悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME   作:MTHR

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 タイトルを変えて、仮面ライダーガヴ35話風にしました。

 それから、先に言っておきます。
 ギーシュファンの皆様、ごめんなさい。


EP05「甘さゼロ!凄絶のイルマ」

 トリステイン魔法学院の学院長室。

 入間のルーンを調べていたコルベールは、1冊の本を小脇に抱えながらその部屋に飛び込んだ。

 

「オールド・オスマン!失礼しますぞ!」

 

 ドアを開け、まず目に入る正面の執務机には、誰も座っていない。視線を横に向けると、秘書が頭を抱えて蹲る老人に、何度も蹴りを入れていた。

 

「おや、ミス・ロングビル。またオールド・オスマンが何か?」

 

 【ロングビル】と呼ばれた秘書は、コルベールの姿を認めると蹴る足を止め、息とやや乱れた服を整えた。

 

「いえ、食後の軽い運動ですわ、ミスタ・コルベール」

「わしはサンドバッグか何かか…?」

 

 何処ぞのドMの変態竜のように喘ぐことはなく、情けない格好で蹴りを受けていた【オールド・オスマン】が立ち上がる。

 

「そんな事よりオールド・オスマン! 大変な事が起きました!」

「わしがサンドバッグにされておるのは君にとっては小事なのかの…。まぁよい、全ては小事じゃ、落ち着きなさい」

「落ち着いてなどいられません!ここ、これをご覧下さい!」

 

 コルベールが開かれたページを見やり、長い白鬚を撫で付けるオールド・オスマン。これがどうした、と言わんばかりの表情だが、続いてコルベールが差し出した、入間のルーンのスケッチを見ると、その目付きが険しい物に変わった。

 

 

「ミス・ロングビル。席を外しなさい」

 

 齢100年とも、300年とも言われている偉大なるメイジはメイジは、威厳を感じさせる言葉を受け、ミス・ロングビルが席を立ち、学院長室から出て行った。それを見届けると、改めて口を開いた。

 

「詳しく説明するんじゃ、ミスタ・コルベール」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トリステイン魔法学院の北側に位置する、火の塔、風の塔、本塔に囲まれたヴェストリの広場と呼ばれる場所では、これから行われる『決闘』と言う名の、貴族による一方的な制裁を目で楽しもうとする貴族で溢れかえっていた。

 

「諸君、決闘だ!!」

 

 ギーシュが宣言をすると、周囲の貴族が歓声をあげる。

 

「ギーシュが決闘するぞ!相手は使い魔の平民だ!!」

 

 腕を振って歓声に応えるギーシュから10mほど離れて相対していた入間は、そんな生徒達の姿にゴミを見るような目を向けた後、ギーシュに視線を戻し、溜め息を吐いた。

 

「とりあえず、逃げずに来たことは、褒めてやろうじゃないか」

 

 薔薇の花を弄りながら言ったギーシュは、退屈そうに欠伸をする入間を見ながら、芝居がかった仕草でルール説明をする。

 

「ルールは簡単だ。どちらかが降参して、相手がそれを認めれば勝ちだ。そしてもう一つ、特別ルールだ。僕に限って言えばこの薔薇、これは僕の杖でね。僕がこれを手放しても君の勝ちとしよう」

「オッケー、確認したよ。だけど、一つ確認していい?」

「確認?」

 

 そこで、初めて入間が口を開いた。

 ギーシュは何を言っても平民のざれ言だなと聞き入れるつもりはなかったが、次に出てきた一言に動きを止めた。

 

「簡単だよ。君はこの決闘で、どんな目に遭っても自分で責任をとること。僕に負けて半殺しにされても、君は僕を責めない、ってね」

 

 入間の言葉に、周囲から笑いが沸き上がる。

 一方で、ギーシュは明らかにこちらが見下されている事を察して、顔を真っ赤にしながら入間を睨み付けた。

 

「な、何が言いたいのかな、平民……?」

「いやぁ、そもそも、自分の二股が原因なのに、君の八つ当たりに付き合わされた上で決闘なんてねぇ……君くらいだと、殺さない方が難しいんだよ。戦えばどう手加減しても君を半殺しにしちゃうけど、それが原因で後でいちゃもんつけられるのも嫌だし、自分で始めた決闘なんだから、死にかけても文句は言うなって言ってるんだよ」

「なっ!!?」

 

 呆れたような口調で、自然にギーシュの二股がばらされてしまった。周囲からは笑いが止まらない。入間がギーシュが怪我をしても自己責任と言う言葉は誰も信じていないようだ。

 

 一方で、ギーシュは自分を見下す平民や、周囲に自分の二股をばらされたことに顔を真っ赤にしながらも、衆人観衆の前で喚き散らす無様を晒すわけにはいかないと、更にい顔を真っ赤にして宣言する。

 

「ふ、ふん!平民の下らない戯れ言だけど……良いだろう!尤も、君の言ったことなんて絶対にあり得ないことだがね!!」

 

 入間は見事に策に嵌まったな、と内心呆れていた。

 こう言ったプライドの高い相手は、少し挑発するだけで直ぐに怒りを露にするが、こうも簡単に自己責任を呑み込むとは。入間が魔法を使えないと思っているにしても、宣言した以上、ギーシュは決して入間に半殺しに文句を言えなくなった。更に言えば、密かにこの学院に在籍しているメイジ全員に魂魄魔法を使い、この決闘で入間を責めようとすれば、地獄の苦痛を味わう魔法をかけてある。

 更に言えば、こうしてギーシュの怒りを引き出せば、彼は自分を叩き潰すために多くの手数を見せてくるだろう。どうせ戦闘魔法を確認するなら、出きる限り多くの魔法を見ておきたかったのだ。

 

「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」

「別にないよ」

 

 ギーシュは荒々しげに、手にしていた薔薇の花を模した杖を振った。その花から散った一枚の花弁が瞬く間に甲冑を身に着けた女戦士の像となった。

 

「僕の二つ名は“青銅”。よって、君の相手は青銅のゴーレム、ワルキューレが務める。よもや、異論はないだろうね?」

「良いよ、それで。けどまぁ……」

 

 入間はワルキューレを見据えると、右中指に嵌めた“悪食の指輪”のダイヤルを回し、出力を調整しながら口を開いた。

 

「それなら僕が“魔術”や“魔法”を使っても文句はないよね?」

 

 その言葉に、誰もが耳を疑う。

 しかし入間はそんなこと等気にせず、悪食の指輪を嵌めた手を指鉄砲の形にして、まるで獲物を狙うスナイパーのように、人差し指と中指の先をワルキューレに向け、一言。

 

「──“ラファイア”」

 

 その瞬間、入間の中指の悪食の指輪から、“紫の炎”が飛び出した。

 

 ハルケギニアのメイジでは決して出せない色をした炎は、まるで怪物のような形を作り、ワルキューレに食らいついた。

 

ゴォオオオオオオッ!!

 

 青銅の女戦士を食らった炎の魔物が唸り声をあげる。

 実際には炎がワルキューレを燃やしてるだけでそんな声などしていないのだが、禍々しい怪物のような形を作りながら燃え上がる炎の中で、ゴーレムとは言え女性をもした者を成す術もなく焼き尽くすその光景は、まさに地獄の刑罰の一つのように感じられた。

 

 炎がフッと消える。

 残されていたのは、原型もとどめていない程に焼き崩されたワルキューレと、無惨に焼け爛れた地面だけだった。

 

 沈黙が辺りを支配する。

 しかし、次の瞬間には、悲鳴が広場を支配した。

 

「う、うわぁああああああああっ!!!!」

 

 ギーシュは、先ほどの余裕など呆気なく砕け散ったとでも言わんばかりに悲鳴を上げ、尻餅をつく。

 

「な、何なんだ今は!?」

「炎の魔法か!?けど、あんな規模の炎なんてあり得ないだろ!!」

「しかもあの平民、杖も持ってないぞ!?」

「まさか、先住魔法か!?」

 

 観衆からそんな声が飛び交う。

 入間は知らないことだが、ハルケギニアの魔法には杖と呪文の詠唱が必要不可欠なものであり、入間が行ったものは、メイジの常識を覆すものだったのだ。唯一、その現象に該当する“先住魔法”は、ハルケギニアでもっとも恐れられているエルフが使うものであり、それと似た現象を引き起こした入間に、広場が恐怖に包まれるのは無理もなかった。

 

「な、何だあれは!?何をしたんだ平民!!!」

 

 ギーシュは今にも泣き出しそうな表情で叫ぶ。

 それを見た入間は、そんなギーシュや回りの様子を見て、ちょうど良いと言わんばかりに口角をつり上げると、指摘するような口調で答えた。

 

「……召喚された時から気になってたんだけど……君たちは何をもって、僕が平民だって判断したの?」

 

 その言葉に、観客が静まり返る。

 言葉の意味を理解できないように、ヒソヒソと憶測が飛び交うなか、入間は答えへと繋がるヒントを口にした。

 

「僕はここに来たのは今回の召喚が始めてだから、この国の文化も風習もなにも知らないけど……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()よね?」

 

 一応、本当の事だ。

 血筋は兎も角、入間は立場的には大貴族(サリバン)の孫と言うことになっているし、魔法に関しても、神代()()を使えるからだ。

 

「アイツ、メイジだったのか!?」

「嘘!?ってことは、貴族だったの!?」

 

 そして、入間の言葉の裏に隠された真実に気付くこと無く、観客達は入間の正体を口にして、慌て始めた。

 

「ど、ど、どういう事なのよ!?」

 

 そこで、観客席で観戦していたルイズが、人混みを掻き分け、入間へと叫ぶように問いかけた。

 

「アンタ、貴族だったの!?なら、なんでそんなみずぼらしい格好をしてんのよ!」

 

 その言葉には流石にムッとなり、入間は目を細める。

 

「……君たちの感性に文句を言う気はないけど、失礼だね。これは僕の学校の制服で気に入ってるんだから」

 

 これは、まごうことなき本心だ。

 アメリやアスモデウスのような貴族悪魔は改造制服を着る場合が多いのだが、普通は入間が着ている制服の方が一般的な制服であり、入間自身、私服としてもそこそこ気に入っているのだから、みずぼらしいなどと言われれば不機嫌にもなる。

 

「けど、これで一応、君達の僕に対する誤解は解けた。さぁ、決闘を再開させようじゃないか」

 

 そう言った入間は歩きだす。

 ギーシュは、ガタガタと体を震わせていた。容易く捩じ伏せられる筈だと信じて疑わなかったルイズの使い魔の平民の正体が、貴族であり、メイジであると判明し、『平民はメイジには絶対に勝てない』という前提から崩されてしまったのだ。更に言えば、入間の実力は、最下級のドットの自分とは天と地ほどの深淵な開きがあるのは、最初の炎で分かりきっていた。

 

 ギーシュは入間を見る。未だに紫炎が燻る大地を歩いていく入間の表情は笑顔だ。だが、その目は何処までも冷たい。

 

「うわぁぁぁぁぁッ!!ワルキューレェェェェェェッ!!!」

 

 ギーシュの理性が弾け、叫んだ。

 滅茶苦茶に杖を振るい、六体のワルキューレを召喚する。それぞれに武器が手に握られている。

 

「何をするかと思えば……芸がない」

 

 だが、入間は冷めた目で吐き捨てた。

 数を増やして武装するのは悪くない手だが、それが通用するのはある程度実力が拮抗してるか、圧倒的な差を埋める程の数だ。ワルキューレが六体いたとて、そもそもアリと惑星レベルの違いがある入間が相手では、たったの六体などなんの意味も成さない。

 入間は、観客たちに視線を向けた後、“宝物庫”から、あるものを取り出した

 

「そう言えば、君達は平民が痛め付けられる様を笑うために来たらしいけど……」

 

 それは、青く長い棒状の持ち手に、両端に黄金の刃が携えられた、見事な薙刀だ。

 

 “ライジングドラゴンロッド”と呼ばれる薙刀を召喚した入間は、ライジングドラゴンロッドを上に掲げ、回す。

 

 人外の力で振り回された薙刀から発生した風圧が、入間を取り囲もうとしていたワルキューレの動きを止める。

 

「君たちが楽しもうとしていたことがどういう行いなのか、僕が教えて上げるよ」

 

 ライジングドラゴンロッドの刃に雷を迸らせながら、入間はペロリと舌なめずりをして、惨劇の開始を宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り、再び学院長室。

 オスマンは、コルベールが描いた入間の手に現れたルーンのスケッチをじっと見ながら、入間が召喚されていた時の話を聞いていた。

 

「なるほどのぅ……」

 

 オスマンは顎髭を撫でながら考え込む。

 コルベールが持ってきたのは、「始祖ブリミルの使い魔達」というタイトルで、かなり古びた本だ。そして、その開かれたページに記されている紋章は、コルベールのスケッチした入間のルーンと寸分違わないものだった。

 

「始祖ブリミルの盾、あらゆる武器を自在に操る伝説の使い魔、神の左手……彼がそうだと言いたいのかね?」

「まだ憶測の域を出ませんが、その可能性は大いにあります!」

 

 ムムゥ、とオスマンは唸った。

 これが事実ならば世紀の大発見と呼べるのだが、不確定要素が多すぎる上に、その平民の使い魔がガンダルーヴであるかどうかも分かっていない。王宮にこの事を報告するのは時期尚早だろう。

 

「とにかく、まずは彼に話を……」

 

 そこで、ドアがコンコンとノックされる。

 

「ロングビルです。生徒たちに少々問題が発生した模様です」

「入りたまえ」

 

 ロングビルが入室した。問題が発生した、という割には落ち着き払っている。このように常に冷静でいられるようにありたい、と、コルベールは心中で呟くのだった。

 

「問題というのは何じゃ?」

「ヴェストリの広場で、生徒が決闘騒ぎを起こしました。教師陣が数名止めに入ろうとしたようですが、殺到している生徒たちに阻まれて、どうにもならないようです」

「決闘とは穏やかじゃないのぅ…。騒ぎの中心は誰じゃ?」

「1人はギーシュ・ド・グラモン。2年生のドット・メイジです」

「あぁ、グラモン家のバカ息子か。親父に似て女好きなようじゃが、それが高じてこの騒ぎかの。して、相手は?」

「それが……ミス・ヴァリエールの使い魔のようです」

 

 その言葉を聞いて、オスマンの目が、コルベールの目と合う。互いに同じ意見と認め、頷く。

 

「教師陣は決闘を止めるために、『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが…」

「アホか。たかが子供の喧嘩を止めるのに、秘宝を使う必要などなかろうが。放っておきなさい」

「解りました」

 

 再び、ロングビルが部屋を出たのを確認し、オールド・オスマンは杖を振るった。その場の空間に、ヴェストリの広場の様子が映し出される。

 

「これはまさに……ちょうど良いですな」

「そうじゃな、お手並み拝見と行こうかの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風圧にたじろぎながらもその青銅性の重量で耐えきり、持ち直したワルキューレ達は入間を取り囲もうと動き出す。

 

 しかし、その動きはあまりにも無駄がありすぎる。これが実戦なら、入間はワルキューレが出てきた時点でギーシュを殺せている。

 ワルキューレを六体召喚することはつまり、ギーシュ一人で六体分のワルキューレの指示を出さなければならないという事である。だが、恐怖に囚われて冷静さを欠いたギーシュには、ゴーレム同士の連携や戦術も考えもなにもない。最後の理性が残ったのか、一体だけがギーシュを守るように前に立っているのだが、逆に突撃してくるワルキューレの動きは、もはやチャンバラごっこにも満たない。

 

 入間としては、メイジの魔法をより知るために決闘に応じたのであって、既にどんな性能を持つのかを知った雑魚のゴーレム5体には何の用もない。なので、さっさと終わらせるために、入間は召喚したライジングドラゴンロッドを振りかぶる。

 

 

“リ・ベーラ”!!

 

 

 その瞬間、右手に嵌められた悪魔の指輪から蒼い閃光が迸る。

 空気が破裂するようなと共に投擲されたライジングドラゴンロッドが蒼い閃光に包まれると、その閃光が、蛇のように長い体を持つ化物──龍へと変貌した。

 

 地面を抉りながら、とぐろを巻きながら突き進む龍は顎を開けながら突き進み、ワルキューレに食らい付く。

 

 青銅の女戦士たちは、龍の牙にその体を無惨に食い千切られ、辛うじて龍の牙から生き残ったワルキューレも、とぐろを巻く龍の体に触れた瞬間に無惨な残骸となって砕け散る。そして、青き稲妻の龍は、ギーシュを守る最後のワルキューレへと食らい付いた。

 

「うわぁあああああっ!!?」

 

 生存本能に突き動かされたのか、ギーシュはワルキューレの背後から飛び出した。次の瞬間には、最後のワルキューレは龍に食われ、その余波に襲われたギーシュは悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。

 

 だが、全てのワルキューレを撃破した龍はなおも勢いを止めず、そのまま地面を抉りながら突き進み続けると、学院の塀にぶち当たった。

 

 

ドゴォオオオンッ!ズドォオオオオオオオンッ!!

 

 

 ルイズの起こす爆発とは比べ物にならないそれが二回起きて、学院全体に広がっていき、爆風を受けた生徒達は悲鳴を上げる。

 

 爆風と爆煙が収まっていき、生徒達が恐る恐る顔を上げると、自分達は夢を見ているのかと錯覚するような衝撃に襲われる。

 

 入間が放った“リ・ベーラ”が通った地面は、深く大きく抉られていたのだ。そんな抉られた道が何処までも続き、周囲の地面は完全に焼き焦げていた。そして、龍が突き進んでいった先にあった塀は、空襲を受けた建物のように無惨な姿をさらし、ボロボロと瓦礫を落としていっており、龍が作り出した道は塀を破壊してもまだ足りないと言うように続いており、学院から一キロほど先まで続いていたのだ。

 

(何これ、なんか魔力が上がってる?)

 

 それを見た入間は、放った攻撃と自分が調整した力が噛み合わない事に疑問を感じた。

 

 入間の使った“リ・ベーラ”は確かに破壊力がある魔術だ。まだ魔力調整をしてなかった悪食の指輪で放った時、ただのボールで大岩を破壊しても止まらず、空へと飛んでいったような物なのだ。

 しかし、今回放ったのはライジングドラゴンロッド。“青の金のクウガ”の力によって生成された薙刀は、言うまでもなくただのボールとは比べるのも烏滸がましい破壊力を持つ。それが分かってたからこそ、入間は“リ・ベーラ”に送る魔力“小悪魔(デビル)モード”に調整した筈なのに、技を放った瞬間、勝手に魔力が跳ね上がったのだ。

 たかが子供の遊び感覚の決闘と入間の都合で、ここまでの被害を出したのだ。流石の入間も「ないわぁ~」と思ってしまう。

 

「あ……あ………あ……!!」

 

 案の定、ギーシュは完全に戦意を喪失していた。

 入間の狙いは、ワルキューレ5体を一撃で破壊してゴーレムなんて無意味だと教えて、別の魔法を繰り出させるつもりだったのだが、あまりにも過剰な攻撃に、その意思すら消してしまったようだ。

 

 だが、入間は知らない。ギーシュが持つ攻撃魔法は、ワルキューレを七体作り出すだけで、それ以外で、戦闘に役立つ魔法はない。ギーシュが錯乱して六体のワルキューレが現れた時点でギーシュの詰みは確定していたのだ。

 

 入間は、もう魔法を見るのは無理だなと判断すると、残念そうにため息を吐いた。しかし、それをしたのは自分のため、入間は素直にそれを受け入れると、ギーシュの元へと歩み寄り、その顔面を踏みつけた。

 

「グベッ!?」

 

 悲鳴を上げて顔面を靴底と地面にサンドイッチされたギーシュはミシミシとなる自身の頭蓋骨に恐怖し悲鳴を上げた。すると、その声がうるさいとでも言うように、声が出れば出るほど圧力が増していく。

 

「……で?」

 

 入間の短い問い掛け。

 選択の余地など、彼には与えられていなかった。

 

「ぼ……ぐの……まげ……だ………」

 

 顔面を踏みつけられらも、必死で声を絞り出す。手にしていた杖も手放してしまった。既に、虚勢を張る力も残っていないようだ。完全に心が折れている。

 

 入間の勝利は決まった。しかし、その場に歓声を上げるものは一人もいない。あり得ない光景の連続に、完全に理解が追い付いていない。

 

 しかし、その程度で、あっさり許すほど入間は甘くはない。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というように、ギーシュもこの場にいる生徒達も、一時的な恐怖だけでは全然足りない。決闘のルール上、殺すわけにはいかない以上、代わりに、その恐怖を忘れないように刻まねばならない。

 

 なので、足を浮かせると、宝物庫から“ガオウガッシャー”と呼ばれるパーツを四つのパーツを取り出し、それをソードモードに組み立てると、黄色いノコギリ状の刃を出現させ、ギーシュの胸を浅く切り裂いた。

 

「ぎゃぁああああああ!!」

 

 胸から血を流して悲鳴を上げるギーシュ。

 観客が悲鳴を上げる。

 入間が入れた傷は本当に浅く、内蔵や骨にも届いていない。少し療養するか、水のメイジが治療すれば治るだろう。ギーシュ本人は、痛みで直ぐに気を失ってしまった。入間がガオウガッシャーについた血を拭って下を見ると、そこには胸に傷を入れられ血を流しているギーシュの姿があった。

 

「暇潰しくらいには……ならなかったね」

 

 入間はガオウガッシャーをしまうと、踵を返して歩きだす。

 余りの惨劇に震えていた生徒達は、入間が近付いてくると、誰もが悲鳴を上げながら道を開けた。

 

「……ギーシュ……ギーシュ!早く……早く水のメイジを!!」

 

 そんな中、観客の中から、金髪巻き下のメイジが飛び出し、ギーシュに駆け寄ると、助けを求めて声を張り上げた。

 周囲が徐々に騒がしさを取り戻し、怯えるように入間から離れ、逃げるようにギーシュの元へと集まっていく。

 

 解くに興味のなかった入間がそのまま歩いていると、入間は目の前に、ルイズが立っていることに気付いた。

 

「アンタ、何者なの……!?」

 

 明らかに恐怖を含んだ声色に、入間はチラリと学院の本塔に視界を向ける。先程から何か観客が向けるものとは違う視線を感じていたが、ようやく場所を特定できた。入間がある程度集めていた情報が正しければ、あそこは学院長の部屋だったと思う。

 

(仮にも学院長が、生徒が決闘するのを分かってながら止めもせず、観戦状態とはね。まぁ、入学初日で決闘してた僕が言えたことじゃないけど)

 

 それはそれとして、入間はルイズに視線を向けた。

 そろそろ、()()()()を話しておくべきだろうかと、入間は小さく笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「圧倒的、という言葉では足りんのぅ……」

「そんなことよりも、ミスタ・グラモンですよ!あぁ、ミスタ・グラモン……こんなことなら、私が止めれば良かったのだ……!」

 

 学院長室にて、遠見の鏡で決闘の成り行きを見守っていたオスマンとコルベール。コルベールは決闘によってギーシュの身に起きた惨劇に頭を抱えているが、オスマンはそれを宥めた。

 

「落ち着かんか。ミスタ・グラモンはまだ死んでおらんし、見た限り流した血は多いが、さほど傷が大きいわけでもない。確かにこのような結果になるとはワシも想定しておらんかったが……責任はワシにもある。自分を責めるものではない」

「オールド・オスマン……お気遣い感謝します」

 

 それでも、まだ悔やんでいるような表情のコルベールだったが、どうにかして気持ちを落ち着かせると、

 

「……それにしても、彼はいったい、何者でしょうか?」

「うむ……」

 

 二人は入間が“ガンダールヴ”であるかどうかを確かめるために見物をしていたのだが、その結果は予想の斜めどころか真上を行く結果となっていたが、これだけは確かに理解した。

 

 ルイズが召喚した使い魔は、この上なく強い。

 

 本来ならば、今すぐにでも彼をここに呼んで事情を聴きたいところだが……

 

「しかし、今彼を刺激するわけにはいかん。その内、彼の事情を聴くことにしよう」

「はぁ、そうですね……ところでオールド・オスマン。彼は“ガンダールヴ”なのでしょうか……?」

 

 自分達ですら勝てる保証がない相手の機嫌を損ねる可能性を考え、一旦保留にすることを選んだオスマンの言葉に頷きつつ、コルベールは改めて入間の左手に刻まれたルーンについての疑問を口にする。

 

「それはワシにも分からん。彼は、殆ど武器を使っておらぬからのぅ」

 

 始祖ブリミルが使役していた、ありとあらゆる武器を使いこなす伝説の使い魔──ガンダールヴ。

 しかし、入間が武器を使ったのは二回だけで、殆ど魔術でワルキューレを圧倒していた。しかも最後の、ライジングドラゴンロッドによる大破壊は自分達の知らない未知の魔法によるものだと二人は考えていた為、参考にならなかった。

 

「とにかく、王室のボンクラ共にその者とその主人を渡すわけにはいくまい。そんなオモチャを与えてしまっては、また戦でも引き起こすじゃろうて…………いや、そもそも手綱を握ることすら出来んじゃろうな」

「はい……学院長の深謀には恐れ入ります」

「この件はわしが預かる。他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」

「はい、かしこまりました……」




次回予告

ルイズ「あんたの事、ちゃんと話しなさいよ!!」

シエスタ「ご無礼をお許しください、ミスタ・イルマ」

ユエ「イルマ……必ず見つけだすから……!」

 動きだす、魔王の恋人たち

ミュウ「ド派手に行くぜ!なの!!」

EP06「ソレゾレの始まり」




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