ロゴス先生のちょっと(かなり?)変わった子育て方法 作:青瑠璃
「ドクター、失礼する」
「ああ、ロゴスか……って、え?」
ある日のこと。私がいつも通り執務室で仕事に追われていると、ロゴスが平然とした様子で執務室に入って来た。
顔を上げて見えたロゴスの胸には、一人の男の子が抱えられていた。しかもロゴスそっくりの、羽角がある黄色い瞳をした男の子。
「我の息子である。これからロドスで過ごすので住居の申請をしたい」
とロゴスは特段変わった様子もなく、そんなことを言い出すのだ。
「え、ロゴスの息子……? そんないきなり大きな子を連れてくるもの……?」
私がようやく言葉を返すと、ロゴスは淡々とそれらしいことを述べた。
「マダムの息子ともなるとそう簡単に人に打ち明けるものでもなくてな。息子が六歳になるまで秘密にして置く他なかったのだ。六歳にもなれば、良からぬ呪術からある程度の防護方法は身につける故」
「いや、でも……え?」私はそれでも、突然のロゴスの息子の登場には困惑を隠せずにいた。「それで、その子のお母さんとかは……」
「うむ、彼女はこの子を産んだ時に彼岸の向こうを渡ってしまってな。元々身体が弱かったため、出産自体危険な状態だったのだ」
ロゴスは顔色一つ変えずにそう説明をする。一体どういう設定なのか、いや、本当の話かもしれないから私はそれ以上聞くのをやめたが、ロゴスに抱えられたままの男の子は大人しくしていて私たちの会話が終わるのを待っているみたいだった。
「申請書は人事部にあると思うけど、原本ならここにあるから今印刷するね」私は冷静になろうとしながら書類手続きの話をした。「それで、その子の名前はどうするんだい? ロドスにいる以上、コードネームの方が安心だと思うけど……」
「ふむ、コードネーム……」
そこでようやく、ロゴスから人らしい表情が顔に出てきた。メカニストといつもよく分からないことで頭を悩ませている時のロゴスだ。ロゴスはちょっと(いや、いつもか?)変なところがあるが、しっかりとしていて深い慈愛があるのは私も知っているし、今は突然の息子のことも受け入れようと務めた。
「ならこれはどうだろうか? ヴェール、と」
「パパ、見てて見てて!」
「うむ、見ておるぞ」
ヴェールと名付けられたロゴスの息子は、それ以降度々一緒にいるのを見かけた。今日は訓練室でヴェールのアーツ適性検査をする日。近くにはロゴスが見守っていて、私もヴェールの正体が気になって適性検査を見に来たところだ。
「それ!」
ヴェールはなんの呪文も唱えずに、ふわりと宙に浮かんだのだ。確かにソレはロゴスも似たようなことをしているのは見たことがある。そうなるとやはりヴェールはロゴスの息子なのか……? 六歳の子どもをどこに隠していたのかとか、奥さんはどんな人だったのか気になるが、ロゴスはあまり答えてくれなさそうだ。
それに、目の色以外はほとんどロゴスにそっくりで。
適性検査の結果、ヴェールはロゴスと同じ術師の才能に優れているということが分かった。実力はロゴスと比べるとまだまだといったところだが、作戦に出ても充分な成績を残してくれるだろうという実力の持ち主だった。
「とはいえ、作戦に参加したいかどうかは、ヴェールくんの意思を尊重するよ」
と私は検索結果報告書を片手にロゴスに伝えると、ロゴスはまた変なことを言い出したのだ。
「ヴェールはどこへ行くにも我と共におるぞ。ヴェールの意思は確認した故な」
つまりそれは、ヴェールが術師としての才能がなくても連れ回すつもりだったのだろうか。
「君のパパは変わっているから大変だよね、ヴェールくん」
なんて私は半分冗談っぽく言うと、ロゴスに抱えられたままのヴェールがようやく喋ったのだ。
「パパは優しいから、なんでもいい」
思っていたより子どもっぽい声をしている。例えるなら、ケオベみたいな声で、ヴァーミルみたいに喋ってる、みたいな。
「ではそろそろよいか? これからヴェールとスツール大会をするのでな」
「ちょっと、スツール大会はやめてよ?」
本当の子どもなんだかどうなんだか分からないけど、ヴェールとスツール大会はやめて欲しい。何人怪我人と破損物が出ると思っているんだ。
「なら、メカニストの謎解きでもするとしよう」
まぁ、それならいいか。と私はロゴスを止めずに見送ったが、しまった。今日の秘書はロゴスだったのに、ヴェールを出汁に逃げられてしまった。うーん、急に呼んで秘書をやってくれる人、誰かいるかな……。