悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME   作:MTHR

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 今回のサブタイトルは仮面ライダーセイバー第2話をオマージュしております。

 フーケの討伐回、原作とは違う破壊の剣の正体、皆さんは分かりますか?


EP11「時の王者、不死鳥とともに」

 フーケの隠れ家へは、馬車を使っての移動となった。

 入間達なら一時間もかからないでたどり着けるのだが、今回は確かめたいこともあるので、敢えて時間がかかる方法を選んだのだ。

 

「イルマさん!」

「ん?シエスタ、どうしたの?」

 

 入間達が馬車に乗り込もうとした時、バスケットを抱えたシエスタが駆け寄ってきた。

 

「ミス・ユエから、これから盗賊の討伐に行かれると聞いて……これ、皆さんのために作ったお弁当です。どうか道中に召し上がってください」

「おぉ…!」

 

 手渡されたバスケットを開いてみると、そこには色とりどりのサンドウィッチが大量に詰め込まれており、食いしん坊の入間は目を輝かせる。

 

「ありがとう、凄く嬉しいよ」

「いえ、そんな……私は……」

 

 入間が珍しく純粋な笑みで礼を言えば、シエスタは頬を赤くして俯く。

 

「……確定ですね」

「入間くん、いつの間に……」

「アイツは何処にいても女をたらしこむわけ?」

「今のところは恋愛感情はなさそうだが、イルマも奴を好意的に思ってるらしいしな」

「ほんっっとうに、イルくんはイルくんだよぉ」

 

 よそでそんな会話があることも気付かず、入間はバスケットを抱えて馬車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、入間達ロングビルが御者をつとめる馬車に揺られ、フーケが目撃されたという森を目指していた。

 

「ここからは徒歩で行きましょう」

 

 ロングビルは馬車の御者台から降りながらルイズたちに声をかけた。その視線の先には、鬱蒼と茂る森が一行の前に拡がっていた。

 

 シエスタが作ってくれたサンドウィッチをユエ達と分けあっていた入間は、最後の一つを一口で平らげてから馬車から降りると、辺りを見渡す。

 

(ここに来るまで、農村はなし、この辺りにも見た感じ人が住むような場所はない、か……)

 

 そう確認すると、入間達はさっさと先に進んでいった。

 しばらくすると、広い空間の中に一件の小屋が見つかった。

 

「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」

 

 ロングビルはそう言いながら、森の中から指差した。

 だが、小屋からは人の気配がまるでない。まぁ、ロングビルから情報を渡されてから四時間も経っているので、もう既にいなくなっている可能性もある。今度はどうやって小屋に潜入するかの作戦を考え始め、タバサから一つの案が出された。

 

 作戦の案は、まず一人が囮を兼ねた偵察役になり、小屋の周辺を探索し、フーケが中にいたら、挑発して誘き出し、囮を追ってフーケが外に出たら、そこを全員で一斉に攻撃する。

 要は奇襲である。シンプルだが、格上を相手には強力な作戦である。

 

 肝心の囮役には、満場一致で入間に決まった。

 

 実際には、亜人族として優れた関知能力を持つシアが小屋に誰もいないことは確認しているのだが、先に秘宝を確保しておいた方が、()()()()()()()フーケともやりやすいので、特にそれを明かすことはなかった。

 

「取りあえず、さっさと取りに行くよ。1分経っても戻らなかったら皆も来てね」

 

 入間は右手を上げると、背後にオーロラカーテンを出現させ、躊躇いなくその中に入り込んだ。ルイズ達のどよめく声とアメリ達の呆れたように宥める声が聞こえたが、入間は無視して、小屋の中に姿を現した。

 

 やはり、世界間の移動はともかく、この世界、しかも短距離なら空間移動も問題ないらしい。

 

 小屋の中は薄暗く、半ば朽ちかけた家具がわずかばかり残されていた。しばらく辺りを見渡した入間は、無造作にチェストを開けてみると、かなり大きな箱を発見した。誇りを被っている家具とは対称的に、まるで新品のように真新しい。

 入間は確認のため、その箱を開けて中を確認すると、目を見開いた。

 

「これって……!」

 

 納められていたのは、一本の剣だった。

 黒い刀身にオレンジ色のエンブレムがある両刃の剣だ。

 

「なんでこれがここに……?」

 

 これが“破壊の剣”と呼ばれる秘宝なら、確かに秘宝と認定されてもおかしくない代物だ。だが、この剣がハルケギニアにあるなんてあり得ない。

 

 すると、小屋の扉が開かれて、ユエ、アメリ、チマ、ミレディ、愛子、優花、チマ、キュルケ、タバサが入ってきた。驚きすぎて思案に時間がかかったようだ。因みに、ルイズ、シア、ティオは小屋の外を警戒し、ロングビルは辺りの偵察に行ったらしい。

 

(決まりだね)

 

 ロングビルが偵察に行ったことを聞いて、一つの確信を得た入間は恋人達に視線を向ける。彼女達は、入間の意図は分かっていると言うように頷いた。

 そんな彼女達を他所に、キュルケとタバサは入間が持っている“破壊の剣”に注目していた。

 

「確かに“破壊の剣”だわ。以前、宝物庫の見学のときに見たことがあるわ」

「……魔法の罠はない」

 

 杖を“破壊の篭手”に向けて意識を集中していたタバサが罠の有無を確認する。

 だが、その剣を見たユエ達は目を見開いてその剣を観察した。

 

「……イルマ、何故これがここにあるんだ?」

「僕が聞きたいですよ……」

 

 アメリ達も、その剣には見覚えがあった。

 彼女達はトータスでバダンを相手にしていた頃、バダンが使役する怪人を知るために仮面ライダーの歴史を調べたことがあり、その一つに、この剣の事も出てきていた。

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 その時、ルイズの悲鳴が聞こえてきた。

 悲鳴を聞いて一斉に部屋を飛び出す入間達。

 

 そこには、昨晩見たのと同じ、30メイルはあるゴーレムが立っていた。一つ違うのは、全身が鋼鉄に変わっていると言うことだ。岩石で出来たゴーレムを一撃で破壊したシアへの対策なのかもしれない。

 

「事情が変わった。貸しは大きい方がいい。皆、やるよ」

 

 フーケの賞金が狙いだったが、秘宝の正体を知った以上、極力自分達の手で倒した方がオスマン達への借りも大きくなる。入間が何を狙っているのか、既に分かりきっているため、ユエ達も臨戦態勢を取った。

 

 そんな間にも、タバサが氷の槍を放つ“ウィンディ・アイシクル”、キュルケが火の玉を放つ“ファイアー・ボール”を放つが、ゴーレムは欠片も聞いている様子がなかった。

 

 それを見て、ルイズ達は完全に戦力外だと判断した入間は、手に持っていた“破壊の剣”をチラリと一瞥すると、それを箱に戻し、ペイッとルイズに投げ渡した。

 

「きゃっ!?な、なにするのよ!?」

「君達はそれを持ってて。愛子、優花、二人は彼女達を守ってて。あのゴーレムは僕達がやる」

「……ん。暇潰しにはいい」

「まぁ、この世界の魔法を知るいい機会だな」

「わかりましたよぉ!」

「それじゃっ、やって上げようか!!」

「承知したのじゃ」

「任せてください」

 

 慌ててその箱をキャッチして文句を言うルイズにそれだけ言い残すと、入間、ユエ、アメリ、シア、ミレディ、ティオ、チマはゴーレムに向けて走りだし、愛子と優花はルイズ達の前に立った。

 

 その瞬間、ゴーレムは入間達に向けてその巨腕を振り下ろそうとした瞬間、チマが先頭に立ち、手を掲げた。

 

「凍れ」

 

 その瞬間、ゴーレムの体が氷に包まれる。

 タバサの放つ魔法とは比べるのも烏滸がましいその冷気は、ゴーレムの腕と下半身に纏わりつき、その巨体を地面をに縫い付けた。

 

「はぁッ!!」

「うりゃっ!!」

 

 そこへ、アメリの蹴りとシアのガシャコンブレイカーⅡがゴーレムを襲い、30メイルあるゴーレムはまるでサッカーボールのように空へ打ち上げられる。

 

「この超絶天才美少女魔法使いのミレディさんが、ただのゴーレムに負ける筈ないよ!!」

「妾の炎が鉄如きに防げるものか!」

 

 そこへ、ゴーレムよりも上空に飛んだミレディが重力魔法を発動してゴーレムを地面に勢いよく落下させると、地面からティオが簡易版の“ブレス”を放ち、落下してくるゴーレムの土手っ腹に巨大な風穴を開ける。

 轟音を立てて地面に叩き付けられたゴーレム。ティオ自身が開けた大穴を潜り抜けてティオがその場から離れると、入間とユエが接近する。

 

「合わせるよ、ユエ──“風神刃(シェイブレスト)”!」

「んっ!“風刃”!」

 

 入間とユエの二人が同時に放った風の刃が重なりあい、ゴーレムの左腕をまるで豆腐のように体から切り分けた。

 

 すると、右手で起き上がったゴーレムが、周囲の土を集めて左腕を再生させる。それを見た入間達は、面白がるような笑みを浮かべてから、再びゴーレムへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凄い……」

 

 その光景を見ていたルイズ達は、あまりにも一方的な光景に口を開けて呆然としていた。

 遠距離から援護でもしようかと考えていたのだが、初めて見せたユエ達のスクエアクラスのメイジすら凌駕するその力に、ただただ圧倒されていた。

 

 そんなルイズ達を守るように立っていた愛子と優花は、自分達もウルの町で入間に再開した時もこんな表情をしていたのかなと思い、顔を見合わせて苦笑した。

 

「入間くん達……完全に遊んでますね」

「ちょっと、フーケが可愛そうになってきたかも……」

 

 実際、あのメンバーならば、例え一人であったとしてもゴーレムなど一分もかからずに木っ端微塵に破壊できる。しかし、あのメンバーがそれをせずに手加減マシマシの攻撃しかしないのは、本当にただ遊んでるだけなのだろう。自慢のゴーレムをサンドバッグの代わりにされたフーケに少しだけ同情してしまった。

 

 そんな二人の呟きを耳にしたタバサは、自分達が近くにいては足手まといだと判断すると、シルフィードを呼んで秘宝の安全を確保する事を提案する。キュルケ、愛子、優花もそれに賛成する。

 だが、ルイズだけはそれに答えず、入間から投げ渡された箱を開けると、“破壊の剣”を取り出して握り締めたのだ。

 

 何をする気なのか察した愛子は、咄嗟にルイズの肩に手をおいて彼女を引き留めた。

 

「ちょっ、ヴァリエールさん!何をする気ですか!?危険です!早くタバサさんの使い魔に……」

「下がってなさいよアイコ!アイツを捕まえれば、もう誰も私を“ゼロ”なんて呼ばなくなるわ!!」

「はぁっ!?アンタ、この状況で何を言って……あっ!」

「ちょっと、ルイズ!!」

 

 優花とキュルケの制止を無視して、愛子の手を振り払ったルイズは、“破壊の剣”を手にゴーレムに向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 ゴーレムを相手に手加減マシマシで戦い、この世界のメイジの魔法を観察していた入間達。

 入間達の魔術や体術で破壊される度に周囲の土を集めて再生するゴーレム。しかし、彼等にとっては例え岩石だろうが鋼鉄だろうが、ただ巨大なだけで動きも短調なゴーレムの攻撃を掻い潜って破壊するなど造作もなく、次第に芸もなく再生を続けるゴーレムに飽きを感じていた。

 

「そろそろ、頃合いだね」

「……ん。見るものなし」

 

 重力魔法で滞空する入間、ユエ、ミレディ、アメリに、宝物庫から出した“マシントルネイダー・スライダーモード”に乗ったシアとティオは、満場一致でゴーレムとの遊びを終わらせることを決断した。

 

「それなら、ミレディさんがちゃっちゃと……ん?」

「ミレディ?何を……あれっ?」

 

 ミレディが得意の重力魔法を使おうとした時、何かに気付いて下を向く。それに疑問を覚えた入間達が彼女の視線を追うと、そこには“破壊の剣”を振り回しながらゴーレムに突撃するルイズの姿があった。

 

「ルイズさん!?」

「何をする気じゃアヤツは……」

「チッ、“破壊の剣”で相手する気か……」

「“アレ”を彼女が使える筈ないのに……」

「……馬鹿?」

「しょうがないなぁ、もう……」

 

 “破壊の剣”をブンブンと振り回すルイズに向けて右腕を振り上げるゴーレム。

 このままゴーレムを破壊すればルイズも巻き込まれるためミレディが魔法を止めると、入間は仕方なく背中に納めていたデルフを抜刀すると、逆手にもって振りかぶった。

 

「お、おい相棒!?何をすどわぁああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!?」

 

 デルフの声を無視して、入間はゴーレムの腕目掛けて全力でデルフを投擲する。人外のパワーで放たれたデルフは音速を越え、まるで一筋の流星のような速度でゴーレムの右腕を呆気なく破壊する。ゴーレムがバランスを崩して倒れ、宙を舞った右腕が大量の岩石をこぼしながら地面に墜落する。

 流星となって落下したデルフが、ルイズの一メートル手前で深々と地面に突き刺さった。

 

「きゃあっ!!?」

 

 その余波に巻き込まれたルイズは、その場で尻餅を着いて悲鳴を上げる。“破壊の剣”は握ったままだと確認すると、再び“破壊の剣”を手にゴーレムに突撃しようとするが、目前に入間が降り立ったことで足を止めた。

 

「何をしてるの?僕はその剣を持っててって言ったんだけど?」

 

 自分を見るあまりにも冷たい入間の目にルイズは気圧されそうになるが、勇気を振り絞って反論する。

 

「このまま何もしないで傍観する筈ないじゃない!私だって、ささやかだけどプライドってものがあるの!ここで逃げたら、ゼロのルイズだから逃げたって言われるわ!!」

「要するに、人に称賛されたいから勝てもしない相手に挑むってこと?」

「違うわ!!」

 

 デルフを引き抜きながらため息を吐く入間の言葉を遮り、ルイズは“破壊の剣”を手にしてゴーレムの前に立ちながら声を張り上げた。

 

「入間!私は貴族よ!魔法を使えるものを貴族と呼ぶんじゃないわ!」

 

 ルイズは“破壊の剣”を振り上げる。

 

「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!!」

 

 その宣言と共に、ルイズは未だに倒れるゴーレムに向けて走り出す。

 

「やぁあああああっ!!!」

 

 そして、目前まで迫ってきたところで、破壊の剣を振り下ろし、ゴーレムの体を切り裂く……

 

ガキンッ!

 

 事は出来なかった。

 振り下ろされた“破壊の剣”はゴーレムの体に弾かれた。ゴーレムの体は破壊されるどころか、傷一つついていない。

 

「なっ、何よこれ!?“破壊の剣”なんじゃ──きゃっ!!?」

 

 その時、入間はルイズの手から“破壊の剣”を奪い取り、ルイズを脇に抱え、走り出す。それとほぼ同時にゴーレムが起き上がると、入間は物陰に身を潜め、ルイズを地面に下ろした。

 

「逃げないのは君の勝手だよ。でも、無謀と勇気は全くの別物だよ。悪いけど、その背中に守るべき人や指名があるわけでもないのに無謀な戦いをするのがハルケギニアの貴族っていうなら、僕は一生それに共感できない」

 

 呆れたような、諭すような冷たい言葉に、ルイズはポロポロと涙をこぼし始めた。

 

「私は……私は……」

 

 何も言い返すことも出来なかった。

 

 ギーシュとの決闘の後から、ルイズは入間に対して劣等感に近い感情を抱いていた。

 魔界の名門貴族の子息であり、非常に抜きん出た魔術の才能を持つ自身の使い魔──入間。複数の女性と交際をしていることには納得出来ないが、それでもユエ達8人は、心から入間を慕っている事も分かっていた。平民に対する差別意識もなく、シエスタを始めとした学院の平民達も少数ではあるが彼に一目置いている者もいた。

 そんな殆んど言うことを聞かない入間は、自分に対して忠誠心もなければ、大して関心を寄せていないことは、ルイズも無意識に気付いていた。

 だからこそ、示したかった。自分は、使い魔に負けないくらい立派か貴族なのだと。

 だが、その結果はこれだ。

 ゴーレムを倒すどころか傷つけることも出来ず、入間には呆れられる始末だ。情けないなんてものじゃない。

 

「……けど、死を目前にしても逃げなかったのは認めなくはないよ」

「…………えっ?」

 

 その言葉に、ルイズは直を上げて入間を見る。

 入間は、()()()()()()()()()()()()()

 

 すると、ユエ達が入間とルイズの元に降り立ち、集まってくると、入間は踵を返してゴーレムに視線を向けた。

 

「ユエ達と一緒にいて。ここは僕がやるよ──()()()

「ッ!アンタ、今私の名前を……!」

 

 入間は答えずにゴーレムに向かって歩き出すと、自身が手にしていた“破壊の剣”が、突如として光を放った。それを見て、フッと笑みを浮かべる入間は、デルフを地面に突き刺した。

 

「おい、相棒!俺っちを使わないのかよ!!」

「必要ないね。それより、こっちを試してみたい」

 

 取り出そうとしたジクウドライバーを納め、デルフの文句を無視した入間は“破壊の剣”──否、無銘剣虚無を、腰にかざした。

 

 

覇剣ブレードライバー!

 

 

 剣が炎に包まれ、入間の腰に、剣が納められたオレンジ色のベルト──“覇剣ブレードライバー”が装着される。

 

 入間は懐から、表紙に炎を纏う不死鳥の姿が描かれた黒とオレンジの配色をした手帳のような本──ワンダーライドブックを取りだし、ページを開いた。

 

 

エターナルフェニックス!

 

かつてから伝わる不死鳥の伝説が今、現実となる……

 

 

 その本──“エターナルフェニックスワンダーライドブック”を閉じて、ブレードライバーの右端のスロットに挿し込む。

 

 入間の背後に、巨大なエターナルフェニックスワンダーライドブックが現れる。

 

 無銘剣虚無の柄を握り締めた入間は、その剣をブレードライバーから力強く引き抜いた。

 

 

抜刀…!

 

 

 ベルトと背後の本が開き、背後の本から炎に包まれた不死鳥が飛び出す。

 

 刀身にオレンジ色の炎を纏う虚無を構えた入間は意識を集中させると、あの言葉を静かに呟いた。

 

「──変身」

 

 虚無を真横に一閃させると、オレンジ色の斬撃が飛び出し、ゴーレムを後退させる。

 周囲を飛び交う不死鳥が入間の左肩に飛び付き、入間の体が炎に包まれる。

 飛ばされた斬撃が炎に包まれた入間の顔に当たると、その戦士は姿を現した。

 

 

エターナルフェニックス!!

 

虚無!漆黒の剣が、無に帰す!

 

 

 黒とオレンジを体、不死鳥の頭を模した右肩に、不死鳥の胴体と翼を模した装甲と左肩、左脚を包む不死鳥の尾羽のようなオレンジ色のローブ。

 虚無の刀身を模した角に、鳥の翼を模したような黒いオレンジの複眼を持つ仮面。

 

 姿を変え、“不死身の剣士”となった入間は、虚無を構えながら静かに名乗りを上げた。

 

「仮面ライダー…ファルシオン」

 

 不死鳥の剣士──仮面ライダーファルシオンの姿に、ルイズ達は絶句したように目を見開き、ゴーレムもまた驚いたように動きを止める。

 

「か、変わった……!?」

「やはり、あれは本物の無銘剣虚無…!?」

 

 ルイズが口をパクパクさせ、アメリがポツリと呟くなか、ファルシオンは手を握って開くを繰り返し、ネクタイを締めるような仕草で、自身の状態を確認した。

 

「着心地に違和感があるけど……うん。慣れだね」

 

 そう呟いた時、ゴーレムが拳を振り下ろす。

 ファルシオンは舞うような動きで跳躍してその拳を回避すると空中で体を回転させて虚無を振るい、ゴーレムの腕をアッサリと切り落とす。

 

 地面に着地したファルシオンは、新たに“ブレイブドラゴンワンダーライドブック”、“ライオン戦記ワンダーライドブック”、“ランプドアランジーナワンダーライドブック”を取り出すと、虚無の刀身にその三冊を連続で当てる。

 

 

永遠(とわ)の火炎竜!

 

永遠(とわ)の青獅子!

 

永遠(とわ)の魔神!

 

 

 虚無が本を学習し、刀身が赤い炎、青い水流、黄色の雷に包まれると、ファルシオンは右手に持った虚無の刀身を左下に持っていき、構える。

 

 

無限三突!!!

 

 

 虚無を右上に振り上げ、続けて左上から右下に振り下ろし、そしてその場で回転しながら虚無を横に一閃する。

 

 炎を纏う赤、激流を纏う青、稲妻を帯びた黄色の三つの斬撃がトライアングル状となって飛び出し、三つの頂点に各々赤い竜、青いライオン、黄色い魔神が現れ、斬撃と共にゴーレムに突撃する。

 

 竜と獅子と魔神と共に迫る斬撃がゴーレムに直撃して、30メイルはある超重量のゴーレムはその体を浮き上がらせ、斬撃にその身を砕かれながら空へと飛ばされる。

 

「そろそろ頃合いだね。ここは一つ、カッコよく決めてみようかな……」

 

 ファルシオンは虚無をブレードライバーに収刀すると、虚無の柄にあるトリガーを引く。

 

 

必殺黙読!

 

 

 背中から不死鳥の翼を出現させた、翼を広げて空へと飛び上がり、斬撃によって空へと打ち上げられているゴーレムを追う。

 

「無に還してあげるよ」

 

 そして、再び覇剣ブレードライバーから、無銘剣虚無を引き抜いた。

 

 

抜刀…!

 

 

「えーと……フェニックス・レクイエム!」

 

 

不死鳥無双斬り!!

 

 

 適当に思い付いた技名と共に、ファルシオンは赤黒い光を纏う無銘剣を一閃させる。

 

 その瞬間、ただでさえ半壊だったゴーレムは、青空のなかで、盛大な爆発を起こした。

 

 

ドゴォォオオオオオオオオンッ!!!!

 

 

 太陽が目の前に現れたかのような凄まじい閃光と熱波が地上にいたルイズ達を襲い、森の木がザワザワと揺れる。

 

 ルイズ達が恐る恐る顔を上げると、そこにはパラパラと空から降ってくる微かに残ったゴーレムの残骸と、翼を羽ばたかせて地面に降り立つファルシオンの姿だった。

 

「…す…凄い……」

「あれが…破壊の剣の力……」

「………」

 

 ルイズ達はその光景に、全員口を開けて驚愕していた。無表情がデフォルトのタバサですら目を見開いている。

 

「……入間、ジオウ以外のライダーになっても素敵」

「うむ。流石はイルマだな」

「ですねぇ、なんか幻想的でしたよぉ」

「イルくん、カッコいいよぉ……」

「ご主人様……はぁはぁ、あの攻撃を、妾にもしてほしいのじゃ……」

「イルマ先輩……♡」

「入間くん……はぅ」

「皆チョロすぎない?わ…私はどうとも思わないから!嘘じゃないからね!」

 

 一方で、ユエ達は頬を染め、ファルシオンの勇姿に見惚れていた。

 ゴーレムが可哀想になるくらい一方的な光景だったのだが、彼女達にとっては胸をときめかせる姿に見えたらしい。

 

 すると、偵察に向かっていたロングビルが慌てた様子で入間達のもとへと駆け寄ってきた。

 

「みなさん大丈夫ですか!?凄い音を聞き付けて来てみたら──なっ!!?」

「「「ッ!?」」」

 

 慌てているロングビルの言葉が遮られた。変身を維持しままのファルシオンが、虚無の切っ先を向けていたからだ。

 

「いい加減、三問芝居も終わりにしたらどうだ?ロングビル……いや、土くれのフーケ」

 

 アメリがそう告げる。ルイズ達が驚愕するなか、シアがガシャコンブレイカーⅡを、優花がナイフを構え、ユエ達も目を細めた。

 

「なっ、何を言っているんですか!?私が土くれのフーケな訳がありませんよ!ミスタ・イルマもこの剣を下ろして……」

「…ゴーレムの戦いを見てないような口振りをしてたのに、この鎧の下が僕だなんてよくわかったね?しかも、この姿のリアクションもなく」

「ッ!!」

 

 そこで、ロングビルは目を見開く。

 ファルシオン達から敵意に満ちた視線を注がれ、暫く黙っていたロングビルだったが、やがてポツリと呟いた。

 

「……そう、なら仕方ないわね!」

「きゃっ!?」

「全員、杖と武器を捨てな!じゃないとこの娘の命はないよ!!」

 

 その瞬間、手早い動きでルイズを捕まえると、素早く取り出した杖を首元に近づけた。キュルケやタバサが杖を捨て、シアも渋々とガシャコンブレイカーⅡを放る中、ファルシオンは呆れたように無銘剣を肩に置いた。

 

「まっ、こうなるよね……」

「そうさ!アンタ達の言う通り、アタシが土くれのフーケさ。どうやらアンタ達は随分前からアタシが怪しいと思ってたみたいだけど、どうやって確信を得たんだい?」

 

 学院長秘書の仮面を脱ぎ捨てたロングビル──フーケは、ルイズを拘束したままファルシオン達に問いかけた。

 

「君が言ってた調査報告だけど、あれは矛盾だらけだね。学院から馬車で片道四時間も掛かるのに、今朝から調査して昼前に戻ってこられる筈がない。その上、この辺りに人が住んでる集落は一つもない。そんな状況でフーケの情報を集めるなんて、一日かけても終わる筈がない」

「へぇ~!馬鹿な教師達より、アンタの方がよっぽど賢いじゃないか!その上、“破壊の剣”の事まで知ってるなんてね!さぁ、さっさとその剣と、アンタが持ってるその本を渡しな!どうやら、その剣にはその本が必要らしいからね!さもなくば、このお嬢ちゃんの命はないよ!!」

 

 どうやら、フーケは無銘剣の力を知るために態々学院に戻ってきたようだ。

 確かに無銘剣虚無は強力な剣だが、虚無に選ばれたわけではないフーケがそれを使える筈もないし、ワンダーライドブック無しではその真価を引き出せない。

 

 ファルシオンは変身を解かないままだが、剣は下ろしている。しかし、その強さをいやと言うほど見せられたフーケは、何をして来ようとそれよりも先にルイズを攻撃できるうに、意識をファルシオンに集中させる。

 

「一つ、教えて上げるよ。杖と武器を奪えば君は形勢逆転できると思ってるみたいけど……これが奪われたところで、君が僕たちに負けるのは変わらないよ?」

「はっ!何を言って……ガッ!?」

 

 そこで、フーケの言葉が途切れた。

 フーケの集中がファルシオンに向けられて、他に視線を向けられていなかった隙に背後に回ったアメリがフーケの首筋をチョップして脳震盪を起こさせ、彼女の意識を刈り取ったのだ。

 

「イルマが無銘剣を使い派手なパフォーマンスをすることで、お前の注意を引き付けていることに、気付かなかったようだな」

 

 ルイズが解放され、気絶して倒れるフーケを縛り上げるアメリ。

 ファルシオンがブレードライバーからワンダーライドブックを引き抜くと、本が捲れるようなエフェクトと共に変身が解除される。

 

「無銘剣は予想外だったけど……まっ、これで一件落着だね」

 

 急展開についていけかいルイズ達を他所に、無銘剣虚無を見ながらそう呟く入間であった。




次回予告

入間「あれをどこで手に入れたんですか?」

ユエ「……カブトの世界だけじゃない?」

 無銘剣虚無の謎──

オスマン「今日の夜はフリッグの舞踏会じゃ」

アメリ「お前達トリステイン魔法学院が起こした件について……納得のいく説明をしてもらう」

EP12「謎と尋問と舞踏会」



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