悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME   作:MTHR

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 ゼロの使い魔編ではお久しぶりです。
 最近、シンフォギアに夢中でBlu-rayを全シリーズ集めたりと熱中しすぎていてシンフォギア編ばかり書いていましたが、ゼロの使い魔編を楽しみにしてくれている方々もいるため、再び投稿しました。

 作者はこのようにかなりいい加減なので、これからもバラバラな章を投稿していきますが、どうか拾い心で読んでくれると幸いです。




EP16「意外な事態にご用心!」

 女神の杵亭の酒場で酒盛りをしていたルイズ達は、突如扉を蹴破って現れ矢を放ってくるた傭兵集団に、テーブルを盾にしながら凌いでいた。

 

「なっ!?なんなのよコイツら!?」

「おそらく貴族派に雇われた傭兵だろう」

 

 パニックに陥り叫ぶルイズをよそにワルドは険しい表情で淡々と返す。テーブルを盾にして魔法を放っているが、傭兵達は魔法の直撃をもらわないように距離を取り、弓矢を放っている。

 傭兵達は相当な手練れのようで、魔法が放たれればいち早く退避していることで、キュルケ達の魔法が当たらず、逆に彼らが盾にしているテーブルは矢が刺さって無惨な姿になっていく。

 

「“蒼天”」

 

 その時、蒼い炎が、入り口付近の傭兵達を包み込んだ。

 悲鳴を上げる間も無くその身を焼き尽くされ、物言わぬ灰と化した。

 

 炎の余波に巻き込まれた傭兵達が警戒しながら、ルイズ達が驚きながら入り口に視線を向けると、そこから最高級のビスクドールのような美容の少女、ユエが姿を現した。

 

 同時に、ユエの真横を通り抜け、赤い影が傭兵達に襲い掛かる。

 傭兵達は反応することも出来ず、身体から血の花火を上げる。

 

「見ちゃダメだ!!」

 

 ワルドがマントでルイズの目を覆う。しかし、ルイズには僅かに見えてしまい、込み上げてくる吐き気に思わず口を押さえてしまう。

 

 やがて悲鳴が収まり、ルイズ達が恐る恐る顔を上げる。そして、屍にまみれた店の惨状を目にして、その場にいる誰もが戦慄した。

 

「歯応えのない連中だったな」

「……ん。つまらない」

 

 アメリとユエは、まるでなにもしてないと言うような態度で店に入る。すると、シア、ミレディ、ティオ、チマは何でもないように、愛子と優花は表情をひきつらせながら店内に脚を運んだ。

 

「そ、その……ユエ?」

「何?」

「あの、傭兵達って……」

「……ん。つまらなすぎる相手。一秒もかからない」

 

 言外に、一秒もかけずに殺したと伝えられ、キュルケとギーシュは一気に顔を青くした。そして、再び惨殺された傭兵達を見てしまい、吐きそうになってしまう。キュルケは女としての恥じらいがあるのか何とか堪えたが、ギーシュは溜まらず嘔吐してしまう。

 そんな彼らに、ユエ達は呆れていた。これから向かうのは戦場なのだから、殺し合いになるなは必然だ。自分達が秘密裏に任務をこなす使者だったとしても、“その時”が来ないと考えるなんて楽観的すぎる。キュルケやギーシュのような反応は人として正しいが、そのような反応をするなら最初から来なければ良いとしか言いようがない。この場に置いて、戦場においての正しい感性を持っているのはタバサとワルドだけだろう。

 

「どうやら、貴族派には僕たちがここにいることがすでにバレてしまっているようだね」

「……ん。前に倒したあの人形女が来てる」

「それってまさか……土くれのフーケ!?」

「はい、今は入間さんが相手してます」

「なっ!?」

 

 ルイズはその名を聞いて、目を見開く。

 

「早く助けに行かないといけないじゃない!」

「問題ない。イルマならばそう時間をかけずに来る。だが、我々がここに滞在するのは危険だ」

「仕方がない、今すぐアルビオンへ出発することにしよう、船長には僕から説得する」

 

 ワルドの言葉にルイズが反論する。

 

「ちょっと、待ちなさいワルド!イルマをおいていくなんて……」

「大丈夫だよ、ルイズ。あれほどの実力を持つ彼なら、土くれのフーケが相手でも問題ないだろう」

「この人の言う通り、イルマ先輩はちゃちな盗人に負けません」

 

 チマはつまらなそうにワルドに同意した。

 この男に同意するのは癪だが、入間がフーケを相手にしている理由は、フーケの持つセンタイリングの回収と指輪の所在を知る為だ。それを分かっているからこそ、ユエ達はルイズの護衛のためにここにいる。

 

 納得ができていないルイズを連れ、一同は船の止めてある浅橋へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジオウに変身した入間が対峙するのは、バトルジャパンへと変身した土くれのフーケだ。バトルジャパンが振り回す槍を、ジオウはケンモードのジカンギレードで応戦する。

 

 【スーパー戦隊】とは、数多くある仮面ライダーの歴史の中にも幾つか接触・共闘・衝突の歴史としてその存在の名前があり、()()()()()()()()()()()()()()、入間はそれの知識も一通り網羅している。

 

 だからこそ、フーケが使ったアイテムの名前も能力も知っている。しかし、何故それを彼女が持っているのか。それが一番の謎だ。それを突き止めるために、ジオウは敢えてルイズ達を関わらせず、一人で相手をすることを選んでいた。

 

「おぉおおおおおっ!!!」

 

 バトルジャパンが槍を振り回す。その速度は、一流の槍使いですら戦慄する速度だ。

 

 だが、裏を返せば速度だけ。

 

 盗賊として腕っぷしも強く、身体能力も高いフーケだが、彼女の本分は魔法。槍術の心得はないに等しい。更に、折角召喚したゴーレムを操る気配すらない。目の前で戦うジオウの相手でゴーレムを操る余裕がないのかもしれないが、そんな付け焼き刃の技が、ジオウに通用する筈がない。

 

「はぁっ!!」

「ガハッ!?」

 

 体を回転させて勢いをつけたジオウの斬撃がバトルジャパンの体を切り裂き、続けて取り出した“セイバーライドウォッチ”をジカンギレードに装填する。

 

「君の指輪、もらうよ!」

 

フィニッシュタイム!

 

セイバー!ギリギリスラッシュ!!

 

 

「火炎十字斬!はぁ!!」

「ああぁああああああああああっ!!!?」

 

 刀身が炎に包まれ、ジオウの振るう一撃がバトルジャパンに炸裂する。爆発を起こしたバトルジャパンの手からテガソードが放り出され、ジオウは飛んできたそれをキャッチする。

 

「バトルフィーバーの指輪とテガソード、貰いましたよ」

 

 指輪が嵌められたままの状態のテガソードを見ながらそう呟いたジオウは、変身が解除されたフーケに歩み寄る。ゴーレムを操ろうと手にした杖をジカンギレードで撃ち抜いて破壊すると、ジオウはフーケと目を合わせた。

 

「さて……フーケさん。この短剣と指輪、何処で手に入れたのか教えて貰いましょうか?」

「フ、フフ……アタシが話すと思うのかい?」

「そうですね……四肢を幾つか砕けば、教えてくれますかね?」

「ッ!」

 

 恐ろしい台詞を平然と言ってのけるジオウに、フーケの背筋が凍る。首筋に当てたジカンギレードの刃が彼女の皮を薄く伐り、ツウッと血が流れる。その動作が、ジオウが本気であると雄弁に語っていた。

 

 

MASOUERADE

 

 

「ッ!?」

 

 その時、ジオウの周囲に、骸骨の顔面にスーツを着込んだ姿をした【マスカレイド・ドーパント】が現れる。

 

「ッ!!」

「あっ!ちょっと!!」

 

 驚いたジオウは動きを止めてしまい、フーケはジオウの腕を振りはらい、得意の身軽さでその場から離脱していった。流石盗賊というべきか、すばしっこさは中々の物で、マスカレイド・ドーパントに妨害されたジオウはフーケを取り逃がしてしまった。

 

「フーケの奴め……折角()()から力を渡されていたというのに足止めすら出来ないとはな……」

 

 そこへ、マスカレイド・ドーパントの集団の中から、一人の男が現れた。

 漆黒のマントを羽織り、地味で飾りのない暗灰色の服を着ているその姿は、闇に溶け込んでいくような雰囲気を纏っている。しかし、その顔を覆う白い仮面だけが不気味な存在感を放っている。

 

「フーケのお仲間ですか?」

「……答える必要はない。何故なら、お前にはここで死んで貰うからだ」

 

 そう言った男は、あるものを取り出した。

 銀灰色の、USBメモリを差し込むスロットのような穴が存在するバックルを腰に当てると、それが腰に巻き付く。それを見て、ジオウは舌打ちした。

 

「ガイアドライバーまで……!」

 

 仮面の男は、骨のような意匠がある不気味なUSBメモリを取り出すと、ボタンを押した。

 

 

NASCA

 

 

 仮面の男は、“ナスカメモリ”と呼ばれるそのガイアメモリを、“ガイアドライバー”と呼ばれるそのベルトに差し込んだ。

 その瞬間、仮面の男の体が黄金の光によって不規則に歪み、ナスカの地上絵を思わせる模様が刻まれた青い鎧騎士のような姿をした怪物が現れた。

 

 【ナスカ・ドーパント】と呼ばれるその怪物は、“ナスカブレード”と呼ばれる剣を手にすると、素早くルーンを唱える。

 

「エア・ニードル!!」

 

 突きだされたナスカブレードに纏われた風の槍がジオウを襲う。ジオウは持ち前の圧倒的危機回避能力と身体能力でバク宙するように回避すると、新しいライドウォッチを取り出した。

 

 

ファングジョーカー

 

 

 ジオウは“ダブルファングジョーカーライドウォッチ”のベゼルを回してライドオンスターターを押すと、ジクウドライバーに装填する。ロックを外し、ドライバーを360度回転させる。

 

 

アーマータイム!

 

FANG!ファングーッ!!

 

 

 【仮面ライダーダブル・ファングジョーカー】を模した姿に、両肩にファングメモリとジョーカーメモリを模した左右非対称の装甲を持ち、仮面に「ファング」と書かれた姿をした【仮面ライダージオウ・ダブルファングジョーカーアーマー】となったジオウは、右腕に白い刃を出現させると、ナスカ・ドーパントと交戦を開始する。

 

 ジオウの刃と、ナスカ・ドーパントの剣が火花を散らす。

 まるでフェンシングのような構えで鋭い突きを放つナスカブレードを、ジオウは野性的なファイトスタイルで応戦する。

 ナスカ・ドーパントの突きの速度は確かに速いが、直感とパワーに優れたジオウはギリギリのタイミングでそれを回避しながら反撃で刃を振り下ろす。

 

「ガァッ!!」

『ッ!』

 

 ジオウの振り下ろした刃に体を切り裂かれ、火花を散らしたナスカ・ドーパントは後退する。

 

「ッ!舐めるな!!」

 

 その瞬間、ナスカ・ドーパントの姿が消え、ジオウの装甲から火花が飛び散る。

 

「超高速……面倒な!!」

 

 ジオウはゴロゴロと地面を転がりながら立ち上がると、右腕の刃を取り外し、それをナスカ・ドーパントに向けて投擲する。

 円を描いて回転する刃を、ナスカ・ドーパントはナスカブレードで弾き飛ばす。しかし、ジオウはそれを予想していたように、姿勢を低くしてデルフを構えた。

 

 閃光のような速度で四方八方か、攻撃するナスカ・ドーパント。ジオウはデルフを盾の代わりにしてそれを防ぐが、ナスカ・ドーパントが速すぎるのか、反撃に移らない。

 

「イデッ!イデデデデデッ!?おい相棒!もっと優しく扱ってくれよ!折れちまう!!」

「……」

 

 デルフの抗議を無視したまま、ジオウはナスカブレードの攻撃を受け流し続ける。

 

 ナスカ・ドーパントは埒が明かないと感じたのか、攻撃を止めて姿を消す。逃げたのではなく、隙をついて一瞬で決めるためだと理解したジオウはデルフを構え、周囲を警戒する。

 

 その時、ナスカ・ドーパントがジオウの背後に姿を現した。

 

「エア・ニードル!!!」

 

 素早くルーンを詠唱したナスカ・ドーパントが、ナスカブレードに鋭い槍を纏わせながら突きを放つ。ジオウは振り向かない。

 

()った!!)

 

 ナスカ・ドーパントが勝利を確信する。

 そして、ジオウの背中を風の剣が貫くこうとした時──ナスカ・ドーパントの腹部に激痛が走った。

 

『なッ!?』

 

 あまりの痛みに動きを止めたナスカ・ドーパントが視線を下ろすと、腹部から火花が飛び出ている事を認識する。

 辺りを見渡すと、こちらに背中を向けたままのジオウの手には、白い牙のような刃が握られていた。

 

『ま、さか……!?』

「舐めてるのはそっちの方でしたね。まさかこんな簡単な策に引っ掛かるなんて……」

 

 ナスカ・ドーパントはジオウの真意に気付く。

 ジオウがあの刃を投擲したのは、あの場で攻撃するためではなかった。最初に投擲した刃を敢えてナスカ・ドーパントに弾かせてわざと相手にとって優位に立たせ、あの刃を意識から反らさせてから、ジオウはその刃を操り、ナスカ・ドーパントがジオウを止めをさす為に油断する隙を狙ったのだ。

 

 

フィニッシュタイム!ダブル!

 

マキシマムタイムブレーク!!

 

 

「はぁ!!」

『ぐぁあああああああああっ!!!?』

 

 ナスカ・ドーパントに背中を向けたままのジオウの右足に白い牙のような刃が出現すると、ジオウは左足を軸に回転蹴りを放つ。

 刃に切り裂かれたナスカ・ドーパントは、呆気なく爆発を起こしたかと思うと、その場にガイアドライバーとガイアメモリを残して、風のようにその体がかき消えた。

 

 人を殺した感触もなく、まるで蜃気楼のように消えたナスカ・ドーパントに違和感を覚えるジオウ。

 

「……これは?」

「ソイツは風の遍在だな、相棒。有り体にいえば分身だよ」

 

 この世界の魔法にはそこそこ知識があるデルフが説明をいれると、今度はナスカ・ドーパントが落としたガイアドライバーとガイアメモリに視線を向ける。

 

「……メモリにイニシャルがない?」

 

 砕けてばらまかれた破片を拾ってみるが、そこにはナスカメモリを象徴する『N』のイニシャルが刻まれていなかった。更に、ガイアドライバーも内部が露出し、機械部分が露になっている。

 

「なぁ~~るほどぉ。こりゃ一杯食わされたな」

「ッ!アリさん、何か分かったの?」

 

 すると、ジオウの真横に等身大のアリクレッドが現れる。

 アリクレッドは、虫眼鏡を取り出して、ジオウの手にあるガイアメモリの破片をジーッと観察していると、学者のような格好に変化しながら解説を始めた。

 

「ウム。これは俺ちんの推理では、ガイアメモリとガイアドライバーのプロトタイプだな」

「プロトタイプ……?」

「有り体に言えば試作品なんだよォ。要は、見た目がおんなじなだけなんだよ」

「だとしたら、こんな不良品でナスカのレベル2(高速移動)ができるはずがない……つまり、あの仮面の男の正体は、()()()か」

 

 戦いの最中に僅かに感じていた違和感の正体が、アリクレッドの助言によって全てのピースが繋がった。

 

「けど、何でここにあるのかはやっぱり分からないかぁ……」

 

 フーケにも逃げられ、遍在も消えた今、ユニバースリングやテガソード、そしてガイアメモリが何故ここにあるのかを知ることは出来なくなった事に、入間は落胆したようにため息をはく。

 

(バダンみたいな組織が……また現れたのかな?)

 

 かつて、自分達が激戦の末に打ち倒した悪の組織と同じ何かが、この世界で暗躍しているかもしれない。

 

 その可能性に、小型化したアリクレッドを肩に乗せたジオウは夜空に浮かぶ双月を上げながら、力強く拳を握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしてこうなるのか、アメリは頭を抱えながらこれまでのことを振り返った。

 

 バトルジャパンとなったフーケの指輪の所在を調べるために入間を残して先にアルビオンに向かい、ワルドが不足している燃料の風石の代わりに魔力を使い船を飛ばすという交渉の末にアルビオンへと向かっていったアメリ達。

 ルイズら入間を残していけないと当然の主張をしていたが、入間がフーケ程度に負けるはずはないと確信を持っているアメリ達は彼女を宥めて空の旅を満喫していると、船はアルビオンが見える位置までやって来た。

 

 しかし、そこへ空賊の船がアメリ達の乗った船を襲ってきた。船を浮かせるのに手一杯なワルドは戦うことが出来ず、武装した集団により船はあっという間に制圧され、アメリ達はルイズやワルドの姿を見て貴族だとバレて船倉に閉じ込められてしまった。

 アメリ達がいれば三秒で殲滅できたのだが、ユエ達が動くよりも速くあることに気付いたアメリが待ったをかけたのだ。

 かつて、“スカーラ”を受ける際に魔関署に協力をして数多くの犯罪魔を見てきたアメリは、空賊の違和感に気付いた。

 

 一見すると粗暴に見える空賊達だったが、その実キッチリと連携がとれていたのだ。賊であるなら多少なりとも協力することは出来るかもしれないが、なんというか…アメリには、彼等が賊というよりも、魔関署にいた統率のとれた面々を連想してしまったのだ。

 その違和感を確かめるために仲間達に少し待って貰うように頼み、船内を探ろうと“ナゲジャロイカ”を起動しようとした時、丁度見張りに来た男に向け、ルイズが……

 

「トリステイン大使としての扱いを要求するわ!」

 

 と高らかに宣言してしまい、空賊の頭領の前へと引き合わされることとなってしまったのだ。

 そして一同は軍艦の船長室に招かれ、反乱軍の一派と名乗る賊の頭に向けて、ルイズは自分達は王党派と堂々と宣言したのだ。

 正直は美徳だが、命知らずというか少し猪突猛進的すぎるルイズに、アメリは少し落ち着いて行動してほしいものだなと心の中でため息を吐いた。思い込みが激しいアザゼル家の者であるアメリなので、他の面々が聞いたら「お前が言うな」という所だろうが。

 

「大使としての扱いを要求するわ。そうじゃなかったら、一言だってあんたたちになんか口を利く者ですか」

「王党派と言ったな?」

「ええ、言ったわ」

「一体なにしにあんなとこへ行くんだ? あいつらは、明日にでも消えちまうよ、全滅さ」

「あんたたちに言うことじゃないわ!」

「貴族派に着く気は無いかね?あいつらはメイジを欲しがっている。たんまり礼金も弾んでくれるだろうさ」

「死んでも嫌よ!!」

 

 啖呵を切るルイズに、ユエ達も純粋に「凄いな」と思ってしまう。魔法も使えぬ無力な存在であるにも関わらず、圧倒的に立場が上の相手に対してここまで堂々と出来るのは素直に誇って良いだろう。

 

 すると、頭は大声で笑いだした。

 

「トリステインの貴族は、気ばかり強くってどうしようもないな。まあ、どこぞの国の恥知らず共よりも、何百倍もマシだがね」

 

 頭はそう言うと、再び笑い出して立ち上がる。ルイズ達はあまりの豹変ぶりに戸惑い、顔を見合わせた。

 

「失礼した。名乗らせて頂く。アルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官…もっとも本艦『イーグル』号しか存在しない無力な艦隊だが…」

 

 言いながら、頭はカツラと眼帯を取り付け、着け髭を剥ぎとると、堂々と名乗った。

 

「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・デューダーだ」

 

 それを見たルイズ、キュルケ、ギーシュ、シア、愛子、優花はポカーンと口をあけて呆然とし、アメリ、ミレディ、ティオ、ワルドは興味深そうに皇太子を見据えていた。一方で、ユエとチマは無関心な様子であった。

 

「その顔だと何故空賊風情に身をやつしているのか?というところか。敵の補給線を断つのは戦いの基本だ。それに奪った物資がこちらの補給物資にもなる。空賊を装ったゲリラ活動というところかな。まだ信じられないかな?これが証拠だ、我が王家に伝わる風のルビーだ」

 

 依然として呆けているルイズに説明するように笑いながら、ウェールズは“風のルビー”と呼ばれる指輪を見せるが、こんな所で目的の人物に会えると思っておらず、呆然としているルイズに代わり、ワルドが口を開いた。

 

「トリステイン王国魔法衛士隊、グフィフォン隊隊長ワルド子爵。アンリエッタ姫殿下より密書を言付かって参りました。そしてこちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢とその友人アンハルツ・ツェルプストー嬢にございます」

「はっ!こ、これが姫様より預かった手紙と水のルビーです!」

 

 ようやく我に返ったルイズがウェールズに手紙と水のルビーを手渡す。

 ウェールズがそれを受け取ると自身が身につけていた風のルビーを近付け虹色の光が部屋の中に振りまかれた。

 その時、

 

バゴォオオオンッ!!

 

 天井をぶち破りながら白い影が舞い降りた。

 一同が目を見開く中、その白い影が腰に巻かれたベルトから何かを取り外すと、そのシルエットが光に包まれて変化し、青い人影となった時、煙が晴れて、その全容が露になった。

 

「い、イルマ!!?」

「お待たせ~っていいたいけど、どういう状況なの?」

 

 ルイズの使い魔──入間の登場に、ルイズは思わずすっとんきょうな声を上げ、入間は部屋の中を見渡してから、首をかしげてルイズに問いかけたのだった。 





次回予告

ウェールズ「この通り、確かに返却したぞ」

ルイズ「どうして、どうして死を選ぶの?」

 死を覚悟した皇太子(ウェールズ)──

ワルド「明日、僕はルイズと結婚する」

ユエ「……キナ臭い」

 ワルドの真意は──

入間「よし、行こう!」

EP17「そして動き出す」



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