鬼畜戦士ランス、ジョウト地方に立つ!   作:OTZ

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灰色の旅立ち

 ウルザが研究所へ向かってから1時間ほど経過したころ。

 かなみはリセットとトランプタワーを作りながら遊んでいた。どうやら老夫婦からいくつかおもちゃも買ってもらっていたようである。

 

「と……、かなみおねーちゃんの番だよ」

「ん。はいはい」

 

 かなみは山札から二枚抜き取って、慎重に二段目の最後を組み上げる

 

「おっと……。結構ギリギリね……」

 

 ほんの少しだけ揺れたが、タワーはなんとか自立していた。

 

「おー……」

 

 リセットは微妙なバランスで立っているタワーを見ながら、1枚カードを手にとって、3段目を作り始めようとした。

 

「おとーさん。遅いね……」

 

 リセットはカードを持ちながら寂しげに呟いた。

 

「きっとまたどっかで油売ってるのよ。心配しなくても、お腹が空いたら返ってくるわ」

 

 事も無げにいいながら、リセットが置いたのをみてかなみは再びカードを二枚立てる。

 

「そーだよね。おとーさん、けっこーきまぐれだもん」

 

 リセットは少しだけ顔を晴れやかにする。

 

「全く……。何してるのよあのバカ……」

 

 リセットに聞こえないような小さい声で、かなみはランスに毒づく。もう少し日が傾いても帰ってこないようなら出迎えようか考えていると、バカ笑いしながら階段をかけあがる音がした。

 

「がははは。あのパンチングマシンとかいうのでハイスコアを出したぞ。やはり俺様のゴールデンパンチには誰にも叶わないのだ」

「でもランス様、注意された店員の方にあんなこと言わなくても……」

「うるさい。人が気持ちよくしてるのに水を差すのが悪い」

 

 そんな会話が聞こえてきて、リセットは満面の笑みを浮かべ、出来かけた三段目のトランプタワーが崩れるのもお構いなしに駆け出した。鍵がかかっていないため、リセットの力でも簡単にドアが開いた。

 

「おとーさん!!」

 

 リセットはランスの腰に有無をいわずぴとっと抱きつく。

 

「へ……!?」

 

 ランスは何が起こったか理解できず、左右を見回して、それから下を見る。

 

「リ、リセットちゃん! どうしてここに……」

 

 ランスが声を上げるより少し早く、シィルが声をあげた。

 

「あーうん……。とりあえず三人ともこっちきてくれる?」

 

 かなみは悲喜交交と言った様子の表情で、三人を自室に招き入れた。

 

――

 

 かなみはリセットの補足も交えながら、ここまでの事をかいつまんで説明する。

 

「ほーん。つまり何か。リセットも俺様に巻き込まれてこっちに来たってことか」

 

 ようやく状況を飲み込んだランスは、備え付けの椅子に座りながら、腕を組んでいる。

 

「まあ、早い話がそういうことね。預かってくれたのが優しい人たちで本当によかったけど……」

「そうですね……。何かお礼でもさしあげられればよいのですが」

 

 シィルは純真な気持ちから提案する。

 

「それはやめたほうがいいと思う。絶対ややこしくなるから」

 

 かなみはランスを横目にしつつきっぱりと言い切る。

 

「ちっ。気に入らねーな。なんで俺様を勝手に殺してんだ」

 

 ランスにとっては自分が除け者にされたようで、それが気に食わなかった。

 

「だってしょうがないじゃない。それ以外に言い訳のしようがないでしょ」

「それにかなみさんは別にランス様が亡くなったといったわけではなかったような……」

 

 かなみはあくまで”女手一つ”と言っただけで、父親のことには言及していない。

 

「うるさい。とにかく一言いってやらなきゃ気が済まん」

「なんでそーなるのよ。別に悪いこと……、いやそれどころかとてもありがたいことじゃない」

 

 かなみにはランスの行動の意図がわからなかった。

 

「あの、ランス様、もしかしてですけど、リセットちゃんが知らない人に預けられたことに腹を立てておられるのですか?」

 

 ランスはギクッと一瞬図星をつかれたかのような顔をしたが、すぐにいつもの調子に戻る。

 

「うるさい。とにかく気に食わんからだ。おいかなみ、そいつらの所に案内しろ」

「無茶言わないでよ。住所もなにも聞いてないんだから……」

 

 かなみがやれやれと頭を描いていると、リセットが発言する。

 

「おとーさん」

「あ?」

「あそぼー!」

 

 リセットはランスの前に立って、にこやかな顔を浮かべて両腕を広げている。

 

「うるさい。俺様は今から……」

「えいっ」

 

 リセットはすばやくランスの肩に乗って、彼の髪の毛をぷちっと4本ほど抜いた。

 

「いっで!! てめーなにしやがる!」

「わー怒った怒ったー!」

 

 リセットはまたも笑いながら、ランスを挑発するかのように駆け回る。

 

「こいつ……。待たんかこの」

「きゃーきゃー」

「もう、私とウルザさんの部屋で暴れないでよ! せめて自分のとこでやって!」

 

 かなみの悲痛な叫びもむなしく、リセットとランスの追いかけっこは続行された。

 

「あはは……」

 

 シィルは力なく笑いながら、比較的安全地帯の給湯室でお茶を淹れている。

 

 ランスの娘、リセット・カラーが、パーティーに加わった。

 

――

 

 しばらく経過して、リセットは遊び疲れてランスの部屋ですやすやと眠っていた。

 その頃にはすっかり日が暮れており、夕食の時間を迎えようとしている。

 

「あー。ったく、ガキとおいかけっこなんざしたから腹減ったぜ。そろそろ飯にするぞ」

 

 ランスは一方的にシィルに言う。

 

「しかしまだウルザさんがお帰りになっていません、先に食べてしまって宜しいのでしょうか?」

「服はもう大丈夫なんだろ。構わんだろ」

 

 ランスたちは既にショッピングセンターで購入した無難な服に着替えている。

 

「でも確かに、ちょっとウルザさん帰りが遅いわね……。下準備するって話だったからもう少し早く帰ってくるかと思ったんだけど」

 

 かなみは宿の夕食の時間になったことから、合流を待つため、とりあえずランスの部屋に来ていた。ここの宿はレストラン区画に一定時間好きなタイミングで食事をするという形式である。

 

「ちっ……。まあ、そのうち帰ってくるだろ。俺様は行くぞ」

「あ、ランス様……」

 

 シィルが止めるのも聞かずに、ランスはさっさと出ていってしまった。

 

「どうしましょう……。リセットちゃん一人にするわけにもいかないし」

「とりあえず私がランスの側についてるわ。シィルちゃんはウルザさんを待ってて」

 

 かなみの提案にシィルはうなずき、かなみはランスの行動を見張ることにした。

 

 外に出たランスは食堂に向かってずんずんと歩いていた。

 

「おいかなみ……。今気づいたがその服どうしたんだ?」

 

 かなみのクリーム色のすこしオシャレな雰囲気のあるシャツと、デニムのセットをみてランスが尋ねる。ランスはシィルの選んだ深緑のポロシャツと、茶色のカーゴパンツをはいている。

 

「どうしたって……。さっき買ったのよ。忘れたの?」

「いやそうじゃなくてだな……。なんか……、なんだろうな……」

 

 ランスはかなみの服にいいようのない違和感を覚えていた。

 

「な、なにまさか似合わないとでもいうの?」

「んー……。なんかお前が買うにしてはすこーし贅沢すぎないか……?」

 

 ランスは直感からかなみの服の価値に気づく。

 

「ちょっ。それ、どういう意味よ」

 

 自分の買い物袋を老夫婦がリセットに買い与えたそれに紛れ込ませて、カモフラージュに成功していたと思い込んでいたかなみはあからさまに動揺する。

 

「おい、かなみ。その服いくらしたんだ」

「そんなのランスには関係ないでしょ」

「関係なくはないぞ。俺様の金からだしてるんだからな」

 

 ランスはふんぞり返りながら言う。

 あれは自分のお金からだしたのと喉まで出かかったが、その事実自体、ランスに告げるのは避けるべきことであった。

 かなみが言い訳を考えていると、タイミングよく店員の声がかかる。

 

「お客様、少し宜しいでしょうか?」

「ん? おや、見ない顔だな。こんなシケた宿にこんな可愛い子いたっけか……」

 

 美人の顔を見たらまず忘れることがないのがランスであるため、首をかしげている。

 

「昨日はシフト外でしたので。それで、その……。新しくお子様をお泊めになられていますよね?」

 

 店員はメガネを掛け直しながら言う。店員は20前後くらいの若い女性で、ランスが好みそうなかわいらしい容姿をしていた。

 

「それがどうしたんだ」

 

 下卑た視線で上から下まで観察しつつ、ランスはわざとらしく不機嫌な声で尋ねる。

 

「いえ……。もしもう少し広いお部屋が良ければ、今日は3人部屋が空きましたのでそちらにお移りいただくこともできますが、どうしますか?」

「そうか。まあ、部屋に広いにこしたことはないしな。構わん。ついでに君も俺様の部屋でえっちなサービスしてくれれば言うことないんだがな」

 

 ランスは少し上機嫌になって店員に応じる。

 

「……。当店ではそのようなサービスはしておりませんので。かしこまりました。その場合部屋のグレードの追加料金と、追加のお客様の代金とを、併せてお支払いいただきますので、あらかじめご了承くださいま」

 

 ランスの要求に一瞬顔を歪ませたが、店員はすぐに平静に戻る。

 

「あ? どういうことだ」

 

 ランスはあからさまに不機嫌になる。

 

「いえ、ですから、追加分のご料金を……」

「後払いじゃねえのかそれ。今いうことか? だいたい、金を払っているのはウルザちゃんなんだからそっちに言え」

「申し訳ありません。しかし、宿帳にはお客様の名前でお取りになってますから、一応お伝えしておこうかと」

 

 店員はつとめて冷静だが、少しだけ苛立ちの色が混じり始めている。

 一気に沸点に達したランスは店員と距離を詰める。

 

「そういうのが気に食わないのだ。人が気持ちよくなってるのに、無粋な話をするとはどういうことかね? うん?」

 

 ランスはギザ歯を浮かべ、いやらしい表情を浮かべながら店員に迫る。

 

「お、お客様。手をお離しください。無礼は幾重にも謝罪致しますので」

 

 店員は怯えた声でランスに許しを請う。

 

「そーか。じゃあ、無礼への詫びとして、この場でやらせろ」

「はい??」

 

 あまりにも無茶な要求に店員は目を白黒にする。

 

「当然だろ。客への無礼は身体で奉仕するのが世界の常識だろ?」

「ラ、ランス。それはいくらなんでも無茶苦茶だわ」

 

 見かねたかなみがランスに自制を要求するが、効くはずもなかった。

 

「うるさい。お前は黙ってろ。さあ、どうするんだ」

「くっ……。け、警察呼びますよ?」

 

 店員は片手でポケットから通信端末を取り出す。すぐにでも通報できるという意思表示であった。

 

「ほー。警察だあ? あんな俺様の前でビビって逃げたような奴がねえ。おもしろい呼んでもらおうじゃないか」

 

 29番道路のゲートの警官は別にランスの前に逃げたのではなく、ウルザの知略によって引いただけなのだが、そんなことはランスには関係がなかった。

 これはどうしようもないと、かなみがウルザを探しに静かに立ち去った時、荘重な声が入る。この店の主であった。

 

「お客様。娘がなにか粗相を致しましたか」

「あ? この小娘が俺様に無礼をはたらいたから、身体で償ってもらおうとしただけだ」

「無礼……。で、ございますか」

 

 どういうことか説明しろといった視線を、店主は娘にぶつける。

 

「え、っと、その。お客様に新たに1名様が加われたので、ルームチェンジの提案と、承諾されたので追加チャージについて事前に説明しました」

 

 店員はランスから離れ、すがるように父親に説明する。

 

「なるほど……。いえ、もしスタッフの言動や所作などに、無礼があったのであれば、謝罪致します。しかし、当店と致しましても、謂れのない要求に応じるわけには参りません。どうか、その件につきましてはご容赦願えませんでしょうか」

「いやだ」

 

 そう言いながらランスは手近にあった観葉植物をなぎ倒し、小さい机の上にあった花瓶を叩き割った。

 

「お客様。どうかお気を鎮めて」

「お父さん、これはもうどうしようもないわ。警察を」

 

 店員は小声で店主に提案する。端末には既に110と入力されており、あとは発信するのみであった。

 

「いや……。相手はポケモンを持ってる様子がない。この程度ならば他に方法がある」

 

 そう言って。店主は呼笛を吹き、次々とポケモンを呼び出した。

 

「ほー……それでどうするっていうんだ」

「こうなってはやむを得ません。お鎮まりいただけるよう、実力を行使するほかありませんな。うちのオコリザルやゴーリキーといったガードポケモンはそのためにいるのです」

「おもしれえ! やってやろうじゃないか!!」

 

 ランスはカオスを携えて、二匹の格闘ポケモンに向かっていった。

 

――

 

 かなみの要請に従い、急いで研究所から宿屋に戻ってきたウルザが見た光景は、惨憺たる有り様であった。

 主戦場となっている一階部分は柱や床などにいくつも大きく陥没した跡が出来ており、照明もいくつか割れてしまっている。そして、そんな中でもランスは実に楽しそうに戦っていた。

 

「がははは! どーした。そんなもんか、もっとかかってこい!!」

 

 ゴーリキーもオコリザルも、ランスの前に肩で息をしていたが、ランスの方はまだまだ余裕そうである。

 

「これは……酷いですね」

「ああ……。あなたのお連れ様、滅茶苦茶ですよ、どうしてくれるのですか」

 

 店主はウルザに対して、精一杯の非難を浴びせた。

 

「本当に申し訳ありません。すぐにやめさせますので」

 

 ウルザは店主に深々と頭を下げ、拳をぐっと作って、ランスに声をかける。

 

「ランスさん! やめてください! ここで諍いをおこしてはいけないと言ったでしょう!!」

「おーウルザちゃんか! 今いーところなんだ、邪魔すんじゃねえ!」

 

 ランスの方は全く意に介さず、パンチを繰り出してきたオコリザルをカオスで受け止め、そのまま返す刃で弾き飛ばした。

 

「やっぱり聞く人じゃないわね……。やむを得ません」

 

 ウルザは素早くランスの背後にまわり、脳天にげんこつをくらわそうと、拳を振り上げた。

 

「なにしてるの! おとーさん!」

 

 その刹那、リセットの純真な叫びが響き渡った。

 

「おー。リセットか。起きてきたのか」

 

 ランスは応戦をやめ、上機嫌な風にリセットに視線を向ける。

 

「泊まらせてもらっているところを、こんなにめちゃくちゃにするなんて、ダメでしょ!」

「何を言ってるんだ。泊まってやってる俺様に、無礼をしてきたのは店のほう」

「かなみおねーちゃんからぜんぶ、ぜーんぶきいたの! わるいのはおとーさんでしょ!」

 

 リセットはランスのすぐ側に駆け寄って、ランスを真正面から叱責する。

 

「ちっ。かなみめ余計なことを……」

 

 ウルザの隣に佇んでいるかなみを、ランスは恨めしげな目で見た。かなみはそらみたことかと言わんばかりに、少し得意な表情になっている。

 

「はい、おとーさん。ちゃんとごめんなさい、しなきゃダメでしょ」

 

 リセットは頬を膨らませながら、無理やり抱えるように、ランスの頭を押さえ、まずはオコリザルやゴーリキーに頭を下げた。

 

「いでででで。やめんかこの馬鹿力!」

 

 このリセットの無理やりな謝罪を、居合わせた客、店主の娘、店主自身のトータル4回で行わせた。ランスは苦虫を潰しながらも、それ以上はなにもできなかった。

 

――

 

「この度は本当に申し訳ありませんでした。この通り、本人は深く反省しておりますので」

 

 その後、宿屋の事務所において事後処理を行うことになり、真っ先にウルザが謝罪を行った。ランスも一応同席している。

 

「あ? 何いってんだ俺様は反省なんか」

 

 ウルザは問答無用で店主から見えない死角の位置からげんこつを行った。ランスは沈黙する。

 

「いえ……。分かって頂ければよいのです」

「ランスさんが壊した花瓶や照明、壁などの修理費は全てこちらでもたせていただきますので、どうか、このまま穏便に」

 

 ウルザは破産することも覚悟の上で、できる限りの弁償を申し出た。

 

「いえ、それは結構です。それについては保険が効きますので、お客様に負担は要求致しません」

「しかし、そういう訳には……」

「それに、私としては金の話などどうでもいいのです。こちらは娘を襲われかけたのですから」

 

 店主の怒りは何よりもそちらにあるようである。言葉の裏に静かな怒りを漂わせている。

 

「……。どのようにすれば、宜しいでしょうか。できる限りのことは」

「私のもつガードポケモンに、生身で向かって互角以上に戦った人間などはじめてみました。それに、貴女自身も、噂で聞きましたが相当な知恵者のようだ……。もし、償いの気持ちがあるというのであれば、一つやっていただきたいことがあるのです」

 

 ウルザは固唾を飲んで、店主の次の発言を待つ。

 

「最近、ロケット団という3年前に解散したはずの悪の組織が、またこのジョウト地方の各地で密かに動いているようなのです。しかし、警察も、ポケモンリーグも確かな証がなければ中々動いてくれません……。これでは、おちおち寝てもいられない」

「つまりその組織を……、私達に?」

 

 店主は黙って一度うなずく。

 

「どうか、一掃していただきたい。これはワカバ……、いえ、ジョウト地方に住む善良な市民の総意です。あなたがたのその腕力と、知略で、是非、平穏を取り戻してほしいのです」

「分かりました。それで果たされるというのであれば、全身全霊で、引き受けさせていただきます」

 

 ウルザは店主の好意に感謝しつつ、当面は金銭的負担を回避できたことに安堵する。

 

「私達は常に、全国にある協会や、組合を通じてあなたがたを見ています。もし、それが為されぬうちに逃げた、ないし敵側に寝返ったと判断した場合は……、あらゆる手を尽くして、法的措置を講じさせていただく。証拠は全て、おさえてありますのでね」

 

 こうして、話し合いは終わり、二人は事務所から解放された。

 

――

 

 遅めの夕食を食べ、ウルザは転移二日目の総括として新たに加わったリセットも交えて、ランスの部屋で会議を行う。

 

「とりあえず、賠償問題については、私達が悪の組織を壊滅させるという条件の上で、一切の金銭的負担はとりあえずは免除されました」

「ちっ。余計なもんしょいこみやがって。俺達は帰るのが目的なんだぞ、小悪党ごときにかまってる暇ねーだろ」

 

 そうさせた原因の本人は全く悪びれずにウルザに悪態をつく。

 

「誰のせいだと思ってるのよ……」

 

 かなみははあとため息をつく。

 

「具体的な期限は切られなかったので、これについては、大目標としてとりあえずは考える程度においておきましょう。それで、明日以降のことですが、一日出るのを早めようと思います」

「そうですよね……。こんなことになった以上、これ以上この街には」

 

 シィルはややすまなそうな表情を机に向ける。

 

「それもありますが、私は一つのことを決めました。ポケモントレーナーになろうと思うのです」

「あ? なんだ唐突に……。また回り道になんじゃねえのかそれ」

「第一に、身分証の確保が急務であること……。それに、ポケモントレーナーという職業は色々と特典があります。そうですよね、かなみさん」

 

 ウルザはかなみに視線を向ける。

 

「ええ、なんでもポケモンセンターっていう回復施設が主要な街にあるみたいなんだけど、そこの宿泊施設が無料で使えるみたいなの。それに、公的な身分証としても使えるから、色々調査もやりやすくなるはずだわ」

 

 かなみはここ2日でリーグ支部や、研究所付近の施設を調べてトレーナーについて軽く調べ上げていた。

 

「ふーん。まあ、タダで使えるところが増えるのはいいことだ。だけど、なんでウルザちゃんなんだ?」

「今日、研究所に行き、下見のつもりだったのですが、ウツギ博士と、オーキド博士という権威に接触することが出来ました。そこでどういう訳か気に入られて、御三家と呼ばれるポケモンを私に授けてくださるという話になりました」

 

 混乱を防ぐため、この時点では3年前に別の自分がいたことについては伏せている。

 

「気に入られた……? おいまさかおっぱいとか触らせたんじゃ」

 

 ランスは瞳孔を開き、怪訝な表情をウルザに向けている。

 

「ウルザさんがそんなことするわけないでしょ……」

「ランスさんや、他の方がもし、トレーナーになりたいのであれば、私は別に止めはしませんけれど」

「やだ。めんどい」

 

 ランスはそっぽを向きながら言う。さらさらその気はないようである。

 

「私もちょっとね……。ウルザさんのほうが適任だと思うわ。しっかりしてるし」

「大変だと思いますけど、がんばってください」

 

 かなみとシィルもそれに続いて承認した。

 

「私もそれでいーと思うよ、ウルザさん」

 

 リセットはお茶請けのせんべいをもぐもぐと食べながら、それに同意する。ポケモントレーナーやポケモンという存在をよく分かっていない為の委任もあるだろう。

 

「ありがとうございます。では、トレーナーカードの手続きは私が朝早く行って済ませてきますが、旅立つ直前にウツギ博士より直々に受け取る際は、皆さんにも同席してもらいたく思います。どうでしょうか?」

 

 四人のうち、三人は特に反対意見を述べなかったが、

 

「は? なんでだよめんどくせえ。そのウツギってのは女か?」

 

 ランスはめんどくさそうな顔をして渋っている。

 

「いいえ。メガネをかけた男性ですが」

「じゃあやだ」

「困りましたね……。オーキド博士も共におられると思うので、今のうちに皆さんの顔合わせはやっておきたいのですが」

 

 ウツギやオーキドとは、この後も何らかの形で関わる可能性がある気はしていたため、この際パーティについて知ってもらう必要があると、ウルザは考えていた。

 

「どうせそのオーキドっていうのもジジイなんだろ」

 

 オーキドの名前と略歴についてはランスも偵察報告などから耳にしていたため、勝手にイメージを作っている。

 

「え、まあそうですけど……」

「なんでジジイやおっさんの機嫌をとるために俺様が出張らにゃならんのだ。俺様は人類軍総統だぞ」

「それは私達のいた世界での話です。ここでは冒険者集団の長でしかないんですよ。権威がある人に顔を知ってもらうのは大事な手続きです」

 

 それからもしばらく平行線の議論が続き、かなみが口を挟んだ。

 

「ねえ。そこまでしてランスを同行させる必要もないんじゃない? それに……、会わせて機嫌損ねでもしたらまた面倒でしょ?」

「どーいう意味だかなみ!!」

「確かにそれはリスクとして承知してはいますけど……」

 

 ウルザは悩んでいたが、それでもパーティ全員、特にランスについては事前に人となりを知ってもらう必要性を感じていた。

 これ以上正攻法で行ってもかなわないと見たウルザは、別の手に出る。

 

「分かりました。どうしても総統が行きたくないと、仰せになるのであれば、やむを得ませんね」

「わかりゃーいいんだよ」

 

 ランスはさも当然といいたいばかりに、ふんぞり返っている。

 

「ときに総統、この世界には大きな海があること……それはご存知ですか?」

「あ? なんだ急に」

「私達の居た世界とは異なり、この世界には常に海があり、そしてその中には貝類という生物群があり、ポケモンにもそれに属する種類がいくつかおります」

 

 ウルザは昼に読んだ地質学の専門書の内容から、そのことを習得しており、提示している。

 

「ほう……」

 

 今まで全く興味を示さなかったランスが、少しだけ身を前に乗りだす。貝はランスの数少ない趣味の一つであり、珍しい貝殻の収集をライフワークとしていた。

 

「もしよければ、ウツギ博士や、オーキド博士からそれらの標本を分けてもらおうか、考えていたのですが、総統が興味を示されないのでは、仕方がありませんね。これはなかったことに」

「フ……フン。そ、そんなことで俺様は釣られないからな!」

 

 そう言ってランスはそっぽを向くが、確実に好奇心が膨らんでいるであろうことは、この場に居た誰もが察知している。

 その後、いくつかの細々とした議題をまとめ、会議は終了。明日、宿を引き払うことに決した。

 

――

 

 早朝、朝5時30分ごろにウルザはワカバのリーグ支部に出向く。原則としてポケモンジムがない街にはリーグ支部は置かれていないが、この街に関してはポケモン研究所が置かれており、新規トレーナーの需要も高いことから特別に設置されていた。

 緊急時の対応などのため、多くの支部は朝6時から開いている。

 とはいえ、この時間帯は流石に人が少なく、ウルザはすんなりと手続きを進めることができた。

 

「バッジ3枚ですか……」

 

 そしてウルザはリーグ職員の説明から、重大な事実がつきつけられる。

 

「最近では、トレーナーカードの取得要件が緩いことを悪用して、マネーロンダリングなどに使う輩が絶えませんので、その対策として不動産の売買、時価100万円以上の動産取引など重大な法律行為を行う場合はバッジ3枚以上のトレーナーカードをもって、その他身分証明のかわりとする法改正がなされたんです」

 

 30代くらいの男性リーグ職員はその経緯を事細かに説明した。平和そうにみえる世界でも、やはり問題はあるのだとウルザは痛感していた。

 

「どうしてバッジ3枚なのでしょうか? そういう趣旨ならばトレーナーカードからそういう機能を外してしまえばいいのでは」

「既に身分証明として浸透しきっていますので全廃は現実的ではないからですよ。今年度でも日本国内で有効なトレーナーカードは3000万枚を超えていますし、ヘタに廃止すると運転免許を持てないような未成年者などには大きく不利益ですから。バッジ3枚は取得率からみた現実的な妥協点として設けられましたが、これも国会のトレーナー制度を論じる委員会でものすごく揉めましてねぇ……」

「なるほどそういうことですか……」

 

 ウルザは雑談として聞きながら、申請にあたっての書類を書き上げていく。

 

「トレーナーカードはあくまで、秩序あるバトル環境と、トレーナー間の健全で自由な競争の為にあるものですから、そういうのに縛られるのは実に世知辛いんですがね……。トレーナーカードの発行条件自体も厳しくしろって声もありますし、そういう意味じゃ貴女は運がよかったかも」

 

 リーグ職員はふうとため息をつく。それなりに気苦労が多いことが察せられる。

 

「要件によりますけど、まあ助かったことは確かかもしれませんね」

 

 公的な書類なしで、自己申告と顔写真に加え、簡単な口頭審査だけで発行される公的身分証明はこれしかないため、ウルザは強くそれを痛感していた。

 それから口頭審査を難なくこなす。これも本当に簡素なもので、簡単なトレーナーの知識や、心構えを問うだけのもだった。

 

「えー。今現在貴女はポケモンを持っていないので、引き渡し予定である、ウツギ博士のポケモン研究所にトレーナーカードを転送しますが、それで宜しいですか?」

 

 審査をパスし、先程の職員が最終確認を行う。

 

「構いません。あぁ、それでウツギ博士に言伝を頼みたいのですが、宜しいですか?」

「いいですよ。伝えるだけでしたら」

「その……、貝殻の標本を用意していただきたいんです」

「貝殻……ですか。わかりました」

 

 職員は少し奇妙な表情をすると、一度うなずいた。その後、ウルザはリーグ支部を後にした。

 

―ウツギポケモン研究所 奥部―

 

 朝食を済ませて、一行はそのまま研究所へ向かった。

 

「ちっ。せっかく人がきてやったのに、待たせやがって」

 

 なんだかんだで、結局ランスは率先して来ている。

 

「急ぎで標本を頼みましたからね……。準備で手間取っているのでしょう」

 

 ウルザは内心でウツギに謝りつつ、登場を待った。

 

「まあまあランス様。お茶がありますから、これで……」

 

 シィルから魔法瓶を強引に受け取り、グビグビとランスは口に流し込んだ。

 

「それにしても、ほんと、広い研究所ね……。少し歩くだけで遭難しそう……」

 

 かなみは広大な研究所の天井や、2階部分を見ながらやや気の遠くなりそうな眼で呟く。

 リセットはキョロキョロと研究所内を見回し、時折歩いてくる実験ないし補助用のポケモンについていったりしている。

 

「やーやーウルザ君! それに加えて、一行の皆さん。遅れて申し訳なかった。研究所所長のウツギです。宜しく」

 

 ウツギと、それに少し遅れてオーキドが姿を表す。陽気にあいさつするウツギとは対照的に、オーキドは静かに一行の表情を見ていた。

 

「オーキドじゃ。この世界ではウツギ君と同じくポケモン博士とよばれておる、宜しくのう」

 

 オーキドはランスに手を差し出す。

 

「フン。じじいと握手する趣味なんかねーんだよ」

 

 ランスはその手を思い切り払い除けた。

 

「おお……。ウルザ君から聞いた通り、なかなかイキの良い若者じゃのう」

 

 オーキドは微塵も気を悪くした様子はなく、大きく高笑いした。ウルザはホッと胸を撫で下ろす。

 

「ご推察の通り、この方がランスさんです。このパーティーのリーダーです」

 

 他の研究員の目もあるため、人類軍総統という役職は伏せて、ウルザは紹介を行い、他のパーティーの面々も軽く行った。

 

「なるほど……。確かに、僕らとは明らかに違う、なんというか……、殺伐とした世界を生き抜いてきた雰囲気がするね」

 

 ウツギは確かにそれを感じ取っていた。

 

「あたりめーだろ。俺等はこんなぬるい世界にすんじゃいねーんだよ」

 

 ランスは自信満々に威張りながら言う。

 

「さてと、それじゃあ、先にこれを渡しておこうか、ランス君、君への餞別として、これを贈るよ」

 

 ウツギは脇に抱えていた標本を、そのままランスに渡した。

 

「ほう……。これが、この世界の貝か……」

 

 標本には簡単な説明と、寸法がかかれている。シェルダーが2体、パールルが1体、それぞれ抜け殻の状態で保存されている、極めて状態の良い標本だった。

 

「このシェルダーって貝は、とても硬くて、ハンマーとかで叩いても全然びくともしないんだ。そうですよね博士」

「うむ、その硬い殻を砕けるのはポケモンの中でもオムスターなどごく限られた種族しかおらんのじゃ」

「ほー……。そいつはまた頑丈なのだろうな」

 

 ランスは珍しく、オーキドの説明を真摯に聞いている。

 

「博士、今のうちに」

 

 ランスの興味がそれたタイミングを狙って、ウツギにウルザは促す。ランスはすっかりオーキドの説明に聞き入っていた。

 

「ん? ああ、そうだね。とりあえずリーグ支部から、トレーナーカードが送られてきてるので、まずはそれと、バッジケースを渡そう」

 

 ウツギから直々に、ウルザにカードと、それに付属するバッジケースが引き渡す。顔写真や氏名、IDなどが光沢加工されたプラスチックの板の上に書かれている。ジムバッジの欄もあり、当然全て空欄である。

 

「ありがとうございます」

 

 ウルザは少しだけそれを確認し、丁重にカバンへそれをしまった。

 

「でだ、次にこれ」

 

 ウツギは次に一個のアタッシュケースを取り出した。留め具を外すと、ウルザの眼の前に3つのモンスターボールと一個の通信機器が置かれている。

 

「これがモンスターボールですか……」

 

 赤と白で構成されるその丸い球体を、ウルザは眼に刻み込んだ。

 

「中には左から草ポケモンのチコリータ、炎ポケモンのヒノアラシ、水ポケモンのワニノコが入っている。いつもならこの中から一体を選んでもらうんだけど……」

「そうですね……。少し考えさせて」

 

 と、ウルザはどれにすべきか、支部で貰ったトレーナーのハウツー本を出そうとする。

 

「いや、今回は君にこれ全て渡そうと思う」

「えっ……宜しいのですか?」

「余らしてるから……ていうのは半分冗談で、君たちも時間がないんだろう。調査を進めるにあたっては、ポケモンは多いに越したことはないだろうからね」

 

 自分たちの事を汲んでくれているのかと、ウルザは少し感極まっている。

 

「あれ、ウルザさんもしかして泣いて……」

「っ……。気のせいですよ。ありがとうございます」

 

 かなみの言葉をよそに、涙腺を無理やりこらえさせて、ウルザはウツギに謝意を示した。

 

「それと、これはポケギア。この世界の通信端末で、いつでも電話ができるし、インターネットにも繋がる。ラジオや、タウンマップも入っているから、トレーナーの必需品として、君ももっておくべきだと思って」

「ありがとうございます。しかし、高価でしょう? 代金ならばお支払いしますけど」

 

 ランスたちの世界にも魔法電話と呼ばれる通信機器はあったが、ここまで簡便で、機能性の高い代物ではなかった。

 

「いやいいんだ。少し型落ちだし、研究所の在庫から引っ張り出してきただけだからさ」

 

 ウツギは額に手を当てて笑いながら、遠慮の仕草をする。

 

「オーキド博士と僕の番号が既に登録してある。なにか役に立ちそうなことがあれば電話するし、もし君たちからも、昨日のいった話に関する報告なり、なにかあれば電話するといいよ」

「了解しました」

 

 ウルザはモンスターボールと、ポケギアをそれぞれ受け取った。

 

「それと、これはワシからの餞別じゃ」

 

 ランスへひとしきり説明の終わったオーキドが、ウルザの元へ近づき、一つの装置を差し出す。

 

「なんでしょうか、これは」

「学習装置じゃ。これを使えば戦闘後に得られる経験値が分配されて、より早く強くなる。それに加え、今回は改良を加え、人工知能を使った高効率の深層学習をプログラミングしておるから、経験値自体もやや多く取得できるようになっておる。ただ、これは試作品じゃから、あまり過信しすぎんようにの」

「まあ、何から何まで、本当に……」

「何、君たちの、我々の世界の人間には持ち得ぬであろう資質に、投資しておるだけのことじゃよ」

 

 オーキドはホッホッホと、また高く笑っている。

 

「ちっ。ウルザちゃんにばっかこんなに贔屓しやがって、俺様にはなんかもっとないのか」

 

 戻ってきたランスがまた文句をつけにきた。

 

「そうじゃのう……。そこまで貝が好きなのじゃったら、釣り竿を買ったらどうじゃ? その標本にあるシェルダーもパールルも、釣り竿で捕まえられるポケモンじゃよ」

「ふむ……。そうか、その手もあるか……」

 

 ランスは珍しく真剣に考え込んでいる。

 

「いやあしかし、君の貝に関する探究心は大したものじゃ。君たちの世界の貝についても笑い貝やら本気貝やら色々興味深い情報があるし、是非また」

 

 オーキドは大いにランスに感心していた。

 

「ふん、ひれ伏して乞うならまた聞かせてやらんでもない」

 

 ランスは憎まれ口を叩きながらオーキドに言う。

 

「へえ……意外。もっと突き放すかと思った」

「ランス様の貝の趣味ってなかなか同好の士がいませんから……。数少ない理解者だったクルックー様もここにはいないようですし」

 

 クルックーとは世界最大の宗教であるAL教の法王であり、ランスの貝コレクター趣味の数少ない共有者でもあった。

 

「ああ、そういうこと……」

 

 かなみは思わず納得する。

 

「本当に、お世話になりました。今後ともよろしくお願いいたします」

 

 ウルザは改めて深々と、ウツギとオーキドに頭を下げて、心からの謝意を示した。シィルやかなみも少しだけ頭を下げてそれに続く。リセットは相変わらずマイペースにポケモンとコミュニケーションをとっていた。

 

「うむ。……、進展を楽しみに待っておるぞ」

 

 オーキドは一同を見ながら期待を持った眼で言葉をかける。

 ランス一行は、研究所を去っていく。

 

「本当に大丈夫なんでしょうかね……。あのウルザって娘はしっかりしてそうですけど、ランスって男は相当に強引で無茶苦茶っぽいですよ。昨日も宿屋で暴れたみたいですし」

 

 ウツギは研究所の出口を見ながら懸念を現した。

 

「それは気になるところではあるが……。ま、信じる他あるまい。この世界には、善や、穏当なものだけでは祓いきれぬものもあるのじゃから」

 

 オーキドはやや寂しげに言いながら、自身の旅支度を進める。彼自身も、ジョウト地方中を調査することを決めていた。

 

―29番道路 出入り口―

 

 ウルザがトレーナーに必要なきずぐすりや、状態回復薬、ポケモンフードなどを買い込み、2日ぶりにランスたちは、このワカバと29番道路の出入り口に立ち、西へ歩き始めている。

 

「ふう。やっとこの町を出れるか。ちょっと体が鈍っちまったぞ」

「昨日宿屋であれほど暴れても、まだ足りないんですか……」

 

 ウルザはため息をつきながら、ランスのこり無さを諦観した眼で見ている。

 

「一番近いのはキキョウシティってところにあるらしいから、まずはそこを目指すってことでいいのかしら?」

 

 かなみは情報収集でそのあたりのことも既に調査していた。

 

「そうですね。とりあえず3つバッジを手に入れないことにははじまりませんから」

 

 ウルザの脳裏には常に財政状況があった、たったの3日で40万円も消費し、残り60万円程度、しかもリセットが加わったことで早期の解決は急務である。

 

「ここからだと結構遠い道のりね。しかし……」

 

 かなみはウルザに耳打ちする。

 

「本当に大丈夫なの? その……お金とか」

「……。どうにもならなくなったら、かなみさんやシィルさんに換金をお願いするしかないですね」

 

 ランスには秘匿しつづけなければならない”GOLDの価値”という爆弾。それを抱えながら、一行はとりあえず最初のジムがあるキキョウシティへ向かうことにした。

 

―つづく―

 

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