お嬢様でポエマーで夢みる乙女な祥子ちゃん♪   作:凱くん

2 / 2
mujica編ストック

「お父様の意気地無し、愚か者一度つまずいたぐらいで何時までもその有り様、そんなことで果たしてお母様に顔向けできますの!?」

 

わたくしが平手で入れた活の音が部屋の中に響きわたります。

殿方に平手打ちなど腐っても豊川の娘としてははしたない行いですが、物事には断固としてすべき時というものもございます。

 

「申し訳ございません出すぎた真似を致しました、それでもお父様どうか頭を冷やしてもう一度己の身を振り返って下さいまし。」

「わたくしは暫くここをお暇いたしますが、代わりにこの娘を置いていきますわ。この娘はわたくしとお母様の大切な縁ですが、今はきっとわたくしよりもお父様の方がこの縁を必要としているでしょうから。」

「たとえ人の命に限りありそれが尽きるとしても、その想いは決して消えず、色あせることもない。たとえその躰が朽ちたとしても、お母様は絶えることなく、お父様とわたくしを見守っていてくれていることでしょう。その形代にこの娘を置いていきますの。だからきっと寂しくはありませんわ。」

 

「今はまだ哀しみ深すぎて立ち上がれないというならばそれで結構ですわ。今はお父様もきっと羽を休める時なのですわ。お父様が再び羽ばたくその時までは、今までお父様がわたくしを守ってくれていたように、わたくしがお父様をお守りいたしましょう。」

 

「それでも孤独が寂しくなったなら、わたくしにご連絡いただければ祥子が24時間365日きっといつでも急いで駆けつけますわ」

 

愛するお父様と、お母様の分け身を置いて慣れ親しんだあばら屋を離れてゆく。やせ細った鉄骨の音がこつんこつんと軽やかに響く。

アパートから少し離れたところに立って振り返り。そしてわたくしは一礼をいたしました。

 

「あぁ愛しの我が家。わたくしとお父様のささやかな生活を今日という日に至るまで支えていただいたことに感謝いたしますわ。そしてきっとまたここに戻って参りますわ。きっと近いうちにまたお会いしましょう。そして願わくば、貴方とお父様にわたくしの分まで幸あらんことを。」

 

「立って半畳寝て1畳。とも言いますし、もちろん豪華な家も悪くないけれど、どんな家も住めば都でしたわね。」

 

唄いながら独り夜の道を往く。

孤独と哀愁の重さと、新たなる旅立ちの軽やかさが入り混じりながら優しく夜の闇に熔けてゆく。

 

そうしてまたひとつわたくしは世界を識る。

おそらくあの屋敷に引きこもっていたら決して知らなかったであろう世界を。

故にもしも今日ここでわたくしが屍れたとしても悔いはないでしょう。

無論まだわたくしには成すべきことがあるのだからここで屍れてしまうわけになどいきませんが。

 

「わかれ~ゆく~きせ~つを~かぞぉぇな~がら~わかれ~ゆく~ぃいのちをぉ~かぞぉぇなぁがら~」

「いのりな~がら~なげきなぁがら~とうに~あぃい~をしっているぅ~」

 

「わす~れな~いこ~とば~はだ~れでもひと~つ~たとえ~さよ~なら~でも~あい~してるいみ~」

 

「また一つこうして帰る場所を失ってしまいましたわね・・・・・・でもわたくしの愛をお父様が重荷に感じるぐらい、殿方のプライドが刺激されるぐらいには回復していると、そうとらえることもできるでしょう。」

 

一滴だけ溢れだしてしまった涙がわたくしの頬を伝い落ちていく。

その冷たさにわたくしは思わず身震いをしてしまいました。

男が泣いていいのは産まれたときと両親の死に目だけだなんて言葉もございますが、お生憎様、わたくしは娘ですのでもう少しお目こぼしして貰うことにいたしましょう。

 

そもそも、な、泣いてなんかいませんわ。てへっ。なんて。

可愛らしい女の娘というのはてへって言いながらぺろっと舌を出せば無敵なのだと教えていただいたのはあれは初華だったかしら。

アイドルをやっている初音・・・・・・ではなく初華には叶わないにしてもわたくしだって豊川の娘。それなりにかわいいとぐらいは言ってもきっと罰は当たらないに違いありませんわ。

 

「悲劇に浸っている暇はございませんわ。お父様の事も大切ですけれど、わたくしもまた確かな今を生きなければ。鳥籠で愛らしくさえずっていた甘い日々はすでに終わりを告げましたの。」

「さて。わたくしの身の振り方も考えなければなりませんわ。人は霞や思い出を食べるばかりでは生きていけませんものね。パンとサーカスとも言いますわ。」

「手っ取り早くこの躰を商品にしてしまいましょうか♪世の中には快楽を味わいながら高収入の美味しい仕事があると伺ったことがありますわ♪まぁプロピアニストとか人気バンドだとかも考えようによっては、そのような職業であるともいえますわね。」

「さりとてわたくしが余り豊川の家名に傷をつけるのもあまり好ましくはないでしょう。家を出たとはいえわたくしも豊川の血を宿し、豊川の禄を食み、豊川の名のもとに育てられた女。望むのならば復讐の権利はお父様にこそある。・・・・・・コールセンターだとかのアルバイトを続けながら、しばらくはどこかの公園にでも寝泊りいたしましょうか。心身を鍛えると思えば決して悪い選択肢ではありませんわ。とくに世間知らずのわたくしのようなお嬢様にはいい経験になるでしょう。」

 

 

「わたくしは時折わたくしが嫌になりますわ・・・・・・それでもわたくしは前を向いて生きなければなりません。今日の日まで連綿と受け継がれてきた命のバトンのために。」




わたくしに七難八苦を与へたまえ by豊川祥子

歌ってる風に直すのは歌詞の改編に辺りアウトな可能性あり?(*・ω・)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。