悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME   作:MTHR

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 お久しぶりです。
 少しずつ書いていて、ようやく完成しました。これからも亀更新になると思われますが、どうかよろしくお願いいたします。


EP20「Nの結婚式/裏切り者への鎮魂歌(レクイエム)

『我が系統は風!何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、その所以を教育いたそう!』

 

 その言葉と共に、Rナスカ・ドーパントはナスカブレードを持って呪文を唱える。どうやら、変身した際にはナスカブレードが杖の代わりになるらしい。

 

「ユビキタス・デル・ウィンデ……」

 

 呪文が完成すると、ワルドの体が体が分裂し始める。

 一つ……、二つ……、三つ……、四つ……、本体を合わせて五人のワルドがエターナル、シノビ、ゼインを取り囲んだ。

 

「……分身?」

『ただの分身ではない。風のユビキタス(遍在)……。風は遍在する。風の吹くところ、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例する』

 

 得意気に語るRナスカ・ドーパント。

 それに対して、エターナル達の反応は……

 

(((分身する……だけ?)))

 

 何とも冷めたものだった。

 それもその筈。少なくとも複数に分身するのなら、エターナル達は全員同じ事が出来る。入間達であるならば、分身だけでなく広域殲滅攻撃や時間操作など、分身などよりも遥かに高次元の能力を持っている。それを踏まえれば、ワルドの芸当はあまりにもショボく見えてしまう。

 気を取り直したエターナルは、エターナルエッジをクルクルと回して握り締めると、Rナスカ・ドーパントにその切っ先を向けた。

 

「さぁ、地獄に落ちなさい!」

 

 その言葉と共に飛び出したエターナルは走り出すと、エターナルエッジを突きだし、Rナスカ・ドーパントはそれをナスカブレードで防ぐ。

 長剣とダガーが火花を散らす。

 エターナルはマントを翻し、Rナスカの視界を遮った瞬間にエターナルエッジの突きや回し蹴りを繰り出していくが、Rナスカは魔法騎士隊隊長であり、戦士としての技量は彼に部があった。

 

「くっ!」

 

 ナスカブレードの剣をエターナルローブで防ぐ。あらゆる攻撃を無効化するエターナルローブの防御力の前にナスカブレードは弾かれ、Rナスカは距離を取る。

 

『防御力だけは大したものだが、その程度か!!』

 

 Rナスカはナスカブレードから『ライトニング・クラウド』を放つ。人間を消し炭に出きる程の威力を持った雷は、エターナルローブを振るう腕によってアッサリと四散する。

 

 魔法による攻撃は効果が薄いのだと判断したRナスカは、ナスカブレードを構えて超高速を発動させる。分身達も同様に、オレンジ色の閃光となってエターナル達三人に襲い掛かり、その剣が三人の装甲を切り裂いた。

 

『ハハハハハハ……ッ!?』

 

 高笑いしていたRナスカの言葉が、途中で途切れた。

 そこにあったのは、三人の仮面ライダーではなく、簡素な藁人形が倒れていたのだ。Rナスカがその光景に目を見開いた時、奇妙な電子音が響いた。

 

「忍法・氷遁の術!!」

 

 

カチコチ忍法!!

 

 

ジャスティスパニッシュメント!!

 

 

「やぁあああああっ!!!」

 

 シノビが両手から発生させた冷気が偏在達を凍てつかせた所へ、黄色いエネルギーを纏うゼインのスライディングキックが、偏在達は纏めて爆発を起こした。

 

『何ッ!?』

 

 

ETERNAL MAXIMUM DRIVE!!

 

 

「でやぁっ!!」

『っ!うおおおおおぉっ!!?』

 

 驚愕するRナスカに、エターナルの蒼炎を纏った蹴りが炸裂する。ナスカブレードで直前に防いだRナスカだが、威力が高すぎた為、ナスカブレードが破壊されると同時に吹き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がった。

 エターナルは、エターナルエッジをクルクルと回すと、フンと鼻をならした。

 

「その程度じゃ、最強には程遠いわよ?」

『ッ!!』

 

 Rナスカはその言葉に歯を食い縛った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い……」

 

 その戦闘を目にしていたルイズは、呆然と呟いた。

 スクエアクラスのメイジであるワルドが変貌したRナスカ・ドーパント。自分達では足元に躓く小石にすらならないであろう相手を、優花達は圧倒しているのだ。援護でもしようと考えていたが、余計な手を出せば足手まといにしかならないと思い知らされてしまった。

 

「なんなんだい、あの子達は……」

「本当に、桁外れね……」

 

 ギーシュとキュルケも、ゼイン達の圧倒的な力に言葉もなかった。

 そんな中、タバサだけはルイズ達とは違った感情を込めた目で彼女達を見ていた。

 

(あの力……あの力があれば……!)

 

 魔術と呼ばれる未知の力に、マジックアイテムらしきあの鎧。このハルケギニアにおいて、どんな国家よりも強大な力を有しているであろう入間達に手を貸してもらえば、自分は更なる力を手に入れられるかもしれない。そうすれば、自身の目的を果たせる……。

 タバサは自然と、片手に持つ杖を力強く握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝敗は決した事を確信したエターナルは、変身を維持したままRナスカに歩み寄る。

 

「さぁ、観念してそのメモリを渡しなさい」

 

 エターナルメモリは他のガイアメモリの機能を永遠に停止させる機能があるため、仮に何かしようとしても、即座にマキシマムドライブを発動させられるようにエターナルメモリは片手に持っておく。

 

『おのれ───ならばこちらも本気を出そう!!』

「ッ!?」

 

 その言葉と共に、Rナスカは何処からか小さな機械を取り出した。

 銀色の掌に収まるサイズの小さな機械だ。同時に、Rナスカは額に手をかざし、自身の身体に埋め込まれていたナスカメモリを取り出した。

 

「あれって……もしかして!!」

「チ、チマさん?」

 

 それを見て、入間からライダーの歴史を勉強させてもらっているシノビが反応する。

 ゼインがその反応に戸惑っていると、Rナスカはその機械──“ガイアメモリ強化アダプター”をナスカメモリに接続させた。

 

 

NASCA UPGRADE

 

 

 その音声と共に、Rナスカは再び額にガイアメモリを装填する。

 

『うぅ……!うぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!』

 

 メモリがアダプターが露出した状態でRナスカの身体に吸い込まれると、Rナスカの身体が凄まじい衝撃波と共に変化する。

 オレンジ色の身体は赤黒く染まり、騎士の仮面を彷彿させる銀色のバイザーは鋭く鋭利な形状に変化し、背中には鳥の羽を思わせるオレンジの光を放つ、神々しくも不気味な姿へと変貌した。

 

『素晴らしい……これが私の力か!!!』

 

 強化形態へと変貌したRナスカは、一回りほど大きくなったナスカブレードを構える。

 その瞬間、エターナルとシノビとゼインの身体から火花が飛び散った。

 

「「あぐっ!?」」

「な、なにが……ぐっ!?」

 

 シノビは立ち上がろうとした時、再び剣撃を入れられて倒れる。

 そして、シノビ達の前に、Rナスカ強化形態が姿を現した。

 

『フハハハハ……!なんという力!これがガイアメモリの力か!!!』

 

 狂喜と共に、Rナスカは再びその場から消える。同時に、四方八方から襲い来る斬撃が、エターナル達を蹂躙した。

 

「速すぎて、メモリを入れられない……がっ!?」

 

 ナスカメモリの超高速能力に、強化アダプターによって更に能力が向上した今のRナスカの速度は、“クロックアップ”にも匹敵する。加えて、腕力事態も三倍に高められており、防御する暇も動く暇もなく攻撃を入れられる。

 

『ハハハハ……ハァッ!!!』

 

 動きを止めたRナスカは翼を広げる。その瞬間、Rナスカの周囲に無数の紫の雷球が出現し、一斉にエターナル達に向かって飛び出した。

 シノビは即座に魔術で冷気を発生させ、氷の壁を生成して防ごうとするが、ガトリングガンの如く次々と飛来する雷球に、氷の障壁は徐々にひび割れ、ついには崩壊してしまった。

 

「「「きゃあああああっ!!!?」」」

「アイコ!ユウカ!チマ!」

 

 爆発を起こして吹き飛ばされる3人。

 ルイズの悲鳴が響き渡るなか、Rナスカは再び翼を広げ、無数の紫の雷球を発生させる。トドメを指すつもりだ。ルイズ達はエターナル達を援護しようとするが、間に合いそうにもない。

 その時──

 

 

スレスレ撃ち!

 

 

 無数の弾丸が、「ジュウ」という文字を浮かべながらエネルギー弾を弾き飛ばした。

 

『何ッ!?』

 

 Rナスカが驚きのあまり動きを止めてしまう。

 その瞬間、何かが協会の天井を突き破り、けたたましい音を立ててエターナル達とRナスカの間に降り立った。それ程の勢いで落下したのか、地面が大きく没落している。

 そこにいたのは、黒と銀の鎧を身に纏った、時計の基盤を模したフルフェイスで顔を隠した戦士だった。

 

 戦士は、Rナスカに視線を向けると、手にしていた武器を向けた。

 

「──それで、僕の“特別”に手を出したのなら、死ぬ覚悟は出来てるんだよね?」

 

 その声はルイズの使い魔──入間の物であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーロラカーテンでアルビオンに戻ったが、白にルイズ達の姿はなかった。

 焦って位置を特定し、教会へと向かうと、そこには倒れた優花(エターナル)達の姿と、ナスカ・ドーパントに酷似した見たことのない怪人。それからウェディングドレス姿のルイズとその他。

 一見すると訳が分からない状況だったが、これまでの不審な点を纏めれば自然と答えが出てくる。

 

「ワルドだっけ……ルイズの攻略は上手く行かなかったみたいだね」

 

 最早敬語を使う必要もないと、ジオウは仮面の下から冷たい目でRナスカ(ワルド)を睨み付ける。

 以前からワルドが怪しいと思っていたが、予想は的中したらしい。一つ予想外なのは、彼の姿が見たことのない怪人になっていたことだ。額に銀色の器具が露出しているので、恐らく“ガイアメモリ強化アダプター”を使用したのだろう。

 

『フ、ハハハハハ…!怖じ気付いて夜逃げしたのかと思ったぞ、ガンダールヴ!!』

 

 ジオウはRナスカの言葉に答えず、ライドウォッチホルダーから白と緑のライドウォッチを取り外すと、ベゼルを回し、ジクウドライバーに装填する。

 

 

サイクロンジョーカーエクストリーム!

 

アーマータイム!

 

究極極限!ダブル!エクストリーム!

XTREME

 

 

 “エクストリームメモリ”を模した巨大なアーマーが装着され、文字が張り付く。

 【仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーエクストリーム】を模した姿に、両肩が開いた状態のエクストリームメモリのような造形。サイクロンジョーカーエクストリームを模した仮面には「エクストリーム」という文字が張り付いた【仮面ライダージオウ・ダブルサイクロンジョーカーエクストリームアーマー】は、“プリズムビッカー”と呼ばれる剣盾を召喚し、もう片方の手にデルフを手に取った。

 

「命乞いを聞く気はないよ……ただ、君には地獄にいってもらう」

 

 その瞬間、ジオウの右手の甲が光りだし、その輝きを受けたデルフリンガーが光る。

 

「そうだ!いいぞ相棒!その調子だ!今ならその『ガンダールヴ』も力を貸してくれる!いいか相棒!『ガンダールヴ』の強さは心の震えで決まる!怒り!悲しみ!愛!喜び!なんだっていい!とにかく心を震わせ──」

 

 デルフが言い切るよりも早く、ジオウはデルフを振るう。金属音が響き渡り、ジオウの目の前にナスカブレードを降り下ろしている。

 

『よく反応したな!だがこれだけではないぞ!』

 

 Rナスカはエネルギー弾を生成し、ゼロ距離で射ち放つ。ジオウはバックステップでそれを回避し、避けきれなかったものをデルフリンガーで弾いていく。

 

「やっぱり、こっちだね」

「えっ?おい、相棒!何をあぁあああああっ!!!?」

 

 ジオウはデルフリンガーを投げ捨て、“プリズムメモリ”を装填したプリズムビッカーからプリズムソードを引き抜く。遠くからデルフリンガーの抗議が聞こえるが無視して、ジオウはRナスカと剣激を開始する。

 

『舐めるな!!』

 

 Rナスカはナスカブレードを振り下ろすが、ジオウは持ち前の身体能力を使って応戦していく。Rナスカのワルドは魔法騎士であるために剣の扱いにも一定以上の実力があるが、経験値ではジオウが勝っている。

 ほぼ感覚を頼りに剣を振るっているが、一撃としてジオウの体に攻撃は入れられない。

 

『小癪な……ならこれでどうだ!!』

 

 Rナスカは再び超高速を発動させる。ジオウではとても追い付けない速度を前に、プリズムソードを収刀したプリズムビッカーに四本のガイアメモリを装填する。

 

 

CYCLONE MAXIMUM DRIVE!

HEAT MAXIMUM DRIVE!

LUNA MAXIMUM DRIVE!

JOKER MAXIMUM DRIVE!

 

 

 四本のメモリによる力が解放され、プリズムビッカーから七色の光線が溢れだす。溢れだした光線は四方に分散していき、教会全体の壁を穿ち、破壊していく。

 

「ッ!?ガァッ!!?」

 

 ほぼ光と同じ速度で移動していたRナスカに、一条の光線が炸裂する。Rナスカは着弾箇所から爆発を起こし、動きを止めて地面に膝をつく。

 その隙を、ジオウが見逃すはずがなかった。

 

 

CYCLONE MAXIMUM DRIVE!

HEAT MAXIMUM DRIVE!

LUNA MAXIMUM DRIVE!

JOKER MAXIMUM DRIVE!

 

 

 ジオウはプリズムソードを抜刀する。4色の光球と共に、身体強化と速度上昇の魔術を自分自身に付与して、プリズムソードを構えて走りだす。

 光線のダメージに悶えていたRナスカは、その速度に一瞬反応が遅れた瞬間、光輝く一閃が炸裂した。

 

「はぁっ!」

「グァアアアアアアアアアッ!!!!?」

 

 Rナスカが、ジオウの背後で爆発を起こす。

 ジオウがビッカーシールドにプリズムソードを収刀すると、彼の足元に破壊されたナスカメモリの破片と、メモリから外れたガイアメモリ強化アダプターが転がり落ちる。

 ジオウは強化アダプターを拾い上げた後、背後で気絶したワルドに視線を向けた。

 優花達を傷付けた事に対する怒りはまだあったが、ワルドをここで殺すのは惜しい。というのも、ワルドの持っていたガイアメモリや強化アダプター、フーケの持っていた指輪と短剣の情報源だからだ。拷問をして情報を吐かせる必要はあると、ジオウはワルドを拘束しようと踵を返す。

 

「ッ!?」

 

 その時、上から凄まじい殺気を感じて、ジオウはその場から飛び退くと同時に、ジオウが開けた天井の穴から、青緑の巨大な何かが襲いかかった。

 

「入間ッ!」

 

 ユエの叫び声が響き、ジオウは彼女達の前で着地する。そして、自分を強襲した存在に目を向けると、そこには6メートル以上はある青緑色の巨大なコブラが、ワルドを丸のみにし、地面に穴を空けて潜り去っていく姿だった。

 

「逃げられたかぁ……」

 

 考えてみれば、情報を敵に渡さないようにするのは当然の事だ。最初から何処かに監視がいたのだろう。

 溜め息を吐きながら、ジオウはドライバーを外して変身を解除すると、ユエ達に続いてルイズが駆け寄ってくると、ルイズは掴みかからんばかりの勢いで入間につめよった。

 

「イルマ!それにユエ達も、アンタ達今まで何処にいたのよ!?ご主人様を放置してどっかにほっつき歩くなんてどういうつもりなのよ!!」

 

 捲し立てるルイズに、入間はミュウを召喚したのがこいつでなくてよかったと思う反面、自分の召喚者が()()という事実に落胆する。別にルイズの事は嫌ってはいないのだが、同じ虚無の使い手であるティファニアを見た後だとどうしても連想してしまうのだ。

 

 その時、教会の外から怒号と爆発音が聞こえてくる。

 間違いなく、反乱軍のものだろう。怒号と爆発音は素手に城の内部にまで迫っている。ここに軍が攻めてくるのも時間の問題だろう。

 入間達なら全滅させることすら可能だろうが、それでは反乱軍に自分達の存在を露見させ、何処かの軍の勢力だと誤認させてしまう可能性が高い。そんなことをするくらいなら逃げた方が懸命だ。

 

「でも、逃げるって行っても何処に逃げればいいのですか?転移魔法を使いますか?」

「……それも出来るが、今は別の方法を取ろう。ユエ、頼めるか?」

「ん。任せて」

 

 

フォール!プリーズ!

 

 

 ユエがウィザードリングをベルトにかざすと、現れた魔法陣が地面を突き進み、深く大きな穴を作り出す。

 ルイズ達がその穴に次々と飛び込んでいくなか、入間はウェールズの亡骸へと歩み寄る。

 

「……入間?」

 

 恋人であるユエが隣にやって来て、首をかしげる。

 入間は、既に光を喪っているウェールズの目を閉じさせると、指に嵌めた大粒のルビーに目を向ける。

 アルビオン王家に伝わる、風のルビーだ。

 自分達の基準に見ればなんの価値も無さそうなアイテムだが、あのお姫様の土産にはなるだろう。入間はその指輪をウェールズの指から外して宝物庫に収めると、再びウェールズの亡骸に目を向ける。

 

 彼と入間が過ごした時間はあまりにも短い。生き返らせてやる情もなければ、義理も友情もない。

 だが、民草のため、少しでも勇気を見せて命を散らそうとした彼が、ワルドのような男の謀略の末に殺されたのには思うところがある。

 尤も、それが『戦争』であることは理解している。戦場のど真ん中で他国の公爵令嬢の結婚式を執り行うなんて頓珍漢な提案を罠だと思わなかったウェールズに非がないと言えなくもない。

 それを分かっていながら、胸の中に僅かな不快感があるのは、ワルドに対する嫌悪感なのか、それとも、入間の中で微かに残っている他者を思い遣る気持ちなのか。

 

「……貴方の事は、嫌いじゃなかったですよ」

 

 それだけ言い残すと、入間はユエの手を取り、穴の中へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 穴から飛び出した先は雲の中だった。

 彼等は重力に逆らえずに、そのまま高度数千メートルから遥かしたにある海に向かって落下しそうになった時、空間に警笛が鳴り響いた。

 

「な、なんだいあれは!?」

 

 ギーシュの悲鳴が響く。

 彼の視線の先では、虚空に開いた光の穴から、牛のような頭を持った巨大な何かが現れたのだ。しかも、自分達に向かって来るのだ。

 

「ゼロライナー。僕の持ってる乗り物だよ」

 

 その言葉と共に、入間は魔術で自分やルイズ達の体を浮かせ、自身の元に駆け付けた“ゼロライナー”の先頭車両に着地した。ゼロライナーの側に、タバサの使い魔であるシルフィードがヴェルダンデを咥えながら側で滞空している。

 シルフィードがゼロライナーの上に降りると、ゼロライナーは牛の雄叫びような警笛を鳴らしながら、空中に線路を生成して爆走する。

 短い滞在ではあったが、様々な出来事があったアルビオンが風と共に遠ざかっていく。既に豆粒のように小さくなっていったアルビオンを見ながら、脳裏にあるのは、先程見た光景。

 

(あの蛇、いやコブラ……まさかとは思うけど……)

 

 ワルドを連れ去ったあのコブラ。“地球の本棚”から得た膨大な知識の中に、あれに該当するものは存在している。つまりそれは、()の存在を証明するに等しいことだ。

 

 雲に隠れて消えていくアルビオンを見据えながら、入間は人知れず拳を握り締めた。

 

 

 

 




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