見覚えのある建物…「スターノックス」と言うカフェに入る。
私はお金の心配をして、アンズに聞こうとしたら、私の言葉を遮って……「お金は――」
「安心して、私が奢るから」
そう言うと、アンズと私は席に座って、メニュー表を見る。
「ここのチョコパイ、好きなんだよね。あなたも食べる?」
アンズはそう言って、メニュー表の左下を指差す。
「じゃあ、私も同じのを貰おうかな」
注文が終わり、待っている間――
「ごめん。こんな事に巻き込んで」
アンズは申し訳なさそうに私に謝る。
「あなただって、帰りたいはずなのに……」
そういえば……帰るのにはどうすればいいんだろう? でも、あんなクソみたいな仕事に行かなくてもいいならこのままでも……
「全然いいよ」
私がそう返すと、「でも……」とアンズが口にしかけた所で、注文した物が届いた。
アンズは言葉を引っ込めて、吸い寄せられるようにチョコパイに手を持っていく。
手に持ったチョコパイを美味しそうに頬張るアンズを見て、私は微笑みながら、釣られて自分のチョコパイに手を伸ばす。
私は手に取ったアツアツのチョコパイを口に頬張ると、口の中でチョコが蕩ける。それに呼応して、私の顔も蕩ける。
アンズは私の顔を見て、「美味しいでしょ?」と尋ねる。
私は思わず、「美味しい!」と叫んでしまった。
店内が静まり返った。死にたい……
叫んだ私を見て、アンズは顔を逸らしながらクスクスと笑っていた。
不思議と嫌な気分にはならなかった。それは――
いつも無表情なアンズが、しっかり笑っていたからだ。何故だか、笑っているアンズを見ると、嬉しくなってしまう。
……どうしてなんだろう。私――
「助けてください……!」
考え事をする私の耳に入ってきた声。丁度私達の隣にある窓越しに聞こえてくる。
その声を聞いたアンズは、「行こう」と一言私に放って、店を出る。
急な展開に、私は驚いたけど……アンズの後に続いて店を出る。
店から出て左の方を見ると、助けを求める声の主と話しているアンズが見える。それを見て、急いで私はアンズの方に駆け付ける。
「すみません、助けて頂けませんか……!」
そう言っている男の人に、アンズが「どうしたの?」と返すと、男の人は……
「家の猫が行方不明で……!」
「分かった。いつから居ないの?」
アンズの質問に、「昨日の夜から姿が見えないんです」と男性が答えると……アンズは「あなたの家を教えて」と、デリカシーが欠如しているような事を言い始めた。
男性は困惑して、「本当に教える意味があるんですか……?」と聞くが、アンズは急かすように「早く、痕跡が消える」と言う。
それを聴いた男性は、押しに負けたのか……「分かりましたよ……」と不満そうにしながら歩き出す。
私はその男性に一言挨拶して、現在の状況を聞きながら3人で歩き始める――