悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME 作:MTHR
キャラ崩壊などが多いと思われますが、少しでも楽しんで貰えると幸いです。
Chapter 1 「The FIRST Stage」
ドサッ
身体が揺れる感覚と、頭部に走った痛みに目を覚ます。
「っ!んぅ……うぅ~ん……」
ジンジンと痛む頭を抑えながら、青い髪の少年──鈴木入間は身体を起き上がらせる。
目をゆっくりと明けると──そこに広がっていたのは、清潔感のある空間だった。白を基調とし、モダンなデザインのその部屋には、大きめのテーブルやテレビ、更にはソファーと家具も備えられている。テレビのとなりには大きめの鏡、壁際にはグランドピアノ、そして壁には銀色の斧が飾られていた。
そして、ここにいるのは、入間一人だけではなかった。
「んっ……あぁ~……」
ソファーに座るような姿勢で寝ていた、目付きの悪いジャージ服を着た少年が目を覚ます。入間は慌てて、その少年に掛け寄った。
「あのっ!大丈夫ですか!?」
「あ?あぁ。問題な……って、何だここはぁーーーッ!!?」
少年は目を開けると同時に、辺りの部屋を見渡して叫び声をあげる。
その声を耳にして、ソファーや椅子で眠っていた面々も目を覚まし、自分達がいる場所を見て、驚きを露にした。
「僕、確かアズくんやクララとアイス食べてた筈だけど……?」
入間は数時間前の記憶を探りながら呟く。周りからも困惑の声が聞こえてくるなか、一人の女性が立ち上がった。
「ここって……マリア姉さん!マムッ!」
茶色の髪に蝶のような髪飾りをした少女は、不安げな声と共に目を見開くと、座っていた椅子から飛び上がり、小走りにテラスに続く扉を開ける。
そこに広がっていたのは、一面に広がる海だった。港も船も見当たらない、どもまでも続く青い海と、灰色の雲に包まれた空、そして館を囲うように広がる草原と森だけが、彼らの視界を埋め尽くしていた。
「ここって、一体……!?」
他のメンバーと共に窓の外の光景を目にした入間が呆然と呟く。
その時、部屋に備え付けられていた鏡に、一つの存在が映し出された。
白い身体に黄金の装飾を身に付けたその存在は、静かに、不気味に、館に招かれたもの達を見つめていた。
30分後。
館の周囲を散策し終えた一同は、最初に目を覚ましたホールに集まり、椅子に腰掛けながら沈黙していた。場の空気は、まるで鉛のようにどんよりと重い。
テーブルに手を乗せて沈黙を保っていた入間は、やがてその空気を少しでも和らげたくなったのか、椅子から立ち上がり、一同に向けて声をかけた。
「取りあえず、分かっているのは……この館には僕達8人しかいない。そして、誰も携帯を持ってないし、この館には電話もないって事ですね」
そこまで言ったところで、再び全員の間に沈黙が走る。入間が口にした情報により、改めて自分達が閉じ込められたことを実感したのだ。
入間もそれに気付いたのか、気まずそうな表情で椅子に座り直した時、ジャージを着た少年が突如として立ち上がった。
「よしっ!なら次は、お互いの自己紹介だな!」
突然こんなところに放り込まれたとは思えない、やけに明るい態度に入間達が面食らう。そんな周囲の空気を知ったのか知らないのか、少年は親指を立てながら名乗りあげた。
「俺の名前はナツキ・スバル!無知蒙昧にして、天下不滅の無一文!よろしくな!!」
少年──スバルの自己紹介により、ホールに沈黙が走る。しかし、スバルは動じていない。どれだけ強靭なメンタルをしているのだろうか?
そこで、今度は入間が立ち上がり、スバルに続くように名乗りをあげた。
「じゃあ、僕は鈴木入間。とある学校の、普通の学生です……」
入間の名乗りを聞くと、他の6人もお互いの顔を見合わせたあと、次々と名乗りをあげた。
「では、次は私が。とある温泉旅館に住んでいる、湯ノ花幽奈と申します」
腰まで届く白髪に、なぜか三角巾をつけた少女──幽奈が微笑みながら名乗る。
「えぇっと……セレナ・カデンツァヴナ・イヴ……施設暮らしです」
先程部屋から飛び出そうとした少女──セレナが、不安げな表情と声色で声をあげる。
「私は月影ゆり。私立明堂学園高等部の2年生よ」
紫色の淡いロングヘアに青いヘアピンをつけた眼鏡の少女──ゆりが、凛とした態度で答える。
「私は、ジャン・コルベール。魔法学院で教師をしている者だ」
スキンヘッドのメガネを掛けた中年の男──コルベールが、動じていないような態度でそう名乗る。しかし、彼が発した単語に、入間達は揃って首をかしげていた。
「俺は天之河光輝。皆、安心してくれ!ここが何処であろうと、きっと道がある筈だ!俺が君たちのことを、必ず家に帰してみせる!!」
すると、今度は青いブレザーを着た少年が立ち上がりながら拳を握りしめる。
その時、ガタンッ!と大きな音が響き渡り、一同の視線がそちらに向けられると、そこには頬に刺繍が入れられた男が、近くにあった椅子を蹴り飛ばしていた。
「くっだらねぇ!名前なんかなのって何になるってんだよ!!」
「おいおい、にーちゃん。大人げないだろ」
「ちょっと、落ち着いてください……」
再び近くにあったタンスに蹴りを入れる刺繍の男の姿に、流石に見かねたスバルと入間が止めにはいろうとする。
その時、広間に置かれていたテレビの電源が突如としてつけられ、テレビの画面に映像が映し出された。
『ようこそ諸君、君達はこの虚の館に招かれた幸運の持ち主だ』
そこに映し出されたのは、白を基調とした衣服にベレー帽を被り、顔には泣いているようにも怒っているようにも見える異様な仮面で顔を隠した男だった。
「な、なんだこのマジックアイテムは!?」
「訳わかんねぇ……どうなってんだ!?」
「何をそんなに驚いているの…?」
「マジックアイテムって、ただのテレビじゃないか」
それを見て、コルベールと刺繍の男が驚きを露にする。まるで、テレビを見たことがないような反応だ。ゆりや光輝が疑問を口にした時、テレビに映る男は腕を広げながら言葉を並べる。
『では、ルールの説明をしよう。君達にはこれから、王を選出するためのゲームに参加してもらう。このゲームの勝者には、この世界の王になれるだろう』
「あぁッ!?何を訳の分からねぇ事言ってんだよ!!」
『ファーストステージは、“椅子取りゲーム”。ルールは簡単、この館の中から各人一人ずつ、館内の椅子を集めるゲームだ。ただし、この広間の椅子は対象外だ。では、健闘を祈るよ候補者諸君』
白服の男がそう言ったその瞬間、テレビの画面が消え、広間に異様な沈黙が走る。
「アイツが俺たちをここに誘拐したのか……」
「チッ!馬鹿馬鹿しい!誰がこんなアホみてぇな事やるかよ!!」
刺繍の男はそう言うと、ドカッと椅子に行儀悪く座る。
「どうすんだよ、入間」
「……ここは、指示通り椅子を探してみた方がいいんじゃ……」
スバルの問いに、入間はしばらく考え込んだあとにそう提案する。
「手がかりがなにもない以上、今出来るのはそれだけだな」
「は、早く探しましょう!!」
コルベールの言葉に、幽奈が慌てながら部屋を飛び出す。コルベール、セレナ、ゆり、スバル、光輝、入間も部屋を抜け、椅子を探し出した。
「これも……椅子だよな」
二回に続く階段を駆け上がろうとした光輝は、植木鉢を乗せてある小さな丸椅子を見つけて、植木鉢を退かしてその椅子を手に取った。
「あった…!」
簡素なテーブルが真ん中に置かれた部屋のなかで、入間はアームレスチェアを見つけて、それを持ち上げた。
「ありました~」
幽奈は浴室に置かれたバスタブの中に置かれた白いバスチェアを見つけてそれを手に取り、安堵のため息を吐いた。
「これだな……」
「ちょうどよく二つあったわね」
中庭に置かれた二つの椅子を見つけて、ゆりとコルベールはその椅子を持ち上げ、広間に向かって歩き出した。
一方、スバルは屋敷の中をくまなく探していたが、椅子はなかなか見つからなかった。そんな時、白い椅子を持ったセレナが声をかけた。
「スバルさん」
「おう、セレナ。悪ぃーな、今ちょっと椅子が見当たらなくて……」
「いえ、私二つ見つけたから、これを使ってください」
「マジかっ!?サンキュー、セレナ!!」
セレナが差し出した椅子を見て、スバルは満面の笑みで礼を言った。
程無くして、椅子を見つけ出した入間達は最初にいた広間に戻り、各々が見つけ出した椅子を並べていくと、刺繍の男はそんな入間達の姿をみて、鼻をならした。
「ハッ。お前ら、よくそんなこと出来るよなぁ?そんなことより、喉が渇いた!お茶でも見つけられなかったのか!?」
「そんなことを言うんじゃない!皆だって真剣なんだ!大体、お前はさっきからそんな態度ばかり取って恥ずかしくないのか!?」
「あぁっ!?なんだとこのガキッ!!!」
刺繍の男の態度に、光輝が目をつり上げながら叱咤すると、刺繍の男はそれに激昂し、椅子を蹴飛ばしながら立ち上がって光輝に殴りかかろうとする。
その時、ブザーの音が広間に響き渡り、刺繍の男が動きを止め、入間達の視線がテレビに向けられた時、再びテレビの画面に、あの仮面の男が映し出された。
『時間になったようだ。制限時間内に全ての椅子を手にすることが出来た諸君に拍手を送ろう!……だが、全員ではなかったようだ』
テレビに映る男が、刺繍の男に指を向ける。男が不機嫌そうにテレビに向かって詰め寄ろうとした時、画面に映る男は方手を上げた。
『残念だが、敗者には罰を受けてもらう。それでは、執行といこう』
パチンッ
指を鳴らす音が、広間に響き渡る。
その瞬間、テレビの前に、何の前触れもなく、漆黒の靄が現れた。
入間達が驚きを露にする間もなく、その靄に瞳のような紋章が浮かび上がると、闇が収束していく。
靄が晴れていき、その仮面の戦士は姿を現した。
漆黒の身体に、骨を連想させる純白のラインを持ち、白と黒のパーカーを羽織り、白い顔には一本の角と、燃える炎のような複眼を持つ戦士だった。
「「きゃあああああっ!!!?」」
「なっ!?なんだアイツは!?」
「ッ!」
幽奈とセレナの悲鳴や、光輝の混乱の声が響き渡る。
コルベールは杖を、ゆりは容器のようなアイテムをとりだすなか、白い顔の戦士──仮面ライダーダークゴーストはゆっくりとフードを脱ぎ、顔を上げる。その視線の先にいたのは、刺繍の男だ。
「な、なんだよっ!?何なんだよぉっ!!?」
ダークゴーストから放たれる異様な空気と殺気に、男は怯えたように後ずさる。しかし、ダークゴーストはゆっくり一歩ずつ、その男に歩み寄ってくる。
「ヒ、ヒィィィィッ!!!?」
「ッ!待ちなさい!!」
男はゆりの制止にも耳を貸さずに溜まらず逃げ出し、ダークゴーストは入間達には目もくれず、男を追いかける。
館を飛び出し、一刻も早く逃げようと館から離れていく。その時、上空からダークゴーストが降り立ち、男の退路を塞いだ。
「ヒィッ!く、来るなっ!化物ぉっ!!」
尻餅をついた男の声を無視して、ダークゴーストは腰に巻かれた“ゴーストドライバー”から“ガンガンセイバー”を出現させ手に取ると、その刃を男に突き刺した。
「ガッ!?」
刃が突き刺さった腹部から血が溢れ出す。
男の身体がビクンと震えて倒れると、男は糸が切れた操り人形のように動かなくなった。
『……』
ダークゴーストは男がこと切れたのを確認すると、踵を返して歩き出す。
すると、館から入間達が飛び出した。彼らは男に駆け寄り、血の池に倒れる男に顔を青くしていると、コルベールが男の脈を取った。
「……死んでいる」
「ヒッ!?」
「……ッ」
コルベールから告げられた言葉に、一同の顔色が青くなる。彼等の大半は年端もいかない少年少女。目の前で惨めに人が殺される光景を目にして、平常心を保っていられる筈がなかった。
洋館が建てられた島を包む海の波が、激しく海岸に打ち付けられた。
夜。
広間に集まった入間達に、重い沈黙がのし掛かる。
入間は、いつの間にか用意されていた紅茶を口に含み、カップの中身を一瞬で空にすると、カップを置いてポツリと呟いた。
「このゲームを仕掛けた相手は本気だ。僕達が最後の一人になるまで、こんな馬鹿げた種目を繰り返す気なんだ……」
「けどよ、何のためにこんなことを!?」
「酷いよ、こんなの……」
スバル、セレナが各々の思いを口にする。ゆり、幽奈、コルベールもまた同じ思いだったのか、口を固く結ぶと、光輝が立ち上がった。
「許せない……人の命をゲームみたいに奪うなんて!皆、ここは俺達の力を合わせて、この事件の犯人を見つけるんだ!!」
その時、テレビの電源がつけられ、そこにあの仮面男の顔が通しだされた。一同の視線がテレビに向けられるなか、仮面の男は軽い口調で口を開いた。
『やぁ、諸君。ティータイムは楽しんでいただけたかな?』
「ふざけたことを言わないで!!」
テレビに映った男の台詞に、ゆりが一括をいれる。人をこんな場所に連れ去り、挙げ句の果てにはゲームなどと言う遊戯感覚で人の命を奪う非道な相手のやり口に、彼女も冷静に見えて腹に据えかねていた。
しかし、
『次のゲームは、“花摘ゲーム”だ。ルールは先程と同じ、10分以内に各人、この館の何処かに咲いている花を一輪ずつ持って、テーブルの上にある瓶を彩ってくれ。因みに、このゲームは不参加者にも罰が下されるということを覚えておくといい。それでは、健闘を祈ろう』
その瞬間、テレビの画面が切り替わり、タイマーが表示される。
「これって、参加しなかったらさっきみたいになんのか!?」
「で、でもどうしたら!!」
参加しなければ殺され、脱落したら殺される。逃げ道のない状況にスバルが悲鳴をあげ、幽奈やセレナが頭を抱えるなか、ゆりは決然とした表情で口を開けた。
「やりましょう」
「なっ!?何を言ってるんだ!?そんなバカな遊びに参加する必要なんて──」
「いや、ユリくんの言う通りだ。今はこのゲームの指示に従わなければ、また新たな犠牲者が出ることになる!」
光輝の言葉をコルベールが遮る。その瞬間、一同はすぐさま部屋を飛び出した。
セレナは中庭を探し、何処にも花が咲いていない事を確認し終えたあと、直ぐに館内に飛び込んで花を探したが、館内の何処を探しても、何処にも花を見つけることは出来なかった。
「ない……花……花……何処にも……ッ!?」
既に制限時間は終わりに近付いている。セレナの顔に焦りが現れ始めた時、彼女の肩をポンポンと軽く叩いた存在がいた。
「ゆ、ゆりさん……」
振り返ったセレナの前にいたのは、真剣な表情をしたゆりだった。
ゆりは自分が館内で見つけ出した花──クロユリに視線を落とした後、セレナにその花を差し出した。
「これを使いなさい」
「えっ!?でも、これは……」
「いいから使いなさい!!」
ゆりは押し付けるように、クロユリをセレナに手渡す。
「……ッ!」
それを見たセレナはクロユリを握りしめて、広間に向かって走り出した。
広間に集まった入間達は、各々が見つけた花を、テーブルに乗せられた花瓶の中に差し込む。
その瞬間、テレビの数字がゼロとなり、テレビに仮面の男が映し出された。
『おめでとう。無事にこのテーブルに花を飾ってくれた君達は見事、合格となった。では、敗者には罰を与えるとしよう』
その瞬間、男がならした指の音が、館内に響き渡る。
部屋の中には変化がない。何故なら、それはこのゲームの脱落者──ゆりの姿が、何処にもないからだ。
「っ!ゆりさんっ!!!」
「っ!?セレナさんっ!!?」
「ちょっ、何処に行くの!?」
罪悪感に押し潰されそうだったセレナは、我慢することが出来ずに席を立ち、ゆりから花を受け取った部屋に向かって走り出す。入間と幽奈は、その後を追って部屋を飛び出した。
セレナにクロユリを押し付けてから、ゆりはその部屋を動く事はなかった。
花を探しもせず、まるで何かを待っているように佇んでいたゆりは、ある地点に向けて鋭い視線を無ける。その先にあったのは、何の変哲もない立て鏡が置かれている。
その時、鏡の鏡面がまるで波打つように歪み、波紋が広がっていく。やがて、鏡面に黒い影が現れると、その黒い影が飛び出し、ゆりの前に姿を現すと、ゆりの目が大きく見開かれた。
「さっきとは違う、敵……!?」
そして目の前に現れたのは、ゆりの予想と大きくかけ離れた存在だった。
全身を漆黒のスーツで包み込み、黒い鎧を装着している。顔はスリットの入った騎士のような造形の仮面で覆われている。左腕には竜を模したガンレッドを装備し、仮面に額部分には禍々しい龍の紋章が刻まれ、腰のベルトにも同じ模様が施された箱が装着されていた。
漆黒の騎士──仮面ライダーリュウガは、ゆりを見据えてゆっくりと歩きだし、拳を握りしめた。その殺気は、ダークゴーストに酷似していた。
「…そう、貴方が第二ステージの処刑人と言うわけね。だけど、私は貴方に屈するつもりはない!!」
そう言うと、ゆりは容器のようなアイテム──“ココロポット”と、欠けた紫色の宝石のような物を取り出した。
ココロポットの下部にあるポットが消失すると、その光が宝石に集まり、“プリキュアの種”として形成される。
「プリキュア!オープンマイハート!!」
眼鏡が消え、薄紫色に輝くワンピース姿となったゆりはプリキュアの種を、蓋を開いたココロポットにセットする。ダイヤルを回し、ゆりは姿を変えた。
白と紫のバラに包まれながら、ゆりの服装は銀色のワンピースのようなコスチュームに変わり、脚にはハイヒールブーツ、右腕には青色の長手袋が着用される。
ココロポットの蓋が左肩に装着されエンブレムに変化し、薄紫色に変化した髪を靡かせながら、ゆりが前髪を撫でると、その前髪が三日月のように尖る。
姿を変えたゆりは、手を重ねて花のように開きながら、驚きを露にして動きを止めたリュウガに向けて名乗りを上げた。
「月光に冴える一輪の花!キュアムーンライト!!」
ゆり──キュアムーンライトの名乗りに驚いて動きが止まっていたリュウガは、直ぐに意識を切り替えると、拳を握りしめ、キュアムーンライトに向けて拳を突きだす。
「はぁっ!!」
ムーンライトは、その拳を見切り、僅かな動作で回避すると、カウンターで自身も拳を繰り出す。
しかし、リュウガは顔面に当たる直前に、ムーンライトの拳を片手で受け止めた。
「…ッ!」
「……!」
互いの顔に視線を向ける。リュウガの鉄仮面のスリットから、つり上がった複眼が無気味な赤い光を発すると、リュウガはムーンライトの片腕を掴み、窓に向かって横走りする。
ガシャァアアアアンッ!!!
甲高い音と共に、窓ガラスを突き破ったリュウガとムーンライトは外に飛び出した。
「ハァッ!!」
「ッ!」
その時、ムーンライトはリュウガの腹部を蹴り飛ばし、自身のもとから引き離す。
蹴り飛ばされたリュウガは、空中で体勢を立て直しながら着地すると、腰に装着されたVバックルに装填されたカードデッキからカードを引き抜き、左腕のブラックドラグバイザーに装填した。
SWORD VENT
濁った音声と共に、リュウガの手に漆黒の“ドラグセイバー”が飛来して手に収まり、リュウガはドラグセイバーを構えてムーンライトに向かって突撃した。
それと同時に、リュウガとムーンライトが飛び出した部屋に、入間と幽奈とセレナが飛び込んできた。
「ここにゆりさんが……って、何ですかこれぇ!?」
幽奈は部屋の惨状を目にして悲鳴じみた声をあげる。ゆりがいるとセレナが言っていた部屋に赴いてみれば、窓ガラスが全壊し、外には見たことのない騎士とコスプレのような姿の女の子が戦っている。ハッキリ言って、訳が分からない。
「あれは……ゆりさん……?」
セレナは、銀色のワンピースを着た少女の横顔にゆりの姿を重ねるなか、騎士と少女──リュウガとムーンライトの戦いは激しさを増していた。
「くっ!強い……!!」
リュウガの拳を受けて後退したムーンライトは、腕に残る痺れに相手の強さを推し量り、冷や汗を流す。
彼女はとある世界で伝説と謳われる戦士──プリキュアであり、彼女が所属するチーム【ハートキャッチプリキュア】の中でも、そして歴代のプリキュアの中でもトップクラスの実力者だ。例え仮面ライダーが相手だろうと、並大抵のライダーならば相手にもならないだろう。
しかし、リュウガはその枠には当てはまらない。かつて、ライダーバトルで数々のライダーを葬り続けたスペックと実力を持つリュウガは、いかにムーンライトといえど一朝一夕で倒せるような相手ではなかった。
「だったら!!」
ムーンライトの左肩のブローチから、専用武器である“ムーンタクト”が出現する。愛用の武器を手にしたムーンライトはムーンタクトを振るうと、紫色の光の刃が飛び出した。
GUARD VENT
しかし、ムーンライトの一撃は、リュウガの装備した漆黒の“ドラグシールド”によって防がれた。
リュウガはドラグシールドを手にしたまま、ムーンライトに視線を向けようとドラグシールドを僅かに動かす。
しかし、その先には既に、ムーンライトが目の前まで迫ってきていた。
やられた。とリュウガの動きが固まるのと、ムーンライトの掌がリュウガの腹部に当てられたのはほぼ同時だった。
「ムーンライト・シルバーインパクト!!!」
掌から放たれた銀色の衝撃波が、リュウガを吹き飛ばす。
リュウガはドラグセイバーとドラグシールドを手放して草原の中を転がり、倒れる。撃破には至らなかったが、多大なダメージを受けたのか、リュウガはムーンライトに背中を向けた状態で起き上がろうとする。
ムーンライトは、致命的とも言える隙を晒すリュウガを見据え、ムーンタクトを構えた。
「花よ輝け!プリキュア・シルバーフォルテウェイブッ!!!」
天に掲げたムーンタクトの先端に、緑色のエネルギーが放射状に包まれている白銀のエネルギー弾が形成される。数々の敵を打ち破ったムーンライトの必殺技“プリキュア・シルバーフォルテウェイブ”だ。
しかし、必殺の一撃を放とうとしているがゆえに、ムーンライトは自分に背中を向けているリュウガが、左腕のドラグバイザーにカードを装填していることに気付かなかった。
ADVENT
電子音声が響き渡ると同時に、エネルギーの溜めを終えたムーンライトの足元がから漆黒の体を持つ龍──【ドラグブラッカー】が姿を現した。
『グォオオオオオオオオオッ!!!!』
「なっ!?あぁああああああっ!!!?」
まさか龍が現れるとは思っておらず、完全に不意を突かれたムーンライトに、ドラグブラッカーは鋭い牙の並んだ大顎を開け、ムーンライトを挟み込んだ。
「ぐっ……!あぁああああああああああッ!!!?」
鋭い牙が衣装を突き破り、ムーンライトの白い肌に赤黒い穴を空けながら、大空に向かって急上昇するドラグブラッカー。襲い掛かるGに、ムーンライトは遂にムーンタクトを離してしまう。
その瞬間、ドラグブラッカーはムーンライトを咥えたまま急降下し、自分ごとムーンライトの体を地面に激突させる。
「ゆりさん!!!」
轟音と共にセレナの悲鳴が響き渡る。
モクモクと砂煙が舞い、地面が没落して発生した砂煙から、無傷のドラグブラッカーと、未だに牙を突き立てられているムーンライトの姿か現れた。
しかし、ドラグブラッカーは傷だらけのムーンライトに情けをかけず、彼女を咥えたまま低空飛行し、何度もムーンライトの体を地面に叩きつけると言う拷問を繰り返す。
リュウガは、そんな惨劇を静かに目にしながら、ベルトのカードデッキから、同じ紋章が描かれたカードを引き抜く。
そのカードが引き抜かれた事に反応したドラグブラッカーが顎の力を緩め、ムーンライトを離す。同時に、リュウガはドラグバイザーにそのカードを装填した。
FINAL VENT
リュウガからの指令を受けたドラグブラッカーは、ムーンライトに向けて口から青黒い炎を吐く。炎は倒れるムーンライトに纏わりつき、その両足と両腕を瞬く間に石化させた。
「これは……ッ!?」
ムーンライトが顔を上げる。そこには、全身に黒い炎を纏うリュウガが飛び蹴りの姿勢でムーンライトに迫る姿があった。
「はぁっ!!」
「あぁあああああああああああああっ!!!!」
動けなくなったムーンライトに、リュウガの“ドラゴンライダーキック”が炸裂し、ムーンライトは爆炎に包まれた。
爆炎が収まっていくと、そこにはムーンライトの姿は残っておらず、爆煙だけがモクモクと天に昇っており、リュウガはドラグブラッカーと共に、虚空の中へと消えていった。
「そ、そんな……!?」
「これで二人目……!」
セレナがガクンと膝から崩れ落ち、入間と幽奈もその光景に絶句していると、部屋のドアが慌ただしく開け放たれ、スバルと光輝が飛び込んできた。
「おい、お前らっ!!大変だ!!!」
「今すぐ来てくれ!!」
まだ何かあるのかと、入間達3人は二人が案内する場所へと駆けつけると、そこにあったものを見て、顔を真っ青にしてた。
「なっ!?」
「コルベールさんっ!?」
そこにいたのは、洋館の出入り口の前で、白い顔で瞳から光を消して、うつ伏せになって倒れるコルベールの姿だった。
入間は、
「これは……刃物でやられた傷……!」
「っ!?それって……」
「ゲームの勝敗に関係なく、殺したって事ですか!?」
手袋に着いた血を見て分析する入間に、セレナと幽奈が最悪の可能性に顔を青くする。
「──いいや。これは、ゲームとは別の殺人者がいる事を吟味しています」
その時、館の出入り口の扉が開かれ、白い靴が床を踏みしめる音と共に、聞き覚えのない男の声が聞こえてきた。
一同の視線が扉に集まる。そこには、白いシャツの上に白いコートを着た、雪のように真っ白な髪に持つ青年だった。
白髪の青年は、青い瞳をゆっくりと入間に向け、口を開いた。
「久し振り……いや、
青年──善井正義の言葉に、入間は大きく目を見開いた。
入間「何か策があるなら教えてください」
正義「このゲームは幾度も繰り返されています。そしてそこには、計り知れないほどの悪意が潜んでいる」
光輝「誰がコルベールさんを殺したんだ!!」
仮面男『処刑を実行しよう』
正義「ここは特別な場所。あらゆる世界、あらゆる次元が繋がり合い、幾人もの人々が呑み込まれていく」
正義「全ての悪意を根絶する……!」
感想、評価お待ちしております。