悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME 作:MTHR
これからもどうぞ広い心で楽しんでもらえれば幸いです。
リディアン音楽院の廊下を、愛子は悩ましげな表情で歩いていた。
先日、響から奏と翼が小日向未来と接触していると言うことを聞き、未来の前で堂々と変身してしまった自分の正体が二課にバレているのではないかと危惧しているのだ。それでも職場に来てしまうのは、愛子の教師根性故か。
「……先生」
「………」
「畑山先生!」
「ほぇっ!?」
そこで、悶々と悩んでいた愛子は、自分を呼び掛ける声にビクッと体を震わせた。
「こ、小日向さん!?」
振り返った先にいた生徒──小日向未来の姿を見て、愛子は思わず声が裏返った。
この羽から逃げるべきか考えそうになる愛子だが、未来が真剣な表情で自身を見つめているのを目にして、逃げてはならないと察して踏みとどまった。
対する未来も、どう言うべきか迷うように視線を右往左往させた後、真っ直ぐに愛子を見つめた。
「畑山先生……貴方は、何者なんですか?」
「私は……」
その言葉に、どう答えるべきか迷う愛子。
「──教えて欲しいんです。響の事を……」
市街地に造られた開渠の柵に、背中を預けて佇む女性がいた。
羽毛のような豊かな赤い髪をした女性──天羽奏は、特になにかをするわけでもなく、光のない瞳で虚空を見つめていた。
「響の家族は、ライブ後の迫害のせいで……」
奏の脳裏に、数時間前の記憶が過る。
入間がオーロラカーテンの向こうに消えていったあと、奏は二課に連絡して調べものを頼んでいた。そして、調査の結果に、誰もが言葉を喪った。
「非常に申し上げにくいですが……響さんの家は、故意に燃やされたものである可能性が高いと思われます」
「なっ!?そんな事が……!」
「確かに、彼女の家が火災にあったのと同時刻にノイズが発生したのは事実でした。ですが、近隣の住民からの通報で、ノイズの発生と響さんの家の火災には数十分間のズレがあることが分かったんです」
「そ、そんな……じゃあ、響の家族が死んだのって……」
響の家族は──生存者に向けた迫害によるもの。
奏の中に浮かんだ、あり得て欲しくない最悪の可能性が決定付けられた瞬間であった。
奏は最初、復讐のために戦っていた。
家族を殺したノイズへの復讐を強く望み、シンフォギアとの適合数値が低すぎた彼女はシンフォギアの適合者になるべく自らに過度の訓練と
当初は復讐のためだけに歌い槍を振るっていたが、とある戦場で助けた自衛官の言葉──“自分達の歌は誰かを勇気付け、救うことができる”という事に気づき、復讐のためだけではなく、人々をノイズから護るために歌うことを決意し、翼と共にツヴァイウィングを結成した。
だが、結果はこれだ。
聖遺物起動実験のためのライブで、大勢の人が殺された。
自分達のライブのせいで、生き残った罪のない生存者は苦しんだ。
自分の弱さのせいで、響は瀕死の重症を負った。
そして──響の家族が殺された切っ掛けになってしまった。
「全部、全部アタシのせいじゃねぇか……!」
人を護るために戦おうと決意をしたのに、自分は多くの人間を苦しめてしまっている。その残酷な現実に、奏の心は折れ掛けていた。
その時、コツン、と奏の靴に何かが当たる感触と共に、金属のような音が聞こえてきて、奏は視線を下げ、靴の直ぐそばに落ちているそれを拾い上げた。
「……メダル?」
それは、翼を広げた鳥のような意匠が掘られている金縁の赤いメダルだった。
「──すみませんが、それ僕のなんですよ」
奏がそのメダルをマジマジと眺めていると、彼女の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
奏がその声に顔を向けると、そこには特徴的な青い髪をした少年が立っていた。
「アンタは……!!」
奏はその人物──入間を目にして目を見開いた。
「何で、ここに……」
「別に君を探してたんじゃない。買い出しの帰りに見かけたんです」
確かに、入間は片手に食材が大量に(入間からすれば足りないが)詰め込まれた袋を抱えている。その言葉に嘘はないと判断する奏だが、二課が全力を上げても見つからず、ノイズ撃退のために接触を図ろうとしても直ぐに逃げられてしまっていた入間が、こんなに簡単に、しかも自分から接触をしてきたことに混乱してしまう。
そんな奏に、入間は言い放つ。
「話しかけた理由は1つだけ。これ以上、僕達に関わらないで欲しいんです」
入間が口にした言葉に、奏は目を見開く。
「そ、そんな訳ねぇだろ!シンフォギアも使わないでノイズを倒せるお前達を放っておくわけにはいかないし、未来だって響に……!」
「何度も言ってますけど、僕達は君達二課には興味がないんです。それに、僕達がノイズと戦う理由は、君達とは根本的に違うから」
「じゃあ、お前らは何のためにノイズを……?」
「それを話す義理はありません……それと、小日向未来って子の事は、貴方達が何かしようとしなくても解決するかもしれませんしね」
「……?」
その言葉に、意味が分からずますます困惑する奏。
しかし入間は、もう言うべき事は言い終えたのか、袋を抱えたまま歩きだそうとする。
「待ってくれ!」
だが、そこで奏に呼び止められる。
「どうして、お前は響と……!」
「……響と僕が出会ったのは一年前。あの日、僕は彼女を助けるって決めた。その縁で、今は一緒にいる」
柵に背中を預け、答えた。
その言葉を聞いて、奏は拳を握りしめる。
「アタシは、響に謝らないと……」
「彼女は別に貴方を恨んでないですよ。貴女が謝る必要なんて……」
「それじゃあ、アタシが納得できない!!」
奏の声が入間の声を遮る。
「アタシのライブのせいで、アイツは苦しんで、家族まで喪って……昔のアタシと同じにしちまったんだ……だから……」
「その割には、随分迷ってるように見えますよ?」
「ッ!」
その言葉に、奏は動揺したように表情を強張らせる。
入間は真っ直ぐに奏を見ている。まるで心の奥底まで見透かすような視線に、奏は思わず目を反らしてしまう。
「まだ分からないんですか……」
「え?」
呆れたような、冷めたような言葉に、奏は思わず入間に視線を向ける。入間は、手に持っていた袋の中身を溢れないように地面に置くと、再び奏に視線を向ける。
その瞳のあまりの冷たさに、奏は背筋が凍るような錯覚を覚えた。
「貴女が感じてる罪悪感は、響一人だけに抱くものじゃない。二年前のライブ…そこで生存者に何が起きたのかは聞いてます。けど、貴方達のライブで起こった事件の被害に苦しんだのは響だけじゃないでしょう?」
「ッ!!」
「響以外の生存者、ノイズに殺された人達、そして響のお母さん達みたいに迫害に巻き込まれた生存者の家族、ノイズに殺された犠牲者達の遺族……貴方達が弱いせいで不幸になった人なんて、一から数えてたらキリがない」
入間の口から出てくる残酷な現実に、奏は怯えるように一歩後ろに下がる。
「貴女の過去に何があったのか、どんな理由で闘っているのか、それに関しては聞きません。けど、貴女の原点がどうであれ、人類を守るなんて大義名分を掲げて戦場に立った以上、救えなかった人達の恨みと怨念は最初から背負うべきなんですよ。言い訳なんて許されない。闘うことを選んだ時点で貴方にはその罪を背負う責任がある」
「……」
「それが分からない貴女が、何を言えば響の心に届くと思うんですか?」
「……」
入間は言い返してこない奏の様子をしばらく見つめ続けていくと、溜め息を吐いてから念話石を手にして何処かに連絡を入れると、奏に向けて口を開いた。
「──そうですか。口で話せないなら、武器をぶつけて聞いてみるとしましょう」
「……えっ?」
呆ける奏を他所に、入間は“宝物庫”からあるものを取り出し、腰に押し当てた。
オレンジ色の無の聖剣──“無銘剣虚無”が入間の腰で炎に包まれ、“覇剣ブレードライバー”が腰に装着されると、入間は懐からワンダーライドブックを取りだし、ページを開いた。
入間はその本──“アメイジングセイレーンワンダーライドブック”を閉じて、ブレードライバーの右端のスロットに挿し込むと、無銘剣虚無の柄を握り締め、その剣をブレードライバーから力強く引き抜いた。
ベルトから剣を引き抜いた瞬間、ワンダーライドブックが開き、入間の足元の地面から水が溢れ、足元から入間の体を包み込む。
だが入間は特に動じた様子もなく、虚無の刀身を肩に置くと、静かに呟いた。
「変身」
背中から出現した巨大な翼が入間を包み、純白の光と共に、その戦士は姿を現した。
白と黒の体に、鳥類の頭を模した装甲と左足を包むローブ。先端が青緑となった翼を模した複眼の【仮面ライダーファルシオン・アメイジングセイレーン】となった入間は、無銘剣を奏に向けた。
「あの時とも違う……なんだその姿!?」
「さぁ、本気で来てください。こっちも殺す気でやります」
「ッ!──Croitzal ronzell Gungnir zizzl」
ファルシオンから感じる殺気に、奏はシンフォギアのペンダントを取り出し、聖唱を歌い、シンフォギアを纏う。
切りかかってきたファルシオンの剣をアームドギアで受け止め、無の剣士と戦姫の衝突が開始された。
「アウフヴァッヘン波形を確認!この反応は──」
「ガングニールです!」
「何だと!?」
「映像、出ます!」
リディアンの地下にある二課本部は、ノイズの発生が無いにも関わらずシンフォギアの反応を検知した事で、騒然となっていた。
近くの監視カメラの映像がモニターに映し出されると、そこにはガングニールを纏う奏と、見たことのない白と黒の剣士が壮絶な戦いを繰り広げていた。
「奏!!」
「新たな未確認だと……!?」
翼は奏の姿を見て血相を変え、弦十郎はファルシオンの姿を見て表情を強張らせる。入間が変身する光景を見ていないため、ファルシオンの正体が分からなかったのだ。
「翼!奏の援護に向かってくれ!!」
「了解!!」
弦十郎の指示で翼が飛び出そうとする。
しかし、それを遮るように銀色のオーロラが目の前に現れた事で、翼は足を止めた。
何度も目にしたことのあるそれを見て、一同が目を見開くなか、そのオーロラから二つの人影が現れた。
「申し訳ないが、足止めさせてもらうのじゃ」
「全く、入間さんの邪魔をしようとは度し難い。いつもいつも入間さん達を狙うわ……そろそろ分からせて上げましょうかね」
現れたのは、絶世の美女と美少女だった。
一人は、20代前半程の黒髪金眼の美女。腰まである長く艶やかなストレートの黒髪に和服に似た衣服を着こなし、見事なプロポーションを誇っており、動く度に肩口まで垂れ下がった衣服から覗く二つの双丘が激しく自己主張し、今にもこぼれ落ちそうになっている。
もう一人は、身長百176cmの長身に美しく金髪を左右両側にツインテールにして纏め、メイドカチューシャを着けて左右に鹿のような角を生やした、白いブラウスと黒いメイド服を着こなした美少女。
その二人の登場に、誰もが驚愕する。何故なら二人組のうちの一人のメイド服の少女は、二課を騒がせる未確認の一人であったからだ。
すると、黒髪の美女ははだけた衣服から除く豊かな胸の谷間に手を突っ込むと、そこからあるものを取り出す。黒字に金で竜のようなマークが施された、長方形の箱だ。
美女はその箱を前に突き出すと、その姿を反射していたモニターから銀色のベルトが飛び出し、美女の腰に装着される。美女はポーズを取り、叫ぶ。
「変身!」
その言葉と共に、箱を素早くベルトに挿し込むと、鏡が割れるような音と共に、美女の姿が赤い龍騎士へと変化した。
「その姿……お前が“未確認6号”か!!」
「ふむ、その名前は正確ではない。妾はティオ・クラルス、またの名を仮面ライダー龍騎じゃ」
翼の言葉に、龍騎士──
「──Imyuteus amenohabakiri tron」
シンフォギアを身に纏った翼は、龍騎に向けて切りかかるが、龍騎は翼がアームドギアを振り下ろすよりも早く、ドラグバイザーにアドベントカードを装填していた。
召喚されたドラグシールドが翼のアームドギアを受け止めると、龍騎は素早く片手で翼の腕を掴んだ。
「すまぬが、少し来てもらうぞ!」
「なっ!?」
龍騎は翼を掴んだまま、指令室のモニターに向かって飛ぶ。すると、うっすらと龍騎と翼の姿を映すモニターの画面に吸い込むように龍騎の姿が入り込み、腕を掴まれた翼もまたその画面の中に呑み込まれそうになる。
翼は龍騎の腕を振り払おうとするが、力が強すぎて振り払うことが出来ず、どんどん画面の中に呑み込まれていく。
「翼さん!!」
「フンッ!」
その瞬間、弦十郎が床を踏みしめて飛び出す。床が没落し、音を置き去りにして接近した弦十郎が、丸太のような腕を振りかぶり、翼を引きずり込もうとする龍騎にその拳を叩きつけようとする。
しかし、弦十郎の豪腕は、横から割り込んできた華奢な手によって簡単に止められた。
「何ッ!?」
「……フッ!」
「ぬおっ!!!?」
次いで弦十郎の巨体が高速で振り回され、とてつもないGが弦十郎を襲い、投げ飛ばされる。弦十郎は指令室の扉を破壊しながら廊下まで投げ出されるが、空中で体勢を立て直し、床を抉りながら踏み留まる。
顔を上げると、扉を破壊して発生した煙の中から、メイド服の美少女が出てきた。
「今のは君がやったのか?」
「まぁそうですね。それにしても貴方、人間にしては意外とやりますね」
メイド服の美少女──トールは、弦十郎の拳を受け止めた手を握ったり開いたりしながら少し意外そうに呟いた。
トールがいた世界では、ドラゴンとある程度やり合える人間はざらにいる。しかし、弦十郎はトールが対峙してきた人間達(入間、愛子、優花、響を除く)よりも強い。トールの世界でも、
一方で、弦十郎は華奢な見た目をしながら自分を軽く投げ飛ばしたメイド服の少女に警戒を露にする。他の未確認達と違い、生身でありながらもノイズに触れて殲滅できるという未確認の中でも際立った異常性から、弦十郎は真剣な表情で拳を構える。
「君達の目的はなんだ?何故、奏と翼を狙う?」
「別にあの人に接触したことに大きな意味はありませんよ。少しだけ寄り道してるだけです。そしてあの青い髪の人は……足止めのために連れていったので、ティオは危害を加えたりしませんよ」
トールはそう言いつつも、背後でドアが破壊されて解放状態となった指令室のモニターに映る、奏と切り結んでいる
(それにしても、入間さんは何故
そう考えながら、トールは中央にクリアの円形パーツのある銃──“レーザーレイズライザー”を取り出した。
人知を超越した
だが、このレーザーレイズライザーに関しては、愛する入間からの贈り物ということで、
「それから……」
“レイズライザーカード”を抜き取った“ライズカートリッジ”を接続させた瞬間、トールは手首の返しでレーザーレイズライザーの銃口を背後に向け、虚空に向けて光弾を放つ。
何もない場所を通りすぎるはずだったその光速の弾丸は、虚空で金属音を響かせながら露散したかと思うと、床に粉々になった拳銃が転がった。
「ッ!!」
微かに空気が揺れ、何もなかったはずの虚空から、スーツを着こなした若い男──【緒川慎次】が姿を現した。
(気配を消してた筈なのに……見もせずに感知した!?)
「中々の認識阻害ですが、その程度で援護に回ろうとか考えない方が良いですよ?」
「なっ!?」
忍者の家系の末裔である自分の本気の隠密を児戯扱いするトールに、緒川は冷や汗を流す。
可憐な少女の姿が、今の彼には決して人が手を出して言い存在ではない化け物に見えていた。
「下がれ、緒川!」
「…ッ、分かりました」
弦十郎の指示でその場から離脱する緒川。
それを確認したトールは、ガンスピンのようにクルクルと回していたレーザーレイズライザーをしっかりと握りしめ、その銃口を弦十郎に向けた。
「それでは、始めましょうか」
「女に手を出すのは気が引けるが……二人に危害を加えるなら仕方がない!」
トールの宣言と共に、“OTONA”と“終焉帝の娘”の衝突が始まった。
「がっ!」
策を破壊して川に落ちた奏は、水飛沫を顔に浴びながらも顔を上げる。
そこには、目前まで迫っているファルシオンが、剣を振り下ろそうとする光景があり、奏は咄嗟にアームドギアの槍で応戦した。
剣と槍がぶつかり合い、火花を散らす。奏から距離をとったファルシオンは、虚無を構えて走りだし、奏もまた槍を手に走り出す。
「おぉおおおおっ!!」
「……」
奏が槍の連撃を振るう。
対するファルシオンは、無銘剣虚無で槍の攻撃を的確に弾いていく。
「はぁっ!!」
「うぁっ!?」
ファルシオンは振り抜かれた槍を蹴り飛ばし、そのまま追撃で奏にキックを食らわせる。奏は防御が間に合わず、川の中を転がる。
「その程度ですか?」
「クッ!舐めんな……!」
弱々しく立ち上がる奏は、アームドギアを握りしめて技を放つ。
穂先から竜巻が吹き荒れ、ファルシオンを襲う。
ファルシオンは無銘剣で受け止めるが、竜巻の勢いが強すぎて受け止めきれず、ファルシオンは数歩後退した。
「やっぱり聖遺物って言うのも侮れないなぁ……でも」
そう呟きながら、ファルシオンはドライバーに装填されたアメイジングセイレーンのワンダーライドブックに触れる。
「ッ!!?」
ファルシオンの右手から溢れだした青黒い波動が、奏を包む。
身構える奏だが、自分の体になにも起きていないことを確認すると、槍を構えて走り出そうとするが、その瞬間、背中を誰かに掴まれた。
振り返った奏は、自身を掴んだ人物を見て、顔を青くした。
「う゛………あ゛ぁ゛……」
「うわぁっ!!!??」
そこにいたのは、全身から血を流す女性だった。
奏は思わず尻餅をついてしまうが、気付く。自分の周りに、無数の屍が地を這うように迫ってきていた。川の水が、彼らの血で赤黒く染まっている。
顔を青くして震える奏に、ファルシオンはゆっくりと歩み寄る。
「これは幻覚です。でも、ただの幻じゃない。貴女が見えていなかった…声のない人達の悲鳴です」
「ッ!こんな幻覚──ッ!!!?」
背後に回ったファルシオンに向けて奏は槍を振るおうとするが、振り返った瞬間にいたのは血に濡れた男。
それを見て槍を止めてしまう奏。その隙に奏の真横に移動したファルシオンは、“エターナルフェニックスワンダーライドブック”を無銘剣の刀身にタッチする。
不死鳥の伝説を学習した無銘剣が振るわれ、十字の斬撃が発生すると、突きだした無銘剣からオレンジの炎を纏う不死鳥が斬撃と共に奏に突撃した。
「あぁあああああっ!!?」
不死鳥の一撃を受けた奏は、開渠の壁を破壊しながら爆発を起こした。
二課の廊下をぶち破り、弦十郎は右腕を襲う痺れに歯を食い縛りながらも、目の前から視線を外さなかった。
廊下に空いた大穴から、弦十郎を殴り飛ばして大穴を開けた張本人──トールが飛び出す。同時に、トールはレーザーレイズライザー後端の撃鉄の様な突起はモード切替レバー“クロスオルタネーター”を1度入力する。
銃口から、青い光線が発射される。
弦十郎は臆することなく前に出て、スレスレでその光線を回避し、トールに向けて拳を突きだす。しかし、トールは片腕でそれをガードする。
凄まじい衝撃波が二人を中心に広がり、廊下全体に亀裂が入る。
「おぉおおおおおおおおあおっ!!!」
「オラオラオラオラオラオラっ!!!」
そのまま二人は腕を振るい、ぶつけ合う。
トールはレーザーレイズライザーを魔力で補強して銃身を打撃武器として応用しながら、弦十郎の両腕の拳を迎え打つ。時折レーザーレイズライザーから光弾を放つが、弦十郎の拳に弾かれる。
(想像以上にやりますね)
トールは入間達のような特別な力を持たない、ただの人間であるはずの弦十郎が、フィジカルのみで
しかし、何時までもこうしてるわけにもいかない為、レーザーレイズライザーで地面を撃ち抜き、爆煙を巻き起こして視界を塞ぎ、距離を取る。
「おぉおおおっ!!!」
すると、爆煙から弦十郎が飛び出す。
トールはそれを見て、迎え撃つように飛び出すと、トールの振りかぶった右腕が、緑の鱗に包まれた竜の巨腕に変化した。
「「ッ!!」」
同時に拳が突き出され、一瞬だけ二人の動きが止まり、触れてもいないのに衝撃波が発生する。
しかし、それも一瞬。お互いの拳から繰り出された風圧の壁を押し破り、トールの巨腕が弦十郎の拳と激突する。
「ぐああああぁぁぁぁっ!!!?」
トールの拳が弦十郎の体を殴り飛ばす。
廊下の壁に激突した弦十郎の体が砂煙に包まれると、トールは両腕を人間形態に戻した。
「人間にしてはやりますね。まさかあの状態で殴ってこれとは……」
腕部だけドラゴンの状態にして殴ったのに、打ち合った拳の衝撃で震える手を見て、トールは素直に相手の実力を評価すると、指を鳴らしてゲートを開いた。
「ぐあっ!?」
「むっ?」
するとそのゲートから、翼と龍騎が飛び出してくる。
「ティオ、平気ですか?」
「無論じゃ。妾の鱗はこの程度の剣で気持ちよくなることはないのじゃ!」
龍騎はドラグシールドを手にしているだけで、傷らしい傷もなく、翼も同様だった。どうやら、耐久力の高さで翼の攻撃を止めるだけに徹していたらしい。
トールは指を鳴らす。すると、辺りに錯乱していた瓦礫が光を帯びて動きだし、トールと弦十郎の衝突によって半壊していた廊下や扉などの施設が、まるで巻き戻されたビデオのように元の位置へと戻っていき、数秒後には完全に元の状態に復元された。
更に、龍騎は再生魔法をかけ、弦十郎と翼の傷を回復させた。
「これは……一体、お前達の何が目的なんだ!!」
翼が警戒心を露にして問い掛ける。
しかし、龍騎もトールもそれに答えず、トールは転移ゲートを出現させ、レーザーレイズライザーのクロスオルタネーターを2回入力する。
銃口からカード型エネルギーが飛び出し、その上に飛び乗ったトールと龍騎はゲートに飛び込み、その場から姿を消してしまった。
それと同時に、二課にノイズの発生を告げるアラートが鳴り響いた。
奏を吹き飛ばしたファルシオンは、爆心地に眼を向ける。
爆煙が晴れると、シンフォギアが解除された奏が、川の水に濡れながら倒れていた。ファルシオンも手加減していた為、気絶はしていなかった。
ファルシオンは、体を起き上がりらせ、力なく壁に背を預ける奏に歩み寄ると、彼女に無銘剣の切っ先を突きつける。
すると、奏がポツリと呟いた。
「…………もういい、殺してくれ……」
「何?」
その言葉に、動きを止めるファルシオン。
「アンタの言う通りだよ………アタシのせいで…響だけじゃない……大勢の人が死んで、何人も苦しんだんだ……人を護るために戦うことを決めておきながこの様だ………だから、せめてもの償いだ……」
その瞬間、奏は胸ぐらを掴まれ、無理矢理立ち上がらさせられる。
眼を見開く奏は眼に入ってきたのは、ファルシオンの仮面。しかし、顔が隠れているにも関わらず伝わってくる威圧感に、奏は身を強張らせる。
「死ねば罪が償えるとでも思ってるんですか?今の貴女には、殺す価値もないッ!」
「うっ!?」
投げ飛ばされた奏は川の中に倒れ、その衝撃でシンフォギアのペンダントの紐が千切れ、川に落ちる。
ファルシオンはそのシンフォギアのペンダントを片手で拾い上げると、無銘剣をブレードライバーに挿し込み、ワンダーライドブックを閉じてドライバーから引き抜くことで変身を解いた。
その時、入間の持っているファイズフォンXから着信音が鳴り、入間はそれを取り出して通話に出る。
「もしもし?……ティオ?どうかし……ノイズ?響とアメリが……分かった。僕もいくよ」
そう言って電話を切ると、入間は奏を見下ろした。
「ノイズが出たらしいですよ、今は僕の仲間と響が交戦してます」
「ッ!」
「それじゃあ、僕は行きますね」
そう言って、入間はガングニールのペンダントを手に歩きだそうとする。
「待て!ガングニールを返せ!」
奏が入間を呼び止める。それを耳にした入間は、シンフォギアのペンダントを持ったまま振り返る。
「死んで罪を償いたいんじゃないんですか?なら戦う必要がありますか?」
「ッ!それは……でも、アタシは…ノイズを倒さないと……」
入間の指摘に言い淀む奏。そんな奏に、入間は呆れたような眼を向けつつ、口を開いた。
「君は罪を償いたいんじゃない。ただ逃げようとしてるだけです」
「そ、そんなこと……」
「償いって言うのは、君自身が苦しまなくちゃならない。君が罪の意識を感じていても、君に死を望んでいる人なんて誰もいない。だって言うのに死ぬのは償いでもなんでもない…ただの独り善がりです」
「………じゃあ、どうすりゃいいんだよ………どうしたらいいんだよッ!!!」
奏は涙を流しながら、叫んだ。人を助けるために槍を振るおうとしたのに自分は多くの人間を不幸させたという無力感と絶望、そして自分自身に向けた怒りが、彼女を蝕んでいた。
そんな奏に、入間は一つのライドウォッチを取り出すと、それを起動して片手にあるものを造り出すと、奏に向けて言い放った。
「罪は消せない……背負って生きていくしかないんだ」
力強い言葉に、奏は入間を見上げる。
「生きていくって、楽しくて辛いことです。正しく生きようとしても、現実は厳しくて辛いことがいくらでも降りかかってくる。でも、心だけは強く鍛えないと、他でもない自分に負けちゃうんじゃないですか」
そう言いながら、入間は手に持ったそれを奏に投げつけた。
入間が背を向けて歩きだした時──奏は、目の前の川に落ちたそれを、掴んだ。
入間達がいる地点からさほど離れていない市街地の中で発生したノイズを、四つの影が殲滅していた。
「全く!こうも頻繁に出るとなると流石にうんざりするな!!」
「激しく同意します!」
「ははっ!でも俺っちの活躍がSNSで拡散しちゃって、ファンが急増するかもな!!」
ゲイツ、リバイが拳を振るい、バイスはオストデルハンマー50で次々とノイズを殲滅していく。
「はぁあああああっ!!!」
彼女達の直ぐそばでは、二課から現場に急行した翼が、逆立ちと同時に横回転し、展開した脚部のブレードで数多のノイズを切り捨てていた。再びノイズが襲ってきた事で翼はノイズに向けて剣を振るうが、彼女の意識はこちらから離れていない。
(ティオとトールが二課で暴れたらしいからな。早い内に済ませて退散しなくては)
ゲイツがそう考えている中、リバイは赤と白の“マンモスバイスタンプ”を取り出すと、それを起動してオーインジェクターに押印する。
スタンプを抱えたバイスが飛び回り、リバイはドライバーにバイスタンプを装填し、バイスタンプを倒す。
リバイは、全体的な見た目は【仮面ライダー電王・ソードフォーム】がモチーフになり、電王の顔面を走るレール部分を模した口部はマンモスの鼻、桃の葉部分であったパーツはマンモスの牙を模した物になっている。肩部と胸部は中心のレール部分も合わせて長いマンモスの鼻がそこまで伸びている様な意匠となっている。
バイスは、ソードフォームの電仮面がマンモスの耳になったようなパーツが複眼の上に存在し、そこからキバ型のパーツが前方に伸びており、肩部と手の甲、背面部についたシールドを腕に装着している。足には太い前脚を模した増加装甲がある姿となった。
「俺、バイスです!」
「はぁっ!!」
【マンモスゲノム】となったリバイは、二刀流のブーメラン“マンモスガッシャー”を投擲し、回転する二つのブーメランが次々とノイズを切り裂いていく。
「俺っちに倒されたい人、この指とーまーれー!」
リバイがマンモスガッシャーをキャッチすると、ノイズ達はたちまち炭となって崩れ落ち、バイスは巨体から繰り出される突進力で、次々とノイズを吹き飛ばしていく。
その光景を見て、ゲイツは仮面の下で笑みを浮かべながら、ジカンザックスにゲイツウォッチを装填した。
「私も負けいられんな」
時計の基盤を模した斬撃がノイズを切り裂き、爆発する。しかし、一番奥にいたギガノイズが小型ノイズを増やしていく光景を見て、ゲイツとリバイは一気に決めようとする。
その時、けたたましいエンジン音と共に、リバイ達の前に一台のバイクが現れた。
「イルマ!?」
「それに……天羽奏?」
【ライドベンダー】と呼ばれるバイクから降りたのは入間だけでなく、翼の相方である奏も乗っていたのだ。
「アタシは……全然ダメだった。人を救いたいって思っても、それがどんなに難しいのか分かってなかった。──でも、もう目を反らさない!」
そう言いながら奏が取り出したのは、シンフォギアのペンダントではなく──入間が投げ落とした石だ。
「救えなかった奴らの罪を背負いながら……アタシは歌い続ける!!」
奏は石を腰に当てる。
その瞬間、その石が光を放ったかと思うと、その石は銀色の帯に黒地に水色のラインと3つのスリットが入ったデザインのバックルと右側に金色の円形の器具が備え付けられたベルト──“オーズドライバー”となって奏の腰に装着された。
「それほど言うなら、見せてもらいますよ」
入間は黒をベースに水色のラインが走ったバインダー“オーメダルホルダー”を開くと、そこから二枚のメダルを取り出し、奏に投げ渡した。
それをキャッチした奏は、入間と鉢合わせる前に拾った赤いメダルを含め、その三枚──赤・黄・緑の三色の“コアメダル”を、オーズドライバーのスリットに挿し込むと、バックルが傾く。
右側に装着されていた金色の器具“オースキャナー”を取り外すと、ドライバーに装填されたメダルに翳していく。
「変身!!」
その言葉と共に奏はオースキャナーを胸の前に掲げると、幾つもの光のメダルが奏の周囲を飛び交う。
タカ!
赤い鷹、黄色い虎、緑の飛蝗のメダルが奏の前で1つとなって、奏に収束すると、姿が変わる。
黒のスーツに、鳥の翼を模した意匠と緑の複眼を持つ仮面、鋭い爪を収納した黄色い腕、バッタのような模様の緑の脚。胸の中心には縦に並んでタカ・トラ・バッタの意匠が施されたサークルが存在している。
その姿こそ、コアメダルの力を使い変身する無限を越えた存在───仮面ライダーオーズである!!
「「なっ!?」」
「奏!その姿は……!?」
「うわ、マジ!?」
リバイとゲイツは目を見開き、翼は絶句し、バイスは驚く中、オーズは自分の顔を触ったり体を見下ろし、混乱していた。
「何だよ、今の歌?タカ、トラ、バッタって……?」
「歌は気にしないで下さい。それより、来てますよ」
「ッ!」
顔を上げると、そこには人型ノイズが迫ってくるのを見て、オーズは咄嗟に前に出て、ノイズの攻撃を受け止める。そして、腕の爪“トラクロー”が展開されると、その爪でノイズを切り裂いた。
「成る程……期待通りだね」
そう言うと、入間はジオウウォッチのベゼルを回し、ジクウドライバーに装填。ドライバーのロックを外して一回転させる。
「変身」
「ん~、やっぱりこれが一番しっくりくる」
ジオウに変身し、慣れた姿に体を伸ばした入間は、ガングニールのペンダントを手渡した。
「それはオーズ……どれ程の物か、試して見てください」
「あぁ、ありがと」
ジオウの言葉に短く答えたオーズは、歩きだしながらペンダントを握りしめ、胸の中の歌を歌う。
「Croitzal ronzell Gungnir zizzl」
オーズの手に、一本の槍が握られる。
何故かいつも以上に体に馴染むアームドギアを手に歩きだしたオーズは、レックスゲノムに戻ったリバイの前で一度足を止める。
「……響」
「……どうして、貴方が仮面ライダーに……」
「ハハッ、アイツにぶん殴られて目が覚めたんだ。それで……決めたんだよ」
「……?」
「アタシは、諦めない。生きる事も、人を幸せにするために歌う事も……それで、お前達と手を繋いでみせる。どんな障害があったとしても、もう負けない」
「……」
仮面に隠れていながらも、強い意思を感じる瞳に、リバイは目を反らさずに見たあと、ジオウに視線を向ける。
仮面越しからも「お前、何をしたんだ」と恨まし気な視線を向けられ、ジオウは顔を明後日の方向に向ける。
「まぁ、積もる話は後だ。ここからは、天羽奏のシーズン
槍を構えたオーズは、宣言と共にノイズの軍勢に走り出し、胸の中に浮かんだ歌を歌い出した。
──♪あの時ああ してなければ アレをやれてたら...
オーズは槍を振るい、すれ違い様にノイズの体を切り裂く。
──♪「もしも」は仮定の話 現実は何も 変わらない
背後からノイズが迫ってくるのを察知したオーズは、左腕のトラクローを展開して、振り向き様にノイズを鋭利なトラの爪で体を五つに裂き、ノイズはたちまち炭となって崩れ落ちる。
──♪「俺は弱い」あきらめたら
「足に力が……ハッ!」
オーズは足に力を込めると、脚部の“バッタレッグ”が緑色に光る。そして、バッタの跳躍力をしたオーズは、無機質な動きで迫ってくるノイズの群れに回転しながら蹴りを浴びせていく。
──♪取り返しつかない
そのまま追撃を仕掛けようとした時、後ろから声が掛けられた。
「奏さん!緑のメダルをこれと入れ換えてください!」
「えっ?おわっ!?」
咄嗟に振り替えると、何かがオーズの手元に落ちてくる。
キャッチしたそれを見てみると、そこにはチーターの彫刻が彫られた黄色いメダルがあり、どうやらノイズを相手にしているジオウが投げたらしい。
──♪ほど後悔溜まって
オーズは言われた通りにオーズドライバーの向きを直し、バッタのメダルとチーターのメダルを入れ換えると、オースキャナーでメダルをスキャンする。
タカ!
オーズの前でメダルのエフェクトが集まり、オーズの下半身がチーターの様な意匠の黄色い脚“チーターレッグ”に変化した【タカトラーター】に変身する。
──♪身動きさえも取れなくなる
「これは……おわっ!?」
走り出したオーズは、“チーターレッグ”に内蔵された超加速機能により、これまでとは比べ物にならない速度で走り出す。
──♪見ないフリ 後ずさり 通り過ぎ That's too bad
咄嗟に槍を前に出し、一筋の閃光となってノイズの大群を撃滅させる。しかし、チーターレッグの超加速に、変身したはかりの奏が制御するのは無理があり、オーズの槍は突き進んだ先の建物に突き刺さった。
「っ!やべ……!」
引き抜こうとするが、思いの外深く突き刺さった事で中々抜けず、その背後からノイズが襲い掛かってくる。
──♪人として? 俺として それはしたくない
「ハッ!」
「てーーい!」
そんなオーズの前に、リバイとバイスが割り込んでノイズを蹴り入れ、蹴り飛ばされたノイズは他のノイズを巻きこみながら炭化させた。
──♪ひとつだけ 破れない 約束
「響……!」
「貴方があまりにも見苦しかっただけです」
「ご覧の皆さん!今のは響のツンデレです!人間素直が一番!……悪魔に言われたくないってか?アハハハッ!言えてる!!」
「フンッ!」
「ボホッ!?」
オーズの声にそっぽを向くリバイだったが、その隣でバイスがこの場にいない誰かに向けて話した末に笑い出すが、リバイはそんなバイスの頭を殴って黙らせる。
それを見て、オーズは笑いたい衝動を堪えながら、オーズドライバーのチーターメダルをバッタメダルに戻し、再びメダルをスキャンする。
──♪目の前で 消し去られそうな 光が
オーズはオースキャナーをベルトから取り外すと、再びオーズドライバーに装填されているメダルをスキャンする。
それを見て、リバイはリバイスドライバーに装填されたレックスバイスタンプを握りしめて横に倒すと、オーインジェクターの印面が上を向く。
──♪あるのなら この手で 守りたい
「ハァーー……ハッ!!」
その瞬間、オーズの脚部がバッタのように変形し、低く構えを取ったオーズは空高くジャンプする。そして、上空で槍を構えたオーズの前に赤・黄・緑の光のリングが現れる。
「響いてきた……!」
「俺の方響いて来たぜ!」
リバイは決め台詞と共にレックスバイスタンプをもう一度倒し、バイスと共に飛び上がる。そして、リバイとバイスの前に、「49」と表記されたスロット型のエフェクトが出現する。
──♪I can go nowhere 逃げ出せる場所はないんだ
オーズは槍を突きだして光のリングに飛び込むと、背中から赤い翼を生やし、その翼を広げながらリングを潜り抜けて三色の光を纏い、ギガノイズに向かってまるで流星の様に突撃する。
同時に、リバイとバイスの前のスロットが回転して「50」と表記されると、二人のライダーはそのエフェクトを突き破り、ギガノイズへと突撃する。
「セイヤァーーーー!!」
「「はぁぁああああああああああッ!!!」」
オーズの蹴りと、リバイとバイスの蹴りがギガノイズを貫き、三人はほぼ同時に着地する。
──♪向き合って 戦うべき Regret nothing!
「そんじゃ行ってみようか!──
「ハッピーバースデーーーイ!!!」
バイスのカウントダウンと共に、ギガノイズは盛大な爆発を起こし跡形もなく消え去った。
戦闘が終わり、オーズは変身を解除する。アームドギアを装備したからなのか、シンフォギアを纏った状態の奏に、翼が駆け寄る。
「奏!一体どういうことなの!?貴方新しい未確認に襲われてた筈なのに……」
「あぁ、翼。これにはちょっと訳が……」
少し混乱した様子の翼に、奏がどう言えばいいのか迷うような表情で頬をかいていると、奏の前に、水色のラインが入ったバインダーが手渡された。オーメダルホルダーだ。
翼と奏がそれを差し出した相手に顔を向けると、そこにはジオウが立っていた。ジオウはそのまま奏にオーメダルホルダーを押し付けると、奏は戸惑い気味に受け取った。
「これは、貴方に預けておきます」
「えっ?あ、あぁ……」
奏がそれを開くと、そこには奏が使用した四枚とは別物の数枚のコアメダルが納められていた。
その間に、変身を解いた入間、アメリ、響はその場から離れようとする。
「…イルマ、どういうつもりなんだ?アモウ・カナデも接触した挙げ句、オーズの力まで渡すなんて……」
アメリがそう尋ねる。
入間達は二課とは関わらないスタンスを取っている。しかし、入間はあろうことかわざわざティオとトールに妨害を頼んでまで奏と接触し、仮面ライダーの力まで渡したのだ。
一度仲間と認めた相手にはどこまでも情は深いが、逆に無関心な相手にはとことんドライな入間からすればあり得ない事である。
「……」
入間は、オーズのライドウォッチを見ながら思い出す。
奏を見かけた直前の出来事を……
『……?あれって、天羽奏さん?』
大食漢でありゴーカイガレオンの冷蔵庫を三日で空にしてしまう入間は、買い出しの帰りに通り掛かった開渠の近くで黄昏ている奏を発券した。
『……』
なにやら弱りきっているようだが、自分には無関係だと無視していこうとした時、入間のポケットが光を放った。
『これって……!』
入間がそれを取り出してみると、それはオーズライドウォッチだった。それが、何かに反応するように光を放っていた。
次の瞬間、オーズのウォッチから飛び出した赤い光が収束し、深紅のメダル──タカのコアメダルを形成すると、そのメダルが地面に落ちて、コロコロと転がる。そのメダルが転がる先にいたのは、奏だった。
『……もしかして……』
入間はオーズウォッチを見る。
今の現象は、かつてシアがエグゼイドウォッチの力でゲーマドライバーとガシャットを手に入れた時と何処となく似た現象だった。
『……仕方ない。試してみようかな』
そう言って、僅かな期待を胸に入間は奏に向けて歩きだした。
「…………特になにもなかったよ」
「嘘言え。何かあっただろう」
「まぁ、響にも良い影響が出そうだったし、今はオーズドライバーを渡したままで良いと思いますよ」
「はぁ?別に、あの人のメンタル強くなっても、私に影響なんてないでしょ」
『そう言いつつ、奏っちの熱い言葉にジーンと来てる響です!』
余計なことを言おうとしたバイスに拳を振るうが、霊体であるゆえにすり抜けてしまう。頭痛を感じた響は、そのままオーロラカーテンに入り込もうとし、奏と翼が呼び止めようとする。
「ご主人様よ~!愛しの下僕が帰って来たのじゃ!さぁ、愛でてたもう!」
「フンッ!!」
「あひぃ~~ん♡♡」
空から○パンダイブの体勢で降ってきた妙齢の美女が、入間の回し蹴りを喰らい、その女性──ティオは気色悪…艶めかしい声を上げながら地面に墜落した。
「「えっ?えぇ!?」」
突然の出来事に、奏と翼は混乱する。奏は見知らぬ女性の登場に、翼は自身を見知らぬ空間に引きずり込んでいた時のティオとのキャラの違いに、二人はついていけなかった。
ティオは恍惚の表情でビクンッビクンッとブリッジしながら体を震わせつつ、そのままぬるりと予備動作なく起き上がった。
「ハァハァ、あぁん、ご主人様の使いっぱしりにされた上でこの扱い……濡れてきちゃうのじゃ」
「お帰り、ティオ。けど君のその天性の気持ち悪さは出来ればプライベートにやってほしいかな」
「ティオ!貴様、我が悪魔学校の生徒会役員なのだから少しは規律を重んじたらどうだ!!!」
「……気持ち悪い」
『悪魔の俺っちが言うのもなんだけど、ヤバイですやんこの人。悪魔もドン引き~!』
三者三様のツッコミを入れる入間達。
「入間さーーーん!トールはお使いから帰ってきましたよーー!」
「ムギュッ!?」
しかしそこへ、新たにメイド服を着た美少女ドラゴン──トールが、砲弾のような速度で入間に抱きついた。
人間なら全身の骨がバラバラになりそうな勢いだが、入間の肉体は弱くないので踏み留まることが出来たが、入間はそれで精一杯で、抵抗する暇もなくトールの豊満な胸に顔を埋めてしまった。
「なっ!?トール!お前はスキンシップを控えろ!そんな羨ま……いや破廉恥な!!」
「何を言うのじゃアメリ?妾もお主もご主人様と“ピーッ”したり“ピーッ”や“ピーッ”もしておるじゃろうに。今更騒ぐことなかろう?それよりご主人様よ。妾の胸にも飛び込んで良いのじゃよ?寧ろ、トールとアメリの三人で包んでも良いのじゃよ?」
「なッ、何を言う!!そう言うのは二人っきりの時に……じゃなくて!!」
「やってみろ下級ドラゴンと下等生物!私と入間さんの時間を邪魔するなら塵も残さず消滅させてやろうか!」
「ムグググムーグ……ムグググ……ム、ムグ……(落ち着いてトール……それより……い、息が……)」
「~~ッ!あぁ、もう!とっとと帰るよ!この色ボケ!!」
『何怒ってんの?もしかして響も混ざりたいの?』
「バイス、お前後で殺す!!」
『えぇーー!?何で!?』
ギャーギャーととんでもないことを口走る美女三人に、顔を真っ赤にした響がオーロラカーテンにアメリ達を押し込み、自身の悪魔をキッと睨み付けたあと、ズンズンとオーロラカーテンに入り込んだ。
残されたのは、怒涛の展開についていけていない奏と翼の二人だけだった。
「何なの、アイツ等は…」
「……ハハッ、」
翼も奏も、まだ入間達の事を理解したと言うわけではないが、今回の一件で、良くも悪くも“未確認”に対して抱いていた印象が大きくか割ることとなったのだった。
奏が変身するのは、オーズか迅かで結構悩みましたが、オーズに共通点あるのに気づいたのでオーズを採用しました。
共通点としては……
・体にデメリットを負っている(奏LiNKER、映司→恐竜メダル)
・演者が歌っている。
・女の子を守って死んだ。
こんな感じですね。
シンフォギア編では、装者は全員ライダー化します。
次回予告
弦十郎「君達の目的はなんだ?」
入間「どうなるのかなぁ……」
入間達は敵か?味方か?
未来「やり直したいんだ。もう一度……」
バイス『響は未来の事嫌いなの?』
響の選択は!?
オーズ「あれって、まさか……!」
翼「ネフシュタンの、鎧ッ……!?」
Episode 07 絶唱F:ネフシュタンの鎧