悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME 作:MTHR
『ゼイン館のデスゲーム』と同様に『七人のジオウ』の時の王者バージョンを投稿します。なんでと許せる方向けですが、どうぞお楽しみください。
Chapter 1 異界漂流
荒れ果てた荒野の中、人々の悲鳴が響き渡る。
我先にと逃げ出していく人々を追いかけるのは、多種多様な見た目をした怪物達。
「はぁ……はぁ…ヒッ!!?」
緑色の虫のような怪物、ずんぐりした白い怪物、機械的な体の怪物達は、逃げ続ける人々の中から、一人の少女を崖下まで追い詰めると、逃げ場をなくした少女を嘲笑うように禍々しい唸り声を上げる。
逃げ場のない状況に、遂に少女は絶望して腰を抜かす。ガタガタと震える少女に、怪物は容赦なく襲いかかった。
「はっ!」
その時、スラリと伸びた脚が割り込み、怪物の頭に蹴りが叩き込まれる。
悲鳴を上げて怪物が倒れる音に、少女は恐る恐る顔を上げると、そこにはいつの間にか、大きく頼もしい背中があった。
「大丈夫?」
その人影は、振り返って声をかける。
それは、美しい女性だった。
頭のてっぺんには屈折したようなアホ毛が生えた腰まで届く艶やかな青い髪を持ち、黒いシャツの上に青色のコートを羽織った美少女。
青髪の美少女は怪物達に向き直ると、どこからかクリアホワイトの腕時計のようなバックルを取り出す。それを腰に当てると、側面から帯が飛び出してベルトとして装着される。
懐からストップウォッチに似た黒と白のアイテムを取り出し、ベゼルを回すと、上部にあるボタンを押した。
少女はそのストップウォッチをベルト側面に装填すると、上部のボタンを押してロックを外すと、美少女の背中に巨大な時計が出現する。
「変身!」
ベルトを回転させると、美少女の姿が変わる。
黒のボディに時計の基盤をもした仮面に、「ライダー」と言う文字が刻まれた戦士──仮面ライダージオウへと。
一方別の荒野では、人々を襲おうとしていた怪物達の行く手を阻むものがいた。
「皆は、下がっていてください!」
人々を守るように立つ、屈折した触覚のある青い髪に、茶色い制服を着た少年は、何処からかタブレットのようにも見える大型のドライバーを腰に巻く。
懐から、バッタと機関車のイラストが描かれた二枚のカードを取り出すと、そのカードを腰のベルトに装填する。
背後に巨大な2枚のカードが現れ、そこからバッタと機関車の幻影が飛び出す。そして少年は両手で円を描き、重ねた手を反転させた後、矢印の先端を形作って正面に突き出し、ベルトのレバーを引いた。
「変身!」
背後のカードが合体し、少年の体が矢印とエネルギーの渦に包まれることで、少年の姿が変わる。
光沢を放つ水色の装甲に、バッタを模したゴーグルを備えた仮面に、向かい合う矢印型の複眼を持つ戦士──仮面ライダーガッチャードへと。
ジオウは向かってきたインベスに鋭い蹴りをいれ、続けてやってきたロイミュードを回し蹴りで地面に叩きつける。
「フッ!はぁッ!!」
次から次へと、ワームやガーディアンがジオウに向かっていくが、ジオウはスラリと伸びた足から繰り出される蹴りでその全てをねじ伏せていくと、腰に巻いているジクウドライバーのジオウウォッチのボタンを押す。
ドライバーを回転させると、ジオウは飛び上がる。
怪物達の周囲に現れた「キック」の文字が、怪人達を一ヶ所に集めるようにぶつかり、1つとなってジオウの足に収束する。
「はぁあああああああああッ!!!!」
急降下したジオウの蹴りが直撃し、怪物達はなす術もなく爆発を起こした。
走り出したガッチャードは、マスカレイド・ドーパントの頭部を両足で挟み、体を捻ることで地面に叩きつける。
「ふっ!はぁっ!でやっ!!」
続けて向かってきた怪人達に、ガッチャードは即座にパンチやキックを繰り出していく。
頃合いを見計らい、ガッチャードはベルト側面のレバーを押し込むと、蹴りの構えを取り、即座にレバーを引いた。
「たぁあああああああああっ!!!」
ワイルドモードになったガッチャードは、即座にライダーモードになって怪人達に超速の蹴りを浴びせる。怪物達は限界を向かえ、一匹残らず爆発を起こして消滅した。
敵を掃討したジオウは変身を解くと、自信が助けた女性の前に歩み寄り、手を差し伸べた。
「大丈夫?」
「は、はい……貴方は?」
優しく微笑みを浮かべる美少女の笑顔に、手を差し伸べられた少女は頬を染めてその手をとる。そして、美少女に助け起こされた少女は、おずおずと美少女に名前を訪ねる。
その問いに、美少女はフッと笑みを浮かべると、自信満々に名乗りあげた。
「
ガッチャードもまた、変身を解いて助け出した人々に歩み寄っていた。そして、助けられた人々から名前を訪ねられたことで、青髪の少年は優しげな笑みを浮かべて答えた。
「時空管理局委託魔導師で、仮面ライダーガッチャードの、鈴木入間です」
“三傑”として名を馳せる大悪魔・サリバンが理事長を勤める魔界の名門校。666人の悪魔が各々の野望を叶える為に日々邁進するその学園の中庭に、複数の唸り声と悲鳴が響き渡る。
『グゥオォオオオオッ!!』
「きゃあああああっ!!!??」
初級インベスが唸り声を上げて、女悪魔の肩を掴み、鋭い牙で女悪魔の肩に食らいつこうとする。女悪魔は抵抗しようにも、インベスから発せられるおぞましい見た目と殺気に怯え、無抵抗にインベスに喰らわれてしまう、その時だった。
「“
『グエッ!?』
横から伸びた樹木が鞭のようにしなり、女悪魔を襲おうとしていたインベスを締め上げる。樹木はそのインベスだけでなく、
女悪魔が目を丸くしていると、彼女の前に、拘束具のようなマスクをつけた白い短髪の大柄な悪魔が現れた。
「大丈夫かい!?早く校舎に逃げるんだ!!」
「バ、バラム先生……!」
生物学教師──【バラム・シチロウ】。
女生徒達が校舎のなかに消えていったことを確認したバラムは樹木の拘束を解く。地面にボトボトと倒れる怪物達を見据えると、バラムは片腕を突き出し、もう片腕を腰に留め、力を込めていく。
「……変身…ッ!」
その言葉と共に両腕を下側に交差させる。
腰に瞳のような造形のベルト──“アンクポイント”が出現すると、バラムの体が緑色の光に包まれ、その姿が変容した。
バッタやイナゴのような生物的で禍々しい深緑色の姿に、金色の角とクラッシャーに赤い複眼を持ち、両肩の肩甲骨の辺りから2枚の羽根の様なオレンジ色のマフラーが出ている戦士──【仮面ライダーアナザーアギト】はゆっくりと構えを取る。
同時に、インベス、ロイミュード、マスカレイド・ドーパント、ワーム・サナギ体、屑ヤミー、ダスタードといった怪人達は唸り声や奇声を上げながら、アナザーアギトに向かって突撃する。
「……フンッ!ハァッ!!」
マスカレイドの拳が繰り出されそうになった瞬間、アナザーアギトはカウンターで拳を繰り出す。
マスカレイドが地面に崩れ落ちると、その隙をつくように飛び掛かってきたガーディアンを回し蹴りで破壊したアナザーアギトは雪崩れ込むように襲ってくる怪人達に向かって、拳を構えて走り出した。
「バラム先生!!」
怪人達を前に奮闘するアナザーアギトに、声が投げ掛けられる。
怪人を抑えながらアナザーアギトがその声に視線を向けると、そこには、
その内の三人の姿は、
青髪の少年──鈴木入間、桃色髪の青年──アスモデウス・アリス、黄緑髪の少女──ウァラク・クララ。
そして、その三人の側に、見慣れぬ少女達の姿があった。
一人は薄茶色のボブカットにオレンジのヘアピンを着け、オレンジのフードつきの上着に黒いショートパンツをはいた少女。
一人はくすんだベージュ色のセミロングヘアでインテークの間の部分に黒いリボンを結び、頭頂部には2本のアホ毛が生えている。瞳の色は紫。白いトップスの上に白い襟と紫のボタンが付いた黒いケープを羽織り、ケープと同色のスカートを着ている。薄紫色のタイツを履き、黒いパンプスを合わせている少女だ。
黒のまっすぐな髪、茶色の眼をもち、袖が無く、肩・腋の露出した赤い巫女服を着て、後頭部に結ばれた模様と縫い目入りの大きな赤いリボンを着けた少女だ。
「またでたのね?キリがないったらないわぁ……」
紅白の巫女服の少女が鬱陶しそうに呟く。
「そんなこと言ったって、放っておけるわけないでしょ?」
「これも事件解決のため」
ボブカットの少女とセミロングの少女は、呆れたような声色で呟きながら、首に下げたペンダントに手を掛けた。
「って、そんな呑気なこと言ってないで、バラム先生に加勢しないと!!」
「イルマ様の命とあらば!!」
「はいはーい!いっちょやってやろー!!」
入間はそんなマイペースなメンバーに慌てたような声をかけると、即座にジクウドライバーを腰に巻く。それに続いて、アスモデウスはビヨンドライバーを、クララはジクウドライバーを巻く。
ライドウォッチを取りだし、起動する。
三人の背後に、時計のエフェクトが現れ、三人は構えて、叫ぶ。
「「「変身!!」」」
入間はマゼンタで顔に「ライダー」と書かれた時の王者──仮面ライダージオウに。
アスモデウスはスマートウォッチのような見た目をした緑と銀の預言者──仮面ライダーウォズに。
クララは月をもした複眼に白いボディを持つ戦士──仮面ライダーツクヨミに。
戦士の姿に変身した三人は、拳を構えてアナザーアギトが奮闘する戦場に向かって走り出す。
それを見て、他の三人も動きを始めた。
ボブカットの少女──【立花響】は、首から下げていた赤い宝石のペンダントを握りしめると、脳裏に浮かんだ歌を口ずさんだ。
「──Balwisyall Nescell gungnir tron」
その瞬間、響の身体が光に包まれる。
衣服が消失した響の身体に、黒とオレンジのインナースーツが装着され、両腕には白と黄色のガンレッド、足には黄色い装甲が生成される。
頭には二本の角のようなものがあるヘッドギアが装着され、身の丈ほどもある長いマフラーが首に巻かれる。
ボブカットの少女──【森亜るるか】は、首に下げたペンダントを手に取る。
「オープン」
その言葉と共にペンダントが光に包まれ、先端はリング状になっており、その内部にカードが斜めに配置されている紫の杖となって、るるかの手に握られた。
「ティアアルカナロッド」
その言葉と共に、るるかの衣服が黒い光を放つ。
ティアアルカナロッドに黒い宝石を嵌め込み、その場で回転すると、光の輪と共にるるかの足下に紋様が現れる。
「シャッフル」
先端のカードを回転させると、るるかのベージュの髪が、金色のロングヘアーに変化する。
「リバース」
ティアアルカナロッドを振るうと、紫の蝶と共に、光に包まれたるるかの姿が変化した。
金髪のロングヘアーを持ち、毛先には薄いピンクのグラデーションが施されている。大きなインテークの上には二本のアホ毛が立っている。瞳の色は赤で、薄紫色のハートのハイライト。
コスチュームは黒を基調としており、ノースリーブワンピースの上から黒いケープを羽織っている。ワンピースのスカート部分には、紫色のしずく型の装飾が多数あしらわれている。
黒いダイヤ型が並ぶ髪飾りを装着しており、その中央下にはしずく型の石飾りが付けられている。また、頭の後ろには黒い蝶の飾りを添えた薄紫のレースを身につけている。
足元は濃い紫色のサイハイソックスを履いており、履き口には金色の装飾が施されている。
靴は濃紺色のショートブーツを合わせた装いとなっている。
「神秘と秘密で包み込む……キュアアルカナ・シャドウ!さぁ、迷宮へ誘いましょう」
姿を変えたるるか──【キュアアルカナ・シャドウ】は名乗りを上げてポーズを取ると、黒い蝶と共に、キュアアルカナから光が放たれ、弾けて消えた。
「アンタらさぁ……その長い変身どうにか出来ないの?」
紅白の巫女──【博麗霊夢】は、派手な変身をする入間達の真横で、呆れたようにジオウ達の変身完了を待っていた。
「そんなことは良いから、早くバラム先生に加勢しよう!!」
ジオウは霊夢の言葉にそう答えながら、ジカンギレードを手にして走り出した。
ジオウの振り下ろしたジカンギレードが、インベスを切り裂く。
「はっ!でりゃっ!!」
「イルマ様!援護を!!」
そのまま、ジオウはジカンギレードで次々と怪人達を切り裂きていく。背後から不意打ちを仕掛けようとした怪人達は、ウォズが発生させた炎によって跡形もなく消し炭にされる。
「おりゃあぁああああっ!!」
ツクヨミは自身の家系能力で大量の自販機を呼び出し、その圧倒的な物量によって怪物達を押し潰す。
その上空では、霊夢はまるで重力など存在していないかのように自由自在に空を飛び、針を投げて怪物達を牽制していく。
やがて、霊夢は空を飛び回りながら怪物達を見下ろし、一枚のカードを取り出した。
霊夢から、色とりどりの光弾が飛び出し、怪物達めがけて飛んでいく。着弾した怪物達は爆発を起こし、跡形もなく消滅する。
そのすぐ側では、響は怪物達達の攻撃を受け流しながら的確なカウンターを、キュアアルカナ・シャドウは素早く相手の懐に潜り込みながら顔面にハイキックを浴びせ、次々と怪物達を退けていく。
やがて、黄金の足に力を込め、瞬く間に怪物達との距離を積め、白いガンレッドが装着された拳を握りしめた。
響の連撃を受けて、怪物達は一斉に
それに続き、俊敏な動きで怪人達を翻弄していたアルカナ・シャドウも、ティアアルカナロッドの先端のカードを回転させ、ティアアルカナロッドで反時計回りに円を描くと、無数の星が現れる。
掛け声と共に、出現したから漆黒の光線が放たれ、怪人達は悲鳴を上げながら爆発四散した。
「皆スゴいなぁ……よし、僕も!!」
ジオウはそんな少女達の奮闘を目にして、負けていられないとジオウライドウォッチのボタンを押し、ベルトのロックを外す。
「ムゥ……!」
それに続くように、アナザーアギトは複眼を赤く光らせると、口元のクラッシャーが展開されて歯が剥き出しになる。両腕を横に開き、右足を前に、左足を後ろにして構えると、緑の紋章がアナザーアギトの地面に現れる。
二人は力を溜め、ジオウがジクウドライバーを360°回転させると、ジオウとアナザーアギトは同時に飛び上がった。
「やぁあああああああっ!!!」
「………はぁっ!!!」
ジオウの“タイムブレーク”とアナザーアギトの“アサルトキック”が同時に炸裂し、中庭にいた全ての怪人達は爆炎に包まれた。
怪物の討伐から数時間後。
怪物騒動の沈静化を教師陣に任せ、入間はかつて、キリヲの本性を知る事となった魔具研究
「もう1ヶ月か……」
入間は壁にある大窓の外に視線を向ける。
普段なら、
しかし、そこに広がっていたのは荒れ果てた荒野。空は一面分厚い雲で覆われており、周囲にはどこを見渡しても広野ばかりで、人工物は一つもない。そして周囲には、インベスやワームなどの怪人が唸り声を上げながら彷徨っている。
当時、トータスから魔界に戻ってきた入間達は、何てことのない日常を楽しみ続けている筈だった。しかし、放課後になってユエ、シア、ティオ、ミレディが先に帰宅し、清掃員の手伝いを終えて帰ろうとした時、何故か
「この子達もいたんだよねぇ……」
入間が視線を後ろに向ける。
そこには、大きな畳と、畳の上でちょこんと置かれたコタツ。そして、そのコタツの周りで屯している三人の少女達の姿だった。
「ずず……」
「変な見た目だけど、意外とイケる……はむっ」
「……」
魔茶を啜る霊夢、魔界の米を頬張る響、魔界のアイスを食べるるるかと、同じ様にアイスを食べている薄紫色の狐のような見た目をした妖精──【マシュタン】。今、
「君らさぁ……少し危機感とか持たないのかなぁ?」
「一仕事終えたんだからいいでしょ?それに、戻る手段が分かんないならのんびりしてていいじゃない」
霊夢が柳に風と受け流す。その言葉を聞いて、入間はため息を吐くと、この隠し部屋に置いてある“ライドウォッチダイザー”に、幾つかのウォッチをセットした。
「……」
その時、アイスを食べていたるるかの視線が一瞬、ライドウォッチダイザーにセットされたライドウォッチに向けられていたが、入間はそれに気付かず、窓の外を見ながらため息を吐いた。
「それにしても、1ヶ月間も先生達が原因究明のために動いてるのに、何も手掛かりがないなんてね」
「おまけに私達までこんな世界に迷い込んだしね」
「全く、何が悲しくて博麗の巫女が悪魔の学校に来なくちゃなんないのよ。私が迷い込むんだったら、魔理沙やアリスが迷い込めば良かったのよ」
響、るるか、霊夢の三人は、元々魔界の住人ではなかった。
それからというもの、入間はこの学校では自分しか知らないこの隠し部屋で匿うことにしたのだ。
とはいえ、入間達もこの1ヶ月間で教師陣と共に原因解明に明け暮れているのだが、事態は全く好転しない。
「そうとは限らない」
そこへ、るるかの声が割り込まれる。
一同の視線が集まると、るるかはアイスのコーンを口に放り、最後の一口までしっかりと味わったあと、マシュタンを抱き上げ、畳の上から腰を上げた。
「……私、響、霊夢。悪魔達が学校ごと転移したのに対して、私達だけがそれぞれ単独でこの世界に迷い込んだ。気にならない?」
「それは、確かに……」
るるかは首から下げたペンダントを軽く持ち上げる。
「それだけじゃない。私達全員が、あの怪物を倒せるだけの力を持ってる」
「あっ!」
それを言われて、入間達も目を見開く。
るるかの言う通り、この学苑に迷い込んだ全員が、外に蔓延る怪物達を撃退する力を持っている。故に、入間達も時折戦闘に手伝ってもらう事があった。
「流石ね、るるか!」
「それって、怪物を倒せる私達が、この学園に集められたって事なの?」
「……」
マシュタンの称賛や、続けてきた入間の問いに、るるかは答えない。
無言で窓の外を眺めた後、るるかはポケットから取り出した
その時、
鬱蒼とした森の中。
生い茂る草木を掻き分けながら、森の中を歩いていく小さな人影があった。
「……まだ見つからない」
金髪紅眼の小柄な美少女──ユエは辺りの森林を見渡しながら、僅かに眉を潜める。
彼女は、いつまでも帰ってこない最愛の人を探していたはずなのに、気が付けばこんな鬱蒼とした不気味な森の中にいたのだ。当然ながら、ユエはこんな森に足を踏み入れた記憶はない。
そのまま1ヶ月もの間、この森を彷徨い続けている。魔力が尽きない限り不死身の吸血鬼とは言え、ユエならばサリバン邸に転移することも出来ただろう。しかし……
「それに……魔法が使えないなんておかしい……」
サリバン邸にゲートを繋げようとするも、ゲートが開けた瞬間に消える事に困惑を隠せない。この森の中に来てから、ユエは何故か空間魔法による転移が使えなくなっていた。より正確に言うと、発動した瞬間に消えてしまうのだ。
『グォオオオオオッ!!!』
「ッ!」
その時、雄叫びと共に近くの茂みから、初級インベスが飛びかかってくる。
突然の襲撃を紙一重で回避したユエは、辺りを見渡す。そこにはいつの間にか、初級インベスの他にも多種多様な怪人達が草木を掻き分けて姿を現し、ユエを取り囲んでいた。
ユエは腰に手を翳し、ウィザードライバーを出現させると、レバーを操作してハンドオーサーの向きを変えた。
「変身!」
魔法陣を潜り抜け、ユエは仮面ライダーウィザードに変身する。愛用武器のウィザーソードガンを手に取ると、迫り来る怪物達を迎え撃った。
「入間……!アリス、クララ……!」
迫り来るインベスを切り裂き、背後から飛びかかろうとした屑ヤミーに回し蹴りを御見舞いする。敵の数は多く、終わりが見えない。しかし、
「さてと、先ずは……」
ヘルメットを外し、青い髪を揺らしながら、美少女──『入間』は
そこにはゾンビのような動きで屯している初級インベスや屑ヤミーの姿があり、それを見て『入間』はジクウドライバーを取り出した。
「先に印象を良くしておかなくちゃね」
「変身!」
『入間』は、仮面ライダージオウに変身すると、拳を握りしめて怪物達に向かっていき、パンチやキックを繰り出した。
初級インベスや屑ヤミー達もジオウを敵と認識して突撃しようとするが、ジオウの戦闘スキルの前に成す術もなく倒れていく。
「イルマ様!」
「イルマちーー!!」
そこへ、校舎からウォズとツクヨミが飛び出し、初級インベスや屑ヤミー達に切りかかる。ジオウは二人に視線を向けないまま怪物達に攻撃を続け、二人の真横を通りすぎた時、ウォズとツクヨミは、聞きなれた音声を耳にした。
「「えっ?」」
その瞬間、校舎からマゼンタの光を纏う何かが飛び出し、初級インベスを踏み潰した。
インベスの悲鳴が響き、爆発を起こしながら消滅すると、そこから時の王者──仮面ライダージオウが姿を現した。
「……フッ!」
ウォズとツクヨミの視線が交差していくのを他所に、ジオウは拳を握り、怪物達に向けて走りだす。
同時に、ジオウに続くように、シンフォギアを纏った響、そしてるるかが変身したキュアアルカナ・シャドウが校門の前に降り立った。
二人は即座に怪物と戦闘を開始するが、ウォズとツクヨミが戦いもせずに呆然としているのを見て、響は鋭い視線を飛ばしながら声をかけた。
「ちょっと、この程度の相手に何を……は?」
「……えっ?」
二人の視線の先にいた人物──ジオウの姿を眼にした瞬間、響だけでなく、アルカナ・シャドウですら眼を丸くする。直ぐに二人は首を90度横にすると、そこには怪物達を相手にするジオウの姿……
四人が揃って眼を丸くしていると、校舎から飛び出したジオウはジオウウォッチのボタンを押し、ドライバーのロックを外して360度回転させる。
「はぁああああああああっ!!!」
ジオウの必殺の蹴りが、初級インベスや屑ヤミーを纏めて爆発させ、跡形もなくこの世から消滅させた。
一方で、ジオウは召喚したジカンギレードに“ブレイドライドウォッチ”を装填し、腰を低くして構える。
「はっ!せぃっ!やぁああああっ!!!」
走り出したジオウが手にする、蒼電を纏ったジカンギレードの一閃が、次々と怪物達の体に刻み込まれる。次の瞬間には、怪物達は示し会わせたように爆発を起こした。
怪物が一掃され、ジオウは構えを解いて振り替える。
その視線の先にいたのは──仮面ライダージオウの姿だった。
「「……えっ?」」
ウォズ、ツクヨミ、響、アルカナ・シャドウを間に挟み、二人のジオウが間抜けな声を上げる。二人のジオウはジクウドライバーに装填されたジオウライドウォッチを取り外して変身を解くと、生身の姿を晒した。
一人は、
一人は、黒いシャツとズボンに蒼いコートを着た美少女──鈴木入間。
服装も性別もまるで違う二人。しかし、その顔立ちはどうしようもない程にそっくりだった。
「イルマ様が……二人!?」
「何がどうなって……!?」
変身を解除したアスモデウス、クララ、響、るるかも目を丸くして唖然としていると、背後から声が聞こえてきた。
「やっと着いたぁ~」
「「「…ッ!?うわぁっ!!??」」」
「ッ!?」
そこにいたのは、茶色を基調とした制服らしきものを着た少年。
その顔もまた、入間とどうしようもない程にそっくりであり、アスモデウスとクララと響は思わず声を上げ、るるかも声を出さないながらも驚きを露にして、一同は
その茶色い制服を着た入間もまた、目の前にいる蒼い髪の人物の姿を眼にして、目を丸くさせた。
「……えっ?僕が……1……2……3?」
「何がどうなってんのよ!?」
「わかんないよ……!」
「……へぇ、面白そう」
口端をひきつらせる茶色い制服を着た入間と、響の言葉に混乱して答える入間を見て、入間(♀)はニヤリと楽しそうな笑みを浮かべるのだった。
荒野がひろがる道なき道に、エンジン音が鳴り響く。
「はぁ……はぁ……!」
触覚のある特徴的な青い髪を持つ少年──鈴木入間は、息を切らしながら必死に走っていた。足を止めずに後ろを振り替えると、そこには赤いラインの施されたバイク──“コードゼロイダー”にのった人物が、自信を追いかけていた。
「あうっ!!?」
コードゼロイダーがスピードを上げたことで、入間は咄嗟に真横にあった草むらに転がり込むことでバイクの直撃を避けた。
バイクが目の前で急停車し、呻いていた入間が顔を上げると、停車したコードゼロイダーから降りた白いロングコートを着た青年は、被っていたヘルメットを外し、真っ白な髪を風に靡かせながら、蒼い瞳で入間を見下ろした。
「なんで……なんで僕を!?僕が何をしたんですかッ!?」
眼に涙を浮かべながら叫ぶ入間。
白髪の青年──善井正義は、その手に「KAMEN RIDER ZEZTZ」と記された戦士の姿が描かれたカードを手にすると、そのカードが光を発し、黒と緑を基調とした胸ベルト──“ゼッツドライバー”となった。
「貴方の罪は、貴方が鈴木入間であること……そして私は、その罪に裁きをもたらすために来た」
正義はゼッツドライバーを胸に装置すると、赤い球状のアイテム──“インパクトカプセム”を取り出し、ゼッツドライバーの中央にセットした。
ゼッツドライバーのトリガムを押し、待機音が鳴り響くと、正義は左手の親指で下唇をなぞるように左腕をスライドさせる。
「This is the beginning of the purge. ……変身」
こめかみの辺りでフィンガースナップを行い、最後に左手の親指でドライバーをなぞるようにカプセムを回転させる。
全身が赤黒いもやのように包まれながら真っ黒な強化被膜の素体を形成、続いてゼッツゲイムラインと緑の模様が浮かび上がり、最後に複眼に赤い光が充填されるように色づいた。
正義は、黒と緑を基調としたスマートかつマッシヴなシルエットに、仮面ライダー1号を彷彿させる赤いラインと複眼を持つエージェント──【仮面ライダーゼッツ】へも変身した。
「……ッ!」
それを見た入間は、震えた手でジクウドライバーを腰に巻く。それを見たゼッツが歩きだし、入間はそれに怯えながらも、ジオウライドウォッチを手に取った。
「へ、変身!」
入間は仮面ライダージオウに変身し、ゼッツに飛びかかり拳をつき出す。しかし、ゼッツは体を僅かにそらしてその拳を回避すると、ジオウにアッパーを食らわせる。
赤い衝撃波を纏いながら繰り出された一撃に、ジオウは呻き声を上げながら地面を転がった。
「うぅ……!!」
呻きながらジオウはジカンギレード・ジュウモードを召喚する。対して、ゼッツは緑色のカプセムを取り出す。
ゼッツドライバーにカプセムを装填し、親指でドライバーをなぞるようにカプセムを回転させる。
全身の赤いラインが、緑色に変化して複眼も緑色に変化する。胸部には左右非対称の模様が描かれた姿に、両腕に大きな盾を装備した【エスプリムバリア】に変身したゼッツは、両腕の盾でジカンギレードの銃弾を防ぐ。
「ふっ!はぁっ!!」
「うっ!?がぁっ!!!」
ゼッツは両腕のレムディフェイスを使い、ジオウに強烈な打撃を与える。ジオウは反撃をしようにも、ゼッツの攻撃の勢いが早すぎて、反撃どころか防ぐだけで精一杯だった。
強烈な一撃を受けて吹き飛ばされるジオウ。それを見たゼッツは【フィジカムインパクト】に戻ると、ゼッツドライバーのトリガムを三回押し、カプセムを回転させ、腰を深く落として右足に重心を乗せ、両の拳を握ったまま右腕をこめかみに、左腕を腹の辺りで構える。
溢れる程のインパクトゲイムを右足へとチャージし、ジオウへと突貫する。
「はぁっ!」
「ぐっ!」
「ふんっ!!」
「ぐふっ!!?」
ゼッツの赤いエネルギーを纏う蹴りが二回連続で炸裂し、ジオウは全身から火花を散らす。
距離を取ったゼッツは、全身を赤く光らせながら飛び上がり、右足を突き出してジオウに向けて急降下した。
「はぁああああああああッ!!!」
「うわぁーーーーーーーーっ!!!!?」
ゼッツの飛び蹴りが直撃し、ジオウは『777』の文字を浮かび上がらせ、下に線が伸びて『ZZZ』と言う文字となった瞬間、ジオウは盛大に爆発を起こした。
爆煙が晴れると、そこには力なく地面に倒れたジオウが、マゼンタの粒子となって消滅する光景があった。
「よし……では、次の鈴木入間の粛清といきますか」
カプセムを取り外して変身を解いた正義は、コードゼロイダーを急発進させ、その場を後にした。
正義「鈴木入間がいっぱいですね……」
るるか「別次元の鈴木入間……」
ユエ「……貴方は?」
入間「遊びは終わりにしようか」
ガッチャード「どうしてこんな事を!!」
入間「鈴木入間は、一人で十分ってこと」
感想、評価お待ちしております。