悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME 作:MTHR
キュアアルカナ出ましましたね~。エクリプス・シャドウももう少し見たい気持ちはありましたけど、作者個人としては名乗りのシーンが好きでした。
サリバン邸から差程離れていない距離にある繁華街『マジカルストリート』に、三つの影が足を踏み入れた。
「みゅー!パパとお出掛けなの~!」
幼女──ミュウはステテーという音を立てながらマジカルストリート内を見渡し、目の前に広がる出店の数々に眼をキラッキラと輝かせる。
入間は無邪気な愛娘の姿に頬を緩めつつ、隣を歩いていたトールに視線を向けた。
「そういえば、トールはここに来たのは初めてだっけ?」
「はい!初めてのデートですね♡」
「そういうことじゃないんだけど……」
入間とトールがここにきたのは、トールに近場で買い物ができる場所を覚えてもらうこともあるが、一番の理由は食材の買い足しだ。
今朝、トールは料理をするためのコンロの火力が足りないと思い、自身のブレスを放ったのだ。当然ながら、ただのブレスで料理ができるはずはなく、サリバン邸のコンロは全焼。食材は全て消し炭となってしまった。
再生魔法で復元させる手もあったが、いずれ行くことにはなるため、授業を終えた入間は、キッチンを修理したトールと、非番のミュウを連れてこの繁華街へやって来たのだ。
「トールはここで買い物したこと無かったよね?」
「はい。でも、ここは元の世界のギルドのバザーを思い出しますね。時々人の姿に化けて買い物していました」
「異世界にもそういうのがあるんだね」
あまり聞いたことのない、トールが生まれた世界。入間のイメージでは、魔界のように悪魔やドラゴンだけが存在する世界なのだと思ったいたが、以外と多種多様な種族が存在するらしい。RPGや神話の世界に近いのだろうか。
(考えてみれば、僕ってトールがなんでこの世界に来たのかも、よく知らないんだよね)
悪魔達だけでなく、ユエ達やシエスタ達のように、異世界の存在との交流は幾度となく経験して来たが、基本的に異世界人と出会うのは、入間が異世界に行った中で出会うのが常だった。しかし、トールの場合はその逆だ。神に挑んだ末にこの魔界に来たのは知っているが、何故神と戦うことになったのかは聞いたこともない。
(まっ、いいか)
トールの過去がどうであれ、それは入間が詮索する事ではないし、本人に話す気がないのなら気にも止めない。
誘ったのは自分だが、トールは入間の家に居場所を見出したのだ。大事なのはそれだけだ。例えお料理で厨房を破壊しようが、尻尾の肉を提供されようが、トールが嫌というまでは、入間はトールを見捨てるつもりはない。
「じゃあ、ここの案内のついでに夕飯の買い出しだね」
「はい!今度こそ、トールが腕によりをかけて作りますよ!!」
握りこぶしを作って宣言するトール。確かに、トールの肉体だと分かる直前に口にした尻尾肉は(非常に遺憾ながら)美味だった。素材が良いのか腕が良いのかは分からないが、トールの腕自体は悪くないのかもしれない。といっても、二度と尻尾肉を口にする気はない。
「パパ~!」
すると、繁華街の先を進んでいたミュウが、ある店の前でピョンピョンと跳び跳ねながら手をふってくる。どうやら欲しい物品を売っている店を見つけたようだ。
入間とトールはその店に足を運び、看板に視線を上げる。そこは、かつてサリバンとも立ち寄ったお菓子屋だ。
「お菓子、欲しいの?」
「んみゅ!パパと一緒に食べたいの!」
愛娘のかわいらしいおねだりに、だだ甘な
ミュウとこの世界で過ごすようになってから、入間は自身とミュウを溺愛するサリバンの気持ちがよく分かるようになっていた。
「それにしても……」
ミュウが目をキラッキラさせながら品物を選んでいると、並べられていた品々を眺めていたトールは、神妙な顔つきで呟いた。
「子供を連れて一緒にお店に行くって……私達の子供ができる日が楽しみですね!!」
「子供を作るのが前提なの?」
付き合ってもないだろうというツッコミはしない。何故なら、トータスでエロ吸血姫とウサミミと駄竜の変人達でさんざん似たようなやり取りをしているからだ。
「それで、ミュウ?なにか欲しいのあった?」
「えーっと……えーっとねぇ……これなの!」
ミュウは色とりどりのお菓子の中から幾つかの見た目のお菓子を取り出す。入間は自身の分も購入しようかと並べられたお菓子に視線を転じようとするが、おやつ警察に組み込まれた恋人たちの姿が脳裏に浮かぶと、しばしの葛藤の末に視線をお菓子から外した。彼女達を起こらせるほど、怖いものはない。
選ばれたお菓子を籠に積め、店員の元まで行こうとすると、トールが店員となにやら話しているのが目に入った。
「トール、お会計に行くよ」
「あっ、はい!」
振り返ったトールが弾けるような笑顔を向けてくる。すると、さっきまでトールと話していたと思われる店長悪魔がニッと笑みを浮かべた。
「いやぁ、トールちゃんは面白いねぇ。折角だから、これサービスするよ」
「あっ、ありがとうございます!!」
オマケでお菓子を一箱もらい、トールは笑顔で礼を述べる。
その後、購入を済ませ、お菓子の袋を嬉しそうに抱えるミュウと手を繋ぎながらマジカルストリートの真ん中を歩く入間は、不思議そうにトールを見つめた。
「トール、あの人と知り合いだったの?」
「いえ、初対面ですよ?」
「初対面でオマケしてもらえたの?」
「はい、なんか適当に愛想よくしたら向こうも愛想よくなりました」
「トールって悪魔とか人間の事下に見てるよね」
「いえ違いますよ!ドラゴンは小腹が空いたら必要な分食べてるだけで、所詮この世は弱肉強食というか…!」
「誤解解けてないから。補足説明してるだけだから」
慌てた様子で手をふるトールだが、さらっと悪魔をおやつにしていたことが露見した。
「違いますよぉ!入間さんは特別です!相思相愛で、ミュウは可愛い可愛い愛娘です!」
「まるで繋がっていないハートとハート……。というか、然り気無くミュウを娘にして外堀り埋めようとしないでよ」
「ミュウのママはレミアなのー!」
入間とミュウのツッコミが炸裂する。しかし、彼女のメンタル的にダメージは無いだろう。
(口では他の種族を見下してるみたいだけど、僕を含めて悪魔や人間にも普通に接してる。嫌いって訳じゃないみたいだけど)
そんな風に考えながら、そのまま入間はトールとミュウと共に買い物を進めていく。
その中でも、トールはマジカルストリートの店の店員達と仲良く(端から見るとそう見える)話をしていた。思いの外、コミュニケーション力が高いのかもしれない。
やがて、全ての品を買い終えた入間は、ふとトールとミュウに話しかけた。
「よし……これで買うものは全部ですね……ん?」
「どうしたの、トール……あっ」
トールの視線がある地点に向き、入間もそちらに視線を向けると、そこには一人の悪魔が、老人悪魔の持っていた荷物をぶん取って逃げ去る姿を捉えた。
「ひったくり、また……」
流石に見過ごす訳にも行かず、入間は魔力を練り上げてひったくりを捕まえようとした時、横にいたトールの声が聞こえてきた。
「入間さん、止めるんですか?」
「えっ?まぁ……」
「でしたら私にお任せください!」
握りこぶしを作って意気込むトールに、入間はしばしの沈黙のあと、コクリと頷いた。
「ほどほどにねー」
「はーい!わっかりまし……た!!!」
その瞬間、ズドッという音を響かせ、トールは地面を砕きながら飛び出した。爆風に髪を揺らされ、目を剥く入間を他所に、トールはまるで閃光のような速度で男の目前まで接近した。
突如、メイド服の少女が笑顔で現れた事に目を剥いた男悪魔に向けて、トールは体を捻りながら脳天に向けて鉄拳を振り下ろした。
悲鳴にならない声が、地面が砕かれた音に掻き消された。
トールは乱れた髪をサッとかき上がると、男のそばに落ちたバッグを拾い上げ、老婆に渡す。
その瞬間、マジカルストリートからワァッと歓声が沸き上がった。
「スゴいですね、貴方!」
「今の痺れました!!」
「えっ、あの」
客達はトールの回りに集まり、口々にトールを称賛する言葉を贈り続ける。その光景にトールが目を白黒させる中、入間はミュウを肩車しながら、どうにか人混みを掻き分けながらトールの手をとって人混みから離れた。
入間はトールの手を引きながら、サリバン邸まで続く道を歩いていく中、入間に肩車されているミュウはキラキラした目でトールを見下ろしていた。
「トールお姉ちゃん凄かったの!びゅーんってやって、バーンって!!」
身振り手振りを付け加えながら楽しそうに語るミュウに頬を緩めつつ、入間は手を引くトールに視線を向けた。
「……トール、大丈夫?」
「…いえ。ただ…ちょっと怖かったです」
「ゴメンね。力加減とか教えておくべきだったよ」
「あの……手……」
「怖かったんでしょ?このまま繋いで帰る?」
入間の言葉に、トールはパァッと顔を輝かせると、入間の手をキュッと握り返した。
「はい!」
「むー!トールお姉ちゃんずるいの!ミュウもパパと手ぇつなぐの~!」
「はいはい」
肩から降りたミュウのもう片方の手を繋ぎ、三人で穏やかにサリバン邸を目指していく。
そんな三人の後ろ姿を、物陰に隠れながら観察している小さな影があったが、入間達三人は気付くことはなかった。
その夜。
「出来ましたよ、入間さん!」
「……っ!美味しい!」
「…トール、料理上手い。なんか悔しい……!」
「こ、このままでは料理上手の私の立場が…」
「このままでは、私のアイデンティティーがウサミミだけに……」
「トールお姉ちゃんのオムライス美味しいのー!」
トールが作ったオムライスは、オペラにも匹敵するほど美味であり、家事万能のウサミミとメイドは戦慄するのだった。
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