悪魔の孫は時の王者となって世界最強 NEXT TIME 作:MTHR
今回はご都合主義満載のお話です。どうか海より広い心で楽しんで読んでいただけると幸いです。
(なっ……!)
トリステイン魔法学院の校門前で、ルイズは絶句していた。
日用品の買い足しと使い魔にプレゼントするための剣を購入した帰り、突如校門前に光と共に見知らぬ美少女達が現れ、入間が突然金髪紅眼の美少女にキスをしたのだ。怒涛の展開にもほどがある。
だが、ルイズはそれ以上に、現れた女性達の半数の、ある部分から目が離せなかった。
「それにしても、ここまで早く来てくれるなんて思ってなかったよ」
「……ん。入間に早く会いたかったから」
入間の前に立っているのは、先程入間とキスをした金髪紅眼の美少女──ユエ。
ルイズやタバサと大差のない小柄な体躯だが、最高級のビスクドールの如き美容の少女は見た目の年齢には似つかわしくない妖艶な雰囲気をまとっており、頬を赤く染め、幸福感に満ちた笑みを浮かべながら入間に暑い視線を送る姿は、女であるルイズでさえドキッとしてしまう魅力を放っている。
そして、そのスタイルは慎ましやか。ルイズよりは膨らんでいるが、さほど主張が強いわけでもない胸、サイズはおよそCカップ。
「でもよかったです……イルマ先輩が無事で」
その隣にいるのは、水色の髪を低めのツインテールに纏め、頭からは二本の黒い小さな角を生やしている美少女──クロケル・チマ。
背丈はユエやルイズよりも小さい。しかし、薄く氷が張っているような水色の目と整った顔立ちからは、まるで氷のように冷たく、クールで大人びた印象を抱かせるのに反して、入間を見る目にはとびきりの熱を孕んでいた。
そして、その胸には僅かながらに膨らみが存在していた。幼そうな見た目通りであり、ある意味年相応。サイズはBカップといったところだろう。
「はい……本当に……!」
涙を浮かべて安堵する、濃い茶髪をボブカットにした小柄な女性──畑山愛子。
ユエと同じくらい小柄な体躯に、愛嬌のある童顔。チマが年齢に合わない大人っぽさをはなっているのとは反対に、愛子は年齢に似合わない子供らしさも愛嬌を持っている。
胸のサイズはユエとチマの中間くらい。ギリギリCに届く程だ。
「でもまぁ、あのメールから心配はしてなかったよ~。寧ろ、女たらしこんでないなって思ってたかな?」
からかうように笑うのは、金髪ポニーテールに碧眼を持つ美少女──ミレディ・ライセン。
言動やニヤニヤ笑いから、どことなく軽薄そうな雰囲気を持つが、その容姿は整っており、スカートから覗くスラリとした脚や、高貴な顔の造りは確かに美少女といえるほどの魅力がある。
そして、その胸は……絶壁である。手足はスラリと長いが、ルイズやタバサと全く同じ胸囲である。ある意味、ルイズの中ではもっとも好感度が高いかもしれない。
ここまでは良い。登場には驚いたが、なにやら入間と深い仲らしいと分かったからだ。それだけなら、ルイズも絶句しないだろう。
問題は、残りの四人のメンバー……より具体的に言えば、その四人のある部位が問題だった。
「全く…本当に心配したんだからね!」
目尻にな涙を浮かべているのは、栗色の髪の勝ち気な雰囲気をまとう美少女──園部優花。
肉感的な美少女である彼女のEカップの胸は、トータスにいた頃と同じ服を着ているため、開いた胸元から、その胸が上記のような効果音を立てながら揺れた。
「そうですよ!義祖父様もオペラさんも心配してましたよ!!」
そう語るのは、あおみがかった白髪に蒼穹の瞳を持ち、頭からウサミミを生やした美少女──シア・ハウリアだ。
神秘的な容姿をしたシアは、キュルケともタメを張れるような抜群のスタイルをしている。身に付けているのはトータスでの冒険に使っていたビキニアーマーとミニスカート。魅惑的な太股や臍が丸見えなだけでなく、動く度にそのFカップの巨乳が大きく揺れている。
「心配はしてなかったが……もう私達を置いていくな、馬鹿者……」
続いて、ケモミミのような角と同化した紅い髪を伸ばしている長身の美少女──アザゼル・アメリ。
190cmというアスリート並みの長身をした、入間を愛おしげに見つめているアメリは、シアをも越えるスタイルの持ち主だ。組んだ腕にGカップの胸を大胆に乗せている。ルイズにはとても真似できない芸当である。
「……」
そして、そそくさと入間のそばに歩み寄っている、ハルケギニアには馴染みのない和服を着たストレートの黒髪に金眼の美女──ティオ・クラルス。
見た目は20代前半くらいで、身長は170cm程の極上の美女だ。何より目を引くのが、肩口まで垂れ下がった衣服から覗く爆乳である。Iカップはありそうなその見事な胸は、ティオかま少し歩くだけでもユサユサと揺れている。
そして、ティオは入間の傍に寄ると、その頭を抱き抱え自らの胸の谷間に押し付けた。
「むぐっ!?ティオ!?」
「信じておったよ?信じておったが……やはり、こうして再会すると……しばし、時間をおくれ、ご主人様よ」
入間が僅かに胸の谷間から顔を覗かせティオの顔を見れば、大切なものが腕の中にあることを噛み締めるような表情をして、目の端に涙を溜めていた。どうやら相当心配させたらしい事が分かったので、しばらくティオの好きにさせることにした。
そうしていると、ユエ、チマ、愛子、ミレディ、そしてシア、アメリ、優花までもが入間に抱きついた。全身が美女と美少女で見えなくなる入間。その際に、シア、アメリ、優花の胸がムギュッ♡と押し付けられた。
「こんのぉぉぉ……馬鹿犬ーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
その瞬間、ルイズの怒りが爆発する。
今にも入間に突撃しそうな勢いだが、それは慌てた様子のキュルケが抱き締めるようにして止めた。ルイズこ頭の上に、キュルケの放漫な胸が押し当てられる。
「ちょっ、ルイズ!ちょっと落ち着きなさいよ!」
「何よ!男ってのは皆胸の大きい女がいいの!?悪かったわね小さくて!!成長はこれからよぉっ!!!!」
キュルケの胸が当たる感触が癪に触るのか、更に声を張り上げるルイズ。犬猿の仲とはいえ、今のキュルケは意図しているわけではないのだろうが、必死で止めようとルイズを抱き締めているため、より強くその柔らかさと大きさが伝わっていく。
そんなルイズの声に、流石のユエ達も入間から意識をルイズに向け、一同は首をかしげた。
「おでれーた!!お前さん、誠実そうに見えて誑しだったたぁね!以外と隅に置けねぇじゃねぇか相棒!!」
そこで、地面に投げ捨てたデルフが騒いだので、入間はそれを拾い上げる。
「……イルマ、どういう事?」
「あー、説明しなくちゃならなそうだね。長くなるし、落ち着ける場所に移動しようかな」
その前に、ルイズをどうにかしないとだけど、そう呟きながら、入間は騒ぎ立てるルイズに向かって歩きだした。
十五分後、どうにかルイズを落ち着かせ、一同はルイズの部屋に場所を移した。転移するところを見られているので、キュルケとタバサも一緒だ。
「魔界ィッ!?」
思いっきり人外の見た目をしたシアやチマが来たとなれば、もう隠す意味もない為、入間は自分達の事を、今度こそ嘘偽りなく話した。
だが、ハルケギニアにおいても、悪魔は一般的に架空の存在と呼ばれている為、ルイズやキュルケにはいまいち理解が追いつかないらしい。迷信と呼ばれている存在の実在を確信し、実際に異世界転移を経験している者としていない者との差だろう。
一方で、タバサはある意味で納得をしていた。図鑑や歴史書だけでなく物語を読むことも好きなタバサである。人間界のように異世界ものが大流行しているわけではないが、その手の物語もいくつか存在しているらしい。
この世界において浸透しきっている始祖ブリミルの魔法の常識を覆すような異質な技術である魔術に、入間という、これだけの力を持つ使い手が存在しているというのに、入間の名前や魔術の存在の噂一つ聞こえてこなかったという謎、東の果ての未開の地【ロバ・アル・カリイエ】から来たわけでもないと言う。それら全てが、ハルケギニアとは何もかもが違う異世界由来のものだと考えれば、納得がいく。事実は小説より奇なり、である。ハルケギニアにこの諺があるのかは知らないが。
そして、ルイズとキュルケもなんとか理解が出来たようだ。そして、シアとチマに視線を向け、二人の頭から生えたウサミミと角を見て、ユエ達に尋ねた。
「とりあえず、イルマは魔界から召喚されて、アンタ達はイルマを探すために来た悪魔ってことなの?」
「……ん。その認識で間違いない。でもより正確にいうと、私は吸血鬼族」
「「きゅ、吸血鬼ッ!?」」
「……!」
「……何?」
顔を強張らせて後退りルイズとキュルケ、そして杖を構えるタバサに、ユエは首をかしげる。
ハルケギニアにおける吸血鬼は、あらゆる魔法を駆使してもその正体を暴けず、人に紛れて人間の生き血を啜り、先住魔法を操る最悪の妖魔だ。だが、ハルケギニアの吸血鬼とはなんの関係もないトータス出身の吸血鬼であるユエにそんなことが分かるはずもない。
まだ妖魔についての文献は読んでいない入間も首をかしげたが、とりあえず話を軌道修正することにした。
「まぁ、アメリとチマは悪魔だけど、それ以外は違うよ。シアは兎人族、ティオは竜人族、ミレディと愛子と優花は人間だよ……いや、ミレディはゾンビとかキョンシーの類いかな?」
「おい、イルマ。誰がゾンビだコラ」
「二千年も生きてる人を人間とは呼ばないでしょ」
「ムキーッ!!永遠の超絶美少女魔法使いのミレディちゃんになんて失礼な!!!」
ミレディが明かした言葉に、ルイズ達はミレディの実年齢を知って絶句している。
すると、オロオロしていた愛子が声を張り上げた。
「……って、それどころじゃないですよ!」
そう言った愛子は、スイカのような衣装のあるライドウォッチを取り出し、それを起動して放り投げた。
そのライドウォッチが空中で変形し、鎧武者のような姿をした小さなロボット──“コダマスイカアームズ”が、ルイズ達の前に降り立った。
そしてコダマスイカアームズは、ルイズ達の注目を他所に装備していたローターを放り投げるとあら不思議、それが四角いモニターとなって空中に留まり、画面に映像が写りこんだ。
『イッッルッッマッッくぅ~~~~んっ!!!!!』
写りこんだのは、老人のドアップだった。
禿げ頭にメガネを掛けた鼻の長い老人だ。何より目を引くのが、頭から生えた二本の立派な角。
そんな老人──魔界における大悪魔の一人、サリバンが、まるで滝のような涙を流しながら、モニター全面に写りこんでいたのだ。当然、ルイズ達は思わず一歩下がった。
『イルマ様、ご無事で何より!!このアスモデウス・アリス……感涙の極みです!そちらに行けず……無念!!』
『やっほーー!イルマち!元気だった~~!?』
『ご無事で何よりです、イルマ様』
続いて、老人と同じくらいの涙を流している桃色の髪の美青年──アスモデウス・アリス、羊の角を生やした黄緑色の髪の少女──ウァラク・クララ、赤い髪に猫耳を生やした中性的な悪魔──オペラの姿も映し出される。
何がなにやらわからないルイズ達に、アメリ達が簡潔にサリバン達の事を説明しているのを他所に、モニターに映るサリバンは、今にも画面を突き破らんばかりの勢いで顔を寄せる。
『怖くはなかった!?トラウマとか出来てない!?酷い目にあわされてなかった!?お外でるの金輪際止めにする!!?』
「いやいやいや」
過保護すぎるサリバンに、入間は苦笑い。自分が生粋のトラブル体質である自覚はあるし、心配してくれるのは嬉しいが、人前である。ユエ達の視線が痛い。
何とかサリバンを宥めつつ、入間はユエ達に説明をする意味を含めて、自身の身に起きた事情を説明した。
『『『『「「「「「「「…………」」」」」」」』』』』
「な、なによっ!」
その結果、モニターに映る四人と、ユエ達の冷たい眼差しがルイズに突き刺さった。
ルイズは思わず反論しそうになるが、頭では現状を理解しているゆえに冷や汗が止まらない。
何せ、ルイズは故意ではなかったとはいえ、悪魔とはいえ大貴族の子息を召喚して使い魔にしてしまった立場なのだ。召喚された側からすれば、これは国際問題以外の何物ではない。
『ルイズとか言ったな。小娘……偉大なるイルマ様を使い魔などにした挙げ句、魔界への帰還の手段を奪うとは……今すぐその身を私の炎で塵一つ残さず焼き殺してやろうか……!!』
手に頬を灯して、殺気を放つアスモデウス。入間への忠誠心が果てしなく強い彼である。画面越しからでも分かる怒気にルイズが怯えて後退ると、入間がため息を吐きながら助け船を出した。
「アズ君、皆も、あんまりカッカしないで」
『イルマ様!しかし……』
「確かに、僕が使い魔になったのは事実だよ。でも、故意にやったり悪意があるのならともかく、彼女は故意にやった訳じゃないからね」
「……そうだな。この場合、
「なんの話?」
先程も愛子が言っていた言葉。流石に気になってきた入間の質問の答えは、入間の予想以上に最悪のものだった。
「……ミュウとレミアが姿を消した」
「ッ!それどういうこと!!?」
入間が血相を変えて、アメリの肩に掴み掛かった。
飄々とした態度しか知らなかったルイズ達は、みたことのない慌てぶりを見せる入間に目を丸くする。しかし、入間の必死そうな表情から、簡単には聞けなかった。
アメリ達の説明によると、ユエ達がハルケギニアに渡る決断をした矢先に、ミュウとレミアが忽然と姿を消したらしい。タカウォッチロイドの導きでそれに気づいたアスモデウスとクララは、ユエ達にこの事を報告にし、再度議論を果たしたのち、ユエ達は入間の元へと飛んで事情を説明し、アスモデウスとクララは一度魔界に待機し、ミュウとレミアの行方の判明次第、直ぐにハルケギニアに向かってミュウとレミアと合流するということだった。
焦りを隠せないが、なんとか気を落ち着かせた入間は、導越の羅針盤を取り出した。ミュウとレミアの位置を思い浮かべると、入間の脳裏にその場所の正確な所在地が浮かび上がった。
「……どうやら、この世界にいるみたい。場所はアルビオン、だって」
『アルファストって、何処?』
『アルビオンだ、あほクララ。兎に角、現在ミュウはそちらの世界にいるということでよろしいですか?』
「そうだよ。けど、僕も地名しか知らないから、なんとも言えないね……」
『そうですか……では、我等は直ぐにそちらの世界に渡る方法を探し、ミュウとレミアを確保次第魔界に帰還します』
「うん、お願い」
本当は入間が飛んでいきたいところだが、ルーンのせいでこの世界から出られなくなっている入間では、言っても安全確保が関の山だろう。先に確保してから、ユエ達に送り返してもらう方法もあるが……
(まさかとは思うけど……)
ミュウもレミアがこの世界に来た理由、それがもしも、ルイズと同じ“虚無”の使い手の召喚によるものだとしたら?
契約をしてルーンを刻まれれば、使い魔は主に従順になる。そして、入間に刻まれたルーンは、今もなお入間をルイズの側から離れないようにするために入間の力を阻害し続けている。もしも使い魔のルーンがミュウに刻まれてしまった場合、現状の入間と同じことが起きる可能性がある。いや、“洗脳”に対して絶対的なアドバンテージを持つ入間と違い、ミュウかレミアのどちらかが従順になるかもしれない。
ミュウとレミアを召喚した“主人”の素性の一つも分からない状況だ。“虚無”の力の驚異が具体的に分からない以上、「自分達なら絶対に大丈夫」という考えはあまり持たない方がいい。
……まぁ、ぶっちゃけ今のミュウならば、変身してしまえば、三桁に昇る程のスクウェアクラスのメイジが襲ってきたとしても瞬く間に返り討ちに出きるだろうから、盗賊やらの心配はあんまりないが。
もしもミュウやレミアによからぬ事をしたり、何かの陰謀に利用しようものなら、召喚した主を八つ裂きにしようと心に誓いながら、入間は話を切り上げた。
「兎に角、しばらくは様子見だね。次に、皆は……」
そこで、はたとルイズ達が正気を取り戻した。
ユエは、入間の言葉に迷う素振りも見せずに答えた。
「……勿論、入間と一緒にいる」
「ちょっ、何かってに決めてるのよ!?」
ルイズが声をあげるが、ユエも他の面々も答えは変わらない。入間と違ってもとの世界に変えれるユエ達だが、態々入間の側から離れるなんてあり得ない、と言わんばかりだ。
だが、ユエ達はこの学院においては部外者以外の何者でもない。そんなユエ達に、部屋が用意されるのは難しいだろう。この学院のお偉いさんを脅せばなんとかなるかもしれないが、あまりそんな強行手段ばかりとるのは如何なものか……
「それならば、こうすれば良かろう」
そこで、ティオが声をあげる。彼女はルイズの部屋の窓の前まで歩み寄ると、窓ガラスに向かって歩み寄る。次の瞬間、ティオの体は鏡面に吸い込まれていった。
目を見開くルイズ、キュルケ、タバサを他所に、入間達はその手があったかと納得する。
鏡の中の世界──ミラーワールド。現実と左右が反転したという特徴を持つその世界では、本来ならば【ミラーモンスター】と呼ばれる怪物が存在しているが、この世界には流石にいない。ならば、このハルケギニアのミラーワールドは本当に左右反転しただけの無人の世界だ。そこを拠点にすれば、衣食住に問題などなにもない。
ルイズ達は説明を求め、入間はミラーワールドについて簡単な説明をする。しかし、彼女達はあまりピンと来ていなかった。
そうして、結局ミラーワールドを拠点として学院に滞在を決めたユエ達。ルイズは何処か納得がいかなさそうだったが、入間達の口八丁に乗せられ、結果的にそれを承諾することとなるのだった。
翌日。
アルヴィーズの食堂で百人はゆうに座る事ができるテーブルが三つ並んでおり、その席に座って食事を取るメイジ達は、ある場所に視線を集めていた。
そこには、メイジ達が座るテーブルよりかなり小さめな、しかし一般的なテーブルよりはかなり大きなテーブルが設置されており、そこには見慣れぬ人物が9人座っていた。勝手に席が設置されていることもそうだが、なによりメイジ達が気にするのは、その席を包む空気だろう。
「……入間。あ~ん」
「い、イルマ……。こっちも、あ~ん……」
「入間さん。こっちも、あ~んですぅ」
「はい、イルくん。あ~ん!」
「イルマ先輩、どうぞ。あ~ん」
「い、入間くん……どうぞ」
「入間、その……あーん」
「ご主人様よ、妾のも食べておくれ♡妾の胸に思いっきり顔を埋めても良いのじゃぞ♡」
テーブルの中央に座る唯一の男性──入間に、絶世の美女・美少女達が、食事を乗せたフォークやスプーンを差し出しているのだ。
因みに順番は、上からユエ、アメリ、シア、ミレディ、チマ、愛子、優花、ティオである。更に追記すれば、ティオだけはその爆乳にパンを挟むというとんでもない方法で差し出している。
何度もやっていることなので、入間は躊躇いなく差し出された食事を口に含んでいく。ティオの胸の中のパンも同様だ。
その周囲の空気は、桃色一色だった。メイジ達は、ユエ達の美容に見惚れる者や入間に嫉妬の視線を向けるもの、女子はチラチラと興味深そうな視線を向けたり、ユエ達の美容に嫉妬すら浮かばないように溜め息をはくもので溢れている。
「ちょっとアンタ達!どういう事よ!?」
そこで、遂にルイズが声を張り上げた。
ルイズが入間達のテーブルに駆け寄ると、ついでにキュルケとタバサも歩み寄り、入間達は食事の手を止めて首をかしげた。
「どう言うことって、何が?」
「全部よ!何でアンタ達、勝手にここに席作ってるのよ!?それに、何でそんなにイチャついてるのよ!?」
「別に今まで使ってたんだし、変わらないでしょ……それに、ユエ達とイチャついてた理由だけど……」
「イルマは私達全員と付き合っているぞ?別に…あ、甘い時間は過ごしても良いではないか」
アメリのカミングアウトに、ルイズを含めた、アルヴィーズの食堂にいた全員が騒がしくなった(タバサは興味なさげだったが)。
「そんなに驚くかの?貴族が愛人を娶るのはこの世界でもよくある話だと思うのじゃが……」
「確かに、貴族が愛人を娶るって言うのはよくある話よ。でも、貴女達はそれでいいの?」
学院にいる男を何人も囲っているキュルケが説明をする。
確かに、ハルケギニアにも、貴族が複数の女性を囲うのはよくある話である。しかし、やはりと言うべきか女性を囲うのは一般的に印象が悪い。平民の美女を何人も召し抱え、夜の相手として囲っている貴族もいるくらいなのだから。
「っていうか、イルマ!アンタこの前、ギーシュが二股してた事で揉めて決闘してたわよね!?」
「僕が彼を咎めたのは、自分の恋人たちに誠意をもって接してなかったことと、シエスタを責めてたこと。別に二股自体は咎めてないよ」
ルイズの言葉に、入間は何でもないように答えた。
自分が最低なことをしている自覚はあるが、既にそれは入間自身の問題としてけじめをつけている。今更他人になんと言われようと、改める気は一切なかった。
「……言いたいことは分かった。でも、私達は別に気にしてない」
「見ず知らずの女性なら絶対に嫌ですけど……私達も、方向性が違いますけど、ユエさん達の事も好きですから」
ユエと愛子が恥ずかしげもなく答えると、シア達もそれを肯定するように頷いた。
ルイズ達は、あまりにもあっけらかんとしたユエ達の態度にポカンと口を開けており、生徒達は入間達に嫉妬やら羨望やら興味やらが混じった視線を向けていた。入間はストレートに彼女達の愛情を伝えられて流石に恥ずかしそうにしていた。
「……」
そんな光景を、給仕をしていた黒髪のメイドが、悲しそうな目で見ていた。
それから早いもので、ユエ達と再開してから三日が経過した。
入間は以前も読書に使用したベンチで、ユエとシアと共に図書館から拝借した本に目を通している。元々本を読むのは嫌いではないし、書かれている内容は自分達の常識とは大きく違う内容を記したハルケギニアの本を読むのは、することが少なくなった入間には趣味のようなものになっていた。他のメンバーは、それぞれ別の場所にいる。
ミラーワールドに滞在してから、愛子や優花などは使い魔の仕事として選択や水汲み、雑用などを手伝っている。他のメンバーは非協力的ながらも雑用に参加しており、入間も仕事はしているのだが、めっきり出番が減ってしまっていた。
また、ルイズ達が受ける授業には、魔法に対して勉強熱心なユエとミレディも参加するようになった。使い魔の教室への同伴は基本認められているが、部外者の訪問には流石の教師陣も難色を示したが、ユエ達のO☆HA☆NA☆SHIのお陰ですんなりと許可してくれた。
「皆様、紅茶とお茶菓子をお持ちしました」
「あっ、ありがとう」
「……ん」
「ありがとうございますぅ」
そこへ、日頃から読書に紅茶やお茶菓子を用意してくれるシエスタがやって来た。
シエスタが置いてくれたお茶菓子と紅茶を味わう入間とユエとシア。当然、二人が「あ~ん」をしてくるので、入間はパクリと食い付くと、二人にもお返しで「あ~ん」をしてあげる。
その時、入間達はシエスタが、ジッと自分達を見ていることに気付いた。人の目を気にしないでイチャつくなんて何時もの事だが、シエスタの目にあるのは好奇の類いではなく、哀しみが混じったような、観察するような目であったのだ。
「…何か、言いたいことがあるの?」
「っ!い、いえ……私は何も……」
尋ねてみるが、シエスタは顔を強張らせて遠慮する。しかし、視線をいつまでも向けられるのも鬱陶しいので、入間はこの場で聞いておくことにした。
「別に気を遣わなくていいよ。普段から給仕をしてもらってるんだから、それくらいはね」
入間の言葉に、シエスタは目を見開いた。
貴族が平民に給仕をしてくれたことを感謝するなど、戸惑わずにはいられなかった。
「…私、この学院を離れることになったんです」
気がつけば、シエスタは自然と話し始めていた。
彼女は昨日、この学院にやってきた【シュール・ド・モット】という伯爵の屋敷の使用人として召し抱えられたのだという。
「仕事場が変わっただけ、じゃないよね?」
「……モット伯は、あまりいい噂を聞かないんです。権力に任せて平民の娘を強引に召し上げては手篭めにするって……」
シエスタ曰く、モット伯は王宮の勅使として学院を訪れては給仕の若い少女達に目を付けては屋敷に召し抱えるのを繰り返しているらしい。そして今回目をつけられたのは、シエスタだったというわけだ。
「……嫌なら嫌って言えばいい」
「っ!そんなこと、出来ません!貴族に逆らうなんて……!」
ユエの言葉に、シエスタは顔を青くする。
それに反応を示したのはシアだ。彼女も、被差別種族の亜人族の生まれであり、魔力を持たない亜人達が、魔力という力を持ったヘルシャー帝国に捕らわれる姿を何度も見てきた。
今でこそ、シアの家族であるハウリアが入間とアメリの魔改造の末に帝国に勝利し、亜人族の立場は大きく変わった。しかし、シアの家族達とは違い、シエスタ達平民は本当に何の力も持たない一般人だ。魔法という力を持つ貴族に、それを持たない平民は抵抗することすら許されない。
同じ“人間”であるがゆえに起きる“差別”に、シアは微かに怒りを感じていた。
茶菓子を口にした入間は、シエスタに語りかける。
「逆らえないからって、それを受け入れることはないよ」
「そんなこと……」
「女を囲ってる僕が言っても説得力ないけど……平民や貴族なんて関係ない。身分や立場がどうであれ、“自由”は新調されるべきだよ」
「……」
入間の言葉に、シエスタは入間を見つめていた。
不思議な人だなぁ……シエスタはそう思っていた。
シエスタは入間が貴族だと判明した時、自分が原因で決闘騒ぎを起こしてしまったことを咎められるのではないかと恐怖を覚えていたが、当の入間は何でもないように謝罪を拒否したのだ。それから、不思議とシエスタは入間を目で追うようになり、積極的に彼の給仕をするようになった。
だが、彼が何人も女を囲っていると判明した時、シエスタは失望のようなものを感じていた。だが、モット伯に引き抜きの話を持ち出された時、シエスタはモット伯と入間の明確な違いに気付いた。
モット伯は、自分の事なんて見ていなかった。見ていたのは自分の容姿だけで、シエスタの言葉に耳を貸そうとなんてしなかった。
だが、入間は真っ直ぐにシエスタを見ていた。偉ぶることもせず、傲慢な態度も見せず、シエスタの言葉に耳を傾け、目を見て話してくれている。
何人も女を囲っている最悪な行為をしているはずなのに、何故かシエスタは、入間が不誠実な人間だと、モット伯と同じようなタイプには思えなかった。
「まぁ、もしも君が本当に嫌だった場合は僕が何とかしてあげるよ。君には色々洗濯とか給仕やらの恩があるからね」
そう言うと、入間はベンチから立ち上がり、踵を返して歩き出す。ユエとシアも同時にベンチを立ち、入間の背中を追いかける。
シエスタはしばらくその場で立ち尽くし、その背中を見つめていた。
「意外でしたね。入間さんがあそこまで言うなんて」
しばらく歩いていると、シアが声をあげた。
確かに、いくら入間とてあそこまで言うのは珍しい事だ。常日頃から給仕してくれているメイドや料理人達に感謝の念があるのは事実だが、結局は赤の他人。誰も彼も救ってやるなんて高尚な思想は入間にはない。この世界の貴族と平民の力関係は、自然なものだ。
この世界で名を轟かせるつもりも革命を起こす気もない入間には、たった一人の、縁も所縁もない異世界のメイドのためにあそこまで言ってやることなんてあり得ない事である。
「…何か気になるんだよねぇ」
入間が言っているのは、彼女の容姿に欲情したからとかではない。
最初にあった時から、入間はシエスタには違和感を感じていたのだ。それが何なのかは説明できないのだが、拭えない違和感があるのだ。知っているはずなのに思い出せない、そんなもどかしい感覚が、シエスタと関わる度に入間の中で渦巻いていた。
「……入間、どうするの?」
ユエの質問に、入間は空を見上げる。
そして、フッと微笑むと、不適な笑みを浮かべながら答えた。
「ここは一つ……悪魔らしく暴れてみるのもいいかもね」
アルビオン大陸ウエストウッドの森。
ここでは現在、沢山の子供達に見守られながら、一人の少女が使い魔の召喚の儀式を行っていた。
長いブロンドの髪に緑色のワンピースを着こなし、手足は線が細くしなやかで、可憐な少女という言葉がピッタリ当てはまる。誰もが振り返ってしまうような整った顔立ちは、いっそ神秘的である。そして何より目を引くのが、髪の間から除く、長久とがった耳、そして、その華奢な体躯からは考えられない程豊かに実った胸であった。
その少女──【ティファニア】は今、長く留守にしている姉の代わりの心の支えと、狩りなどの助けとして、使い魔を召喚する事を決意していたのだ。
「我が名はティファニア……五つの力を司るペンタゴン……お願いします。我が導きに応え、運命に従いし、使い魔を……召喚してください」
ティファニアが杖を振るうと、召喚のゲートが開かれる。
何処かの公爵令嬢のように、ティファニアはそこまで強い使い魔を使役できるとは思っていなかった。系統魔法が使えない自分の召喚に応えるような使い魔がいるならば、小鳥やリスみたいな小動物だろうと思っていた。贅沢を言えば、狩りが上手な使い魔だと実益があって嬉しいと思っていた。誰とは言わないが、やはり何処かの公爵令嬢とは大違いだ。
すると、召喚のゲートから勢いよく何かが飛び出した。己の使い魔が来てくれたのだと喜びを露にするティファニアだったが、その全容を目にして、すぐに目を見開いた。
「んみゅ?ここ何処なの?」
「あら?あらら?私まで……」
それは、赤い戦士と美女だった。
一人は、20代程の美女だ。おっとりとした雰囲気をした整った顔立ちにエメラルドグリーンの髪を腰まで伸ばしており、ティファニアとタメを張るほどに実った放漫な胸をしているが、肉付きは年相応であり、大人の魅力に溢れている。そして何より目を引くのが、耳に位置する部分から生えた魚の鰭と、指と指の間を繋ぐ水かきだった。
そしてもう一人は、180cm程の長身に、黒いボディスーツの上に赤いコスチュームを着込んだ戦士だった。顔は上部がまるで海賊帽を模したようなフルフェイスタイプのヘルメットによって隠されてあり、額と胸には剣が交差しているような模様が施されていた。
男のようにも見える外見だが、コスチューム越しでも分かるナイスバディと、腰に巻いた金色のベルトから下が丈の短いスカートになっていることから、女性なのだと分かった。
しばらく辺りをキョロキョロと見渡していた海賊と美女は、ティファニア達の存在に気付くと、赤い戦士の体が光に包まれる。
そして、赤い光から現れたのは、孤児院の子供達と大差のない、エメラルドグリーンの髪に耳に鰭がある幼子であった。
「お姉さん、お姉さんは誰ですか?ミュウはミュウです!」
「えっ?えっと……私は、ティファニアです」
「あらあら、ご丁寧に……ミュウの母親で、レミアと申します」
純粋無垢な様子で名前を聞いてくる幼女──ミュウ。
ティファニアは混乱しながらも返事をすると、今度はエメラルドグリーンの髪の美女──レミアが挨拶をする。
「ティファニアお姉さん、ここはどこですか?ミュウとママを呼んだのはお姉さんなんですか?なの?」
「そ、それは……私、使い魔を召喚しようとしていて……」
人を召喚してしまった事の申し訳なさから、どう説明するべきなのかを迷うティファニア。ミュウとレミアは、悪魔学校にも通っていないため、使い魔の存在すらよく知らないミュウとレミアは首をかしげていると、森の中に、異形な声が響き渡った。
「「「「「「イー!イー!イー!」」」」」」
その声に、ミュウもレミアもティファニアも、子供たちも、その声が聞こえてきた方向に目を向け、目を見開いた。
目、鼻、口だけを出した黒い覆面をかぶった、黒タイツに骨の入った姿をした軍団だったのだ。手には皆、ククリナイフに似た剣を手にしている。
そして、その全身タイツの男達の間を通って、蟷螂を無理矢理人の形にしたような化け物と、コブラを擬人化したような怪物、そしてスタイリッシュなイカのような化け物が現れたのだ。
その3体の化け物のうち、イカのような化け物──スペースイカデビルがティファニアを捉えると、声をあげた。
「見つけたぞ!あのハーフエルフをイカ捕り…あいや、生け捕りにしろ!!」
「「「「「「「イーッ!!!」」」」」」」
スペースイカデビルの言葉に、【ショッカー戦闘員】達はナイフを手にして走りだす。
ティファニアを含め、周囲の子供達は思わず本能的に恐怖し固まってしまっている。中には泣いている子供も居た。
そして、先頭にいた戦闘員が、ティファニアに襲いかかろうとした時、森の中に轟音が響いた。
「「「イーーッ!?」」」
銃声が響き、戦闘員の一部が火花をあげて吹き飛ばされる。
突然の事に、ティファニアや子供達は勿論、スペースイカデビルや、そばに控えていた【カマキリジン】と【改造コブラ男】が狼狽えいると、ティファニアと子供達の前に、小さな影が立ちはだかった。
「ティファニアお姉さんとは、さっきからのながい付き合いなの。お前たちが何者でも、いじめさせたりなんかしないの!」
「ミュウ!」
「えっ?えっ?」
それは、片手にピストルを手にしているミュウだった。レミアは声をあげ、ティファニアはもう訳が分からないと言うように混乱したいる。
「なっ、なんだ、お前は!?」
スペースイカデビルが、ミュウを指差しながら狼狽える。
対するミュウは、自信満々に腕を組み、盛大なドヤ顔で、それこそ己の誇りであると言うかのように宣言した。
「ミュウの名前はミュウ。最高最善の神殺しの魔王様──その愛娘なの!」
その言葉と共に、ミュウは携帯電話型のアイテム──モバイレーツを取り出して開くと、赤い人形──レンジャーキーを取り出す。
レンジャーキーが鍵の形に変化し、ミュウはモバイレーツを顔の横に持っていき、レンジャーキーを前に構えると、大きく叫んだ。
「ゴーカイチェンジ!なの!!」
そして、ミュウはモバイレーツにレンジャーキーを差し込んで捻ると、モバイレーツが変形する。
モバイレーツから飛び出した光がミュウに集まり、黒いスーツが装着されたミュウの体が大きくなると、Xの光が胸のマークとなり、続いて赤いXが赤い上着となって装着される。
赤いV字の光がヘルメットとなって装着され、最後に赤いXが額にマークを刻み込むことで、ミュウは変身を遂げた。
その姿こそ、かつて宇宙にその名を轟かせた、海賊の汚名を誇りとして生きる35番目の【スーパー戦隊】の一人にして、ミュウが戦士として変身した姿──、
「ゴーカイレッド!なの!!」
ミュウ──【ゴーカイレッド】は名乗りをあげた後、カットラス型武器の“ゴーカイサーベル”とフリントロック式ピストル型の武器──“ゴーカイガン”を手に取ると、「イカしてる~」と呑気に呟いているスペースイカデビルにゴーカイガンを向けると、声を張り上げた。
「派手に行くの!!」
その言葉と共に、ゴーカイガンが火を噴き、ゴーカイレッドは走り出した。
次回予告
モット「な、何だッ!?」
シエスタ「もしかして、イルマさん……!?」
──シエスタを救いに!
ユエ「コイツらは……!?」
入間「違和感の正体はこれだったんだ……!」
EP09「夜想曲・メイドの救世主」
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