薩摩藩士キザエモンは気づいたら鎌倉時代にいた。
蒙古襲来に応ずるべく、現地の鎌倉武士たちと協力して戦うことにしたキザエモンだが、なんとゴジラもやってきた!
こうなりゃ蒙古の相手なんてしている暇はねぇ!
けど、ゴジラは強い! とても倒せるような相手じゃねえぞ!
果たしてキザエモンは生きて元の時代に帰れるのか?
最強生物と戦闘狂どもの戦いがいま、始まる!

この物語は実在する歴史・人物・団体とは何の関係もありません。フィクションです。
鎌倉武士も薩摩藩士も誇張した独自解釈に基づいて書いています。
作中の薩摩弁は「恋する方言変換」(https://www.8toch.net/translate/)を使いました。

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ゴジラvs鎌倉武士~薩摩を添えて~

「チェストォオ!」

 

 キザエモンは頭上に振り上げた太刀を決死の覚悟で振り下ろした。

 

「ウォオオ!」

 

 雄たけびと共に相手も太刀を構えるが遅い。

 キザエモンが降ろした刃が敵の頭を兜ごとかち割った。

 どさり、と倒れる相手の目はかっぴらいたままキザエモンを睨みつけていた。

 

「今どきこげんもんを被っちょっなんてどこん者じゃ」

(今どきこんな物を被っているなんてどこの者だ?)

 

 キザエモンは散らばった兜の欠片を手に取りながら死体を睨み返した。

 その死体は甲冑を身に包み、背には矢筒を背負っていた。

 

「てっきり幕府ん軟弱者かち思うたたっどんな。そいにしては古めかしか。まあ、だいでんよかか。先に攻撃したんなおはんの方じゃ」

(てっきり幕府の軟弱者かと思ったんだけどな。それにしては古めかしい。まあ、誰でもいいか。先に攻撃したのはお前さんの方だ)

 

 キザエモンの後方にそびえる木には一本の矢が刺さっていた。

 殺された男が射たものだ。

 彼は突然、キザエモンが理解できない言葉でがなりたててきて、矢を放ったのだ。

 これには対話をしようとしたキザエモンも応じるしかない。

 そして死体が一つ出来上がったという次第だ。

 この死体、身に着けているものはキザエモンからすれば古めかしいものだが、顔つきからして自分と同じ日本人だろう。

 

「エゲレス人じゃなかなら、幕府も文句はなかじゃろ」

(イギリス人じゃないなら、幕府も文句はないだろう)

 

 キザエモンは幕末の薩摩藩士だ。

 つい先日、大名行列を邪魔したイギリス人たちを斬り殺したせいで色々と面倒になっていた最中だった。

 殺した張本人であるキザエモンは当然、毎日あちらへこちらへと対応に追われていたのだが、気づけば見知らぬ森にいた。

 状況を把握しきる前に攻撃を受けたので応じたわけだが、もしかしたらそれは間違いだったのだろうか。

 なんと、さっき殺した古めかしい男の仲間らしき者たちが集まりだしたのだ。

 

「ヤアヤア、我こそは……」

 

 集まった男らの中で一番立派な格好をした男が前へ進み出て、名乗りを上げた。

 だが、どうにもその発音が聞き取りづらく、キザエモンをイライラとさせた。

 

「わいもケツん仲間け?」

(お前もコイツの仲間か?)

 

 相手の名乗りの途中で短く尋ねるが、向こうは顔をしかめただけ。

 

「我こそは北条時宗公より任を受け……」

 

 再開された名乗りにキザエモンはハッとした。

 己の国が歩んだ歴史を学ぶのは薩摩藩士として当然のこと。

そして北条時宗、この名も覚えている。

 

(北条時宗ちゆたや蒙古襲来。まさかおいは神隠しに遭うたんか?)

(北条時宗と言ったら蒙古襲来。まさか俺は神隠しに遭ったのか?)

 

 キザエモンの思考を肯定するように相手の名乗りから「元」や「蒙古」の単語が聞こえてくる。

 そうと分かれば、集まっている者たちの古めかしい装備も話し方も合点がいく。

 

「ヤアヤア、我こそは薩摩に住まうキザエモンなり。此度の戦の助太刀に来て候」

 

 薩摩の言葉は他の土地の者たちには聞き取りづらいらしい。

 仕方なく、キザエモンはさっき聞いたばかりの口上を真似つつ、さらに古典で習った言葉を思い出しつつ話した。

 すると、ようやく相手に通じたようだ。

 

「おお! 助太刀か!」

 

 相手はそう言って喜んだが、キザエモンの足元に転がる死体をチラリと見た。

 キザエモンとてその視線には気づいたので弁明した。

 

「此の者、うちつけに我に斬りかかりき。なれば殺めるほかなし」

(こいつは急に斬りかかって来たから殺した)

 

 この返事に、他の鎌倉武士たちが訝しげにヒソヒソしだした。

 キザエモンを信用するかしないかで話し合っているのだろう。

すると、しびれを切らしたのか、いかにも短気そうな奴がキザエモンに斬りかかって来た。

 もちろん、キザエモンも太刀を頭上に構えた。

 

「チェストォ!」

 

 こうなりゃ相手が鎌倉武士だろうが関係ない。

 短気な奴の頭をかち割ろうとしたとき、相手が避けた。

 

「なっ?!」

 

 どうやら、先にキザエモンが作った死体から太刀筋を読んでいたらしい。

 一撃目を避ける者は珍しい。

 だが、これで崩れるほどキザエモンはやわじゃない。

 相手の追撃を避け、切り結ぶ。

 キザエモンたちから少し離れた場所で他の鎌倉武士たちも刀を構えて待っていた。

 どうやら今戦っている相手が倒れたら次は自分が仕留めに行くとばかりにワクワクしているらしい。

 とんだ戦闘狂どもだ。

 

 キザエモンは剣術の達人と称されるほどの腕前だ。

 そしてそんなキザエモンを相手にまだ生きて立っている相手もかなりの腕前のようだ。

 不思議なものだが、達人の世界では言葉を交わさなくても分かり合える時があるらしい。

 刀と刀を合わせ、相手の呼吸を読み合う。

 そうすると相手が考えていることがなんとなく分かってしまうのだ。

 

 そしてその不思議な現象がこの時も起きた。

 ピタリ、とどちらともなく動きが止まる。

 

「これ以上は必要なかね」

(これ以上は必要ないな)

 

 キザエモンの言葉に相手も頷く。

 お互いが敵ではないと悟ったのだ。

 そして、いま戦うべき相手は他にあり、手を取り合うべきだと。

 キザエモンたちの戦いを見守っていた他の鎌倉武士たちも感じ取ったようで、それぞれがちょっと残念そうに太刀を納めていた。

 

「わいどんの仲間には悪かことをしたな」

(お前たちの仲間には悪いことをしたな)

 

 キザエモンが死体に視線を巡らせ言うと、鎌倉武士の誰かが言った。

 

「負ける方が悪い」

 

 その声にみんなも頷く。

コイツらとは仲良くなれそうだ。キザエモンは思った。

 

「薩摩のキザエモン……だったな。俺はゴロウ。アンタの剣術は見たことが無いが、大した腕前だ」

 

 キザエモンと戦った男が名乗った。

 なんと、太刀で心を通わせたおかげか、さっきまでは聞きとりづらかった鎌倉武士たちの言葉が理解できるようになっていた。

 こうやって無理くりこじつけないと、いつまでも会話描写に悩むことになるからだ。

 

「薬丸半左衛門先生に習うた薬丸自顕流じゃ」

(薬丸半左衛門先生に習った薬丸自顕流だ)

「薬丸自顕流? やはり初めて聞いたな。なんにせよお前は強いな」

 

 どうやらキザエモンの言葉も通じるようになったらしい。

そういうことにしないといつまでも話が進まないからだ。

 

「助太刀に来たということはもう聞いているのだろうな。対馬が落ちた。二、三日中に蒙古どもは博多の湾を攻めて来るだろう。俺らとて準備は重ねておるが、一人でも多く強者は欲しいところだ」

 

 すっかりキザエモンも元寇に対応することとなっているが、キザエモンとてそれは本望だ。

 時代は違えど国を思う気持ちは同じ。

 相手がイギリスだろうが蒙古だろうが守ってみせる。

 気合を入れ、目を吊り上げるキザエモンに、初めに話しかけた偉そうな男が声をかけた。

 

「某の隊が先陣を切る。お主も加わってくれるな?」

「あたが大将じゃっとな。もちろんお供すっ」

(あなたが大将ですか。もちろんお供します)

 

 頷くキザエモンに大将は満足そうに頷いた。

 

 

 

「おい見ろ! あれは大将の首だ! 大将が蒙古どもにやられたぞ!」

 

 ゴロウの声にキザエモンはハッと顔を上げた。

 上陸してきた蒙古の集団が高々と掲げているのはついさっきキザエモンと握手を交わした大将の生首だ。

 キザエモンが加わった隊は士気も殺意も高く我先にと先陣を切って戦っていたのだが、多勢に無勢。

 次々と船から降り上陸する蒙古人たちに苦戦していた。

 ついには大将首をとられるほどに。

 だが、彼らの隊の士気は全く下がらなかった。

 

「あの野郎ども! 大将を辱めやがって!」

「おい、アイツら人質もとりやがったぞ!」

「我らをどこまでも侮辱しやがって!」

「大将が死んでも恐れるな! 行くぞ!」

 

 大将を失っても混乱していないのは、総大将は別にいるからだ。

 キザエモン達の隊はあくまで先鋭。彼らがやるべきことはとにかく敵を蹴散らすことで、他の謀は後衛に任せればよい。

 そのため、キザエモンもゴロウたちと共にとにかく太刀をふるい続けた。

 

「それにしてもさっきの“てつはう”ってのには驚いたな! キザエモンが止めなきゃやられるところだったぜ!」

 

 また一人、蒙古を仕留めたゴロウが近くのキザエモンに怒鳴りつけた。

 キザエモン達はさっきまで蒙古人たちの火薬が尽きるまで、てつはうに対抗して弓矢で戦っていた。

 この時代のてつはうとは銃ではなく、手榴弾に近い。

 とにかく当たらないよう注意しながらキザエモン達は敵の急所に矢を射ってどうにか戦っていた。

 

「火薬はもう尽きたようじゃっで敵に集中せんか」

(火薬はもう尽きたようだから敵に集中しろ)

 

 キザエモンもゴロウに怒鳴り返す。

 火薬を消費し尽くした蒙古どもは船で本国に引き返すわけもなく、上陸して剣を振り回しはじめたということだ。

 キザエモン達からすればさっさと帰れ、と思うのだが敵としてはそうもいかないのだろう。

 ならば徹底抗戦するまでだ。

 ここで折れれば待つのは侵略。

 敵は排除すべし。

 

「チェストォオオオ!」

 

 キザエモンの闘志は燃え滾る。鎌倉武士たちの闘志も燃え滾る。

 噴き出す血を浴び、敵を切り、肉を断つ。

 その時。

 

「ギャァアアアアアア!」

 

 戦場でもひときわ悲壮な断末魔。

 聞き慣れているはずのキザエモン達ですらハッとそちらに目をやってしまった。

 なんと、海中から現れた巨大な生物が船を一艘、襲っていた。

 

「なんじゃ、あや……」

(なんだ、あれは……)

 

 キザエモンだけでない。その場にいた誰もが動きを止め、その生物が船を破壊するのを見ていた。

 ゴツゴツとした黒い鱗に覆われたそれはキザエモン達の何十倍も大きい。

 異様に成長したクジラだろうか。

 いや、奴は二本足で立ち、船を薙ぎ払った。

 鎌倉武士たちの五百年は先を生きるキザエモンですら見たことのないその生物は急に戦場の中心に降り立ち、蹂躙していた。

 

「アイツ、俺らの味方をしているのか?」

 

 蒙古の船を破壊する様子を見たゴロウがキザエモンに尋ねた。

 確かにこのタイミングだと、共に蒙古を払わんとする神の使いに思える。

 だが。

 

「おいやめろ!」

 

 その生物は非情にも、蒙古の人質となって縛られていたキザエモンの仲間たち、さらには陸上にいた鎌倉武士たちもまとめて薙ぎ払った。

 運よくゴロウとキザエモンのいた場所はその猛攻の対象にならなかったが、仲間たちが何人も消えた。

 

「ウォオオオ!!!!!」

 

 同じように薙ぎ払いの対象にならなかった鎌倉武士たちが何人もその巨大生物に向かって斬りかかった。

 だが、彼らも海へ、近くの森へ、石垣へ、叩きつけられた。

 

「なんなんだあの化け物は! キザエモン! 俺らで退治するぞ!」

「チェストォオオオオ!」

 

 飛んでくる鎌倉武士たちの遺体を踏み台代わりに跳び上がったゴロウとキザエモンが巨大生物に斬りかかる。

 だが。

 

「ぐはっ!」

「うっ!」

 

 あっけなく二人も振り回された尻尾にぶつかって吹っ飛んでしまった。

 幸いだったのは、二人が飛ばされた先にはちょうど生け垣がありクッション代わりとなった。

 

 そうしている間に巨大生物は湾岸を踏み荒らし、敵も仲間も関係なく襲い、いつしか海へと帰って行った。

 蒙古も武士たちも両方が敗北した戦いとなったのだった。

 

 

 

 

「う……」

 

 ずきんずきんと頭が痛む。

 キザエモンが起き上がると、そこには地獄が広がっていた。

 湾岸のあちこちに散らばる鎌倉武士たち、蒙古どもの遺体。

 中には呻く声も聞こえる。

 

「おいゴロウ! 起きっど!」(おいゴロウ! 起きるんだ!)

 

 ちょうど隣の生垣で寝っ転がっていたゴロウを揺さぶると、ううん、とうめき声ののちに目を覚ました。

 

「キザエモン! どういうことだこれは!」

「あん化け物がやったんじゃ。生きちょっ奴を探すど」

(あの化け物がやったんだ。生きている奴を探すぞ)

 

 こうして二人は湾岸中を歩き回った。

蒙古人の生き残りを始末し、生きていそうな仲間たちはビンタを数発食らわせ目を覚まし、どうにもなりそうにない奴は苦しみを長引かせないため介錯した。

 そんなことをしているうちに日が沈んでしまった。

 ちょうど内陸部にいた武士の仲間が様子を見に来たので合流し、キザエモンはゴロウと共にかがり火のそばで夕餉をとることにした。

 

「あれは呉爾羅だな」

「ゴジラ?」

 

 内陸で控えていた総大将の御家人の言葉にキザエモンもゴロウも首を傾げた。

 スエナガと名乗ったその総大将は「ワシも実物を見るまで信じられなかったのだが」と話し始めた。

 

「どこぞの島……大戸島と言ったかな。そこでは呉爾羅と呼び信仰しているらしい。連中はあれが古来よりこの地を守る神だと信じているんだ」

「あの化け物が日本を守る神だと? 蒙古どもだけじゃなく俺らの仲間も根こそぎいきやがったじゃねーか」

 

 憤るゴロウにスエナガは言い聞かせた。

 

「あいつが守っているのはこの国じゃない。ワシらが住むこの地だ。あのデカブツからすりゃワシらも邪魔者なんだろう」

「邪魔者ぉ? キザエモン、お前はゴジラなんて聞いたことあるか?」

「んにゃ」(いいや)

「そうだろう。俺だって初めて見た。あんなのがいるならこの国はとっくに滅んでいたんじゃないのか? なんでアイツはこれまで出てこなかったんだ?」

 

 ゴロウの問いにスエナガはフン、と鼻息をふいた。

 

「んなことワシは知らん。だが、知っている連中はいる。どうやらあのゴジラとやらが出て来たのを知った坊主どもがこちらへ向かっているらしい」

「坊主どもが?」

 

 スエナガの言う通り数日後、質素な格好をした坊主たちがふらりと本陣へ現れた。

 

「わいらはだいじゃ?」(お前らは誰だ?)

「こちらの方は久米の仙人様や。夢のお告げを受け、遥々ここまで来た。総大将はどこや」

 

 久米の仙人に付き添う、偉そうな若い坊主の物言いにカチンときたキザエモンだが、坊主が来たら通すよう言われていたためスエナガのところまで案内した。

 

「よくぞ来てくださいました。久米の仙人様と言ったら鎌倉でもその名は聞いております。夢のお告げを受けたとのことですがゴジラのことでしょうか?」

「ゴジラやと? ほな、夢で仏様が仰っていたこの国の危機とはゴジラのことやったんか」

 

 仙人は納得したとばかりに何度も頷いた。

 付き添う弟子たちも「さすが仙人様や」と持ち上げている。

 

「ゴジラが来てん知らんやったんなら、わいはどげん夢を見たんじゃ」

(ゴジラが来たって知らなかったのなら、お前はどんな夢を見たんだ)

 

 生きる時代の違いか、仙人のありがたさがイマイチ分からないキザエモンがズバリ尋ねると、偉そうな若い坊主が顔をしかめた。

 が、若坊主が噛みつく前に仙人が答えた。

 

「黒き影がこの地に迫り、ほんで覆うたんや。この地に満ちる人々の苦しみ、恐れ、怒りをはっきりと感じたで。仏様の御言葉も聞こえた。この地に危機迫り、救いが必要やと。せやさかいにうちらはここに来たっちゅうわけや」 

 

 キザエモンは口に出さずとも思った。

 

――胡散臭かね(胡散臭いな)

 

 だが、それは明治の時代から来たキザエモンだけであって、さっきまでゴジラを信じていなかったスエナガもゴロウも真剣な表情で久米仙人の言葉を聞いていた。

 キザエモンは驚いた。

 

――こげん坊主んゆことを本気で信じちょっとか(こんな坊主の言うことを本気で信じているのか)

 

 キザエモンが信じるのは己の剣一つのみ。

 とても強い鎌倉武士たちも同様かと思ったのだが、意外と信心深いところがあるらしい。

 特にスエナガは縋るように仙人を見ている。

 

「久米の仙人様の御知恵を借りたいのですがよろしいですか?」

「ええで。これも仏様の御導きや」

 

 たまらず、キザエモンはゴロウを引っ張ってヒソヒソと話しかけた。

 

「おいゴロウ! あげん坊主んゆことを本気で信じちょっとか?」(あんな坊主の言うことを本気で信じているのか?)

「何言ってんだ! キザエモン、お前まさか久米の仙人様を知らないんじゃないだろうな? すさまじい神通力を持つありがたい仙人様なんだぞ!」

「神通力ぃ?」

 

 キザエモンからすれば眉唾物だが、どうやら鎌倉時代の武士たちは神通力とやらを信じているらしい。

 

――神通力で戦艦を打ち破れんなら信じてやってんよかどんな。(神通力で戦艦を打ち破れるなら信じてやってもいいけどな)

 

 キザエモンは科学力の差による常識のジェネレーションギャップを感じたのだった。

 スエナガは久米仙人に尋ねた。

 

「大戸島の連中が言うにはゴジラというのはこの地を守る神らしいのですが、本当ですか?」

「ふむ。確かにゴジラは蒙古とは違って神聖なものを感じるわ。せやから、アレを殺してはならん」

「ないゆてんだ!(何言ってんだ!)」

 

 すかさずキザエモンが口を挟んだ。

 

「あんデカブツはおいらん仲間を殺した害獣じゃ。国に仇なす害獣はさっさと駆逐せんなならんじゃろ」(あのデカブツは俺らの仲間を殺した害獣だ。国に仇なす害獣はさっさと駆逐しなくちゃならんだろう)

 

 久米仙人はぎょっとした顔で言った。

 

「神聖なるゴジラを駆逐するやて? あかんあかん! そんなんしたら祟られるねん」

「おいは薩摩藩士じゃ。祟りなんかおじゅうなか! おいんチェストでびんたを叩き割ってやっ」(俺は薩摩藩士だ。祟りなんか怖くない! 俺のチェストで頭を叩き割ってやる)

「あんさん何ゆうとんねん!」

「ちょっキザエモン! こっち来い!」

 

 キザエモンはゴロウに後ろから羽交い絞めにされ、そのままずるずると久米仙人たちから離されてしまった。

 

「久米の仙人様の言うことは聞いた方がいい!」

 

――坊主んゆことなんていちいち本気にしやがって(坊主の言うことなんていちいち本気にしやがって)

 

 キザエモンはそう思ったものの、あんまりにもゴロウの顔が真剣そのものなので黙った。

 気に入らないことがあったら刀で解決するのが一番だが、とは言え、無駄な戦いをしたいわけでもないし、こんな理由でゴロウを殺すのは惜しくなった。

 キザエモンがゴロウに見張られ大人しくしているうちに、総大将のスエナガと久米仙人の話し合いは済んだようだ。

 

「久米の仙人様のお力を借り、ゴジラを封印することとなった」

「封印じゃと?」(封印だと?)

「そのためには、うちらだけの力じゃ足りん。陰陽師も必要や」

 

 キザエモンはなんの冗談かと思ったが、皆はやはり真剣な表情だ。

 

――刀を持つ持つ武士より陰陽師じゃと? 何人集まろうが武力に勝っもんななかどん。(刀を持つ武士より陰陽師だと? 何人集まろうが武力に勝るものはないのに)

 

 呆れていたキザエモンだったが、すぐにその考えは間違っていると痛感したのだった。

 

 

 

「ないで人が浮いちょっど!(何で人が浮いているんだ!)」

 

 元寇の再来と共にゴジラも再来した日、キザエモンは思わず叫んだ。

 

「さすが久米仙人様や! うちらは飛べへんけど、物を飛ばして援護するで!」

「どうか仏様、仙人様と我らをお守りくださいまし」

 

 久米仙人がひゅんひゅんと宙を飛び、弟子たちは大きな鉢やら木やらをゴジラへ飛ばしているじゃないか。

 

「ナンチャラカンチャラスンゴイジュモンブツクサブツクサ」

 

 陰陽師たちも何やら唱えながら式神という紙っぺらを飛ばしてゴジラの動きをほんのちょびっとだけではあるが、止めている。

 明治の世では見たことのない光景だ。

 キザエモンは感動していた。これならあのデカブツにも勝てるかもしれない。

 

「よし! 今のうちにあんゴジラっちゅう化け物を殺すど」(よし! 今のうちにあのゴジラっていう化け物を殺すぞ)

「バカ! 仙人様たちは封印するって言ってんだろうが! 俺たちは仙人様方を守るんだ!」

 

 ゴジラが尻尾を振るうたびに飛んでくる瓦礫を刀でぶっ叩きながらゴロウが叫んだ。

 その後ろには無防備な坊主たちがいる。

 キザエモンもゴロウも彼らの護衛の任を総大将のスエナガより受けていた。

 

「護衛が必要には見ぃがならんがな」(護衛が必要には見えないがな)

 

 地上にいる僧侶たちのそばには武装した僧兵が立ち並んでいる。

 キザエモン達はさらにその外周で守っている形だ。

 僧兵たちはキザエモンが見る限り、自分や鎌倉武士たちほど強くはなさそうだが、自分らの身を守る程度には十分な腕がある。

 キザエモンは守りばかりの状況に半ばイライラし始めていた。

 ゴジラは巨大だ。

 これだけ叩き甲斐のある的を相手に一太刀も浴びせられないなんて。

 その時。

 

「おい! 蒙古の野郎ども、こんな時に攻めて来やがったぞ!」

「何考えてんだアイツら!」

「殺せ殺せ!」

「いや、それよりもゴジラを」

「ゴジラより蒙古だろ!」

 

 キザエモン達がゴジラに苦戦している間に上陸し、隙を見て地上を責めようとしているらしい。

 蒙古たちが乗る船はゴジラの攻撃が届かない場所から近づいてきている。

 僧侶たちを守るため丘の高いところにいたキザエモンたち護衛隊にはその様子がよく見えていた。

 

「よし! 攘夷じゃ!」(よし! 攘夷だ!)

「おいキザエモン!」

「おいはあん船を沈めて来っ。ここはわいらだけで十分じゃろ!」(俺はあの船を沈めて来る。ここはお前らだけで十分だろう!)

「お前だけずるいぞキザエモン!」

 

 駆けだすキザエモンの後ろからゴロウが追いかける。

 

「なんじゃ。わいも戦おごたったんじゃらせんか」(なんだ。お前も戦いたかったんじゃないか) 

「当たり前だろ! 坊さん連中のお守りなんてやってられっか!」

 

 久米仙人のことを信じているものの、ゴロウも戦闘狂の性を抑えられないらしい。

 生き生きとした様子でゴロウと共に蒙古の船へ飛び移った。

 

「チェストーーー!!!」

 

 近づく蒙古の船へ立ち向かうのはキザエモンとゴロウだけ、かと思いきや。

 鎌倉武士たちが集結していた。

 なんと総大将のスエナガまでも。

 

「やはり戦ってこそ武士の道! ヤアヤア我こそは肥後の国より参りし男、名はスエナガ!」

 

 目をかっぴらいてバッサバッサと敵を倒していく総大将の姿に他の鎌倉武士たちの士気も上がる。 

 

「あんさんら、何しとるんや! はよ戻って来い!」

 

 守りが手薄となった坊主たちが叫ぶも、乱戦の中にいる武士たちにその声は届かない。

 

「こうなりゃあの者たち抜きでゴジラを封印せにゃならんの」

 

 神通力でビュンビュン空を飛ぶ久米仙人は呟いた。

 幸い、ゴジラの足止めはどうにかうまくいっている。

 このまま陰陽師たちの結界術が成功すればゴジラは封印できるはずだ。

 久米仙人は空を飛んでゴジラの視線を陰陽師たちから逸らしつつ、結界を張る手助けをしていた。

 陰陽師たちは地から、仙人は空から結界を張っているのだ。

 だが。

 

「むっひょー! おなごの足! なんちゅうそそるもんなんや!」

 

 なんと、蒙古の船に乗っていた捕虜の中に若い娘がいたらしい。

 逃げ惑う娘の衣が着崩れ、そのすらりと伸びた大根のように白い肌がさらされる。

 仙人はその真っ白な肌を見た途端にぐらりと体制を崩し、地へとまっさかさまに落ちてしまった。

 

「仙人さまぁ!!!」

 

 バッシャーン、と水しぶきが上がる。

 

「ナントカカントカ……クソ! 結界術が壊れた! これじゃあ封印ができないぞ!」

 

 難しい顔で呪文を唱えていた陰陽師たちは焦り顔。

 動きが妨害されていたゴジラが解放されてしまった。

 

「あかん! 仙人様が潰れてまう!」

 

 ひとしきり叫んだあと、仙人が沈んだあたりへとゆっくりと歩を進めるゴジラ。

 

「チェストォオ!」

 

 ちょうど仙人が落ちるのを見たキザエモンは、蒙古の船から助走をつけて駆けだし、跳び上がってゴジラへと一刀を放った。

 その攻撃はちょうどゴジラの腕の辺りに当たったのだが、なんのダメージも与えられず、キザエモンはぶんと振るったゴジラの腕に飛ばされてしまった。

 

「ぬり攻撃じゃな」(ぬるい攻撃だな)

 

 キザエモンはちょうど近くに会った、坊主たちが宙に飛ばしていた鉢を足場にし、その蹴る力でもう一度ゴジラに接近した。

 今度はゴジラの顔の辺りまで近づけた。

 

「チェストォオオオ!!!」

 

 その攻撃はゴジラの目元を傷つけた。

 

「ギギャァアアアアア!!!!!」

 

 つんざくような悲鳴。

 ゴジラは顔を振り、海の中へと潜った。

 キザエモンはゴジラ撃退に成功したのだった。

 足場を失ったキザエモンではあるが、ちょうど下は海。

 崖から飛び降りて海へ飛び降りる訓練ぐらいは明治の世でも平気でやっていた。

 バシャーンと思い切りよく海へ潜ると、あっぷあっぷと溺れる仙人を見つけた。

 

「仙人様! ご無事ですか!」

 

 仙人を肩に担いで浜へと戻ると、弟子たちがわらわら集まる。

 幸い、仙人はピンピンしていた。

 

「アンタ、ゴジラん攻撃を受けたわけじゃなかとになんで落ちたんじゃ?」(アンタ、ゴジラの攻撃を受けたわけじゃないのになんで落ちたんだ?)

 

 キザエモンの問いに仙人は恥ずかしそうに答えた。

 

「わし、神通力失ってもうた」

「は?」(は?)

「おなごの白い足に見惚れてのぉ。邪まな気持ちになって神聖な力を失ってもうた」

「こん生臭坊主が!」(この生臭坊主が!)

 

 キザエモンは死なない程度にポカポカ仙人を殴った。

 

「仙人様に何するんや!」

「やめいやめい!」

「おい、キザエモン。何しているんだ! やめろって!」

 

 悲鳴を上げる弟子たちをかきわけたゴロウがキザエモンを止める。

 だが、

 

「こんわろはとんだ生臭坊主じゃ」(こいつはとんだ生臭坊主だ)

 

 とキザエモンから話を聞くと、ゴロウもポカポカ殴り始めた。

 同じように、スエナガ、さらには陰陽師たちも加わった。

 

「あんさんのせいで結界術が壊れたやないの!」

「こっちは命懸けなんですぞ!」

「戦いの最中によそ見してんじゃねー!」

「すまんすまん」

 

 仲間たちからタコ殴りにされているにも関わらず、仙人はケロッとしている。

 ひとしきり憂さを晴らしたあと、キザエモンはスエナガに尋ねた。

 

「で、いけんすっ? こんわろが使い物にならんとじゃ、封印はもうできんじゃろ」

(で、どうする? こいつが使い物にならないんじゃ、封印はもうできないだろう)

「ううむ……陰陽師の方々だけではできないのですかな?」

「なりませぬ。今はともかく、この生臭坊主の神通力はかなりのものでしたゆえ。この方のお力が借りられぬのであれば、あの強大なゴジラに対抗できませぬ」

「そげんすげ奴やったんかよ、こん生臭坊主」(そんなすごい奴だったのかよ、この生臭坊主)

 

 今のキザエモンからすればただのスケベ坊主にしか見えない。

 スエナガは困り顔に。

 

「ううむ、封印できないとなるとやはり殺すか。キザエモンが最後に一太刀浴びせておったな」

「けど、キザエモンが攻撃で来たのは目だけだ。身体は分厚い鎧のように硬くてとても刃が通るとは思えないぞ」

 

 ゴロウの言葉にキザエモンも頷いた。

 

「刀……」

 

 陰陽師の一人が呟いた。

 

「刀を使った封印術ならもしや」

「そんなものがあるのですか?」

 

 スエナガが尋ねると、陰陽師が頷いた。

 

「一番強力な封印を施すならゴジラに直接触れる必要がある」

「ならなんで初めからそいをせんやったんだ」(ならなんで初めからそれをしなかったんだ)

「あのデカブツに触るなんて普通はできるわけないやろ! せやから、天と地から結界を張り、そして封印をするつもりやった」

 

 陰陽師はチラリと仙人を見た。

 仙人の力が失われた今、その方法はもう使えないということだ。

 陰陽師はキザエモンに視線をやった。

 

「あんさんがさっきの要領で直接ゴジラに攻撃ができるのやったら、我々の力を施した刀を使えば直接封印もできるはずや」

「よう分からんが、おいはあんデカブツんド頭を叩ききればよかか?」(よく分からないが、俺はあのデカブツのド頭を叩ききればいいのか?)

「ま、そういうことやな」

 

 それならば話は早い。

 キザエモンはニヤリと笑った。

 隣ではゴロウが羨ましそうにキザエモンを見ている。

 巨大な化け物を思いっきり叩ききられる機会なんてそうそうないのだから。

 

「そうとなれば、今度こそゴジラ封印のために動くとしようじゃないか」

 

 スエナガが総大将らしく号令をかけた。

 

「僧侶の皆様方は次、いつゴジラが来るのか探ってください。久米仙人様は神通力が戻るように修行をお願いします。陰陽師の方々は封印の刀の準備を」

「スエナガ様、我らは?」

 

 ゴロウが尋ねると、スエナガは応えた。

 

「キザエモンがダメになった時に備え、あのデカブツを叩ききる準備をしろ!」

 

 鎌倉武士たちはうぉおおーーーっといきり立った。

 下手すると、自分が代わりにゴジラを殺すため、先にキザエモンを殺しかねない勢いだ。

 ピリピリとした殺気を感じたキザエモンは獰猛な笑みを浮かべた。

 

――稽古ん相手にちょうどよかね。(稽古の相手にちょうどいいな)

 

 この後、実際に何人か鎌倉武士たちが戦いを挑んで来たため、キザエモンはきちんと相手をし、死体も丁重に埋めてやった。

 それでも暇なときには刀を片手に久米仙人を追い回した。

 

「けしん気になれば神通力も元に戻っはずじゃろ、生臭坊主!」(死ぬ気になれば神通力も元に戻るはずだろう、生臭坊主!)

「あんさんの場合はほんまに死んでまうって!」

 

 久米仙人だけでなく、止めに入った弟子たちまで必死に逃げ回り、驚くことに全員の能力が開花し、皆が宙に浮けるようになっていた。

 

「久米仙人様の力が元に戻ったんなら、元々の封印作戦でいくか?」

「いや、またスケベ心でも起こされたら大変だ。ここはキザエモンにやらせてみよう」

 

 総大将のスエナガはキザエモンを信頼していた。

 この男ならやってくれるだろう、と。

 

 そして来る日。

 ゴジラが再びやってきた。

 事前に鎌倉武士たちに徹底的にボコボコにされた蒙古達はもう来る気配が無い。

 今度こそゴジラと集中して戦えそうだ。

 

「ここにおなごはおらん! 仙人様、頼んまっせ!」

「任せておれ! ほい、ほいほーい!」

 

 力を取り戻した久米仙人を先頭に、坊主たちが宙を飛び、ゴジラを囲む。

 さらに陰陽師たちは。

 

「我々の持てる力を全て使うぞ! いでよ式神! 最強の陰陽師、安倍晴明!」

「いでよ式神! 魑魅魍魎百鬼夜行!」

「いでよ式神! 地獄の閻魔大王!」

 

 と、死者に妖怪に、と色々な場所から強そうな連中を呼び出してゴジラにぶつけていた。

 スエナガたち鎌倉武士たちは、砂浜に建てたやぐらから飛び出し、ゴジラに一太刀浴びせようと斬りかかる。

 ゴジラは腕を動かして武士たちを薙ぎ払う。

 やぐらの中でゴロウが振り返った。

 

「キザエモン! 準備はいいか?」

「おう!」(おう!)

「お前が死んだら俺が代わりに切るから、死ぬときは刀を残して死ねよ!」

「当たり前じゃ!」(当たり前だ!)

 

 ゴロウが先にやぐらから飛び出た。

 キザエモンがつけた目の傷はまだ残っていた。

 そのため、ゴロウは傷がついている方から死角を狙って飛び掛かった。

 ちょうどゴジラが大きく動いたため、刀は逸れてしまった。

 

「くそ!」

 

 本来ならゴロウが初撃でゴジラをひるませ、キザエモンが続くつもりだったが、失敗。

 キザエモンの大きく振りかぶった攻撃はスカッと空振り。

 そのまま海へ落ちる二人。

 

「キザエモン! 沈むなら刀は置いていけよ!」

「だいが沈んか」(誰が沈むか)

「あのデカブツ、ちょこまか動いて厄介だな」

「まいっどやぐらに……」(もう一度やぐらに……)

 

 その時、ゴジラの尻尾がやぐらにあたり、崩した。

 キザエモンとゴロウは海に浮かんだまま、顔を見合わせた。

 

「どうする?」

「あんデカブツによじ登っか?」(あのデカブツによじ登るか?)

 

 ちょうどキザエモン達の視線の先で、海からゴジラに近づいた鎌倉武士の一人がその巨体によじ登ろうとしていた。

 が、つるっと手を滑らせ海に落ち、足を上げたゴジラに踏みつぶされていた。

 

「あの身体は掴みづらいみたいだな」

「あん坊主どもはおいらを浮かせられんのか?」(あの坊主どもは俺らを浮かせられないのか?)

「言ってただろ。宙に浮かせられるのは鉢や木などの物体だけ。人が宙に浮きたいなら俺らも坊主になって修行するっきゃない」

「そうか!」(そうか!)

 

 キザエモンは思いついた。そしてゴロウに耳打ちした。

 砂浜に戻ったゴロウは宙を浮く坊主の一人を呼び寄せた。

 キザエモンが助走をつけて砂浜を駆けだす。

 

「なんや? ゴロウはん」

「いいからこっち来い!」

 

 ぶんぶんと手を振って呼び出すゴロウにつられ、坊主が高度を落として砂浜の方へ。

 その時、ジャンプしたキザエモンがその坊主の頭に足をつけた。

 

「ぐえ!」

 

 坊主の頭を蹴る勢いでさらに次の坊主へ。

 キザエモンは宙に浮く坊主たちを踏み台にし、宙を飛んだ。

 その様子に気づいた久米仙人が鉢や木を飛ばし、キザエモンの足場を作った。

 どんどんとゴジラへ近づくキザエモン。

 

「ゆけ式神!」

 

 陰陽師たちも式神を差し向け、キザエモンに協力した。

 ゴジラは巨大だ。

 けど、キザエモンはどんどん近づいていく。

 

「いけ!キザエモン!」

「頼んだで!」

「チェストォォオオオ!!!」

 

 最後に久米仙人の頭を足場にしたキザエモンは、今度こそゴジラの眉間に刀を突きさした。

 その時、ゴジラに刺さった刀から光が溢れ、ゴジラも、キザエモンも包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 遠くからキザエモンを呼ぶ声がする。

 

「キザエモン! キザエモン! どこじゃ?」

 

 キザエモンは崖の上に立っていた。

 振り返ると、仲間の薩摩藩士がいた。

 

「こげんところでないしちょっど」(こんなところで何しているんだ)

「ん? おお、害獣駆除じゃ」(ん? おお、害獣駆除だ)

「エゲレスん船が近ぢちょい。わいもはよ来え」(エゲレスの船が近づいている。お前も早く来い)

「戦け?」(戦か?)

 

 キザエモンの問いに、仲間の薩摩藩士は同意するように刀をカチン、と打ち鳴らした。

 

――ゴジラでんエゲレスでんどしこでも来え。(ゴジラでもエゲレスでもいくらでも来い)

 

 キザエモンはワクワクしながら次なる戦いへと向かうのだった。


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