ロゴス先生のちょっと(かなり?)変わった子育て方法   作:青瑠璃

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夜の甲板

 

「誰かそこにいるのかい?」

 夜とはいえ、妙な侵入者ではないだろうと私が声を掛けると、持っていた手提げランプの光より届かない暗がりで、何かがごそごそと蠢いた。

 もしかして人ではないのだろうか、と思案した次の瞬間、それはさっと小さくなった。

「ご、ごめんなさいっ」

 若く高い声の返事に、やはり人だったのかとランプをかざすと、そこに灰色の髪をした少年がタオルケットにくるまったままそこに座り込んでいた。特徴的な黒い羽角のある……ヴェールだった。

「こっちこそごめんね、驚かせてしまって……」と私は言いながらヴェールの顔を覗き込む。「泣いていたのかい……?」

 私の問いに、ヴェールは慌てて頬を拭った。こんな時間に外に出るというのは、人肌が恋しくなるものである。

「隣、いいかな」

「……」

 ヴェールから言葉はなかったが、広がったタオルケットを引き寄せて座りやすいようにしてくれたので、私はそれを肯定と見て隣に座った。私は夜空を仰いだ。

「今日は星がよく見えるね」

「星……」

 私が言うと、今気づいたかのようにヴェールも星空を見上げた。ちらりと見ると、赤く腫れたヴェールの頬が夜風に当たって、少し寒そうだった。

「簡易カイロがあるんだ。これを袋から出してこうやって振ると……ほら、温かくなる。お腹辺りに置いたら丁度いいはずだよ」

 私は防護服の内ポケットから簡易カイロをヴェールに渡した。カイロを見るのは初めてだったかもしれない。それはクロージャの発明品でもあった。

「……あったかい」

 ヴェールは呟き、それをタオルケットの中に仕舞い込んだ。

 本当は自分のために持ってきたカイロだったが、泣いている子どもを放っては置けなかったので私は我慢をするが……吐いた息が白い。やっぱちょっと寒いかな。

「こうしたら、ドクターも寒くないよな?」

 ヴェールがそう言って、私にタオルケットを掛けて寄り掛かってきた。子どもサイズなので全部とはいかないが、ヴェールの優しさが温かかった。

「ありがとう、ヴェール」

 私は礼を言う。ヴェールからの反応は何もなかった。

 それから私は再び星空へ視線を戻し、他に残っていた仕事はあとどれくらいあったっけ、と頭を悩ませてみる。悩ませたところで片付きはしないのだが、考え続けていないと息が詰まりそうになるのも本当だ。

「……河谷の話は……パパから聞いたことあるだろう?」ヴェールが唐突に話し出した。「河谷には、バンシーだけじゃなくて、色んな特別な羽獣や鱗獣、跳獣が住んでるんだ。みんなバンシーたちと仲良しでさ、いつもお話とか、たまに呪術とか、色々教えて家族みたいに過ごしていたんだ」

「へぇ……」

 そんな話、ロゴスから聞いたことあったっけ、と思ったが、私は静かに彼の言葉に耳を傾けることにした。

「だけど……火事があってさ。僕と……仲良くしてくれてた跳獣が、いなくなっちゃったんだ」ヴェールの声が沈んだ。「僕はずっと探したんだ。火事はさ、バンシーたちがすぐ消してくれたんだけど……どこを探しても、灰だらけで……僕……」

 途端にヴェールがうずくまった。すすり泣き始めたのだ。私は慌ててヴェールの背中をさすって宥めたが、こちらの声は何も聞こえていないみたいだった。ヴェールはずっと悲しんでいるんだ。それはとても切なく、優しいことだと私は思った。

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