が現れ、モット伯を含め、次々と屋敷のものを殺していったと言う話であり、入間達の事はまるで出てこなかった。

 

 シエスタは屋敷の主が殺されたとあっては、モット伯の屋敷で働くことなど出きる筈もなく、学院に再配属となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。

 入間は恋人たち八人を連れて、広場に出ていた。

 

「それで、そろそろ聞かせてもらおうか?」

「おう!何でも聞いてくれよ、相棒!」

 

 そう話す入間の視線の先には、地面に立て掛けられたデルフの姿があった。

 元々、入間がデルフを選んだのは、デルフが言っていた『使い手』という意味が気になったからだ。ユエ達が来たことに頭が一杯になってうやむやになったが、そろそろ聞いておこうかと思ったのだ。

 

「君が言ってた『使い手』ってどういう意味?君は僕の何を感じてそう言ったの?」

「そのまんまの意味だよ。お前さんの左手のルーン、そいつは俺の使い手って言う証なんだよ!」

「ルーン…?」

 

 入間はチラリと左手のルーンを覗き込む。恋人たちもそれに注目する。

 

「……貴方、このルーンを知ってるの?」

「知らん、忘れた」

「じゃ、じゃあ、ルーンの解除のしかたとかは……」

「知らん」

 

 デルフの答えに、ユエ、シア、アメリ、ティオ、チマがジト目になり、愛子と優花がひきつった笑みを浮かべた。これでは何の情報にもなり得ない。

 

「それじゃあ、本当に何も知らないの?」

「いや、何も知らねーってことはねぇぜ。うーんと……そうだ!そのルーンが刻まれた奴には、スゲー力が宿るんだよ!まっ、詳しくは知らねぇんだけどよ!」

「力ぁ…?」

 

 そういえば、召喚初日で、アリクレッドがこのルーンには『特典』があると言っていた。

 デルフが言っているのはその『特典』の事なのだろうが、入間が欲しかったのはその特典ではなく、このルーンについての名前や情報だったので、特典が何なのかを知ったところで意味はない。

 そもそも、ルーンが力と言うのも、ルイズへの忠誠心の刷り込みのついでで与えられるものだろう。従いたくもない相手に従うようになる『洗脳』のついでで与えられる力など、入間は願い下げである。そもそも、入間は『力』なんてものは有り余る程持っている。既に世界の理すらどうこう出来てしまえる入間にとって、これ以上の力なんて必要ない。

 

「……ふりだし、かぁ」

「……入間、元気出して」

 

 結局、デルフを購入したことには何の意味もなかった事に、流石に落胆する入間。ユエ達がポンポンと慰めてくれる。

 

「けどよぉ……相棒、お前さんはあの娘ッ子の事に相当無関心じゃねぇか。使い魔なんだしよ、もう少し興味を持ってもいいんじゃねぇか?」

「……」

 

 思いの外自分達のことを見ていたデルフに、入間はピクリと反応する。

 デルフの言う通り、入間はルイズに全く心を開いていない。召喚されてから、一度もルイズを名前で呼んだ事もなければ、自分から話し掛けたことすら殆んどない。邪険に扱ったことはないが、逆に好意的に扱ったこともない。

 結局のところ、形式上使い魔としてやっているだけであり、入間はルイズの事には果てしなく興味がないのだ。

 

 

ズゥゥゥゥゥゥン……!

 

 

 その時、学院全体に響き渡るような轟音と地響きが響いた。

 入間達は何事かと辺りを見渡すと、高さ30メイルはありそうなゴーレムが、魔法学院の本塔にその巨腕を叩き付けている光景が広あった。

 

「な、なんですかあれっ!?」

「でっかいゴーレムだねぇ~。オーちゃん謹製のゴーレムより大きいや。まぁ、大きさだけでカッコよさも強さも雲泥の差だけど」

「いや、そんな呑気な!」

「いやいや、これくらいの事で驚かないでしょ」

 

 慌てる愛子と優花に対して、入間達は極めて冷静だった。

 確かに巨大だが、かつてミレディが使っていたオスカー作のゴーレムと比べれば月とすっぽんである。それに、何だったら入間達は、あのゴーレムよりも遥かに巨大なロボットや怪物と何度も退治してきたのだ。それに比べれば、目の前のゴーレム等、小動物も同然だ。

 

「……どうする?やる?」

「いやぁー……行く必要ありますかね?」

「……ないだろう」

「そうじゃな。これは学院の問題じゃ」

「いやいや、お前さんら冷たすぎやしねぇか!?」

 

 ユエ、シア、アメリ、ティオがそう呟くと、デルフがカチカチと声を上げた。

 

 元々、このハルケギニアでは自分達と関係のないことには関わらない方針を取っている入間達。この学院に巨大ゴーレムが現れて暴れようが、それはティオの言う通り学院の問題であり、それを対処するのは衛兵や教師達の仕事である。

 

 その時、ゴーレムの拳が、打ち付けていた学院の壁ごと大爆発を起こした。

 

「あの爆発……まさか、ルイズ?」

「何をやってるんだアイツは……」

 

 チマとアメリがため息を吐いた。

 いくら魔力が膨大で伝説の虚無の系統だったとしても、それをコントロールできないルイズと、30メイルのゴーレムを操るトリステインで名を上げている盗賊のフーケとでは差は語るまでもないのに単身挑みに行くとは、無茶を通り越して無謀としか言いようがない。

 

「しょうがないなぁ……あの子を助けに行くか」

 

 主人を守るのは使い魔の仕事である。公爵家の令嬢が死んでは色々と入間達にも面倒が降りかかってきそうなので、入間達は仕方なくゴーレムのもとへと猛スピードで走り出し、学院の屋根を足場にゴーレムのもとへと向かう。

 

「私が行きます!とぉ~っ!!」

 

 シアが屋根から砲弾のような速度で飛び出し、宝物庫から3つのボタンが取り付けられたハンマー──“ガシャコンブレイカーⅡ”を取り出し、大槌モードに切り替える。

 そして、ゴーレムの胸の前までやってきたシアは、ガシャコンブレイカーⅡを思いっきり振り抜いた。

 

「うりゃあっ!!」

 

 可愛らしい声と共に、ガシャコンブレイカーⅡを叩き付けられたゴーレムの体に凄まじい衝撃波が広がり、ゴーレムの体全体に惨たらしい罅が広がっていく。

 そして、僅か5秒でその亀裂は全身に渡り、ゴーレムは轟音を立てながらガラガラと崩れていった。

 

「おでれーた!!あのウサギの嬢ちゃん、どんな力してんだよ!?」

「言っておくけど、僕達のなかで一番バグってるのはシアだよ」

 

 背中の鞘からデルフが声を上げるのを無視して、ルイズの元にキュルケとタバサがいることを確認した入間達は、本塔に空いた穴の中に入っていく。そこには、既に中に入ったシアがキョロキョロと辺りを見渡していた。

 

「シア、犯人はいた?」

「ダメですね。どうやら入れ違いになったみたいです。それから……」

 

 シアが指差した方角を見て、入間達は呆れたようなため息を吐いた。

 

『破壊の剣、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

 

「破壊の剣?」

「どうやらここは宝物庫らしいな。つまり、この学院に収容していた秘宝が盗まれたと……この学院のセキュリティはどうなっているのか……」

 

 アメリが組んだ腕に胸をのせ、不機嫌そうに呟く。自分達と関係のないこととはいえ、魔関署で働くことを野望とする彼女からすれば、盗賊にまんまとしてやられた学院のセキュリティに文句を言いたくなってくる。

 

「……また、面倒なことになりそうだね」

 

 人はそれを、フラグと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、トリステイン魔法学院は大騒ぎであった。

 優れた実力を持つ教師の目を掻い潜り、堅牢な城塞を突破して秘宝を奪われたのだ。間違いなく、トリステイン魔法学院での前代未聞の大事件である。

 教師達は学院長室に集まり、対策会議という名の責任の擦り付けあいをしていた。

 

「土くれのフーケ!貴族達の財宝を荒らしまくっているという盗賊か!魔法学院にまで手を出しおって!随分と舐められたもんじゃないか!」

「衛兵は一体何をしていたんだ!?」

「衛兵など当てにならん!所詮は平民ではないか!それより当直の貴族は誰だったんだね!」

「ミセス・シュヴルーズ!当直はあなたなのではありませんか!」

「も、申し訳ありません……」

「泣いたってお宝は戻ってこないのですぞ!それともあなた、“破壊の剣”の弁償ができるのですかな!?」

「わたくし、家を建てたばかりで……」

 

 とまぁこのように、シュヴルーズが当直をサボって自室で眠っていたのが判明すると、教師は一斉にシュヴルーズを責め立てていた。学院長が来る前に、責任の所在をはっきりさせておけば自分もとばっちりを食らわずに済むと思っているのだろう。

 

「どうしようもない連中だね」

「……ん。完全に時間の無駄」

「本当に、許せませんよ……」

 

 この部屋には教師達以外に、事件の目撃者としてルイズ、キュルケ、タバサ、入間、そして入間の恋人達全員も呼び出されていた。

 だが、学院の一大事だと言うのに身の保身の事ばかりの教師達に、“盗聴防止(パーフェクトスピーク)”を使って会話する入間達は頭を抱えたくなっていた。特に、教師である愛子は特に腹立たしそうな表情をしている。シュヴルーズが仕事をサボっていたのは事実のため、今もなお責め立てられている彼女を庇うものは一人もいなかった。

 

「これこれ、女性を苛めるものではない」

 

 すると、学院長室の扉が開き、オスマンが姿を現した。

 教師達は直ぐ様、シュヴルーズに責任を取らせるべきだとオスマンに詰め寄るが……

 

「では聞くが、この中でまともに当直をした事のある教師は何人おられるかの?」

 

 そう言い返されると、全員先程の剣幕が嘘のように黙り込んでしまうのだから、もう救いようがない。

 

「それで、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」

「彼女達です」

 

 コルベールがルイズ達を指差した。

 本来、使い魔は数に含まれていないのだが、入間が異国の貴族である為か、入間や恋人達も含められていた。

 

「詳しく説明したまえ」

 

 ルイズ達は、昨夜の起こった事態をありのままに説明した。完全に他人事であるため、入間達は会話に参加する気もなく、退屈そうにしていた。

 

 一通り聞き終えたあと、今度は今まで不在だった秘書のミス・ロングビルが、興奮した様子で現れた。

 

「ミス・ロングビル!どこに行っていたんですか!大変ですぞ!事件ですぞ!」

「申し訳ありません。朝から急いで調査をしておりましたので」

「調査じゃと?」

「そうです。今朝方起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこの通り。すぐに壁のフーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を震え上がらせている大盗賊の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」

「仕事が早いの。ミス・ロングビル」

「それで、結果は!?」

「はい!フーケの居場所が分かりました」

 

 その報告を聞いて、教師達は騒がしくなる。

 曰く、逃走中のフーケらしき人物を見たという農民がいたらしく、森の近くの廃屋に黒いローブを羽織った人間が入っていったという情報を掴んで来たようだ。

 

「黒ずくめのローブ?それはフーケです!間違いありません!」

 

 フーケの人影を見ていたルイズの言葉を聞いて、オスマンは目を鋭くして、ロングビルに尋ねた。

 

「そこは近いのかね?」

「おおよそ徒歩で半日、馬で四時間と行った所です」

「………」

 

 ロングビルの報告を聞いて、入間はつまらなそうな視線をロングビルに向けるが、すぐに彼女から視線を外すと、オスマンを含めた教師陣達にバカを見るような目を向けた。

 

「すぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

 

 すると、コルベールが叫んだ。しかし、それに対して、オスマンは首を振ると、年寄りとは思えない迫力で目を向いて怒鳴った。

 

「ばかもの!王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ!それに、これは我々の落ち度!その上……身にかかる火の粉を己で払えぬようで、何が貴族じゃ!魔法学院の宝が盗まれた!これは魔法学院の問題じゃ!当然我らで解決する!」

 

 その言葉を聞いて、ロングビルは何故か微笑む。入間達はその笑みに気付いていたが、特に口は開かなかった。

 オスマンは一度咳払いすると、有志を募った。

 

「捜索隊を編成する。我と思う者は杖を掲げよ!」

 

 そう言うが、案の定、誰も杖を掲げなかった。挙げ句、お前がやれば言いとか押し付け合う始末だ。

 

「ん?どうした?フーケを捕まえて名を上げようと思う者はおらんのか!?」

 

 再びオスマンが促すが、やはり反応は変わらない。

 

「よくこれで平民を当てにならないなんて罵れたよね」

「厚顔無恥もここまでくると清々しいな」

 

 既に入間達のなかでは、教師達の評価はゼロを通り越してマイナスに振りきっていた。

 その時、ある人物が杖をあげた。

 その光景に一瞬誰もが驚いた。

 

「ん!!?」

「ちょ…ちょっと!?」

「……」

「なっ…!?」

 

 オスマンやキュルケ、愛子が目を見開くなか、入間達は無機質な目でそれを見ていた。

 

「私が行きます!!」

 

 杖を掲げたのは、魔法成功確率ゼロ%とバカにされている劣等生──“ゼロのルイズ”だったからだ。

 

「ミス・ヴァリエール!何をしているのです!?あなたは生徒ではないですか!ここは教師に任せて……」

「誰も掲げないじゃないですか!」

 

 ルイズがそう言えば、教師達は皆気まずそうにするだけでなにも言わなくなる。ルイズを止めようとする声すら上がらなくなる始末だ。

 入間は、自身の側で震えている愛子を抱き寄せる。

 

「それなら、私も志願します。ヴァリエールには負けられませんわ」

 

 ルイズに続くようにキュルケが杖を掲げると、今度はタバサが杖を掲げた。

 

「タバサ、あんたはいいのよ。貴方には関係ないんだから」

「心配」

 

 一言、そう呟くと興味のあるような瞳で入間達の方を見つめた。キュルケはそんなタバサに嬉しそうに抱き着いた。

 

「そうか、では君達に頼むとするかの」

「ッ!待ってください!それは本気で言ってるんですか!?」

 

 オスマンの決定に、遂に愛子が声を張り上げた。執務机の椅子に座るオスマンの前までやって来て、机上に両手を叩き付ける。力の調整がうまく行かなかったのか、机の上がひび割れ、破壊される。

 その光景に目を見開く教師達は、直ぐに愛子に杖を向けようとするが、いち早く優花がナイフを投擲して杖を破壊することで、それを阻止させた。

 

「え、ええっと……君は誰かのぅ?」

「ヴァリエールさんの使い魔である入間くんの…こっ、恋人の、畑山愛子です。部外者の立場なのは承知してますが、貴方の決定は正気を疑います!相手は犯罪者なんですよ!?貴方は自分の生徒達を、命の危険がある死地に送り込むつもりですか!?それが教師のやることですか!!」

 

 愛子の剣幕に、誰もが圧されていた。

 

 畑山愛子は元々は人間界の普通の教員だった。だが、入間たちと友にトータスへと召喚され、そこでイシュタル達の口車にアッサリとのせられた光輝達のせいで勝手に生徒全員が戦争に参加するなんてことになり、数々の不幸と自身の不甲斐なさが重なり、愛子の大切な生徒達の八割は、帰らぬ人となってしまった。

 そんな愛子だからこそ、生徒を死地に送り込もうとするオスマンの決定に、一人の教師として絶対に見過ごすことはできなかった。

 

「君の言いたいことは分かる……だが、彼女達は敵を見ている。それに君が言うほど、この子達はヤワじゃない」

 

 しかし、オスマンは何でもないように返すと、深い瞳でタバサの方を見た。

 

「ミス・タバサは若くして『シュヴァリエ』の称号を持つ騎士だと聞いておる。実力もお墨付きじゃろうて」

「しゅ、シュヴァ……?」

「実績のみで手に入れられる称号だね。」

 

 言葉の意味が分からない愛子に、書物でそれを調べた入間が補足する。

 『シュヴァリエ』の称号は、純粋に行なった偉業の数によって与えられる、いわば実力の証明でもあった。最下級とはいえ、それをこんな年端も行かぬ少女が持っているのだから、周囲は驚きを隠せない。

 

「そして、ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法もかなり強力と聞いているが?」

「ええ、勿論!心配する必要ないわよアイコ」

 

 キュルケが得意気に髪をかきあげるが、愛子の視線は厳しいままだ。

 

 ルイズは次は自分の番とばかりに胸を張った。

 オスマンは一瞬言葉が詰まった。褒めることが何もないのだ。しばらく心の中でう~んと唸りながら、言葉を探り探りにして選ぶように言った。

 

「ミス・ヴァリエールは……その、数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、うむ、なんだ……将来有望なメイジで、しかもその使い魔は!」

 

 何故かさっきより熱っぽく語るように、オスマンは入間を見た。その視線に気持ち悪さを感じる入間。

 

「遠い異国から来た非常に優秀なメイジであり、グラモン元帥の息子であるギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという実績!そしてそこにいる亜人もまた、フーケのゴーレムを一撃で破壊したそうではないか!!」

「は?なんで僕まで同行するみたいな話になってるんですか?行くわけないでしょ、面倒臭い」

「ついでに、私たちも巻き込まないでください」

 

 入間とシアがバッサリと切り捨てた。

 生粋のトラブル体質の入間がリーダーな為か、事あるごとに大事に巻き込まれていた入間達だが、彼らは別に戦闘狂ではない。

 シエスタのように、入間達の都合や感情的に関係があるならリスクを伴うのを躊躇ったりはしないが、自分達とはなんの関係もないのなら、わざわざ入間達が手を貸す理由などない。

 

「…はっ?えっ、いやっ、その……イルマ君、君の主人が行くのじゃぞ?」

 

 その返答は想定外だったのかオスマンが驚いたように聞き返す。

 

「…それで?」

「それで、とは?」

「それの何が、僕が同行する事に繋がるんですか?貴方、さっき自分達の問題は自分達で解決するって言ったじゃないですか。なら、異国から来た部外者の僕達じゃなくて、この学院の誰かが行くのが筋でしょう?」

「し、しかしじゃな。主人を守るのは使い魔の役目で……」

「敵が向こうから襲ってくるなら守りますけど、自分から戦場に行こうとするなら守りませんよ。そこまで仲が良い訳じゃないなで」

 

 ルイズに無関心な入間だが、彼女を危険から守る気がないというわけではない。

 入間とて、仮面ライダーの端くれなのだ。例えルーンが刻まれていようがいまいが、ルイズに危険が迫っているなら助ける(時と場合によっては見捨てるが)くらいの良心は入間にもある。だが、自分から危険に身を投じるとなれば話は別だ。自ら戦いに行けば、自分がどんな危険な目に遭って怪我をしようが、根本的な責任の所在は道を選んだのは自分自身にあるのからだ。

 それでも、ユエ達のように背中を預けられる仲間であったなら、入間は全力でその仲間を守るが、入間はそこまでルイズに対して強い感情を持ってはいなかった。

 

「じゃが、君が行かねばミス・ヴァリエールが死ぬことも……」

「彼女達なら大丈夫とか言っておいて、使い魔がいなくなった程度で犠牲者が出るんですか?大した討伐隊ですね……」

「あっ」

 

 己の失言に気付いてオスマンはしまったと言うように表情をひきつらせる。

 オスマンは、伝説の使い魔ガンダルーヴの可能性を持ちながら、ギーシュとの決闘で見せた入間の実力があれば、決してフーケ相手にも遅れをとったりしないだろうと思っていたのだ。つまり、任務達成の信頼は入間にあったのだ。

 

「……貴方達はそれでも教師ですか!!」

 

 愛子が再び声を荒げる。チートステータスの愛子の手を叩き付けられた机が、完全に破壊される。

 

「いや、それは……」

「学生の皆さんは、親御さんのもとを離れて、この学院で生活をしながら日々勉強に励んでいます!そんな生徒たちを守ることこそ、教師として何よりも大切にしなければならない義務の筈です!なのに自分達は安全圏で傍観して、生徒に危険なことを全て押し付けるなんて、貴方には教師としてn」

「愛子」

「っ!い、入間くん…!」

 

 しどろもどろするオスマンを問い詰める愛子を、入間が肩にてをおいて制止させた。

 そのまま、入間は愛子を腕のなかに抱き寄せると、突然の事に顔を真っ赤にする愛子に優しく話し掛けた。

 

「愛子が教師として、ここの連中を許せないのは分かるよ。でも、ここは僕達のいた場所とは違うんだから、あまり目くじら立てても仕方ないよ」

「入間くん…でも……」

「大丈夫。僕達は愛子の言ってることが正しいって分かってるよ。でもまぁ、ここの教師達は魔法と権力に胡座をかいてるだけの腰抜けの集まりみたいだからね。そんなゴミ屑に正論なんか言っても、誰も理解する頭なんて持ってないよ」

 

 そう言って教師達に視線を送れば、教師陣はサッと目をそらした。先程、杖を優花に破壊された彼らには入間を黙らせるための魔法を使うことも出来ない。唯一、コルベールだけは何か違う気がしたが、結局自分が行くと言い出しはしなかった。

 

「もう行こう。本人達が危険を承知でも行きたいなら行かせれば良いし、万一死んでも、それは学生に犯罪者の討伐に向かわせた教師陣の責任なんだし。僕達には関係ないよ」

「なっ、ちょっと!!」

 

 入間は愛子のてを握りながら踵を返し、扉に向かって歩きだす。ユエ達も、躊躇なく追従する。

 ルイズが引き留めようとするが、入間達は止まることなくドアノブに手を掛けようとする。

 

「ま、待ってくれ!!」

 

 そこで、オスマンが声を上げた。

 入間は足を止めて振り替える。

 

「返す言葉もない……アイコ君の言う通り、ワシ等は教師失格じゃ。君達がこの件に無関係なのも重々承知しておるが……頼む。どうかミス・ヴァリエール達を守ってほしい」

 

 と言いつつ、学院の最高責任者である自分は行かないつもりである。入間達の実力がフーケを凌駕していると理解している辺り、メイジとしては優秀なのかもしれないが、教育者としては愛子の足元にも及ばない。

 入間達がゴミを見るような目でオスマンを見ていると、ルイズだ入間の服を引っ張り出した。

 

「いい加減にしなさい!いくら異国の貴族だからって、学院長に対してその態度はなに!?それに、私が行くなら使い魔のアンタも着いてくるのは当然じゃない!!」

「そうよ!それに、貴方達が戦ってるところも見てみたいわ」

「貴方達も来てほしい」

 

 キュルケやタバサまで乗っかってきた。

 頭痛がしてくる入間だが、フーケの首には賞金が掛かっていたことを思いだすと、思案する。ルーンの解除にしろミュウの捜索にしろ、いつまでこの世界に滞在するか分からない以上、どうしても資金は必要だ。使い魔と言う立場から、自由に動いたり働ける時間が取れない以上、少しの労力で大金が得られるなら、その努力は惜しむべきではない。

 

「良いよ。ただし、学院長さん……“貸し一つ”です。忘れたり惚けたりしたら……分かってますよね?」

「っ!分かった、感謝する」

 

 ついでで、学院長に恩を売って、いざというとき自分に仮を返させる事も忘れない。

 

 こうして、入間達もフーケの捕獲に参加することが決まった。




次回予告

入間「なんでこれがここに……?」

ユエ「フーケが来たみたい」

 破壊の剣の正体──

ルイズ「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」

入間「変身」

EP11「時の王者、不死鳥とともに」


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