悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME 作:MTHR
陸の孤島に建てられた洋館。
その洋館に備え付けられたソファーに腰かけた白髪青目の男──善井正義は、テーブルに置かれた紅茶を飲み干し、目の前に立つ男に視線をむけた。
「つまり、貴方は別次元の僕と知り合いで、共闘したことがあるってことですか?」
男──鈴木入間は、首を捻りながら、正義から聴いた話をまとめようとしているが、いまいちピンときていないのか、よくわからないと言う気持ちが見ているだけでわかった。
「……と言うより、貴方…正義さんは、どうやってここに?僕達以外には誰もいなかった筈ですよ?」
「簡単ですよ。私は次元を越える力を持っているからです」
広大な宇宙が描かれたカードを見せる正義。入間はその言葉とカードの意味が分からなかったが、ある可能性が脳裏に浮かび、再び正義に問いかけた。
「じゃあ……この馬鹿げたゲーム、何か知ってるんですか?」
「…ここは、時空の狭間にもうけられた館です。このゲームは過去に幾度も繰り返され、誰一人として生還してきたものはいないと言われています」
正義はカードをしまい、部屋に集まった一同を見渡す。
「そして、この事件の裏には、途方もない悪意が存在している。それこそ、多数の次元を巻き込むほどに強大で禍々しい悪意が……」
「って、そんなことより!誰がコルベールさんを殺したのか、突き止めなくちゃならないだろ!!」
そこへ、光輝が机を叩きながら声を上げる。しかし彼の言う通り、脱落者でもないコルベールは刃物によって殺された。それはつまり、この中にいる誰かがコルベールを殺したという事に他ならない。
「けど、僕たち三人はゆりさんのところに行ってましたよ」
「つまり……」
入間達の視線が光輝とスバルに向けられる。それを見て、二人は自分が疑われているのだと判断した時、正義の声が二人の声が出てくる前に響き渡った。
「ここにいるものは誰も信用できませんよ」
窓のそとに視線を向ける。日は沈み、太陽すら見えなくなった漆黒の海を見据える正義は、青い瞳で漆黒の海岸線を見つめていた。
「ここはあらゆる次元と繋がった空間。どの次元から誰が招かれたのかなんて、私にすら予想できない。人の姿をした化け物すら、この場に招かれている可能性もありますからね……」
朝。
館にある椅子やソファーで横になって夜を過ごした入間達は、窓のそとから差し込む鈍い太陽の光に目を覚ます。一同は頭を振ったり、呻き声を上げたりしながら意識を覚醒させ、全員が目を覚ますと、再びテレビの電源がつけられた。
『おはよう、諸君。よい朝を迎えられたようだね。では、朝の運動代わりに王様ゲームを再開しよう』
「私は途中参加ですが……」
『なにも問題ないさ。この館に来た時点でね……』
途中参加の自分も出来るのかを問おうとした正義だったが、テレビに写る仮面の男は気にしないというように答えると、続いてゲームの内容を口にした。
『では、次のゲームは………ババ抜きだ』
「ババ抜き?」
「おおっ!いつの間にかトランプが!」
あまりにも子供な遊びに幽奈が首をかしげていると、広間におかれている机の真ん中に、いつの間にかトランプが置かれていることに気付いた光輝が声を上げる。
『ルールは簡単。この部屋にいる全員でババ抜きをしてもらう。負けたものは、即時脱落となるから注意してくれ』
そう言うと、テレビの電源が消されてしまった。
部屋に沈黙が広がる中、幽奈はどこか決然とした表情で顔を上げた。
「やりましょう、皆さん!」
「そうだね。参加しないとゲームオーバーになるんだから……」
一同は席に座り、代表して正義がトランプを各員に配り始める。
カードを配られた一同は順番を決め、順に相手からカードを引いていく。幾度がそれが繰り返され、各々のカードが徐々に減っていくと、対に手札がなくなるものが現れた。
「揃った…!」
最初に上がりになったのは、光輝。
「まぁ、こんな所ですか」
二番目に上がったのは、正義。
「おっしゃー!!」
「……」
その次が、スバル。そして次がセレナが上がりになり、遂に残ったのは、入間と幽奈の二人だけとなった。
二人は恐る恐る互いのカードを引いていき、入間の手に残ったトランプは一枚、幽奈には二枚のカードが残っている。入間の手にあるのはハートの2。つまり、幽奈の持つどちらかのカードがジョーカーという事になる。
(幽奈さんの持ってる2を引けば僕の勝ち。だけど……)
ゲームの敗者達が、仮面の戦士達に殺されている光景を思い浮かべると、入間はカードに伸ばした腕を止めてしまう。左右のどちらのカードを選ぶわけでもなく、顔を俯かせて迷っている入間の姿をジッと見つめていた幽奈が口を開いた。
「…入間さん、左のカードを引いてください」
「えっ?」
「右のカードがジョーカーです。左のカードを引いて、入間さんが勝ち抜けてください!」
「えぇっ!!?」
その言葉に、入間だけでなく他の面々も目を見開く。しかし、幽奈はニッコリと笑顔を浮かべる。
「大丈夫です。私には策がありますから」
「策って……」
「安心してください。皆さんはきっと、元の世界へ帰れます。私も早く帰って、コガラシさんの焼き魚が食べたいですからね」
「……ッ!」
その笑顔に、入間は口を紡ぐ。そしてしばらくの葛藤の後、入間は幽奈の持つ二枚のうち、左のカードを手に取り、引き抜いた。裏返すと、そのカードにはスペードの2が記されていた。
その瞬間、テレビの画面が写され、そこから仮面の男の映像が写し出された。
『ゲームセット。それでは、敗者には罰を下そう』
その瞬間、テレビの前に突如、チャックのような物体が現れる。音を立てながら独りでにジッパーが開くと、その先には不気味な森が広がっていた。入間達が驚く間もなく、その森が広がる空間から、一人の影が飛び出してきた。
全身を覆う紺色のボディスーツに、オレンジの突然変異種と呼ばれるブラッドオレンジに似た黒い模様のある赤黒い鎧を纏い、赤黒い複眼を持つ鎧武者が、両手に刀を持って現れた。
「武神鎧武ですか……」
正義が呟く。
赤黒い鎧武者──【仮面ライダー武神鎧武】は、無双セイバーとブラッド大橙丸と呼ばれる剣を手に、逃げ出した幽奈を追って館の外に飛び出す。
幽奈は息を切らしながら必死に草原を走り抜けようとするが、武神鎧武の走力の前ではそれも意味をなさず、幽奈の前に回り込んだ。
武神鎧武は足を止めた幽奈に視線を向け、無双セイバーと大橙丸を振り上げ、幽奈の体に二本の刃を振り下ろした。
「あっ……」
幽奈の体が、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる。
武神鎧武はこと切れた幽奈を一瞥すると、振り返った先に再びあのジッパーを出現させ、開いた先に広がる森の中へと消えていった。
しばらくして、入間達が幽奈の、もとに駆けつける。入間は即座に幽奈のもとに駆け寄ると、首筋に手を当てた。
「……ッ!」
冷たくなった体に、入間は顔を強張らせる。そして、幽奈が自分の代わりに犠牲になったことを悟ると、手袋をつけた拳を握りしめ、地面に叩きつけた。
その時、屋敷からその光景を眺めていたスバルがクルリと後ろを振り返ると、目を見開いた。
「お、おい!いつの間にか、ここに焼き魚が置いてあるぞ!」
スバルの言う通り、先程までなにもなかった筈のテーブルの上には、人数分のヤマメの塩焼きが置かれており、出来立てであることを示しているように湯気を放っていた。
人の気配など微塵も感じなかったのに、突如として現れた焼き魚に、セレナの目が丸くなる。
「幽奈さん、確かお魚が食べたいって言ってましたよね……?」
「どうやら、脱落者が最後に口にした願いは叶う仕組みになっているようですね。尤も月影ゆり…キュアムーンライトはなにも言わなかったため、お流れになったようでしたが……」
正義は席に座ると、箸を手にとって焼き魚を切り分ける。そうして一息ついていると、自分の席の隣に、顔を蒼白にさせた入間が座り込んだ。
何がショックだったのか、それが分からない正義ではない。彼は焼き魚を一口食べた後、別の焼き魚の皿を手に取り、それを入間の前に差し出した。
「気に病む必要はありません。これ以上、人の死を見るのに耐えられなくなり、自ら命を投げ出した……かもしれませんしね」
「そんな簡単に、割れきれないよ……」
呻くように呟く入間。正義はそれにチラリと視線を向けると、焼き魚に視線を落とす。
(私の知る入間君とは反応が違う。やはり彼は……)
そこまで考えたところで、テーブルからダンッという音と共に衝撃が走る。一同の視線が向けられると、そこには机に拳を叩きつける光輝の姿があった。
「クソッ!誰がなんのためにこんなことをしてるんだ!!」
「落ち着きなさい。ここで慌てたところで見苦しいだけですよ」
「ッ!お前、人が死んで、心が痛まないのか!!」
正義の冷たい物言いに、光輝はキッと正義を睨み付ける。しかし、正義はまるで光輝をないものであるかのように視線すら向けず、紅茶に優雅に飲んでいる。
光輝が更に目をつり上げて声を上げようとした時、入間が唐突に顔を上げ、正義に声をかけた。
「正義さん、これから僕達はどうすれば……何か策があるなら教えてください」
真っ直ぐに、真剣な声色での問いかけ。正義は青い瞳を入間に向けた後、焼き魚を箸でつつきながら答える。
「……これまで現れた処刑人。仮面ライダーダークゴースト、仮面ライダーリュウガ、仮面ライダー武神鎧武……この三人にはある共通点があります」
「それは?」
「三人とも、本来人間の世界とは別の時空に存在するいわゆる異世界のライダーであること……ですね」
リュウガは【
「それが、なんになるんですか?」
「異なる世界、異なる時代のライダーを何人も使役して、ここまで自由に時空を操れる存在は限られています。つまり……」
そこで正義は口を止めた。ヤマメの塩焼きを頬張り、咀嚼した後にゴクリと呑み込むと、フゥと息を吐きながら答えた。
「私はこの事件の黒幕を引きずり出します。それがこのゲームを永遠に終わらせるための策であり、たった一つの方法。その為ならば、私はどんなゲームにも負けるつもりはありません」
「宣戦布告、ですか……?」
「そうなりますね。まぁ、今はこの魚を食べて上げなさい。あの子の置き土産ですよ」
正義に促され、入間は箸を手に取り、焼き魚を頬張る。
すると、再びテレビの電源が付けられ、あの仮面男の姿が露になった。
『諸君、ヤマメの塩焼きは堪能してもらえたかな?』
まるでなんでもないように気軽な挨拶をしてくる仮面の男に、一同は鋭い視線を向ける。しかし仮面の男は些事だとでも言わんばかりに、彼らの意見を聞かずに次なるゲームの宣言をする。
『王様ゲームサードステージ。次の種目は……かくれんぼだ。これから、三人の仮面の戦士達が鬼となり、君たちを探しに行く。見つかれば即時ゲームオーバーのかくれんぼ…是非とも楽しんでくれ』
その瞬間、部屋の鏡から金属音が、虚空に靄とジッパーが現れる。リュウガ、武神鎧武、ダークゴーストが現れる兆候だ。一同は即座に、部屋から飛び出した。
クラックから姿を現した武神鎧武が、2本の刀を手に屋敷をうろついて回る。
入間は階段のそばにあった植木鉢から生えた植物の影に身を隠し、口に手を当てながら武神鎧武が去っていくのを待っていると、不意に入間の肩に手を置かれる感触がした。
「ッ!!」
「シッ」
入間が顔を強張らせて振り返ったとき、口を塞がれた。
目を瞬かせた入間が視線を上に向けると、そこには正義の姿があり、彼の手で口を塞がれていることに気付いた入間は目を丸くする。
(静かに。制限時間内まで見つからずにやり過ごせば、無駄な犠牲を出さずにすみます)
「……!」
正義の小声に、入間は口を塞がれたままコクコクと頷き、共に息を潜める。辺りをキョロキョロと見渡していた武神鎧武は、目の前にクラックを開き、その向こう側にあるヘルヘイムの森の中へと消えていった。
「……行ったようですね」
「そうみたいですね……」
入間と正義は植木鉢の影から姿を現し、入間は安堵のため息を吐いた。
「グァアァーーーーーッ!!!!」
その時、館全体に響き渡る悲鳴が聞こえてきた。
入間と正義は顔を見合わせ、即座に声が聞こえた部屋に向けて走り出す。声が聞こえてきたと思われる扉が開け放たれた部屋に飛び込むと、二人は目を見開いた。
「っ!きたのか、お前ら……」
「い、入間さ……正義さ……」
そこには、顔面蒼白にしたスバルとセレナの姿。
そして、ベッドの真横で倒れる、頭から血を流した光輝の姿だった。
入間は即座に光輝に駆け寄り、顔を上げさせる。しかし、光輝の目の光は既に失われ、体は氷のように固く冷たくなっていることに、入間は歯を食い縛った。
「また、ゲームの脱落者が……」
「いいえ、どうやらゲームとは無関係のようですね」
正義の言葉に、一同の視線が彼に向けられる。彼の手には、刃が血に濡れた鉄製の斧があった。
「それは……!?」
「この部屋の扉のそばに棄てられていました。刃に着いている血も新しい……つまり、ダークライダーが行った事ではないと見て間違いありません」
刃についている血をまじましまと眺めた正義は、青い瞳をセレナとスバルに向ける。少し遅れて、正義と同じ結論にたどり着いた入間は目を見開く。
「つまり、光輝を殺したのはダークライダーじゃくて……」
「その通り……この二人のうちのどちらかが、殺人者です」
正義の言葉に、部屋に重い沈黙がのし掛かった。
ゼイン「全次元を救うため、貴方をここで裁きを下す!!」
スバル「俺たち以外に誰かいるかもしれねぇだろ!!」
正義「これが最後のゲームですか……」
入間「大丈夫ですか!?」
正義「私が全ての次元の救世主だ」
ジオウ「この戦いは、ここじゃあ終わらない……!」
ゼイン「このライドウォッチは……!」
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