同族でハイエルフのアスラとは意外にもオラリオ内で出会った。数十年の間アルヴの王森で過ごした自分とは違って、アスラはまだアラサーと呼ばれる年齢だった。
当時の私は今より考えが固く偏見に満ち溢れていた為、フィンやガレスとは毎日の様に喧嘩をしていた。そんな中でアスラは良い意味でエルフっぽくなかった。骨付き肉を素手で食べたり、魚の赤身や米の一粒まで食べる。肉も魚も食べるし酒も飲むあの光景は今思い返しても衝撃的な光景だった。平気で他者の手を取って仲間の為なら頭も下げる姿を見て自分が恥ずかしくなった事も屡々。
そんなアスラが私は好きだった。もしアスラが男だったらと何度も考えた。だからこそ…
お前に覚悟を問おう、フィン
「…………」
「…………」
ロキ・ファミリアのホームの中庭にほぼ全ての団員がフィンを前に整列していた。その中でリヴェリアだけが一歩前に出てフィンを睨みつけていた。
「えっと…状況が読めないんだけど」
「…………」
「出来れば誰か説明して欲しいな、なんて」
「…………」
「特に用がないなら執務室に戻りたいんだけど」
「…………」
「おい、リヴェリア早く始めんか」
「…………はぁ、分かった。」
「まず、フィン。先の揉め事は済まなかった。アスラの言い分を聞かずに、こちらが暴走してしまった。謝罪する」
「あー、まあ…うん」
「街を出歩いても大丈夫だ。オラリオのエルフにしっかり説明した。アールヴの名に賭けて安心して欲しい」
「そこまでなんだね」
「ああ、アスラにハイエルフとはそういう存在だ。そこはこれから学んでほしい。」
「はは、気を付けるよ」
「ありがとう。さっそく本題に入る。」
「うん」
「単刀直入に聞く。エルフの森には何時ごろ出向く予定なんだ?それと同時に団長代理の手続きと引き継ぎの資料の提出を頼む。」
「…………え、なんだって?」
「は?」
「ん?」
「「……………………」」
「え?え?あれ?」
「……まさかとは思うが口頭のみで終わらせるつもりか?」
「え?ごめん話を整理したい」
「…分かった。集まってもらって悪い。解散してくれ」
ーフィンの執務室ー
「」
「はぁ、まったく」
「 」
「本当に何も知らないんだなお前は」
「 」
「ハイエルフとの婚約がそんな簡単に終わるわけないだろう」
「 」
「いいか、一族の王だ!お・う・ぞ・く!その一人と婚約するんだ。それくらい当たり前だ」
「Oh…………」
「はぁ、そんなんでフィンが今後やっていけるのか心配だ」
「いや、だってさあ…えぇ」
「既に向こう側には話が付いている。幸いにも感触は良さそうだ」
「ハイエルフ、ねえ…」
「いつまで呆けてるんだ。シャキッとしろ」
「う〜ん」
「本当に分かってるのか?まあいい」
フィンとリヴェリアの間に微妙な空気が流れる。少しだけフィンは居心地が悪かった。
「というか、アスラは?」
「アスラか?今は串焼きの露店に新商品が出たらしくてな、買いに行ってるとこだ」
「ふふ、店主はびっくりするだろうね」
「仕方ない。アスラはそういう立場だ」
「はあ、分かったよ。リヴェリア」
「なんだ?」
「此方もハッキリ言うよ。エルフの森には出向かない。」
「なっ!?」
「これは決定事項だよ」
「そ、そんな事認められるわけがないだろう!!大体お前は…」
「たっだいまー!!!あ、フィンとリヴェリア!聞いてよ二人とも!新しい串焼きがね!タレがすっごくおいしいの!お肉も絶妙な一口サイズで食べやすくてさ!!」
「おっと、噂をすれば」
「丁度良い。お前も話に加われ」
「ん?何の話?」
「はえーなんかすごいね」
「……一応君の話なんだけどね?」
「えーめんどくさそう。なしで」
「!?それは駄目だ!!」
「リヴェリア?」
「Why is that?」
「アスラ、私はお前の性格にいつも助けられてきた。だが、私たちはハイエルフなんだ。一族の王としての立場があるんだ」
「えー、普段から王族扱いするなって言ってるリヴェリアがハイエルフの矜持を持ち出すの?ハイエルフってのは随分都合が良い存在なんですねえ?」
「な!?そ、それとこれとは…」
「リヴェリア、君がアスラの事を心配してくれてるのはファミリアを結成してから分かっている。けれどね、これは二人で決めた事なんだ」
「そーなんです!」
「アスラ、フィン…」
「もちろんファミリアとしてのお祝いはやりたいけどね。」
「そーなの!みんなで楽しくやりたいね!」
「…………そうか、分かった」
「二人が、それで良いなら良しとする」
「納得してくれて嬉しいよ、リヴェリア」
「ありがとねリヴェリア」
「ああ、少し押し付けてしまっていたな」
「良いんだ、僕達は家族なんだから」
「そ!家族なんだからさ」
「ああ、そうだな」
「それにしても、まさかフィンが夢を捨ててでもアスラと一緒になるとは思わなかったさ」
「あー、それなんだけどね」
「どうした?何かあるのか?」
「いや、これはちょっと…」
「お前も分かってるだろう?小人とエルフでは子を為せない。だからてっきり小人と再興を諦めたと思ったんだが」
「(これは言ってもいいものか…)」
「フィン」
「(いや、しかしこの発言はエルフ関係なく駄目か…?だが言わなければ後々面倒になるし…)」
「フィンー?」
「(仕方ない。腹を括ろう)」
「えい」バシッ
「うおお!?」
「考え込むのはいいが、私達を無視するな」
「ああ、ごめんね。それでどうしたんだい?」
「いやそれこっちのセリフ」
「お前が会話の途中で考え込んだんだろう?」
「あー、ゴホン。リヴェリア」
「なんだ」
「僕の夢についてはなんだけどね」
「なんだ。勿体ぶらずに言ってみろ」
「前提としてアスラには許可を貰ってある事を明示しておく。そのうえで発言する」
「早く言え」
「僕はね、小人再興の夢もアスラとは別の婚約者探しも諦めてないよ。」
「は?」
「君達エルフの前でこんな事は言いたくないけど、今後の為に明かさなければ君は怒るだろうからね」
「…………正気か?」
「本気と書いてマジだよ」
「そうか」
「ああ」
「…………」
「…………」
「なあ、フィン」
「なんだい?」
「お前の人生だから極力余計な事は言わないつもりだが、一つ答えろ」
「分かった」
「もしお前のお眼鏡にかなう冒険者が居たとして、そいつがお前と婚約をするとして、アスラはどうするんだ?」
「もちろん平等に愛すよ」
「平等だと?」
「愛に優劣は付けられないからね」
「フィン」
「なにかな?」
「もし、そいつとアスラが死にかけている時にどちらか一方しか助けられない状況になったら、お前はどうする。答え次第ではお前を…!」
「そうだね。そんな状況になったら僕は…」
「大丈夫だよ。フィン」
「!!」
「私はフィンにそんな選択肢を選ばせない。例え死ぬとしてもフィンを信じて戦うよ」
「アスラ…」
「そ・れ・に♪」
「フィンが選んだ人がそんな状況で何もしないなんて考えられないじゃん」
「あっはっは、そうだね」
「アスラ良いのか?自分以外の伴侶が出来ることに耐えられるのか?」
「んー確かに嫉妬するしちょっとだけ意地悪するかもだけど…」
「フィンが選んだ人なら大丈夫!!」
「それにフィンは一人で満足するタイプじゃなさそうだし」
「僕ってそんな風に見られているのかい?」
「あ、でもティオネはなしでお願いね!」
「どうしてだい?」
「ティオネは駄目。女の感」
「そ、そうか」
「ティオネは絶対駄目だから」
「分かったよ」
「言ったね?言質取ったよ?」
「…はあ、怒っているのがバカらしくなってきた。私はもう戻る」
「リヴェリア」
「なんだ」
「ありがとう」
「ああ」
「それで?」
「ん?」
「勿論だけど正妻はわたしだよね?フィン」
「ああ、当たり前だろアスラ」
「じゃあさ、フィンがハーレム作る前にフィンを堪能しておかなきゃだめだよね?」
「え?」
「だって平等に愛すんだから今のうちに沢山シてくれないとわたし耐えられないよ?」
「あの、アスラ?」
「知ってる?エルフって愛が重いんだよ?」
「ま、待てアスラ!まだ昼間だ」
「関係ないよ」
「駄目だ眼がキマってる…誰か!ラウル!ガレス!ロキ!」
「無駄だよ」
「………へ?」
「人払いは済ませてあるから。明日までこの部屋には近づかないんじゃないかな」
「待て待つんだアスラ!」
「いただきまーす」
エルフは愛が重ければ重いほど良いってゼウスが言ってた気がする