悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME 作:MTHR
サブタイトルは小林さんちのメイドラゴンのアニメ版を意識しています。
窓の隙間から差し込む朝の日差しと、目覚魔し時計の
ベッドから起き上がり、カーテンを開けて朝の景色を眼にしようとした時、バァンッ!という音と共に自身のドアが開け放たれた。
「おはようございます、入間さん!!!」
最愛の吸血姫とよく似た、しかし彼女が決して出さないような高らかな声に、入間はビクッとしながら振り返る。
そこにいたのは、メイド服を着た少女だった。
頭には鹿のような角を携えた金髪をツインテールに纏め、白いブラウスと黒いメイド服を着込み、緑の鱗のある尻尾を生やした美しい少女だった。
入間は見覚えのないその姿に目を白黒させるが、寝起きの脳が覚醒していくと、記憶が整理され、苦笑しながら言葉を返した。
「あ、あぁ……おはよう、トール」
彼女の名前はトール。
サリバン邸の新しい住人だ。
昨晩、学校の帰り道で瀕死になったドラゴン──トールと邂逅した入間。
行く宛もなく、元の世界に帰るつもりもないとの事で、何となくシンパシーのようなものを感じた入間は彼女に同居を提案し、トールは何処となく嬉しそうに申し出を受け入れた。
尤も、大変なのはその後だった。
見知らぬ世界から迷い込んだドラゴン、しかも変身するととてつもない美女になるというのだから、自宅に住まう恋人達からは怒られ、オペラには無表情で説教される羽目になった。しかし何よりも入間のダメージとなったのは、最愛の吸血姫であるユエの無言のジト眼であった。
結果として、入間に激甘なサリバンと、人当たりのいいミュウとレミアがトールの受け入れをOKしてくれた事により、トールはサリバン邸に住むことになった。ユエ達のように悪魔学校に入学させるのもあったが、ユエ達でさえ話題沸騰しているのに、更に規格外を入れさせる訳にも行かなかった。
どうするかと悩んでいると、ふと入間はユエ達の衣装棚から溢れ落ちていたメイド服に眼が映り、「メイドとか……」と呟いたのだが、それを聞いたトールがその役割を勝手出てしまったことで、トールはオペラの指導のもと、サリバン邸のメイドとして働くこととなった。
「パパぁー!」
「あっ、ミュウ」
トールに身支度を手伝ってもらいつつ食卓に足を運ぼうとした時、廊下でレミアとミュウがやって来る。
「ミュウ~……いくら入間さんの娘とはいえ、入間さんの貞操を狙うのであれば容赦しませんよ~」
「いやいや、何言ってるのさ」
「んみゅ?」
「あらあら、ミュウにライバル登場ね」
抱きついてくるミュウにグルルル…と唸り声を上げるトールに入間が呆れたような顔になる。ミュウは小首を傾げ、レミアは何やら不穏な言葉を発する事に、入間は僅かに背筋が凍った。
「グッドデモーニ~~ング!イルマくぅ~~ん!!」
ミュウを抱き上げながら食卓に並びつくと、サリバンが。トールは嬉々とした表情で入間を席に促した。
「さぁ入間さん!ここに座ってください!今日の朝食、トールが腕によりをかけて作りましたよぉ!!」
犬のように尻尾をパタパタと動かして、とてつもなく嬉しそうに椅子を引くトール。入間は椅子に座り、その隣にミュウがちょこんと座り込む。
「むむっ!トールさん、私のお料理の立場を奪うというのなら容赦はしませんよぉ!」
「私だって!イルマさん専属のメイドです!」
そんな光景に、オペラの料理補佐を勤めるシアや、入間の世話を手伝うシエスタが頬を膨らませる。ぽっと出のトールにメイドやコックの仕事を奪おうとするのは見過ごせないのだろう。
「……これからも、こうやって増やしていくの?」
「いや、そんなつもりはないから」
どこか不満そうな、しかし最早処置なしと諦めているようなユエの言葉に何となく不穏なものを感じつつ、入間はなんとか二人を眺めた後、席に座ってため息を吐く。すると、いつも魔茶を用意してくれる
「そう言えば、オペラさんは?」
「……あそこで燃え尽きてるのじゃ」
ティオが指す方に視線を向けると、そこには部屋の端で椅子に座り、某ボクサー漫画の主人公のように真っ白になったオペラの姿があった。
自分とアメリがクッキングをした時も似たような状態に陥ったことがある気がするが、何故そんなことになるのだろう。不思議に思っていたが、自身の前にトールが皿を出してきたことで、入間はミュウと共に手を合わせた。
「取りあえず…いただきまーす」
「いただきまーす!なの!!」
元気の良い二人につられて、一同も「いただきます」という言葉と共に料理に手をつけていく。入間もフォークを手に取ると、自身の前にドカンと置かれた大きな肉にフォークを突き刺した。
「あっ!入間君、それ……」
「?」
愛子が何か良いかけようとした時には、既に入間は巨大な肉にかじりついていた。よく見れば、うまうまと料理を食べていたユエ達も微妙そうな顔で自分を見ている。
すると、入間が肉にかじりついた瞬間に、トールの顔がパァッと明るくなった。
「どうですか、入間さん!?私の尻尾焼きのお味は!?」
入間の手が、体が、石化したかのように固まった。
「……入間、平気?」
「うん、大丈夫……朝ごはんはもういいけど」
「っ!?」
トイレから戻ってきた入間を、ユエが優しく労る。魔界の食事はかなみ見た目が禍々しく、中には虫の丸焼きみたいな見た目をした料理も存在しており、それならば何の躊躇もなく食べられるのだが、目の前にいる
殺しも人死にも数えきれないほど目にしてきた入間だが、流石に女の肉体の一部を口にするなんて経験はなく、思わず食欲が失せた程だ。
そこへ、二人についてきたトールが首をかしげる。
「何か問題がありましたか?私の尻尾、ご飯に合いますよ?」
「精神的に合わない」
「ははーん……さては入間さん、偏食さんだなぁ?」
「……どっちかと言えば、偏見だと思う」
異世界から来たとはいえ、どこか価値観がズレたトールにため息を吐く。自身の恋人にも、身近にいるもの達の中にも、自身の身体を食べて貰いたいなんて某顔があんパンで出来たヒーローのような者はいない。
(いや、ユエとかティオとかは……まぁいっか、考えるのは)
変な方向に向かっていきそうだった頭を振って軌道修正する。
トールは、持ってきていたのか自分の尻尾の丸焼きを乗せた皿を傾け、巨大な肉をバリバリと食らう。中々にグロテスクな光景に入間は頬をひきつらせる。
「もー、しょうがないなぁ。……好き嫌いはダメですよ」
(……生えた)
(蜥蜴の尻尾……)
無くなっていた尻尾がスカートからニュッと出てきたことに眼を丸くする。
「毒抜きするのも手間がかかるんですからね!」
「フグじゃないんだから……」
だんだん頭が痛くなってきて、ツッコミがなげやりになってくる。
「……もういいや。ユエ、もうすぐホームルームも始まるし学校に」
「っ!それでしたら入間さん!私の背中に乗ってください!」
それを聞いたトールが、ここぞとばかりに背中から翼を生やして主張しだした。サリバン邸の住人のなかで悪魔学校に通うのは入間、ユエ、シア、ミレディ、そしてティオの五人であり、ドラゴン形態になったトールならば余裕で背に乗せられるだろう。
「その必要はないのじゃ!!」
そのとき、バァンと扉を開け放たれる音と共に姿を現したのは、我等が竜人族ことティオ・クラルス。
ティオは扇子を開いて自身を仰ぎ、豊満な胸をたゆんと揺らしながら得意気に胸を張る。
「んなっ!ティオ、貴方が何故今出てくるのですか!」
「フフン、トールよ。お主がご主人様を背に乗せる必要はない。何故なら、ご主人様を背に乗せ空を駆けるのは、他でもない妾の特権!トータスで旅をしていた時から続く妾の役目なのじゃ!ご主人様の体重を、重みを、愛を背中で感じられるその役割を受けるのは妾のみ──」
「いや、通学は歩きでいくから。ドラゴンライドはちょっと……」
ティオの主張も、トールの誘いもバッサリと切り捨てる。今までもこれからも徒歩で練り歩いていた通学路でドラゴンに乗りながら登校なんて、悪目立ちしてしょうがない。
そんな入間の言葉に、ドラゴン二人はショックを受けたように振り替える。
「歩きなんて遅すぎるじゃないですか!トールはサラマンダーよりもずっと速いです!」
「速すぎるんだよね……」
「妾はブレスを吹けるぞ!バイクでは出来ないじゃろ!!」
「ブレスを吹く殺伐とした登校したくないよ。普段から歩いてるでしょ、変態」
「わ、妾にはトールより塩対応!ありがとうございますッ!!」
「ドラゴンライダーかっこいいですよ!!」
「だからね……」
やんわりと拒否をし続けていると、トールとティオはよよよとその場に泣き崩れる。
「トールがいらなくなったんですね……」
「妾のことも捨てるのじゃな」
「その言い方、止めてくれない?」
トールはともかく、いつも一緒に通学しているティオはわざとやってると確信が持てるので、入間とユエの眼が細まっていく。
「あのさ、初日で言ったと思うけど、僕は浮気者とかいうレベルじゃないんだよ?なのに、なんでそこまで尽くそうとしてるの?」
恋愛関係には鈍い入間だが、ユエ達という恋人と過ごしてきたこと、そして何よりもトールが物凄くストレートに伝えてくるから、トールが自身に向けてくる感情は理解している…つもりだが、こんな不純まみれの男に惚れる理由がまるで分からない。尤も、ユエ達との交際を止める気はないが。
「そんなの関係ありません!トールは入間さんが大好きです!」
「食料として?」
「違います!性的にです!」
「なお悪いよ」
しかし、そう言われてもトールの意見は一貫していた。
「トールは入間さんに助けられました!だから、身体全部を使って恩返しです!」
「……分かる」
「ユエ?」
隣でウンウンと頷いている吸血姫は置いておいて、ここまで面といわれるとなんだか気恥ずかしく感じてしまうのは何度同じような経験しようが慣れるものではない。
「ゴホンッ!……取りあえず、僕が学校にいってる間はオペラさんとレミア達と一緒に家のお手伝いをお願いね。頼りにしてるから」
「ッ!!わっかりました!トールにお任せ!!」
頼りにしているという一言で簡単にやる気になったトール。命の危機に瀕していた所を救ったくらいでここまでの好意をぶつけてくる所といい、 案外チョロいのかもしれない。失礼なので言わないが。
「「いってらっしゃ~~い」」
「パパ、いってらっしゃい!」
手をブンブンと振り続ける祖父、メイド、娘に見守られながら悪魔学校へと足を運ぶ入間、ユエ、ティオ、シア、ミレディの五人。
「おはようございます、イルマ様!」
「イルマちー!ユエユエ!シアシア!ミレりん!ティオりん!」
「おはよう、二人とも」
すると、扉を開けたところでアスモデウスとクララが出迎えてくる。今までは三人だけでの登校に、新たに加わったユエ達との光景も慣れたものだ。
七人と大勢になったメンバーで学校を目指して踏み出そうとした、その時。
サリバン邸から、火柱が立ち上った。
咄嗟に、七人はサリバン邸に視線を向ける。モクモクと屋敷の一角から立ち上る黒煙を呆然と見上げていると、屋敷からドタバタという騒がしい音と慌てたようなレミアの声が聞こえてくる。
「と、トールさん!?何故お料理を作るのにブレスを!?」
「火力が足りないと思いまして」
「トールさん、後でお話が」
騒がしい我が家を見上げていた入間の隣で、ユエが一言。
「……こらから、やっていける?」
「……………多分」
ほんの少しだけ、これから先やっていけるか不安になる入間であった。
~スキ魔~
『トールのメイド修行』
オペラ「イルマ様から、貴方がここの仕事をこなせるように指名されたオペラです。それでは、私が貴方にこの屋敷でメイドとしての仕事の説明を…」
トール「そんな必要はありませんよ!色々と勉強してきましたから!」
オペラ「…そうですか」
ー掃除ー
オペラ「では先ずは部屋の掃除です」
トール「掃除は得意です!」
居間に移動したトールはブレスを放ち、汚れや家具を全て消し去った。
トール「どーですか!?」
オペラ「消してどうするんですか」
トール「じゃあ戻します」
トールの魔法により、部屋が元に戻る。
ー洗濯ー
オペラ「」
トール「次は大丈夫です!」
トールは入間の脱いだ衣服を口に含み、クチャクチャと口の中で洗っていく。
トール「ムグムグ……|よふぉれのみふぉとふぁすらえきがらせるふでふよ《汚れのみを溶かす唾液が出せるんですよ》」
オペラ「汚い」
ー鍵類の見廻りー
オペラ「部屋に異常がないかを確認するだけです。これなら……」
トール「得意中の得意です!!」
ドラゴン態になったトールは、部屋をその巨体で破壊しながら部屋の見廻りをする。
トール『ふふーん!異常なしですね!!』
オペラ「………………」
一通りの仕事が終わると、トールはオペラに正座させられた。
オペラ「いいですか?貴方は使用人とは何かを根本的分かっていません」
トール「(・_・)」
オペラ「キョトンとするんじゃない」
レミア「あらあら、トールさんもかなり個性的ですね……」
シエスタ「あの人はメイドの仕事が分かってません!!」
レミアは頬に手を当てながら苦笑いし、シエスタは頬を膨らませてプンプンと怒っていた。
~ヒロイン紹介~
▪︎シエスタ
ゼロの使い魔編の後は、魔法学院のメイドを辞めてサリバン邸のメイドに転職した。主な仕事は部屋の掃除とお料理、そしてイルマさんのお世話♡
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