悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME 作:MTHR
キュアット探偵事務所。
ハンニンダーを浄化しマコトジュエルを回収したあんなとみくるとポチタンは、純一の原稿を納めたバッグを持って事務所に帰投した。
小松崎純一が、未来では【ジュンジュン・コマッツ】というペンネームで大成するとのことで軽く騒いだが、その辺りは割愛しよう。
「仮面、ライダー?」
「そう。さっきの僕みたいに変身して怪人と戦う戦士の事だよ」
事務所に備え付けられたソファーに座った入間の言葉を復唱するあんな。彼女の隣にはみくるが座っており、あんなの膝の上にはポチタンが座っている。ソファーとテーブルから少し離れた位置におかれた椅子には、ジェットが座って話を聞いていた。
「じゃあ、プリキュアと同じなんだ!」
入間から【仮面ライダー】に関しての端的な説明を聞いたあんなが目をキラキラさせながらそう言うと、入間は即座に反応して答えた。
「違うね」
「えっ?」
「仮面ライダーも一枚岩じゃない。君達を襲ったあのアビスみたいに、自分の欲望のために人間に牙を剥く仮面ライダーもいるんだよ。そういうのは総じてダークライダーって分類されてて……まぁ、それはいいか。兎に角、ライダーには悪人もいるってことだよ」
これまで入間が目にしたプリキュアは、目の前にいる
入間自身、プリキュアの知識などないに等しい物なのだが、なんとなくプリキュアは仮面ライダーのように『悪』には縁遠い存在なのではないかと、なんとなく思っていた。
「でも、貴方……えーっと……」
「鈴木入間」
「入間さんは、違うんですよね?前に会った時は、自分のこと『魔王』って言ってたけど、何度も助けてくれたし、ぜんぜん悪い人に見えないし……」
自分の事をジーッと見つめてくるみくる。それは、自分が初めて彼女達と対面した時に発した「魔王」という名乗りを気がかりにしているようにも見えた。疑っているというより、確認しているのかもしれない。
入間は少し考えたあと、フッと笑った。
「いや、僕も仮面ライダーとは違うよ」
「え?」
「違うって……」
入間は、自分が1号をはじめとしたライダー達のような存在とは思っていない。
『悪魔』を守るためにライダーの力を人々にすら向け、必要であれば人を殺すことに躊躇いを持たず、女を何人も囲っている自分の何が『仮面ライダー』だと言うのだろうか。後悔してるわけでもないし、懺悔するつもりもないが、堂々と仮面ライダーと名乗れるような存在ではないことくらい、ずっと前から分かっていた。
「仮面ライダージオウも、僕が持っている力も渡してくれた人達も立派な仮面ライダーだよ。だけど、僕はあの人達とは根本的に違う。何せ、
「それって……?」
「兎に角、仮面ライダーも色々いるんだよ。僕が会ってきたのは悪人もいたけど、殆どが人類の自由のために戦う立派な戦士だったよ」
入間は話を遮るように懐をゴソゴソとまさぐると、暫くしてから、どう考えても収まりきらないほど大量のライドウォッチを取り出し、机の上に並べる。1号からゼッツまで、FIRSTやアマゾンオメガを含めた計44個のライドウォッチが並ぶ。
「わぁ~!こんなにいるんだ!」
「たくさんの仮面ライダーが人間を守ってきたんだね!」
ライドウォッチを手に取り、描かれた仮面ライダーの顔をマジマジと見つめていると、机に座っていたジェットが駆けてきて、ビルドウォッチを手に取った。
「なんだこれ!?パーツも材質も始めてみるものばかりだ!背景技術は……」
発明家の血が騒ぐのだろうか、2068年の技術で造られたライドウォッチを見ながらブツブツと難しそうな単語を呟くジェットの姿を見て、彼を戦兎さんと合わせたら意気投合するかもしれないな、と入間は密かに思ったが、すぐにどうでもいいかと割りきり、ジオウウォッチを手に取りながら続ける。
「それでね、本来なら仮面ライダーが倒さなくちゃならない敵を、この世界に送り込んでいる奴等がいる。だから僕はこの時代に来たんだよ」
「そうなんだ……あれ?」
納得しそうになったみくるだったが、入間の言葉のなかに妙なワードがあることに気付く。
「あぁ、僕は未来から来たんだよ。2019年から、この1999年の世界にね」
「ッ!?未来からって……
「ん?」
そこで、あんなが呟いた言葉に、同じく入間も引っ掛かりを覚えて首をかしげると、あんなは答えた。
「実は……私も未来…2027年から来たんです」
「へぇ?」
入間がいる魔界の西暦は、人間界に当てはめると2019年に位置する。入間が今生きる時代より先の2025年に誕生した【仮面ライダーゼッツ】のライドウォッチは有しているが、それよりさらに先の未来から来たという事には興味が湧いた。
「実は……私は、このポチタンの力でこの時代に来たんです」
「…ポチタン?」
「ポチィー!」
すると、あんなの前に何かが浮かび上がってきた。
白い模様を持つ桃色の体に、耳・頬・額には大きなハートのマークがある、熊のような生物だ。
「……この子は?」
「この子がポチタン、妖精なの!」
「ポチ!」
「妖精?それは随分とメルヘンな……」
悪魔の住む魔界で暮らし、身内には吸血鬼やら亜人やらドラゴンやらエルフといった多種多様な種族がおり、様々な世界の魔獣を見てきた入間だが、こんなファンシーな見た目をした生物を見るのも、『妖精』という存在と出会うのも始めてだ。
龍騎の【ミラーモンスター】やキバよ【キバットバットⅢ世】に近い存在かと思っていたが、それとはまた気色が違いそうだ。
「それで、このポチタンが君を過去に送ったってのは?」
「実は……」
あんなの説明によると、こう言うことらしい。
明智あんなは元々、2027年1月24日に14歳の誕生日を迎え、母と一緒に誕生日のケーキを買って帰宅した所、自室の机に置いてあったペンダント──“ジュエルキュアウォッチ”を見つけた時、あんなの部屋に現れたポチタンの手によって、あんなの生きていた世界から28年も昔の1999年4月2日にタイムスリップしてしまったらしい。
タイムスリップの原因は時間と空間を越える時空の妖精・ポチタンの力によるものらしいが、ポチタンはあんなを28年前の世界に連れてきたことで力を使い果たし、あんなの目の前に現れた時は流暢に話していたのにたいして、現在はバブバブ期の赤ん坊のように「ポチ」としか喋れないらしく、時空を移動する力も失われているらしい。そして、ポチタンの力を取り戻すためには、マコトジュエルのエネルギーを集めることが必要であるらしい。
「成る程ね。マコトジュエルにはそれほどの力があるってことかぁ」
「はい。そう言えば、入間さんはどうしてこの時代に?」
この時代に来たのが自分だけなのかと思っていたあんなにとって、自分と同じように未来から来たという入間の存在がどのようにしてきたのか知りたかったのだろう。
入間は少し考えたあと、あんなの質問に答える。
「時空を越える力を持つ知り合いに頼まれたんだよ。それでこの時代に来たんだ。さっき言ったように、この時代に怪人を送り込んでる連中がいるからってね」
「妖精以外にそんなやつがいるのか。仮面ライダーなんて、今まで聞いたこともないぞ」
ジェットがそう呟くなか、入間は再び思案する。
(本当なら、あんなちゃんを戻すことはできるんだけど……)
“タイムマジーン”や“デンライナー”を所有する入間ならば、あんなを元の時代に帰すことができる。
しかし、話を聞くに、あんながこの時代に来たのは、怪人の類いではなくポチタンの力によるものであり、恐らくは
もしそうならば、入間の軽率な判断であんなを2027年に帰すのは不味い気がするため、入間はあんなを送り返して上げると言う選択肢を放棄した。
「まぁ、そう言うわけだから、僕はできれば君たちと協力したいと思ってるんだけど……」
「えっ!?一緒に戦ってくれるの!?」
「そうなるけど……」
「ありがとう、入間さん!一緒に戦ってくれるのは心強いからね!」
「う、うん……」
笑顔で歓迎され、入間の方が戸惑ってしまった。
これまで世界を渡るなかで、最初から歓迎ムードなのはあまり多くはない。大抵、召喚されて隷属関係を押し付けられるか、一触即発で戦闘が殆どだったのだから無理もない。
「これからよろしくね、入間さん!」
「一緒に頑張りましょう!」
「…そうだね」
こうして、入間とプリキュア達の協力体制が確約されたのだった。
翌日。
「降ってきそうだな……」
キュアット探偵事務所の付近で停めたライドストライカーのシートに腰を下ろしながら、入間は空を見上げる。
以前のように、どこかでノイズや怪人が出てくるかもしれないと思い、朝早くからパトロールのつもりで町を走り回っていたのだが、予想に反してノイズや怪人はおろか、怪盗団ファントムも出てくることはなく、入間は暇をもて余していた。
その時、靴音を耳にした入間がその音に視線を向けると、そこには傘を手にしたあんなが、ポチタンを下げて走っていた。
「あれ、あんなちゃん?何してるの?」
「あっ、入間さん!実はこれから、みくるに傘を持っていこうかなって」
「…あー」
確かに、未来の人間であるあんなが過去の世界の学校に通うのは難しいだろうと納得した入間は空を見上げると、ライドストライカーをポンポンと叩きながら提案する。
「もうすぐ降りそうだし……よかったら送ろうか?」
「えっ、いいの!?」
「ついでだしね。道は聞かないとだけど」
「ありがとう!!」
「ポチぃ!」
入間はそう言いながらもう1つあったヘルメットをあんなに手渡し、ポチタンを肩に乗せたあんなが入間の後ろに座ったのを確認すると、入間はライドストライカーを発進させ、みくるの通う中学校へと向かっていく。
さほど距離が離れていなかったのか、十分もかからずに学校の校門の前にたどり着くことができた。
「ここでいい?」
「うん、ありがとう」
校門の前にライドストライカーを停めた入間の言葉に、あんなはシートから下りる。探偵事務所まで送るために入間はそのまま校門前で待機しようとしていると、ふとあんなの足が止まった。
何事かと入間が視線をあんなの背中に向けた時、あんなは校舎内に入らぬまま踵を帰そうとした時、あんなは前方にいた人物とぶつかった。
「あっ!ごめんなさい」
「いえ、こちらこそボーッとしてて……」
あんながぶつかった際に落ちた写真を拾いつつ、ぶつかった相手に謝罪をすると、あんなの腰に下げられていたポチタンが…
「ポチィ?」
「ポチ?」
「ッ!そ、そのぉ…!」
しどろもどろになるあんなを見かねて、入間はライドストライカーから下りていくと、ヘルメットを外しながらあんなの元に歩み寄る。
「あんなちゃん、その写真気になるの?ポーッとして見入ってるけど」
「そ、そうなんですよ!私もこんな写真欲しいなー、なんて……ははは」
「ありがとうございます。妹なんです」
「仲良さそうですね」
「はい。恵子は、この学校の高等部の二年生で、交換留学でロンドンに行ってるんですけど……」
その時、あんなとぶつかった女性の表情が曇る。その表情を見たあんなは、すぐさまその女性に尋ねる。
「どうかされたんですか?」
「最近、おかしな事があって……町で、恵子を見たって言われるんです」
「──ッ」
その言葉に、入間の視線が鋭くなる。
「ロンドンにいるのに?似た人じゃないんですか?」
「私もそう思ってました。…でも、見たんです。今朝、大学に行く途中、駅前で……私、ビックリしちゃって。で、追いかけたらここに……学校に行っても恵子はいないって言うし、ロンドンの恵子にも電話したんですが、でないし……なんだか心配に……」
「私に任せてもらえませんか?」
「えっ?」
不安気に語る女性を見かねたあんなは、明るい笑顔を浮かべながら声をかける。
「オープン!プリキッドブック!」
「おぉ…!」
「えっ!?」
あんなが本のようなアクセサリーを手に取り言葉を口にすると、手にしていたアクセサリーが巨大化し、一冊の本となった。
未知の技術に興味を示す入間と、目を見開く女性。あんなは女性に手帳の中身を見せながら、自信満々に答える。
「キュアット探偵事務所の……明智あんなです!」
「き、北村真理子です……」
「真理子さん、名探偵に任せて!この事件、はなまる解決してみせます!」
「じゃあ、お願いしてみようかな……」
「写真、お借りしてもいいですか?」
「ええ」
【北村真理子】から写真を借りたあんなは、代わりに自身の持っていた傘を真理子に手渡すと、真理子は傘を手にしながらその場を後にする。
その場に残されたのは入間とあんな、そしてポチタンだけとなった。
「みくるに言っておかないとね……」
そう言いながら、あんなはジェット先輩をもした通信機──“プリキッドボイスメモ”を取り出したとき、
「……みくるの邪魔しちゃ悪いからね」
言い訳するように、あんなは取り出していたそれを仕舞う。
入間はあんなのその表情に翳りがあることには気付いていたが、しばらく考えた後、敢えてそれに触れることはせず、代わりにあんなに声をかけた。
「…あんなちゃん。その依頼、僕にも手伝わせてくれないかな?」
「入間さん?」
「少し気になるしね……。それに、今のを聞いてて、知らん顔してられるほど薄情じゃないよ。まぁ、探偵助手みたいな感じかな?迷惑じゃなければいいんだけど…」
「ううん、そんなことないよ。ありがとう!」
そうして、入間はあんなの助手としてあんなに付き従い、手懸かりを集めるために歩きだす。
というのも、わざわざ入間が他人事でしかない恵子探しに志願したのにも考えがあったからだ。
(本来ならいない筈の人を見た。つまりこれは…………怪人の仕業だ!)
ワームやロイミュード、人間に擬態する能力を持つ怪人は数えきれないほど存在する。
恵子なる人物が姉になにも告げずに帰国したり、そっくりさんがいたというより、怪人が恵子に擬態したと考える方が自然だ。
そして、その怪人が消息を絶ったのは、プリキュアの片割れたるみくるが通っている学校……だとすれば、敵の狙いは一目瞭然だ。
あんなを遠ざけて一人で対処したい気持ちもあったが、彼女の性格上それは難しいだろうし、もしも敵の兵力が多かった時にはみくると一緒に戦力になってくれるかもしれない。あんなの憂いを浮かべた表情だけが気掛かりだが、それは未来でどうにかなるだろう。
(必ず見つけ出す………恵子さんに擬態した怪人を!!)
こうして、入間は盛大な勘違いをしながら、あんなと共に恵子の手懸かりを追って調査を開始した。
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