記憶なき少女は戦場にて   作:ヨリヨリ

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なんとなく思いついたのでAI生成してもらいました。苦手な方はブラウザバックしてください。


白い悪魔

 

 

 

 

 

《世界樹》攻防戦

 

艦内に鳴り響く金属音と警報。

薄暗いコクピットの中、少女は静かに目を開けた。

視界は赤いバイザー越しに滲んでいたが、その中で確かに浮かぶ計器とインジケーターの光。

それだけで、彼女は今いる場所を理解した。

 

――モビルアーマーの中。戦場のただ中。

 

「……ここは……?」

 

言葉に応じる記憶はなかった。

名前も、目的も、何もわからない。

けれど、手は迷いなく操縦桿へと伸びていた。

 

機体が震える。

モニターに映る外部カメラの映像。

迫る影――ザフト製MS《ジン》。

 

その姿を見た瞬間、少女の中で何かが動いた。

 

「敵……ザフト……」

 

言葉が漏れる。

だがそれは誰に向けられたものでもない。

ただ、自身の中にある“認識”をなぞるように。

 

次の瞬間、少女の指は引き金へと向かった。

 

「了解。目標補足。迎撃します」

 

抑揚のない、機械のような応答。

自らの声にすら、戸惑う時間はなかった。

 

メビウス・ゼロが射出され、戦場へと滑り出す。

無音の宇宙。そこに響くのは、敵機の接近アラート。

 

(これは……戦闘。私は、戦っている)

 

少女の中で、ゆっくりと何かが目覚めていく。

 

「……私は、戦うために……生まれた?」

 

言葉に応じる者はいない。

だが、指は迷わず引き金を引いた。

閃光。爆発。

モニターの中で、味方の戦艦が次々と爆ぜていく。

 

「通信……ノア7、ノア13……応答なし……!」

 

途切れる回線。沈黙する僚艦。

防衛線は崩れ、戦域は赤く染まっていた。

メビウスが爆散し、光の粒となって消える。

その中に確かにあった“命”の重さが、ノーマの胸を締めつける。

 

「……囲まれてる……」

 

三機のジン。包囲は完成していた。

回避は難しい。退けば、撃たれる。

 

(……落ちる)

 

そう思った時だった。

背部ユニットから、警告音が鳴った。

同時に、HUDが赤く染まり、分割照準が展開される。

 

《ガンバレル、起動》

 

その表示に、ノーマは目を見開くことすらしなかった。

 

知らないはずの操作。だが、手は自然と動く。

まるで、自身の意思より先に、身体が覚えていたかのように。

四基のガンバレルが解き放たれ、宇宙に飛び立つ。

敵機を取り囲み、光を放った。

 

爆散――ジン、一機、また一機。

最後の一機も、逃げ場なく焼かれて沈黙した。

無線に驚きの声が流れる。

 

「……嘘だろ……あれ、制御できたのか……?」

 

通信がざわめく。

ノーマは、ただ静かに息を吐いた。

 

(……これは、“当然”だった……)

 

驚きもない。ただ、空白の中にひとつの感覚だけが残った。

 

(私は――何者?)

 

問いに答える声はない。

だが、警報は続く。敵影が再び迫る。

そして、彼女は再び操縦桿に手をかけた。

ノーマ・レギオの戦いは、まだ終わらない。

それが始まりであることだけは、彼女にも、わかっていた。

 

 

 

 

地球連合軍艦《グロリアス》

戦術会議室・深夜

青白い光を放つホログラム端末が、静寂の中で明滅していた。

その中心に立つ男、ムルタ・アズラエルは、組んだ指の奥から静かにモニターを見つめていた。

 

「ふむ……?」

 

報告を読み上げていた幕僚の声が途切れる。

アズラエルは眉ひとつ動かさぬまま、薄く口元を吊り上げた。

 

「……ジンを三機、同時に撃墜? しかも、たった一機のメビウス・ゼロで?」

「しかもそのパイロットは、記憶喪失の少女、ですか――へぇ」

 

彼の声には、感嘆の色すら滲んでいた。

だが、その瞳には一片の驚きもない。むしろ、淡々と面白がっているような色がある。

 

指先でスイッチを切り替え、壁面に投影された戦闘記録を呼び出す。

赤いバイザーをつけた少女が、宇宙の闇を舞い、四基のガンバレルを放って敵を包囲、瞬時に殲滅する。

 

その一連の動きに、アズラエルは声もなく口角を吊り上げた。

 

「これは……なかなかの芸当ですね。生半可な訓練じゃない。いや、訓練の域ですらないか」

 

傍らの士官が、硬い声で補足する。

 

「はい。確認された機体は試験配備型のゼロ仕様、制御系統に未調整箇所が残っており、通常のパイロットでは……」

 

「通常じゃないんでしょう?」

アズラエルはすぐに割り込んだ。

「この“ノーマ・レギオ”……記録上の存在もしないのに、MAの操作と戦術を熟知している。あまつさえ、あの精度でのガンバレル制御。これはね、ただの“才能”じゃありませんよ」

 

椅子に身を沈めると、指を組み直し、天井を見上げる。

 

「ふぅん……もしかすると、君たちは今、とんでもない逸材を拾ったのかもしれませんねぇ」

 

一拍の沈黙。

そして、低く、穏やかな声で言う。

 

「その子に、会わせてください」

 

部屋にいた士官が、わずかに身じろぎする。

アズラエルはその反応を面白がるように、やや首をかしげた。

 

「別に怖いことをするつもりはありませんよ。私はただ、知りたいだけなんです」

「彼女が何者で、どこから来て、なぜ戦ってしまえるのか。そして、我々にとって“使える”かどうか」

 

彼の声に毒気はない。だが、冷たい。

ホログラムに映る少女の顔をじっと見つめながら、アズラエルは呟くように言った。

 

「思想も、血統も関係ない。必要なのは“有益かどうか”だけ」

「ブルーコスモスにとって意味を持つなら――どんな存在でも“味方”にできる」

 

映像の中のノーマが、コクピット越しに敵機を見据えていた。

その無言の眼差しに、アズラエルはもう一度、ゆっくりと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

《世界樹》攻防戦:戦闘終了直後

 

メビウス・ゼロがネルソン級戦艦のMAデッキへと帰還する。

減速スラスターが放つ白光が、格納庫の壁面を焼き、機体は滑るように定位置へと収まった。

 

「メビウス、帰還確認! デッキ、クリア!」

 

緊張の糸が解けたように、整備兵たちの声が上がる。

それはすぐにざわめきとなり、やがて歓声へと変わった。

 

「今の……ジンを3機同時に落としたって……本当か!?」

「ローラシア級も沈めたって話だぞ! たった1機で……!」

 

誰かが拍手を始め、誰かが口笛を吹く。

その中心で静かに佇む白いメビウス・ゼロは、今や戦場の象徴と化していた。

 

――だが、コックピットの中にいるパイロットは、まるで別の場所にいた。

 

ノーマ・レギオ。

赤いバイザー越しの瞳は、焦点を失っていた。

視界の端にちらつく断片。爆発、破片、散るMS。

弾ける装甲、その奥に見えた断末魔の表情――。

 

「……ッ……!」

 

呼吸が詰まり、咄嗟にヘルメットを外す。

喉の奥から込み上げるものが堰を切ったように溢れ、

狭いコクピットに、鈍い音と酸の臭いが満ちた。

 

誰もいない空間。誰にも届かない、少女の嗚咽。

 

(――私が、殺した)

 

敵機の撃墜数。戦果報告。評価。

数字の裏にあったのは、確かな“死”だった。

 

やがて、コクピットハッチが開く。

 

冷たいスチームが吐き出される中、ノーマの姿がゆっくりと姿を現す。

まだ幼さの残る輪郭。蒼白な顔色。

彼女は言葉もなくデッキへ降り立ち、吐瀉の痕を隠すように小さく背を丸めた。

 

その姿を、周囲は見なかった。

代わりに、盛大な拍手と賞賛の声が格納庫に響く。

 

「やったぞ、ホワイト・ゼロ!」「新型ガンバレルの実戦データが――!」

 

ノーマには、どの言葉も遠く、乾いた空気のざわめきにしか聞こえなかった。

そんな中――明らかに異なる足音がひとつ。

 

「メビウスのパイロット」

 

冷えた声。

振り向けば、地球連合軍の高官と思しき士官が立っていた。

階級章の色が示す立場は高い。だが、敬礼も礼節もなかった。

 

「上からの命令だ。ついてきてもらう」

 

彼女の肩が、わずかに震えた。

どこへ向かうのか。何が待っているのか。

それを知る術もなく、ノーマはただ静かに一歩を踏み出す。

 

賞賛に包まれる戦場の裏で、

赤いバイザーの奥には、まだ消えぬ戦火の残像が揺れていた。

 

 

 

 

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