悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME   作:MTHR

12 / 37
 今回のサブタイトルは仮面ライダーOOO風です。

 実施ているヒロイン追加のアンケートですが、次話投稿と同時に終了しようと思います。現時点ではルイズ、タバサ、アンリエッタ、カトレアの票数が高いので、作者の気分次第でこの中の誰かがヒロインとして加わるかもしれません。


EP12「謎と尋問と舞踏会」

「まさか、ミス・ロングビルが土くれのフーケだったとはのう……」

「一体、どういった理由で採用なされたのですか?」

 

 トリステイン魔法学院に戻った入間達は、フーケを王宮に連行させ、学院長室にて、オスマンとコルベールに今回の出来事を説明していた。部屋には入間達の姿もあり、執務机の上には無銘剣虚無が納められた箱が乗せられている。

 有能な秘書がまさか盗賊であったことに頭を抱えるオスマンに、コルベールがフーケを採用した理由を尋ねると、オスマンはしどろもどろと答えた。

 

「いやあ……ワシが訪れた酒場で給仕をしておっての、美人な上に尻を撫でても怒りもしなくてな。さらに聞けば、魔法まで使えるという。もう、わしはこの娘っきゃない、と思って即採用したんじゃ……。いま、思えば、あれはわしに取り入る為の演技じゃったのかのう……」

「そ、そうですな!美女とはまさに魔性のもの!!わ、われわれ男にとってはそれだけで恐るべき魔法使いといえるでしょう!!」

「おぉ、そのとおりじゃ!コルベール君、きみも話がわかるのう!!」

 

 目を泳がせるオスマンをコルベールが擁護する。

 実は、コルベールもフーケことロングビルの色香にコロッとほだされ、宝物庫の物理的衝撃に関する弱点を得意げに話してしまっていたのだ。

 

「要するに、貴方達が安い色仕掛けにハマって盗賊を招き入れて、掌の上で転がされてたってことでしょ?ここの教師は揃って無能だらけだね」

「……最低」

 

 入間とユエの罵倒に、ぐうの音も出ないオスマンとコルベール。ルイズ達女性陣のオスマンとコルベールを見る目も、既にゴミを見る目と大差がない。

 非難の視線から逃げるように、オスマンは咳払いした。

 

「君達のおかげで、王国を騒がせていた盗賊は捕まり、“破壊の剣”も戻ってきた。本当によくやってくれた。君達に『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。ミス・タバサには、精霊勲章の授与も申請しよう」

 

 それを聞いたルイズ達はぱあっと顔を輝かせる。

 

「あ、あの…イルマ達には、何もないのですか?」

 

 ルイズが、不憫そうな目で入間の方を向いた。今回の一件、ルイズ達は役立たずに等しかった。なのに自分達だけが称賛される事に、ルイズは納得がいかなかった。

 

「しかしのうミス・ヴァリエール、彼女は使い魔じゃ…使い魔の手柄はメイジの物として扱われる。それではいかんかの?」

「そんなものいらないよ。それより、彼女は賞金首なんでしょう?金は全額貰います」

 

 入間はそう答えた。そもそも、フーケ討伐の一番の目的は金策である。他ならぬ入間がそう言うならと、ルイズも口を閉じた。

 

「さて、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。この通り秘宝も戻ってきたし、予定通り執り行う。今回の主役は君達じゃ。せいぜい着飾るのじゃぞ」

「そうでしたわ!フーケの件ですっかり忘れておりました。早く準備しないと」

 

 キュルケはそう言ってタバサを連れ出すと、オスマンに礼をしてその場を後にした。

 

 入間達は「話したいことがある」とルイズに言ってその場に残り、オスマンもコルベールを下がらせた。

 

「学院長さん。貴方には幾つか聞きたいことがあります」

「ふむ、君は“破壊の剣”を取り返してくれた一人じゃ。ワシに答えられる事ならなんでも答えよう」

「破壊の剣……いや、無銘剣虚無を貴方は何処で手に入れたんですか?あれはセイバーの世界に存在している剣の筈です」

 

 そこで入間は、自分達が魔界から来た存在であること、入間はルイズの召喚で魔界から呼ばれ、ルーンのせいで帰還できなくなったこと、ユエ達は入間を追ってこの世界に来たことを明かした。悪魔と言われて半信半疑のオスマンとコルベールだったが、アメリとチマが翼を広げて見せたことで、納得を見せた。

 

 因みに、入間達は仮面ライダーの事についてだけは伏せ、無銘剣虚無は“異世界に存在する聖剣のうちの一本”であると明かした。説明が面倒くさいし、入間はセイバーの世界には行ったことがなく、成り行きでライドウォッチを手に入れ、セイバーの歴史を調べただけなのだ。

 

「今から30年前の事じゃ。森を散策していたワシは、ワイバーンの群れに襲われた、死にかけた事があった。それを救ってくれたのが、この剣の持ち主じゃ。あの姿は今でも鮮明に思いだせる……二本の剣を竜巻のように振るい、15体はいたワイバーンを一撃で全滅させたのじゃ」

 

 それを聞いて、コルベールは驚いたように無銘剣に目を向ける。ワイバーン15体を一撃で葬るなど、彼女達には想像も出来ない。

 

 だが、入間はその報告よりも、ある可能性が脳裏によぎり、オスマンに尋ねた。

 

「これの本来の持ち主って、メギド……この世界で言う亜人じゃなかったですか?両肩がオオカミみたいになってて、顔が赤い骸骨みたいな」

 

 それを聞いて、オスマンは目を見開いた。

 

「これは驚いたのぅ……君の言う通り、この剣の本来の持ち主はワイバーンを一掃した後、黒い鎧姿から君が言った通りの特徴を持った亜人に姿を変えたんじゃ。ワシはどうにかヤツの正体を突き止めようとしたんじゃが、その亜人は確か…『雷の騎士と戦いたかった』と言ってから、持っていた剣の一本を残してすぐに姿を消してしまった。そして、ワシはその剣を回収して“破壊の剣”と名付けたのじゃ」

「……やっぱり、デザストか」

「……カブトの世界だけじゃない?」

 

 そう呟く入間達。

 しかし、心の内ではたくさんの疑問が渦巻いていた。無銘剣の本来の持ち主は分かった。だが、何故この世界にいたのか、オスマンの言っていた『雷の騎士』というワードから、恐らく“あの事件”の後からこの世界に来たのかもしれないが、あの事件が起きたのは半年前だ。30年前なんて、どう考えても計算が合わない。しかし、分からないことを考えても無駄だ。

 

「事情は分かった───では、次の話だ」

 

 その瞬間、アメリは目を細め、殺気を放った。

 入間達魔界組は動じることは無かったが、それを受け二人は、顔を青くして震え上がる。

 

「えっ?いきなりどうしたのアメリ?」

「……こうも謎が増えてくる以上、この世界に長居する事は確実だ。ならば、少しでも立場を明確にしなければならんだろう」

 

 アメリは、まるで獲物を狙う野獣のように鋭い目でオスマンとコルベールを見据えると、静かに口を開いた。

 

「……先程言った通り、我々は魔界から来た存在だ。この世界において、我々の地位は無いに等しいのは理解している。だが、我々のお…夫となるべき男──イルマが、魔界の中枢を担う13冠のサリバン様のご子息である事も変わらん」

「更に言えば、ご主人様は今回の功績も示す通り、魔界においては数々の功績を残し、“英雄”とよ呼ばれる御方じゃ。そんな御方が、魔界からなんの予兆もなく姿を消せば……我等の世界がどうなるかなど、言うまでもないじゃろう?」

 

 そこへ、アメリの意図を察したティオもアメリの隣に立ち、普段の変態性が嘘のように凛とした態度で、オスマン達に金色の眼をギラつかせる。

 アメリ達が何を言おうとしているのか理解したオスマンとコルベールは、ようやく自分達が置かれている状況を理解し、顔を青くした。

 

「ルイズさんが故意に召喚したのではないのは分かってるので、ルイズさんを責める気はありません。ですが……」

「……ルーンを刻んで、入間を魔界に帰れなくしたのを水に流す気はない」

 

 シアとユエもアメリとティオの隣に立つ。

 アメリは、壮絶な殺気を放ったまま、オスマンとコルベールを睨み付けて、問い掛ける。

 

「オールド・オスマン学院長、ジャン・コルベール教諭。お前達トリステイン魔法学院が、イルマを誘拐して使い魔にした件について……納得のいく説明をしてもらう」

 

 オスマンとコルベールは返答に迷う。入間が貴族の子息と言うのは聞いていたが、そこまで高い地位を持つものとは思わなかったのだ。

 しかし、身分が明らかになった今、召喚された魔界側からすればもうこれは国際問題以外の何物でもないことを理解している二人は、なんとか彼女達の怒りを納めようとする。

 

「し、しかし…ですな。召喚した使い魔と契約ができなければ彼女は二年次に進級できず、生徒の中でも、異世界から悪魔が召喚されたなど前代未聞でして……それに、彼の身分も分からず……」

「イルマとルイズから聞いた話では、ルイズはイルマわ使い魔にすることは反対だったらしいが、“コントラクト・サーヴァント”を強要させ、ろくな説明も無しにイルマにルーンを刻んだ、と聞いたが?」

「そ、それは……!」

「契約をする前に、イルマ先輩の身元確認や、イルマ先輩と話をすることは出来なかったんですか?」

「……」

 

 アメリとチマの指摘に、何も言い返せないコルベール。

 入間はその様子を見て、遂に口を開いた。

 

「それじゃあ、僕に刻んだルーンの事を聞きましょうか?」

「う、うむ。それは『ガンダールヴ』。伝説の使い魔の印なのじゃ」

「……伝説の使い魔?」

「そう通りじゃ。一説によれば、その伝説の使い魔はありとあらゆる武器を使いこなし、千人の軍勢を圧倒したという噂じゃ」

「ふーん……それを確かめるために、ギーシュとの決闘をここから見てたんですね」

 

 まさか、気付かれていたのか!?と、オスマンとコルベールの顔が強張る。

 

「使い魔の契約は、主人と使い魔のどっちかが死ぬと切れるんでしたよね?」

「えっ?は、はい……」

「……つまり、我々が()()をルイズを殺せば、イルマのルーンは消える、と言うことか?」

「「ッ!!」」

 

 二人の顔が強張る。

 使い魔が主人を殺すなど前代未聞だが、入間なら出来るだろうし、仮に出来なくても恋人たちが殺るだろう。殺されそうになっている生徒を守るのは教師の義務だ。しかし、彼女達の強さを既に察している二人からすれば、この面子と全面衝突など、考えるだけで身が震える話だ。

 そんな二人の様子に、これは好機と入間が口を開いた。

 

「……まぁ、それはあくまでも最終手段だから、今はしないよ」

 

 入間はそう言うが、二人は全く安堵できない。「最終手段」と言うことは、入間達がこれしか方法がないと判断した時、彼等は容赦なくルイズを殺すと言うことなのだ。

 

「ただし、そうして欲しくないなら、こっちの提示する条件を飲んで貰うよ」

「条件、とは?」

 

 オスマンは真剣な顔つきで条件の内容を待つ。

 

「まず一つ。僕達に対しての衣食住の保証をして貰います」

「うむ、それくらいなら幾らでも保証できる」

「それから、このルーンをルイズを殺す以外で解消する方法を、貴方達魔法学院の教師が“全力”をもって探すことです。できないなら……分かりますよね?」

「ッ!も、勿論!全力でルーンを解除する方法を探して見せよう!!」

 

 実際、彼等が何処まで本気でやってくれるのかは分からないが、ルーンの解除方法を探す手は多い方がいい。サボってるのを見かけたらその度に脅すか、ユエの恐怖の“股関スマッシュ”の刑に処してもいいだろう。

 

「それと、最後に一つ。この無銘剣虚無、これは僕に渡して貰いますよ。貴方達みたいな人達に渡しておくには危険すぎる剣なんでね」

「……うむ。君はその剣の持ち主を知っておるようじゃし、誰も扱えなかったその剣を使うことが出来る。その方がいいじゃろうな」

「そうですか。なら、僕たちからは貴方達がしたことについては不問にしておきます。他がどうなるかは分かりませんけどね」

 

 それだけ言い残すと、入間は無銘剣を手にして歩きだす。ユエ達も追従して

 

「イルマ君、これからもどうか、ミス・ヴァリエールの使い魔として彼女を支えて欲しい。君の立場は理解しているし、ワシらの身勝手なのは理解しているが……どうか、頼めるかの?」

 

 オスマンの言葉に、入間は考えるそぶりも見せずこう即答した。

 

「彼女を守るべき存在なのかどうかは僕が決める。余裕があるなら助けるけど、彼女に助ける価値がないなら容赦なく見捨てます。それだけは覚えていてください」

 

 それだけ言い残すと、入間達はさっさと部屋を出ていった。

 しばらく重苦しい沈黙が学院長室を支配していると、コルベールが口を開いた。

 

「……オールド・オスマン。彼は、大丈夫なのでしょうか」

「うぅむ……」

 

 オスマンも返答に困った。

 何せ、使い魔の男は色々と規格外すぎるのだ。使い魔なのに主を殺す危険性を孕んでいるだれが想像できようか。オスマンは入間達との会話中に密かに“ディクスト・マジック”を使って入間達の魔力を測定したのだが、この教師が束になっても足元にも及ばないレベルの魔力量を感じて、内心肝を冷やしていた。

 

(メンバーの中でも最も魔力が低いユウカという少女ですら、コルベールと同レベルなのじゃから笑えんわい。特にあのイルマという男の魔力……あんなもん、最早魔王か何かじゃ。彼だけは怒らせるわけにはいかんのぅ……)

 

 そう思った瞬間、学院長室のドアが乱暴に開け放たれた。

 二人が反射的に顔を向けると、そこには明らかに怒っている表情をした入間が立っていた。背後には、それ以上に恐ろしい形相のユエ達がいる。

 

「や、やぁイルマ君。一体どうしたのだね?今日の舞踏会には君達も参加でき……」

「この使い魔のネズミが、ユエ達の下着を覗き見してたんですけど?」

 

 オスマンの言葉を遮った入間の手には、血塗れのハツカネズミ、オスマンの使い魔であるモートソグニルが握られており、オスマンは冷や汗をかく。

 この学院長、根っからのスケベであり、自信の使い魔にロングビルを始め学院の美少女達の下着を覗かせる行為をさせていたのだが……どうやらモートソグニルは、決して覗きをしては行けない相手に覗きをしようとしてしまったらしい。

 

 その日、トリステイン魔法学院の学院長室が、入間が放った“リ・ベーラ”を皮切りに雷龍や拳、ガシャコンンブレイカーⅡ、ブレス、巨大重力球、巨大砲弾、ナイフなどが飛び交い、盛大な爆音を響かせた。

 

 入間達が今度こそ退室した後に残っていたのは、ボロ雑巾のようになったオスマンとモートソグニル、そして呆れたように頭を抱えるコルベールだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学院に設立されているダンスホールで、『フリッグの舞踏会』が開催されていた。

 

 生徒達は皆きらびやかな衣装に身を包み、パーティーを楽しんでいる。

 キュルケは男達に囲まれており、タバサは大量の料理と格闘している。ルイズはまだ到着していないらしい、姿を見ることはなかった。

 

「……」

「相棒、こんなに大盛り上がりだってのにしんみりして、どうしたんだ?」

 

 本当は舞踏会になど行く気はなかったが、ルイズに誘われた入間は隣にデルフを立て掛け、バルコニーで月を見上げていた。

 

 ドレスコードと言うことで、今の入間はいつも着ている悪魔学校(バビルス)の制服ではなく、初めて大貴族会(デビキュラム)に参加した時と同じ、紺色を基調とした正装に後ろ髪を一つに束ね、前髪の右側をオールバックにしている。

 

 キュルケを含め、貴族令嬢に何回か話しかけられた入間だが、それを全てバッサリ断り、普段ならタバサのように飛び付くであろう食事に眼を向けることはなかった。

 

「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~~~~!」

 

 その時、会場の入り口で控えていた呼び出しの衛士が大きな声を上げ、ちらりと入間な振り向くと、そこには純白のパーティドレスに身を包んだルイズが姿を見せていた。

 

 長い桃色の髪をバレッタでまとめ、肘まで届く白い手袋が彼女の高貴さを演出し、胸元の開いたドレスがつくりの小さな顔を宝石のように輝かせている。

 彼女の周りにその姿と美貌に、今まで“ゼロのルイズ”と馬鹿にしていた男子生徒達が群がり、盛んにダンスを申し込んでくるが、ルイズはどの誘いも受けず、バルコニーに立つ入間のもとに歩み寄った。

 

「ユエ達がいないけど…どうしたの?」

「着飾るのに忙しいみたいだよ」

「そう。でも以外ね。貴方が貴族なのは知ってたけど、その服いつの間に用意したの?」

「まっ、ちょっとした裏技でね」

 

 その裏技とは、イメージ通りに物を変化させる魔術“変化(チェルーシル)”の事である。服にあまり頓着のない入間は服を変化させるだけで良かったのだが、乙女であるユエ達は各々が持つ“宝物庫”に保管しているドレスに着替えるため、着替えの時間に大幅なズレが出来てしまったのだ。着替えが終わるまで待っているつもりだったのだが、ユエ達に先を促されてしまったのだ。

 

 その時、会場の入り口でざわめきが起こった。

 

 ルイズが何事かとそちらに視線を向ける。入間はある程度辺りをつけていたが、実際にそれを眼にすると、頬を赤くして硬直した。

 

 そこには、パーティードレスに身を包むユエ達の姿があった。

 

 元々、突如学院に現れた絶世の美女として生徒教師問わずで注目を集めていたユエ達である。そんな彼女達が、意中の相手を見て欲しい為に全力で着飾ったのだ。会場の主役は、ルイズ達そっちのけで完全にユエ達が主役だといわんばかりの華やかさだった。

 

 ユエは髪を上品な白い花を模した髪飾りで纏めてポニーテールにしてウェディングドレスのような純白のドレス。アメリは入間がその服装を着るならと大貴族会(デビキュラム)で初めて入間と踊った赤いドレスを着て紅い髪を編み込んでいる。髪を根元で纏めて前に垂らしているシアはムーンライト色のミニスカートドレス。髪を下ろしているミレディはスリットのはいった純白のロングドレス。ティオは体のラインが出るようなタイプのロングドレス。愛子は緑色のスレンダーラインのドレス。優花は肩が露出した赤いミニスカートドレス。チマは髪をおろして水色のカラードレス。

 

 最早、会場の視線は彼女達に釘付けである。生徒や教師達はおろか、給仕を勤めていた使用人達まで立ち止まってユエ達を凝視する始末だ。

 

 そんな彼女達に歩み寄ったのは勿論この男、入間である。

 

「……入間、お待たせ」

「全然待ってないよ。寧ろ、こんなに綺麗な姿を一番最初に見れなかったのが死ぬほど悔しい」

「……フフッ、入間を驚かせたかった♡」

 

 入間とユエはお互いに微笑み合うと、さも当たり前のように唇を重ね合わせる。会場の真ん中だった為、周囲がどよめいたが、二人はそんな声耳に入らなかった。

 

「い、イルマ……出来れば私にも……キスを……」

「公衆の面前じゃ恥ずかしいですが……私もお願いします」

「イルくん?ほら早く、ミレディさんの唇を貪っていいんだよ?ユエちゃんより濃厚なやつで」

「そうかの?寧ろ、妾はちょっと興奮するが?」

「入間くん……その、私にも……」

「い、入間……その……あぅあぅ……」

「イルマ先輩、来てください」

 

 ユエが離れた直後、ここぞとばかりにアメリ達がキスを迫ってくる。断る理由が皆無な入間はアメリ達のキスを受け入れる。優花は恥ずかしがってツンツンとした態度をとっていたので、入間が少し強引にキスをすると、優花が目を回したのは余談である。

 

 そんなこんなで、すぐに優花を起こした入間達は、ルイズのもとに集まった。ユエ達を口説こうと男連中がやって来たのだが、ユエ達に入間以外の男に興味などある筈もなく、視線すら向けない。入間が殺意を込めて睨めば、それだけで皆そそくさと逃げていった。

 

「……ん。ルイズもお待たせ」

「え、えぇ。別に良いんだけど……」

 

 ルイズの顔は真っ赤だ。理由は語るまでもないだろう。

 話題を変える意味合いも込めて咳払いをしたルイズは、真剣な表情で入間達に声をかけた。

 

「あのさ……アンタ達、魔界から来たって言ってたわよね?」

「まだ信じてないの?」

「いいえ、信じるわよ。けど、聞きたくて……やっぱり、帰りたい?」

「そうだね」

 

 返事に躊躇いは無かった。

 ルイズの表情に哀愁が帯びる。そんな彼女を知って知らずか、入間はバルコニーから見える二つの月を見ながら、言葉を続ける。

 

「この世界の住み心地が悪い、とまでは言わないよ。でも、僕にとって、帰るべき居場所は魔界(あそこ)だけなんだ。何があっても、それは変わらないんだ」

 

 心からの言葉だった。

 最初は無理矢理つれてこられた世界だったが、今ではあそここそが自分の世界だと思っている。大切な人も、思いでも沢山ある。

 

「……でも、しばらく帰れそうにないからね。それまでは、可能な範囲でフォローしてあげるよ」

「ッ!」

 

 入間の言葉に、顔を上げるルイズ。

 その時、楽士達が、小さく、流れるように音楽を奏で始め、貴族達は男女対になり、優雅に踊り始めた。

 

「折角だし……ユエ、僕たちも踊らない?」

「んっ。……喜んで」

 

 入間はユエの手を取ってダンスホールへと躍り出た。

 芸術品の如き美貌の少女とそのパートナーたる少年に注目が集まる。

 

 元々、社交界にも何度か顔を出していることからダンスの嗜みがあるユエと入間の踊りは、とても様になっている。楽しげで、幸せそうなユエの表情と、それに目元を和らげる入間の姿は、互いの衣装と相まって傍から見れば完全に二人の婚約パーティーである。

 今や、会場の主役は入間とユエであり、誰もが幸せそうにくるくると踊る二人に注目していた。

 

 一方、入間の恋人達は、これから起こることも、「次は誰だ!」と、二番手争いに躍起になっていた。

 

「……以外だった」

「何が?」

 

 ダンスを踊るなかで、ユエが声をかけてくる。

 

「……ルイズの事。認めて上げたことも、友好的に接してることも」

 

 あれで友好的とは甚だ疑問なのだが、入間をよく知るユエからすれば意外であった。ルイズが入間を召喚したばかりで彼を平民だと思っていた時期にしてきた仕打ちを考えれば、入間はとっくにルイズを殺すか見捨てるかしてるはずだ。権力を武器に威張り散らすような輩は、入間にとっては嫌悪の対象でしかないのだ。

 入間は少し考えてから、答えた。

 

「十中八九、“虚無”の系統でこの世界にとってのイレギュラーなんだろうけど、最初は興味もなかったよ。でも、少なくともここの木偶の坊よりは骨がある事は分かったからね」

 

 ギーシュや教師達を含め、この世界で出会った貴族達は、揃って魔法と権力を武器に平民達立場の弱いものを虐げるだけのどうしようもない連中ばかりだった。

 だが、ルイズは少しだけ違っていた。

 勿論、誉めるところよりも、咎めたり注意する部分の方がはるかに多い。だが、少しだけ見直せるだけのものを、ルイズは入間に見せてくれたのだ。

 

「まっ、だからと言って使い魔の役割を全うする気はないよ。ルーンが消えるか、帰る手段を見つければ、直ぐにミュウとレミアを迎えにいってから魔界に帰るよ」

「……ん。入間ならそう言うと思った」

 

 どんな選択をしても、自分は入間についていくと語りかけるように優しく微笑んでくるユエに、入間はユエへの愛おしさが込み上げてくるのを感じながら、穏やかな笑みを浮かべた。

 

「先は長そうだけど……きっと大丈夫。ユエ達がいてくれるなら、僕達は無敵だからね」

「……んっ!」

 

 やがて演奏が終わり、微笑み合いながら軽くキスを交わす二人に、貴族達から盛大な拍手が贈られる。

 

 贈られる拍手に優雅に礼を返した入間とユエは、仲睦まじく手を繋ぎながら、次のダンスを期待する仲間の元へ戻って行った。




次回予告

コルベール「アンリエッタ姫殿下が、この魔法学院に行幸なされます!」

アンリエッタ「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」

 アンリエッタ王女、登場──

ルイズ「その一件、ぜひともお任せください!」

入間「断る」

EP13「来訪者A/王女と魔王」




 感想、評価お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。