悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME   作:MTHR

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 サブタイトルは仮面ライダーWをイメージしております。

 本編も進めたいのに、こっちの作品の方が筆が進むのは何故なのか……


EP04「Dな使い魔/メイジキッズ」

 生徒達の罵倒と怒声がしばらく続いた後、シュヴルーズの授業は、ルイズの爆発によって中止となり、しぶしぶその場で解散することになった。

 

 当事者であるルイズは、その責任として魔法抜きで教室の片付けを命じられた。尤も、ルイズには魔法が使えないので、それはあまり意味のないものだったが。

 

 因みに、使い魔である入間は有無を言わさず手伝いをさせられた。何で自分がそんなことをしなければならないのかと思ったが、言っても無駄だろうと判断して素直に手伝った。

 

(にしても、あの魔力量に、感じたこともない質の魔力……決まりだね)

 

 新しい窓ガラスや机と椅子を運び込んでから、散らばったガラス片を箒で集めながら、入間はぼんやりと考えていた。

 

 というのも、ルイズが魔法を発動させた時、入間は確かに感じたのだ、ルイズの中に眠る魔力の大きさに。少なくとも、あの時感じた魔力には、ティオの“ブレス”に近いほどの魔力を感じていた。

 だが同時に、ルイズの体から溢れたのは、入間が感じたこともない魔力だった。炎でも水でも風でも、土ですらない。当然ながら、魔術とも、神代魔法とも違う。

 

 そして、魔界にゲートを繋げたルイズの異常性を鑑みた結果、入間の中で導きだした答えは一つ──ルイズの系統は、今は失われた伝説の系統“虚無”であると言うことだ。

 

 これを他のメイジが聞いたら、劣等生のルイズが伝説だなんて何をバカなと言うだろうが、底辺から這い上がってきた入間にとって、劣等生なんて肩書きはないのと一緒だ。

 使い魔のルーンに視線を落とす。異世界に干渉する力を阻害するようなルーンなんてどんな代物だと思っていたが、神代魔法と同じように伝説の代物であるなら頷ける。

 

 これからは虚無について調べないと…図書館で調べてみようかな…と入間がぼんやりと今後の方針を固めていると、ずっと黙って片付けをしていたルイズがポツリと呟いた。

 

「……これで分かったでしょ?私がゼロって呼ばれる理由……」

「……」

 

 チラリと視線をルイズに向けた入間だが、その背中をみて、直ぐに片付けを再開した。

 

「そうよ。何を唱えても、爆発ばっかり……魔法の成功率はいつもゼロパーセント……それで付いたあだ名が“ゼロ”のルイズ………笑っちゃうわよね!魔法も使えないくせに偉そうにしてさ!!」

 

 やがて、悲鳴のようにも聞こえる声を出して叫ぶルイズ。

 しかし、入間は何の反応も示さない。ただ淡々と片付けをこなしていくだけだ。返事もしなければ、ルイズに視線を向けることすらしない。

 

 その態度に、ルイズはこれまで溜まっていた鬱憤を爆発させた。

 

「何でなにも言わないのよ!あんただってどうせ私の事、馬鹿にしてるんでしょ!?貴族のくせに魔法が使えない落ちこぼれだって!!メイジ失格のできそこないだって!!笑えば良いじゃない!!アンタも笑って馬鹿にすれば良いじゃない!!」

「……」

「うっ、うぅ……ヒック……どうして、どうして……私は魔法が使えないのよっ!!」

 

 そして、とうとうルイズは泣き出してしまった。

 沈黙を貫いていた入間はルイズの泣き声に煩そうに顔をしかめると、溜め息を吐いて答えた。

 

「どうでもいいよ」

「…なん、ですって……!?」

 

 冷ややかな態度に入間を睨み付けるルイズ。入間は作業の手を止めてルイズの方を振り返ると、呆れたような口調で再び口を開いた。

 

「どうでもいいんだよ。君が魔法が使えないことも、ゼロって呼ばれてる理由も、自分の事を棚にあげて人を見下しているのも、僕にとっては道端の石ころと同じくらいの事でしかない。気に止める必要もなければ、理由もない。だから、君がゼロって呼ばれてても何も感じないよ。そもそも他人事なんだし」

「なっ……!?」

 

 あまりにも冷たい言葉に絶句するルイズ。しかし、そんな態度に怒りが沸き上がって反論しようとするが、入間の絶対零度よりも冷たい視線を向けられて、その視線の謎の圧力に押されてしまったルイズはたじろぐ。

 入間は、掃除を再開させながら続ける。

 

「それとも、僕が君を笑えば満足?それか同情してほしかった?悪いけど、僕は人の失敗を笑う気はないし、それくらいの事で君に同情する気はないよ。君は赤の他人なんだし」

「あ、赤の他人って……」

「君は僕を使い魔とか下僕だとか思ってるかもだけど、僕は君を主人だなんて思ってない。だから君が魔法を使えなくても興味もないし、信頼も信用も友情も感じてない。だからと言って嫌悪してるわけでもない。結局、さっきも言った通りどうでもいいんだよ」

 

 そう言うと、自分の担当区分の掃除を終わらせた入間はさっさと教室を後にした。

 

 ルイズは入間が閉めた扉をしばらくの間睨み続けていたが、入間から告げられた冷たい言葉を思い出すと、やがて決壊したかのように、涙を溢した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室を後にした入間は廊下を歩いていた。

 “虚無”について調べるために図書館を探す入間は、先程のルイズの事を思い浮かべて、溜め息を吐いた。

 

(……魔力量はこの学院の誰よりも大きい…それこそ、高位階(ハイランク)の悪魔並みに。けど、それを形に出来てないんだね)

 

 神代魔法も、修得した者の適正によって強さは変化する。

 ルイズが虚無の系統ならば、虚無を扱うには他の系統魔法とは異なる、なにか特別な方法があるのだろう。結果、ルイズの内包する強大な魔力だけが暴走したのがあの爆発だ。

 

 それを教えてやるべきかとも考えたが、止めた。

 

 ルイズの事情は、入間には関係がない。ルイズが“虚無”であることも、この世界にとってのイレギュラーであっても、異世界人である入間には、何の関係もない話なのだ。ルイズの魔法に関する問題はルイズ自身の問題であり、入間には魔界に帰るための力を“虚無”に連なる力で阻害されているという問題に直面しているのだ。簡単なことなら手を貸してもいいが、明らかに時間がかかりそうか伝説の魔法を使えるようにするなんて出来る余裕はない。

 

「ん?」

 

 その時、入間はある部屋の前で、何やら騒がしい音を聴いた。

 それだけならどうでもいいと無視したのだが、何やら聞き覚えのある声を聴いて、部屋を覗き込む。

 

 『アルヴィーズの食堂』と呼ばれるこの場所は、まさに貴族が食事をするのにふさわしいと言えるような、煌びやかで贅沢な造りとなっている。そんなことに関心のない入間は無視しようとしたが、聞き覚えのある声が聞こえてきて、食堂に足を踏み入れて、人だかりの中にはいっていった。

 

「申し訳ありません!申し訳ありません!!」

 

 そこでは、今朝洗濯を手伝ってくれたメイド──シエスタが、金髪のキザっぽい貴族に叱責されていた。

 

 入間は近くにいた貴族に事情を聴いてみると、どうやら金髪の貴族【ギーシュ・ド・グラモン】は、クラスメイト達と現在誰と付き合っているのかという話題で話していた時に、ポケットから落ちた香水の瓶をシエスタが拾ったのだが、その香水をきっかけにギーシュが二股していたのがバレ、それにより彼女たちはギーシュに盛大なビンタを食らわせ、ギーシュはフラれたて大恥をかいたらしい。

 そして、ギーシュは香水を拾ったシエスタに、彼女が香水を拾わなければよかったいちゃもんをつけたということらしい。

 

「しょうがないなぁ…」

 

 他人であるなら無視したが、シエスタには洗濯場を同じ教えてもらった借りがある。

 入間は人混みを掻き分けると、シエスタの前に立った。

 

「そこまでだよ」

「なっ、何だね君は!?」

「い、イルマさん!?」

 

 突然の乱入者に、ギーシュとシエスタは驚きを露にする。

 ギーシュは、突如目の前に乱入した入間がルイズの使い魔であることを思い出すと、わざとらしく髪をかき上げた。

 

「君は…たしかゼロのルイズが召喚した平民じゃないか。引っ込んでいたまえ、僕は今忙しいんだ。そのメイドに貴族として正当な教育というものを施してやらなければならなくてね」

 

 ギーシュの言葉に、入間は絶対零度よりも冷めきった目でギーシュを見ながら口を開いた。

 

「アホらしい……。そもそも、君が自分の恋人を二人作ってたことを隠してたのが全ての原因でしょ?人の善意に当たり散らしてる暇があるなら、今すぐシエスタに謝罪して、君が二股してたっていう子に謝りに行きなよ」

「い、イルマさん!?」

 

 入間の言葉に、ギーシュの表情がひきつり、シエスタの表情が青くなり、周囲からドッと笑い声が上がる。

 

「君には分からないさ。薔薇は多くの人を楽しませるためにあるんだから、僕は彼女達と平等に付き合いを……」

「平等に付き合うっていうなら、最初から堂々としてればそうならなかったでしょ。そうしなかった結果が今の状況だよ。そんなことも分からずに人を楽しませるとか……君、頭大丈夫なの?」

 

 それでもなんとか面子を保とうとしたギーシュだが、遮られた入間の言葉に再び表情をひきつらせる。

 そんなギーシュに、9人の女性と同時に付き合っている男、入間は「これだからガキはさぁ」というような表情でギーシュに指摘をしてやることにする。因みに、入間とギーシュの年齢は二つしか違わない。

 

「君とその二人の馴れ初めなんてしらないけど、自分に好意を伝えてきてくれたなら、真剣に返すのが当たり前でしょ?それこそ、二股をするなら『僕には君以外にも付き合ってる人がいる。』って白状するとかね。でも君はそれをせず、二人の女性の好意を裏切ったんだ。なのに、君は自分で傷付けた二人の女性に謝罪をするどころか、何の咎もないシエスタに罵詈雑言を浴びせているなんて、見苦しいことこの上ないよ」

「なっ、なっ、なっ……!」

 

 入間の指摘に、顔を真っ赤にするギーシュ。

 周囲からは「その平民の言う通りだ!」「早くそのメイドに謝れよ~」という挑発の声が次々と聞こえてくる。先程までギーシュがシエスタを叱責するのをニヤニヤと見ていたくせにこれである。明らかにシエスタを気遣うのではなく面白がっている事が明らかだ。

 呆れたような目を周囲に向けつつ、入間はパンパンと手を叩いた。

 

「はい、これで話は終わり。シエスタも、もう行っていいよ」

「えっ?で、でも……」

「いいからいいから。僕も用事があるし、後は仕事に……」

「待ちたまえ!!」

 

 そこで、再びギーシュが声をあげた。

 図書館に向かおうとしていたのに、それを邪魔されたことに入間の眉がピクリと動く。振り返ると、ギーシュがこちらを睨み付けていた。

 

「どうやら、君は貴族に対する礼儀を知らないようだね……良いだろう!君に貴族に対する礼儀を教えてやる!決闘だ!!」

「はぁ……」

 

 面倒そうに溜め息を吐いた入間。直ぐに終わらせようとこの場でデコピンを食らわせようかと思ったが、ある考えが思い浮かび、思い止まる。

 メイジとの決闘と言うなら、十中八九、ギーシュは決闘で魔法を使ってくるだろう。この世界での魔法にはどんなものがあってどう攻撃してくるのか、知っておいても損はないだろう。負けるなんて可能性は微塵もない。この世界の魔法の全てを知ったわけではないのだが、ギーシュは明らかに魔法が使える()()。殺し合いを経験したこともなければ、戦闘訓練を受けたのかどうかも疑わしいレベルだ。戦いのたの字も知らないようなギーシュと、神殺しを成した入間とでは、月とすっぽんどころか、アリと太陽と称するほどの隔絶した“差”があるのだ。

 それに、上手く行けば()()()()()()()()()()可能性がある。後々面倒が続くより、今この場で少し時間をかけてその後が楽になるなら、今この場で時間をかけた方がいい。

 

「ヴェストリの広場で待つ、逃げることは許さない!!」

 

 自分が死刑執行書にサインをしてしまったことにも気付かず、ギーシュは立ち去る。

 

「あ、あなた……殺されちゃう…貴族を本気で怒らせたら……」

 

 そしてそのまま、シエスタは脇目も振らず走り去った。入れ替わりで、今度はルイズが駆けつけてきた。

 

「あんた!何してんの!?見てたわよ!?」

 

 歩きだそうとした入間は、後ろから声をかけられて振り向くと、そこにはいつの間にかルイズが立っていた。

 

「君かぁ……何の用かな?」

「何の用じゃないわよ!何勝手に決闘なんか約束してんのよ!」

「承諾もしてなければ約束もしてないんだけどね。まぁ、さっさと終わらせたいし、少し行ってくるね」

 

 入間はヒラヒラと手を振ると、歩きだそうとする。しかし、その前にルイズが立ちはだかった。

 

「アンタねぇ、ギーシュと決闘なんて怪我だけじゃ済まないわ!いや、怪我で済んだら運の良いほうよ!」

「なんで?」

「何でって……バカなこと聞いてるんじゃないわよ!『平民はメイジに絶対に勝てない』これは、絶対の常識よ!」

「へぇ~、そんな常識があるんだ。けど、その常識の根拠は?」

「メイジは魔法が使えるのよ!勝てるわけないじゃない!!」

 

 分かっていたことだが、改めて呆れてしまう。魔法の存在が強さに大きく影響するのは認めるが、()()()()()()()で「絶対に勝てない」なんて、入間からすればざれ言も良いところだ。

 悪魔学校に入学したての頃に入間がアスモデウスを倒したように、魔力も持たない海人族のミュウが()()()を手にしたように。

 

「大丈夫、僕最強だから」

 

 最後に、ちょっとした洒落のつもりで、人間界で少しだけ読んだ呪術師漫画の台詞を口にすると、入間は近くのメイジに決闘の場を聞きに行った。

 

「何よ、アイツ……もう知らない!アンタなんかギーシュに負けちゃえばいいのよ!!」

 

 ルイズは顔を真っ赤にして、遠ざかる入間の背中に向けて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、図書館ではコルベールが資料を読み漁り、入間の左手に刻まれたルーンの調査を行っていた。

 人間を使い魔にするという前例のない使い魔の上、刻まれたのは今まで見たことがないルーンであったのだ。はたしてどういうものなのか、前例はあったのか、それがどうしても気になっていたのだ。

 

 その中である書物に目を通しているとようやく該当するルーンが見つかり、そのルーンに関する項目を読んでいたコルベールの顔が見る見る蒼くなっていく。

 

 そしてそのままその書物を抱え図書館から足早に出ていった。




次回予告

ギーシュ「諸君、決闘だ!!」

オスマン「詳しく説明するんじゃ、ミスタ・コルベール」

 ──決闘!青銅VS時の魔王

入間「僕は自分の事を平民だなんて言ってないし、魔法が使えないなんて一言も言ってないよね?」

ルイズ「アンタ、何者なの……!?」

EP05「甘さゼロ!凄絶のイルマ」




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