悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME   作:MTHR

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 早めに書き終わったので投稿します。


EP17「そして動き出す」

 入間が船に乗り込んで合流した事で、一同はニューカッスルの王党派しか知らない秘密の軍港から城の中へと入っていった。

 アンリエッタから授かっている手紙をウェールズに渡し、彼女から貰った手紙を返す事になったのだが、それはニューカッスル城にあるというわけで、こうして向かっている途中なのである。

 

 雲に隠れつつ大陸の下を潜り込むように進路を取る。制空権は反乱軍旗艦『レキシントン』が押さえており、この船『イーグル』号ではどうにもならないらしい。

 

「あの艦の反乱が全てが始まった。我々にとって因縁の艦さ…。このまま雲の中を進み、大陸の下からニューカッスルに近付く。そこに我々しか知らない秘密の港がある」

 

 その言葉どおり大陸の下には直径300メイル程の穴が開いている場所がありそこを垂直に昇っていく。

 しばらく昇ると白い光るコケに覆われた鍾乳洞に出る。

 これが港らしく、舫いの縄が飛び、岸壁に引き寄せられるようにして係留され木でできたタラップが取り付けられ、入間達は船を降りた。

 

「喜べ、パリー、硫黄だ!」

「おお!硫黄ですと!火の秘薬ではござらぬか!これで我々の名誉も守られるというものですな!」

 

 ウェールズは【パリー】と呼ばれた老兵メイジと話をしていた。

 

「先の陛下よりお仕えして数十年……こんな嬉しい日はありませぬぞ。反乱が起こってからは苦渋を舐めっぱなしでありましたが、これだけの硫黄があれば……」

「ああ、王家の誇りと名誉を、叛徒共に示しつつ、敗北することができるだろう」

 

 ウェールズの言葉に、パリーと他の一味は歓声を上げた。

 皆、負けることが分かっていると知りながら笑顔で談笑している。そんな光景は、平穏な日々を過ごしてきたルイズにとっては異様に見えて仕方がなかった。

 

「負けることがわかっているのに戦うの?」

「……らしいね」

「死ぬ…んだよね?」

「それが戦争だよ」

「どうして…?」

 

 ルイズの言葉に、入間は対して興味がなさそうに答える。

 やがてルイズ達はウェールズに付き従い、城内の彼の居室へと向かった。キュルケとタバサ、ユエ達は別室へと案内されている。

 

 ウェールズは机の椅子に腰かけると、机の引き出しを開け、宝箱の様に装飾された小箱を取り出した。が首に下げていたネックレスを外すと、その先に付いていた鍵を小箱の鍵穴に差し込み、その小箱を開ける。

 

「宝箱でね」

 

 そう言いながらその中から何度も読まれたと伺わせるボロボロの手紙を取り出した。幾百と読まれてきたであろう手紙をもう一度だけ読むと、手紙を丁寧にたたみ、封筒に入れルイズに手渡した。

 

「これが姫からいただいた手紙だ。この通り、確かに返却したぞ」

「ありがとうございます」

「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル号』がここを発つ。それに乗ってトリステインに帰りなさい」

 

 ルイズがその手紙を食い入るように見ていたが、やがて意を決したかのように口を開いた。

 

「あの……殿下…。王軍に勝ち目はないのでしょうか?」

「我が軍は三百。それに対する敵軍は五万。勝つ可能性など万に一つもありはしないさ。我々にできる事は勇敢な死に様を連中に見せつけるだけのことだ」

「殿下の討ち死にされる様も、その中には含まれるのですか?」

「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」

 

 その言葉を聞いて、ルイズは深々と頭を下げた。

 

「……殿下、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」

「なんなりと申してみよ」

「この任務をわたくしに仰せつけられた際の姫様のご様子…そして先ほどの小箱の内蓋の姫様の肖像手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔といい……もしや、姫様とウェールズ皇太子殿下は………」

「恋仲であったと、言いたいのかね?」

「そう想像いたしました。とんだご無礼を、お許しください。してみるとこの手紙の内容とやらは……」

「恋文だよ。君が想像しているとおりにね。彼女が始祖ブリミルの名において永久の愛を私に誓っているものだ。この手紙が白日の下に晒されればゲルマニアの皇帝は重婚の罪を犯した姫との結婚を破棄し、同盟は成り立たなくなり一国で貴族派に立ち向かわなくてはなくなる」

「殿下!亡命なされませ!トリステインに亡命なされませ!」

 

 掴みかからんばかりの勢いでウェールズに懇願するルイズ。ワルドが隣に歩み寄りルイズの肩に手を当てるがそれでも収まらない。

 

「殿下、姫様は多分、手紙の一文に亡命することをお勧めになっているはずです!あの姫様が、ご自分の愛した人を見捨てるはずがございませんわ。おっしゃってくださいな、殿下!!」

「その様な事は、一文も書かれていない」

「殿下!」

「私は王族だ。嘘はつかぬ。姫と私の名誉に誓って言うが、本当にそのような文句はない」

 

 そう言ったウェールズの表情は苦しそうだった。その口ぶりから、ルイズの指摘が当たっていたことがうかがえた。それを見てルイズは肩を落とす。

 

 ウェールズが自分が亡命すれば、反乱軍にトリステインを攻撃する絶好の口実を与える事になる。そして、アンリエッタが国事よりも私情を優先させる女と見られるのを避けようとしているのだ。

 

「ラ・ヴァリエール嬢、君は正直な、いい子だ。だが忠告しよう。そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかりなさい」

 

 寂しそうに俯くルイズに、ウェールズは彼女を安心させるように微笑んだ。

 

「そろそろ、パーティーの時間だ。君達は我らの王国が迎える最後の客だ。是非とも出席してほしい」

 

 ルイズ達は部屋の外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティは城のホールで行われた。

 玉座には年老いたアルビオン王【ジェームズ一世】が腰掛け、ウェールズがその脇に控える。

 

「諸君!今宵はよき日である!重なりし月は、始祖からの祝福の調べである!よく、飲み、食べ、踊り、楽しもうではないか!」

 

 明日で自分たちは滅びるというのに、ずいぶんと華やかで賑やかな宴であった。

 キュルケとギーシュはパーティという事もありそれなりに楽しみ、タバサは料理を食べ進めている中、ルイズはどこか暗い表情をしながら椅子に腰かけていた。

 

 入間一行もまた、普段の服装のままではあるが、豪勢な料理に舌鼓をうっていた。

 

「300対5万ですかぁ。不謹慎なのは分かってますけど、まず勝ち目はないですねぇ」

「それでもやらねばならぬのじゃろう。あの者達にも誇りがあるのじゃ」

「……入間、何とか出来ない?」

 

 優花は不安げな表情で入間を見る。しかし、入間は首を横にふった。

 

「……残念だけど、今回の件に僕は干渉することはない」

 

 入間達なら、5万の大軍を全滅させるなど簡単だろう。

 だが、入間達はこのハルケギニアの人間でもないし、この国の問題には何の関係もない。

 鈴木入間は、戦いの中で数えきれない程の命を奪った。魔力だけではない、人間の自由を守る偉大な仮面ライダーの力で。それは、自分達にとってかけ替えのない物を守る為。

 後悔はしていないし、これからも何かを守るためならそうするだろう。

 だが、戦争は違う。

 トータスで戦争を経験した入間は、戦争は一つ視点を変えるだけで善悪が180度変わる事を知っている。

 だからこそ、入間は明確な意思もなく戦争に干渉しないのだ。守る者もないのに、“戦争”というだけで大勢の命を奪えば、決定的な何かが壊れてしまうと思うからだ。

 

 ユエ達も入間の意見と同じであり、トータスでの日々を思いだした優花は落ち込んだ様子で引き下がった。

 

「やぁ、君は確かヴァリエール嬢の使い魔君だったかな?」

 

 すると、ウェールズがワイングラスを片手にやって来た。

 

「どうだい、楽しんでいるかい?」

「まぁ、暇潰し程度には」

「ハハッ、まぁ、大いに楽しんでくれたまえよ。これが我々にとっては最後の晩餐だからね」

 

 その言葉を聞いて、入間は渋々とワインを取って喉を潤す。

 酒はあまり好きではないのだが、成人する年齢層が低いこの世界では未成年のルイズでもワインを嗜んでいるので、このパーティーに置かれているのも酒が多い。

 

「それにしても……負け戦を前にしてこんなに騒ぐんですね」

「……確かに我々にはもう力は残っていない、だがそれでも守るべきものがある」

「誇り、ですか?」

「それもあるが……我々の敵である『レコン・キスタ』はハルケギニア統一をしようとしている。『聖地』を取り戻すという理想を掲げてな。理想を掲げるのはいい。だが奴等はその過程で流されるであろう民草の血を考えず、荒廃するであろう国土の事を考えていない。だからこそ勝てずとも、勇気と名誉の片鱗を見せつけハルケギニアの王家は弱敵ではないと示さねばならぬ。奴等がそれで『統一』と『聖地の回復』という野望を捨てるとも思えぬが……それでも我々が先立ち勇気を示さねばならぬ」

「勇気ですか……それは大事なものかもしれませんが、相手は見向きもしないでしょうね。歴史は常に勝者が作り出すものです」

「厳しいことを言うね。だが、それでも我々はやらねばならないのだ」

 

 そこまで聞くと、入間は手にしていた皿の料理を平らげ、その場を後にし、ユエ達もそれに続いていく。

 

 すると、入間達の前に立ち塞がるようにワルドが姿を現した。

 

「……なにか?」

「君達に言っておかねばならない事がある。明日、僕はルイズと結婚する」

「「嘘ッ!?」」

「ほへぇ~、まさかの結婚ですかぁ。ルイズさんも思いきりましたねぇ」

「でも、よかったじゃん」

 

 思わず優花と愛子が声を上げた。シアとミレディも驚いているようだが、すぐに祝福の声を上げた。

 しかし、入間、ユエ、アメリ、ティオ、チマはその言葉に違和感を感じているのか、疑うような目でジーッとワルドを見ており、入間は代表して口を開いた。

 

「明日には任務から帰るのに、態々戦場になり得る場所で結婚ですか?」

「あぁ、是非とも僕達の婚姻の媒酌をあの勇敢なウェールズ皇太子にお願いしたくなってね。皇太子も快く引き受けて下さった。君にも是非出席してもらいたいのだが……仮に出席してしまうと君が帰還するための手段がなくなってしまうんだ」

「そうですか。けど、生憎僕達は少しやることがあるので全員では無理ですね」

「そうなのかい?ならば君は明日の朝、すぐに船で発ちたまえ。僕とルイズはグリフォンで帰る。滑空すれば問題なくトリステインまでたどり着けるさ」

「……そうですか」

 

 そう言うや否や、入間はワルドの横を通りすぎ、ユエ達も続いていく。

 やがて、ワルドの気配が遠くなったのを感じ取ると、入間はポツリとユエ達に問い掛けた。

 

「どう思う?」

「……キナ臭い」

「そうじゃあ、ハッキリ言えば怪しすぎるのじゃ」

 

 公爵家の令嬢であるルイズの婚礼となれば、トリステインにとっても大きなニュースだ。なのに、親も呼ばずに戦場のど真ん中で結婚なんて常識的ではない。

 そう考えていると、入間達は部屋にたどり付く。

 そこそこ広い部屋の中で入間達が寛いでいると、部屋の扉が開き、ルイズがやって来た。すると、入間の背中に顔を埋めた。

 

「いやだわ……、あの人たち……どうして、どうして死を選ぶの?訳わかんない。姫様が逃げてって言っているのに……恋人が逃げてって言っているのに、どうしてウェールズ皇太子は死を選ぶの?」

「……君と同じなんじゃないかな?」

「えっ?」

 

 入間の静かな言葉に、ルイズは顔を上げる。

 しかし入間はルイズを見ようとせず、背を向けたまま答える。

 

「フーケの討伐の時に、君は言ってたでしょ?敵に背中を見せないものを真の貴族と呼ぶってさ。それと同じで、自分の名誉と誇りのために、背中を見せないんだよ」

 

 そして、自分には理解できない事なんだろうなと心の中で呟く。

 

「……敵に後ろを見せないのも、名誉と誇りのために戦うのも分かるわ。……でも、だからって……!」

 

 ルイズも入間の言葉を聞いて、僅かに思い悩んだ表情で答える。

 真の貴族としての姿、そしてそれを体現したように背中を見せないウェールズ。しかし、親友であるアンリエッタの事を思えば、どうしてもそれを正しいと思えない。そんな葛藤がルイズの中に渦巻いているのだろう。

 

 入間はルイズを慰めはしない。

 だが、振り払う事もせず、ただルイズに背中を向けながら、窓の外から見える双月を眺めていた。

 

 

 

 

 

 人間界の時間帯で午後の11時程。

 ルイズは儲けられた部屋へと戻り、ギーシュ達も寝静まった頃、入間達は窓の外に“キャプテンゴースト”と呼ばれる船が滞空していた。

 入間、ユエ、アメリ、シア、ミレディ、ティオはキャプテンゴーストに乗り込み、窓の外から自分たちを見つめる仲間達に視線を向けた。

 

「それじゃあ皆。あとは頼んだよ」

「はい、気を付けてください」

「ミュウちゃんの事、ちゃんと連れて帰ってきなさいよ」

「イルマ先輩なら大丈夫です!」

 

 これから入間達は完全なる私用でこの場を離れるのだ。ルイズ達の護衛はは続行する必要があるため、この三人はルイズの護衛として残しておくこととなっているのだ。勿論、彼女達でも対処しきれなくなった時には、空間魔法で転移すれば良い。

 

「よし、行こう!」

 

 “導越の羅針盤”を手にした入間の言葉と共に、キャプテンゴーストは空に向かって飛び上がる。

 彼等が目指すのは、この世界に迷い込んだ二人の海人族の二人の母娘のもとであった。




次回予告

ミュウ「パパぁ!!」

レミア「会いたかったです。アナタ……」

 再開する(ミュウ)(レミア)──

ティファニア「ミュウちゃんのお父さんなんですね」

ミレディ「ナニ、アノ胸……」

 ミュウの主人は森の妖精(ハーフエルフ)!?

入間「ミュウのしたいことをすれば良いよ」

ゴーカイレッド「ド派手に行くぜ!なの!!」

EP18「森の妖精と海人族」
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