鬼畜戦士ランス、ジョウト地方に立つ!   作:OTZ

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疑心

「あれ……?」

「どうやら、全員引いたみたいですね」

 

 ヤドンの井戸から引き上がった一行が見た風景は奇異なものであった。

 一触即発の状況であった、ロケット団たちが全て引いており、かといって、とくに衝突の形跡もなく、平和そのものである。

 

 

「あ、アカ……」

 

 言いかけたツクシは、アカネの視線に気づき、発声をやり直す。

 

「アケミさん……! 無事で何よりです」

「うん……。心配してくれてありがとう。ツクシくん」

 

 アケミは丁寧な所作でツクシに軽く頭を下げる。ツクシはアケミの挙動にやや戸惑っているような表情であった。

 

「ロケット団はどこに消えたんですか?」

 

 ウルザはツクシに尋ねる。

 

「は、はい。ずっと睨み合ったんですけど、幹部の一人が出てくると、そのまま水が引くように消えていって……。そちらでなにかあったのでは?」

 

 ツクシは未だ要領を得ない表情をしている。

 

「上に報告することができたような事をいってましたね……。説明するのがかなり難しいんですが」

「そ、そうですか……。いやしかし」

 

 ツクシは姿勢を正し、一行の前に立つ。

 

「皆さん、本当にありがとうございました。ロケット団を退かせただけでなく、友達まで助けてくれて」

「ケッ。ガキにありがたがられてもな」

 

 一番最後にランスが上がってきて、ツクシを睨みながら言った。

 

「うう……」

 

 ランスに気圧されて、ツクシは縮こまってしまった。

 リセットがゆっくりとツクシの足元に行って、見上げている

 

「ねーねー。おにーさん」

「ん? なんだい」

 

 ツクシは膝を低めて、リセットににこやかに話す。

 

「その背中にせおってるの、もしかしてムシ取り網?」

「うん。そうだよ。僕は一応これでジムリーダーになったようなものだからね」

 

 ツクシは少し自慢げにリセットに言う。彼女は一気に目を輝かせた。

 

「すっごーい! ねえねえ。じゃあわたしと、今からムシ取りっこしよ!」

「ええっ!? で、でも僕はこれからこの事件の後片付けをしなきゃ。そうでしょ、サブリーダー」

 

 ツクシは側にいたサブリーダーに話しかける。

 

「うむ。お嬢ちゃん悪いが、リーダーは遊んでいる時間はないんだ」

 

 中年のジムトレーナーはすまなそうにリセットに答える。

 

「ぶー……」

 

 不承顔のリセットをよそにウルザが発言する。

 

「それではジムの挑戦は……」

「すみませんが、明日にしてください。ロケット団を破ったその実力、楽しみに待ってます!」

 

 ツクシはウルザに陽気に微笑んで、ジムトレーナーを引き連れて帰っていった。

 

「いけすかねえガキだなあ……」

 

 ランスは不機嫌であった。娘にいい顔する男を特に彼は嫌っている。

 

「ま、まあまあ。一件落着したんですし、今日はこのままどこか泊まりましょうよ! お代ならお礼代わりに私がはらいますから」

「マジか。ラッキー! アケミちゃんは太っ腹ないい子だな、がははは」

 

 ランスはアケミの肩を抱きながら高笑いする。

 

「ねえ……。いいの、ウルザさん」

「……。まあ、宿泊代が浮くことはいいことですし」

 

 アケミを警戒しつつも、そのメリットは認めざるをえないウルザだった。

 

―旅館 大広間―

 

 アケミの指定した旅館はヒワダで1,2を争う高級旅館であった。そのままランス一行はアケミにより大広間が貸し切られて大きな宴会が開かれ、歓待を受けた。

 

「がはははは! いやー、極楽極楽」

 

 ランスは両脇に旅館の美女を従え、酒食に耽っていた。

 

「今日はどんどん楽しんでいってくださいね! ランスさん」

「おー、アケミちゃん! 君もこっちにこないか、総統直々に酒をついでやろう」

「お言葉はありがたいですが、私はまだ未成年で……」

 

 アケミは年齢を理由に断るが、ランスは粘る。

 

「堅いことを言うな! 俺様の酒が飲めないっていうのか?」

「ふう……まあええか。どうせ新歓やらサークルで飲んどるし……」

 

 アケミは小さく呟き、ランスの前に正座して出る。

 

「わかりました。では少しだけ」

 

 アケミは小さい盃を持って、ランスの前に出る。

 

「よーし」

 

 ランスは徳利を持ち、アケミの盃になみなみと注いだ。

 彼女はそっと上品にそれをこくこくと飲んで見せる。

 

「ほう。案外いけるクチか?」

「え、ええ。こー見えても、結構強い方なんですよ?」

 

 アケミはハンカチで口の端を拭いながら答える。

 

「ん? さっき未成年だから飲めないみたいなこと……」

「あ、あははは……。ランスさん、もう一杯、いただけませんか?」

 

 アケミは即座にごまかして、盃をもう一度手の持ち、ランスの近くに寄せた。

 

「おーよしよし……」

 

 ランスはもう一度徳利をあげて、アケミの盃に酒を注ごうとした。

 が、そうみせかけて

 

「隙ありー!!」

「!!」

 

 ランスはアケミの豊満な乳房を鷲掴みにする。アケミはあまりにも咄嗟のことで反応が追いつかず、魔の手を許してしまった。

 

「ぐっ……く……」

 

 アケミは盃を落とし、瞳孔を開いた。

 

「おー、もしかして着痩せするタイプか? 思ったよりずっとでかいぞがはは」

 

 ランスはアケミの当惑をよそにさらに乳房を揉み回した。

 

「ランスさん、さすがにそれはお戯れが」

 

 ランスのより少し離れた脇で夕膳を食べていたウルザは、目に余る行動を見て、さすがに口を出す。

 

「野暮な事を言うなウルザちゃん。この子ウルザちゃんより2サイズはでか」

「そ、そういうことをいってるのでは……」

 

 ウルザが更に追及を続けようとすると、アケミがさえぎった。

 

「は……ははは、もーランスさんったらエッチなんですから。そ、そんなすぐにがっついたら勿体ないですよ?」

 

 アケミは眉を引くつかせながら、なんとか笑顔を保ってランスのセクハラをいなす。

 

「じゃあ今夜あたり俺様のハイパー兵器を」

「こ、今夜はその……、脇にいる方たちがお相手しますよ」

 

 アケミはランスの両脇にいる二人の女性に目配せする。どちらも綺麗所であり、その道のプロである。

 

「そーですよランス様ー。いーっぱいサービスしちゃいますから」

「たくましい胸板……。見ているだけでキュンキュンしちゃう」

 

 女性たちは更にランスの近くに迫り、ランスを性的に誘惑した。

 

「おーそうかそうか。ようし、今日はハッスルしまくるぞー」

 

 ランスは有頂天になって二人の肩を抱き、そのまま服の中に手を入れる。

 

「今日”は”って何よ。昨日も一昨日も私やシィルちゃん寝かせなかったくせに……」

「ランス様……」

 

 同じく脇で夕食を食べていたかなみは恨めしげに、シィルは心配そうにランスを見つめていた。

 

「シィルおねーちゃん」

「なあに? リセットちゃん」

「そのお肉、もうたべないの?」

 

 リセットはシィルが半分残していたトンカツを指さした。

 

「う、うん。もうおなかいっぱいで……。あ、リセットちゃんもしよかったら食べる?」

「あ、じゃあ私も……。あんまり食べると太っちゃうし」

 

 かなみとシィルはそれぞれリセットに肉料理を分けた。

 

「わーい! おねーちゃんたちありがとー!」

 

 リセットは分けられた料理を嬉しそうに食べ始める。

 

「ほんと、親に似てよく食べるわよね……」

「ふふふ。良いじゃないですか。子どもはたくさん食べて育つものですよ」

 

 シィルは母親のような笑みで、リセットを眺めていた。

 

「すみません。私は少しトイレに……」

 

 アケミは静かに席を立ち、座敷を後にした。

 

 障子を閉めたアケミは、ふうとため息をつき、歩き始める

 

「ったく……。ウチまだバージンやのに……。それに、これ全部経費で落ちるんやろか……」

 

 仲居から渡された明細に少し不安な視線を送りながら、アカネは静かにトイレへ向かった。 

 

――

 

 その後、一行は露天風呂に行き、旅の垢を落としていた。ランスはアケミが先程手配した高級娼婦とずっぽりやっている。

 

「へぇー……。シィルさんってそんなに長くランスさんと一緒にいるんですか」

「そうですね……かれこれもう6,7年になります」

 

 アケミはまずシィルに話しかけ、関係を深めようとしている。

 

「シィルおねーちゃんってすっごく優しいし、きよーだからみんなだいすきなの!」

 

 リセットはニコニコとわらって、アケミたちの会話に参加している、

 

「そうなんだぁ。確かにこう、普段の仕草とか、顔からそういうの滲みでてるものねぇ」

「ふふ。リセットちゃんこそ、ランス様はじめ、多くの人に愛されているわよ」

 

 シィルは全くそれを鼻にかけようとはせず、リセットに優しく言葉を返した。

 

「へへへ」

 

 そんな会話を少し離れたところで、かなみとウルザが見ている。

 

「どう思いますか、かなみさん」

「うーん……。悪い人ではないとは思うけど……。確かに、これはちょっと度が過ぎてるわよね」

 

 かなみも、この過ぎた接待について違和感を覚えている。

 

「私達が来たときにたまたまポケモンジムが介入しようとしていて、そしてたまたまアケミさんが井戸に入って幹部を追い詰めようとしているところに総統以下私たちが救出した……、どうにも作為の香りがします。考えすぎかもしれませんが……」

 

 ウルザはアケミの様子を見ながら言う。

 

「ロケット団があの井戸で悪事をしていたのは本当だと思うけどね。実際にヤドン? ってポケモンが何十体もいたし」

「そうですね。そこは疑っていません。既に起きている事件を、利用したといったところでしょうか……」

 

 そんな会話に気づいたのか、気づいてないのか、アケミの方が話しかけてきた。

 

「かなみさんとウルザさんの話も聞かせてくださいよー」

「えっわ、私!? 急に話って言われてもねぇ」

 

 かなみは急に話を振られて少し慌てている。

 

「じゃあ……そうですね。ランスさんとはどういうきっかけで」

「きっかけ……。きっかけは……」

 

 かなみはそのきっかけを思い出そうとする。リーザスのリア女王の命でランスの監視を命じられたことがそのはじまりである。

 

「……。あんまり、人前で話したくはない……です」

「ご、ごめんなさい。じゃあ、ウルザさんは」

「そうですね……。まあ追々、お話ししますよ」

 

 ウルザもその話題を避けた。彼女はアイスフレームというレジスタンスのリーダーで、ランスはその元隊員だったのだが、一般人に話すにはあまりにも込み入っている。

 

「えー……。まあ、確かに初対面の人にはなかなか話せないこともありますよね」

 

 アケミは二人に頭をさげつつ、シィルやリセットと会話を再開した。

 

「ねえウルザさん」

「何でしょうか」

「その……」

 

 かなみはアケミの胸をちらりと見る。

 

「……。確かに、私より大きいですね。リズナさんと同じくらいはありそうです」

 

 ウルザは自分の胸元を見ながら言う。その事実は認めざるを得なかった。リズナとはランスが以前関わり、現在はゼス王国の客人となっている淫乱体質で強力な魔法耐性体質をもつ女性である。

 

「う、うん。確かにあれくらいはあるかも。ランスの事だからきっと……」

 

 かなみはハニートラップを警戒してるようで、少し心配そうな表情をうかがわせる。

 

「大丈夫ですよ。総統も別に昨日今日そういうことを覚えた人じゃないんですから、境界線はわかっていますよ」

 

 ウルザはお湯を顔にかけながら答える。

 

「う、うん、まあ、色仕掛けだけじゃランスを完全に手球にはとれないのはわかってるけど」

「それに……」

 

 ウルザは談笑するアケミに今一度視線を送る。シィルを審判にしてリセットと指相撲をしていた。

 

「彼女はあまり、そういうことに場馴れしてなさそうですし」

「ああ……。まあそれはちょっとわかるけど。でも」

「まあ、ここしばらくは様子を見ましょう。あら、あそこに薬草湯がありますね。少し入ってみませんか?」

「へー……。良さそう。最近私も肩凝ってるし。ウルザさんもどこか?」

 

 ウルザとかなみはほぼ同時に立ち上がった。

 

「ええ……少し頭痛がたえなくて」

「……。それ、温泉でどうにかなるのかしら」

 

 そんな会話をしながら、二人は浴槽をうつっていった。

 

――

 

 翌朝、朝食を済ませたウルザは今回も一人でジムに向かっていった。

 イトマルの迷路という仕掛けをクリアして、ウルザはリーダー・ツクシの前にたどりつく。

 

「昨日は本当にありがとうございました。改めて、ヒワダの住民を代表してお礼を言わせていただきます」

 

 挨拶もそこそこに、ツクシは礼儀正しく、ウルザに頭を下げた、

 

「いえ……。勝負の前に2,3気になることがあるのですが、よろしいですか?」

「何だろう……? まあ、なんでも聞いて下さい」

「まず、わたしたちの来訪と、ほぼ同じ時にあなた達がロケット団と対峙していたこと……、これは偶然ですか」

 

 ウルザは一番気になっていたことを尋ねる。

 

「偶然、だと思います」

「アケミさんの井戸への突入も含めて……ですか」

 

 その言葉にツクシは息を飲み、しばらく間をおいて答える。

 

「はい。以前よりポケモンリーグよりあのヤドンの井戸における、ヤドンへの加害事件について経過観察と、状況に応じた制圧を任されていたのですが……、その折も折にアケミさんがここにやってきて、止めるのも聞かずに井戸に入るって」

「彼女はコガネ大学に通っていると聞きました。コガネより離れたこの街のあなたは、どのようにして、彼女と親交を持っているのですか」

「……。どうしてそこまで、貴女が気にする必要があるのですか?」

 

 ツクシは疑念を含んだ視線を、ウルザに投げかける。

 

「職業病でしてね……、気になることは尋ねないと気がすまないのです」

「……。そう、ですか。彼女とは、その……一口で説明するのは難しい間柄で、勘弁してくれませんか」

「不躾ですが……、特別な仲、なのですか?」

 

 ウルザはジャブを打つつもりで尋ねる。

 その反応から探ろうとしたが、それはあからさまであった。

 

「そっそんな! と、とんでもないです。アカ……。アケミさんはあくまで僕の一方的な、じゃなくて、た、ただの友人で」

 

 ツクシは頬を紅潮させ、緊張した面持ちで返す。完全にしどろもどろになっていた。

 

「……そうですか。分かりました」

 

 ウルザはその反応で全てを察し、これ以上の尋問を終了した。

 そして、ウルザは確信を持った。ヤドンの井戸での出来事は、何者かが糸を引いた舞台装置であると。

 

「はーっ……。すみません。挑戦にこられたんですよね?」

「はい……。ですが、待ちますよ。落ち着かれるまで」

 

 ウルザは彼が平静を取り戻すまで待つことにした。相手の状態が不安定なときに勝負を仕掛けるのは、フェアではないと考えている為である。

 ツクシは数度深呼吸し、精神を落ち着かせる。

 

「ありがとうございます。ウルザさん……、貴女の噂は聞いています。ハヤトさんのジムでも、鮮やかな勝利を収められたみたいで……。でも、僕も虫使いとして、正々堂々と、戦わせてもらうよ! 行け、ツボツボ!」

 

 ウルザの眼の前にツボツボが現れる。全ポケモン中、最強格のガードを持つ。

 

「……。行きなさい、アリゲイツ!」

 

 ウルザは敢えて有利なマグマラシを最初には出さず、アリゲイツを選択した。

 

「アリゲイツ! 水の波動!」

 

 アリゲイツが先制し、大きなダメージを与えるが、さすがに一度では抜けなかった。

 

「ツボツボ、どくどく!」

 

 ツボツボは穴から毒液を発射し、アリゲイツに命中させる。

 

「っ……。アリゲイツ、もう一度!」

 

 ツボツボにもう一度水の波動が当たるが、混乱は起きなかった。

 

「ツボツボ、眠れ!」

 

 ツボツボは眠り、体力を全快。そして、きのみによって眠りから目を覚ました。

 

「顔に似合わず、随分と……いやらしい戦術を使ってくれますね。他の2つ目のトレーナーにも同じことを?」

「大人のトレーナー志望者には、それなりにハードルあげて戦うこともみとめられてるんですよ」

「そう……。アリゲイツ、戻って。行って、ベイリーフ!」

 

 ウルザはアリゲイツを戻し、本来不利であるはずのベイリーフを繰り出す。

 

「っ……。何を考えて」

「そっちがその気ならば、やり方を変えるだけの話です」

「……。ツボツボ、もう一度どくどく!」

 

 ツボツボはまた毒を射出し、またも直撃する。

 

「ベイリーフ、ねむりごな」

 

 ベイリーフはねむりごなを噴霧し、命中させる。ぐうぐうと眠り始めた。

 

「なるほど……。そう来ますか」

「ベイリーフ! はっぱカッター!」

 

 ねむり状態で起きないままその後2ターン経過し、はっぱカッターでじわじわとツボツボの体力が削られていく。

 

「ベイリーフ! はっぱカッター!」

「……」

 

 ツクシはモンスターボールをひたすら気にしている。交代するかどうかを悩み続けていた。如何に耐久の高いポケモンとはいえ、何度もくらっていれば瀕死の可能性が見えてくる。

 このターンでツボツボは目を覚ました。

 

「ツボツボ……」

 

 ツクシは技の指示を悩み続けている。ベイリーフの特性である深緑の発動点を気にし続けていた。

 

「むしのていこう!」

 

 ツボツボはベイリーフに触手を飛ばし、わずかながらダメージを与える。とくこうが下がり、はっぱカッターの威力が低下する。

 

「……。ベイリーフ! もう一度!」

 

 どくどくによるダメージ低下が加わり、ベイリーフの深緑が発動する。ここで耐えられるかどうかは、運次第であった。

 ツボツボは沈黙する。

 

「うっ……。戻れ。ツボツボ。行け、ヘラクロス!」

 

 続いて、ヘラクロスが登場する。ウルザはもはや、どくどくのダメージでベイリーフが耐えきれないことは理解していた。いや、それ以前にヘラクロスの攻撃を受けきれない。

 

「ベイリーフ。しびれごな!」

 

 しかし、ベイリーフのしびれごなは当たらなかった。

 

「ヘラクロス、シザークロスだ!」

 

 ヘラクロスはカマを交差させ、ベイリーフを貫通する。ひとたまりもなかった。

 

「……よくやったわ。ベイリーフ。行って、マグマラシ!」

「カタをつけよう……ってことですか。ヘラクロス! 岩石封じ!」

 

 それは甘いとばかりに、マグマラシに大きな岩石が降りかかる。不一致に加え低威力の為、ダメージは大したことはなかったが、素早さがさがるのは痛かった。

 

「マグマラシ! つばめ返し!」

 

 素早い動きでヘラクロスは貫通され、しかも一撃で倒れた。4倍弱点の上、急所を貫いたのである。

 

「なっ……えっ……。まさか」

「……。ハヤトさんのおかげですよ。一撃で倒れるとは思いませんでしたが」

「そうですか……。でも……。僕にはまだ、切り札が残っているんだ……。行け、ストライク!」

 

 ストライクがカマを奮わせ、猛然と現れる。気合は十分なようだ。

 

「ストライク! 剣の舞!」

 

 ツクシは一回で決めるために、雄々しく舞わせる。

 

「マグマラシ、かえんぐるま!」

 

 マグマラシは火をまとって突進し、ストライクに直撃させる。相当のダメージを受けた。

 

「今度はこっちが本物をお目にかけますよ……! ストライク、つばめ返しだっ!」

「戻って、マグマラシ。行きなさい! アリゲイツ!」

 

 攻撃を開始する直前にウルザは素早くポケモンを入れ替える。いわゆる死に出しであり、アリゲイツは運悪く、そのまま倒れた。これで互いに残り一匹である。

 

「……。なるほど、相当に、わかってきた……嫌、勘が戻ってらしたみたいですね」

「さあ……。どうでしょうか、行って、マグマラシ!」

 

 その後、マグマラシは順当にストライクを倒し、なんとかウルザは勝利を得た。3体中、2匹を失う。

 

「ふぅ……。やっぱり、僕みたいな駆け出しジムリーダーには、とても敵う相手じゃなかったようです」

「いえ。お若いのに、レベル差もあるなかよくここまで……。大したものです」

 

 ウルザは心の底から、このツクシという少年トレーナーに敬意を払っている。

 

「ありがとうございます……。でも、負けは負けです。このインセクトバッジ、受け取ってください」

「謹んで、お受けします」

 

 ウルザは2つ目のバッジをケースに納める。目標は3枚であるため、その重みは大きかった。

 

「これは、ジムリーダーとしての贈り物です。受け取ってください」

 

 ツクシはウルザにわざマシン89を手渡す。

 

「中身はとんぼがえりです。今回は使いませんでしたが、ストライクのように、素早さのはやいポケモンに使用し、ステータスを上げた後に指示して交代させるのがセオリーです」

「ほう……。中々興味深い技ですね。ありがとうございます。あと、もう一つお尋ねしたいです」

 

 ウルザはわざマシンをしまい、メモ帳とペンを取り出す。

 

「僕に答えられることでしたら」

「周辺地理について少々調べたんですが……、ウバメの森に昔からある古い祠があるようですね。あれについて詳しいことを教えて頂けませんか」

 

 ウルザはトレーナー情報誌からそれについて知識を習得していた。

 

「ああ……。あれはこの森の神様を祀っているんです。セレビィっていう、現れるところにキレイな森ができるという伝説があって、ウバメの森についてはそのポケモンが創造主とみられているんですよ」

「セレビィ……。ワカバでウツギ博士より話は伺っています。時空間に干渉できるという」

「流石にそういう話まではよくわからないですが……、もし、気になるのであれば、その周辺を調べればなにか見つかるかもしれませんね。色々と不思議な事が確認されていますし」

 

 ツクシはウルザから少し視線を逸らし、考えるような仕草をしつつ言う。

 

「不思議な事、といいますと?」

「あの祠の近くを通っただけで、手持ちが回復したりとか、きのみをプランターで育てていたら一気に成長しただとか……とにかくそういうことが。まあ、ここ10年くらいで2,3度しかないらしいのでごく低い確率ですけどね」

「そうなんですか……。いえ、貴重な情報をありがとうございます」

 

 ツクシの情報にウルザは深く感謝した。とにかく、転移に関連するポケモンの情報が手に入れられたからである。

 ウルザはジムを後にし、旅館に戻った。

 

―旅館 ランスの部屋―

 

「えー……。じゃあ今日ここを出ていくってことか?」

「ようやく2つバッジを用意できましたし……、一日も早くコガネシティへ向かうべきです」

 

 ウルザはランスに強く主張した。アケミは既にこの日の分も部屋を押さえようとしていたが、すぐに宿を引き払うべきであると結論づける。

 

「そんな急かさんでも、いいじゃないですか。今日も部屋をとって、旅の疲れをよりとってもらおうと」

 

 アケミは全く問題のないように言う。

 

「お気持ちは有り難いですが、私達にあまりゆっくりしている時間はないんです」

「ふーむ……」

 

 ランスはしばらく腕を組んで考える。

 

「ウルザちゃん。どうしてそんなに急いでるんだ?」

「……。実を言えば、ツクシさん、この町のジムリーダーから帰還に繋がるかもしれない手がかりを得たんです。それが、ウバメの森という、この町から西に行ったところにある大きな森の中にあると」

「チッ……。ツクシめ……。いらんこといいおって……」

 

 アカネは小さく毒づいた。

 

「どーしたアケミちゃん、怖い顔して」

「いえ。なんでもありませんよ」

 

 アケミはすぐに表情を戻してニコニコとランスに接した。

 ランスは座椅子からすっくと立ち、部屋の出口へ向かう

 

「まっ。あんま宿でちんたらしてるのも性に合わんしな。行くぞ、お前ら」

「ランスさん……!」

 

 ウルザは名前だけ呟いて、黙って頭を下げる。

 アケミの方は一瞬苦い表情をしつつ、すぐに従順に戻った。

 

「分かりました。そういうことならば、行きましょう……!」

 

 こうして、一行はポケモンセンターでの回復と、道具の買い足しを行い、ヒワダタウンを後にした。残額は残り35万円。すぐに破綻するというほどではないが、次のジムがあるコガネシティはまだ遠く、ウルザは一抹の不安を覚えていた。

 

―ウバメの森―

 

「ちっ。鬱陶しい森だなあ……空が全然見えねえぞ」

「今はまだ昼のはずなのに……とても薄暗いですね……」

 

 シィルはあまりにも鬱蒼としたこの森に、少しだけ怖さを覚えている。

 

「この森はいわゆる広葉樹林が多くて、他の森では中々見られないような圧倒的な木々の密度があるんですわ。ですからちゃんと道筋を決めないとあっというまに遭難してしまいますよ」

 

 アケミは地図を広げながら解説する。

 

「そうね……。軽く偵察してきたけど、獣道と人の道の区別が難しくて、これは相当に難儀な森だわ。気を付けて、みんな」

 

 かなみは落ち着いた口調で偵察の報告を行った。先に偵察していたかなみが分岐した道を右に行こうとする。

 

「あれ、そっちにいくんですか?」

 

 アケミはかなみの足を止めた。

 

「えっ? マップと偵察を行った感じだと、この道が一番迷わないかなって……」

「そっちはタンバシティのジムの人たちが林中訓練を今朝からやっているので、巻き込まれると厄介ですよ」

 

 アケミはポケギアの手帳機能を呼び出して、日程を確認しながら発言した。耳をすますとわずかにまとまった人の声がしたので確かなようだ。

 

「そんなもん知るか。俺様の行く手を阻むことは許されないのだ。がははは」

「タンバジムのトレーナーってむさ苦しい空手男ばっかりですよ? ジムリーダーは筋肉バ……、筋骨隆々のスポーツマンですし」

「げっ。じゃあいいや左にしよ左」

 

 ランスはあからさまに拒絶の表情を浮かべ、さっさと左の方向へ歩みを進めた。

 

「あ! 待ってくださいランス様ー!」

 

 シィルと、相変わらずマイペースに動いているリセットが先に進んだ。

 

「はぁ……。まあ左でも大筋では時間変わらないからいいんだけど」

 

 かなみはやれやれと首を振って、三人の後を追った。

 

「ありがとうございますアケミさん。ここでもしジムと厄介事が起きると、こちらとしても大変困ってしまいましたので……」

 

 ウルザは深々と頭を下げて謝意を示す。

 

「いやあ。たまたま友達の友達が、大学の空手サークルに入っててそのツテで」

「しかしよくそこまで具体的な日時をご存知でしたね。親しいお友達なのですか?」

 

 ウルザが四人の足跡に向かって歩き始め、アケミもそれに続く。

 

「へ!? え、ええ。10年来の親友なんですわ。女だてらにオリンピックのポケスロンで金目指したるってすごい張り切っててソンケーして……」

「先程タンバジムには男性ばかりとおっしゃってませんでした?」

「こ、紅一点ってやつですよ! 嫌ですね、言葉の綾やな……綾じゃないですかー。あ! まってーランスさーん!!」

 

 アカネはあからさまにウルザの追及を避けんとばかりに、そそくさと走っていった。

 

「……」

 

 その背中を、ウルザはゆっくりと考えながら追っていく。

 

――

 

「……」

 

 しばらく森を進むと、リセットは珍しく屈んだまま静かにしていた。

 

「あら、リセットちゃん珍しく大人しいわね」

「あ! おねーちゃん、このキノコ、つんつんするとソロソロ動いてくの!」

「ん……あら本当。珍しい……」

 

 シィルも一緒になってそのキノコの動きを観察する。

 アケミがそれに気づいて、その場に急行する。

 

「それはパラスというポケモンです。背中のキノコは冬虫夏草といって、粉末にすると長寿の薬にもなるんですよ」

「へぇー……」

 

 アケミの解説を聞きながら、リセットは構わずツンツンとキノコを触っている。

 

「あの……、あんまりさわらん、触らないほうがいいわ。攻撃と認識すると胞子をだしてくるから」

「まあ! リ、リセットちゃん! すぐに離れて」

 

 シィルは慌てて静止を求めるが、リセットは気にせずつつき続ける。

 

「だいじょーぶだよ。この子おとなしーし」

「おい何してんだリセット。ちんたらするなよ」

 

 後ろが進まないのに業を煮やしたランスが、リセットのもとにやってきた。

 

「あ、おとーさん。このキノコおもしろいんだよー。ツンツン触るたびに動くし……。あと、背中のキノコはながいきのクスリになるらしいから、おとーさんにもわけて」

「アホ。俺様はまだいくつだと思ってんだ」

 

 そう言いながら、ランスもリセットといっしょにかがむ。三匹くらいのパラスが交互に動いていた。

 

「ふーん……。なんかダンジョンに生えてる無気力キノコみてーだな。やなこと思い出してきたぜ」

「あーもうランスさんもあんまり構わないほうがいいで……、すよ。」

「ま……ほっとけ。そのうちついてく……」

 

 その刹那、一匹のパラスがリセット目掛けて胞子を噴霧した。

 

「わっ……ぐう……」

「この野郎! なにしやが……」

 

 カオスを向けようとしたランスにも、別のパラスが胞子を噴霧した。

 

「ぐかー……ぐごごご……」

 

 リセット、ランスともに即座に眠りについてしまう。

 

「わっ……お二人ともあっという間に」

 

 シィルはあまりの呆気なさに思わず両手を口にあてた。

 

「あー……。あんだけ胞子まともにくらったらそうなるわな……。せめて毒じゃなかっただけ、不幸中の幸いと思わないと」

「はぁ……また日程が遅れるのね……」

 

 様子を遠目から見ていたかなみは額に手をやりながら、首を横に降った。

 

「……。かなみさん。少し宜しいですか」

「えっ?」

 

 ウルザはかなみに耳打ちをする。

 

「―――。本気なの?」

「今、やらなければ意味がありません。彼女は、脇が甘いですが、頭はかなり回りますから」

 

 結局、初日はあまり進まず、キャンプとなった。

 

――

 

 その日の夜中、アカネは一人抜け出して、通信を行っていた。

 

「それで、結局一行はどうなんだ」

 

 電話の相手はアカネに命令をだしたその人、理事長のワタルである。

 

「そうでんなー……。今んとこはウルザっちゅーえらい頭が切れる副官と、リセットっていう、ランスの子どもがこーうまいこと制御してるみたいですわ。とりあえずは身分証手に入れる為に、3つバッジ手に入れるのが、目標みたいですー」

 

 アカネは一行の現況を簡単にワタルへ説明する。

 

「そうか……。流石はウルザくんだな。トレーナーとしての記憶は失ってても、相変わらずうまくやってるようだ。ツクシくんから既に報告は受けてて、もう2つはバッジ手にしていると思うが……、君はどうするつもりなんだい。一番近いのは君だろ」

「さー、どないしましょうかねぇ……。まぁ、コガネついたら考えますわ」

 

 アカネはとにかく軽い調子でワタルに応対している。

 

「それでその……、君、大丈夫なのかい」

 

 ワタルは一転して心配そうな声色で話しかける。

 

「何がですのん」

「その……身体のほうは」

「ごっつ元気ですわ。ご心配どうも」

「いやそうじゃなくて……」

「……。心配せんでも。うまくいなしてますわ。経費、メールで送った通りの金額きちんと通しといてくれんと、困りますよ」

 

 そう言ってアカネは一方的に通話を打ち切る。

 

「ケッ……。自分かてチェリーの癖に。何いっちょ前に心配しとんねん。気持ち悪い……」

 

 アケミはポケギアをポーチの中にしまう。しかし、背後からともなく、冷たい金属の感触を覚える。

 

「―――ヒッ」

「動かないで」

 

 かなみはサバイバルナイフをアケミの首筋にそっと突き立てる。

 

「ど……、どういうつもりや……ですか」

「……」

 

 かなみはほんの少しだけ、ナイフをアケミの首筋に食い込ませる。

 

「うっ……、こ、こんなこと、かなみさんからされる覚えはないですけど」

「かなみさんにはなくても。こちらにはあるんですよ」

 

 アケミの向いから、一人が影から浮き出てくるように姿を表す。ウルザであった。

 

「どこに……、お電話をされていたのですか」

「ひ、人の勝手でしょう。あなた達にいちいち教える義理なんて……」

 

 アケミの反応に対し、ウルザは薄く笑みを浮かべて返す。

 

「いい加減、演技はやめたらどうですか。コガネシティジムリーダーのアカネさん」

「なんのことだか」

「その桜色の髪、ツクシさんの言いかけた言葉や……、何よりもあなたの時折漏れ出る言葉や、その特徴的なイントネーション……、私にも、実によく似た口調で喋る知人がいるんですよ」

 

 ウルザは冷静にアカネを追及する。

 

「た、たまたまでしょう? わ、私があのコガネのスーパーアイドルにして、ジムリーダーのアカネ……ちゃんだなんて、あ、ありえないで……す」

「調べようと思えば、更に追及はできます。ここで認めたほうが、賢明だと思いますが」

「ッ……! ど、どうせウ、私を殺せる度胸もなく、ハ、ハハ、ハッタリなん……でしょう?」

 

 アカネはパニックのあまり、しどろもどろになっている。

 

「ランスさんじゃないですけど……。わたしたちはあなた達と違って、死線が毎日側にある世界に生きています……。貴女一人殺めるくらい、どうということはないんですよ」

「―――!!」

 

 アカネは根源的な生命の恐怖を感じたのか、背筋をピンと張った弦のように伸ばした。

 

「で、でも、刃引きされとるんねや……、でしょ? い、いい、いくら、そっちのぶ、武器でどうこうしたって血はでないはずやで」

「かなみさん」

 

 ウルザはりんごを投げ、かなみの前に放りだし、突きつけていたナイフを一瞬りんごに向けて、一刀両断にする。そして、そのまま流れるようにアケミの首筋に刃をもどした。

 

「ヒッ……!!」

「おっしゃるとおり。私達の武器は、使えなくなっています。ですから、あなたたちの世界の日用品で代替しているんです。旅の需要が多い分、たくさんうられていますからね」

「え、ええんか。ウチ殺したらさ、殺人罪……や、ですよ。警察に追われますよ」

「私の来歴……。気になっていましたよね」

 

 あくまで抗弁をやめないアカネにウルザは距離を保ちながらも、じっと彼女の怯えた双眸に視線を合わせた。

 

「そ、それがなんや……なんだっていうの。これでも新聞記者の卵よ。ウ、私があなたがどういう人生をたどってきたってそんなのネタのバックナンバーに入ってるだろうし、ビビらせようたって」

「ほう―――こんな平和な国でも、いるのですか? レジスタンス。いえ、もっと率直に、あなたたちから見た言い方でいいましょうか。”テロリスト”というのが」

「!?」

 

 アケミは最大限に目を見開かせる。さすがにバックナンバーにはなかったようだ。

 

「私はかつてアイスフレームという、レジスタンスのリーダーでした。警察よりももっと厄介な組織を相手に、私達は逃げ延び、変革を成し遂げたんです。その時の雌伏に比べれば、立憲民主主義国家の警察の捜査を躱すくらい、どうということはないです」

 

 ウルザは毅然として返す。その自信だけは絶対に譲れないものであった。

 

「う……、じ、じょ、冗談……でしょ? そ、そんなん歴史のきょーかしょや、に、ニュースの向こうの、外国の話ちゃうんか?」

 

 アケミは口調を直すのも忘れて、言葉とは裏腹に縋るような視線をウルザに送った。

 

「……。例え、私が嘘八百を並べ立ててようと、貴女の喉笛を切り裂こうとしている、その刃の冷たさが現実を語っていると思いますが」

 

 アケミはその言葉を聞くと、しばらくそのよく回る口を閉ざした。かなみは黙したまま、じっとアケミを固めたままである。

「くっ……。ど、どういうつもりなのかしらへ、知らないけど、こんなことしなくても、やりようは」

 

 時間にして十秒ほど経過して出たその言葉は、観念をする寸前のような弱々しさがあった。

 

「私も好きでこんな事をしているんじゃないです。しかし、時間がないんです。じっくり関係性を築き上げて、緩むのを待っていられるほど、私達に残されている時間は多くない」

 

 ウルザは真摯な目でアカネを見つめている。そして、間をおかずに、至近距離にまでウルザはアケミに詰め寄った。枯れ葉を踏む音が、切迫度を伝えているかのようであった。

 

「さあ。答えなさい。身分を偽ってまで、私達に接触する理由は何ですか?」

「……」

 

 しかしアケミはこの期に及んでも、目を逸らし、答えようとはしなかった。

 

「かなみさん」

「えっ……。ほ、本当にやるの?」

「……」

 

 語らずともウルザの目から、かなみは意思を受け取る。そして、かなみは少しだけ刃を強める。皮膚が破れ、一筋の血が流れ始めた。

 アケミがわかったと、観念した口の形に動かそうとしたように見えた、その時。

 

「こらああああああ!!!」

 

 その瞬間、静寂を切り裂く大きな声が森に響いた。

 

「ランス……さん」

 

 ウルザはしまったと言わんばかりの表情をする。

 

「お、……起きてたの!? ランス」

「妙なキノコもどきの胞子のせいでな。それより、お前ら何してんだ。いくらウルザちゃんやかなみよりおっぱいでかいからって、アケミちゃんをいじめるのは俺様が許さんぞ」

「……。そんな理由なわけないでしょう」

 

 あまりにもくだらない理由だった為か、ウルザはポツリと返した。

 

「ラ、ランスさん! 助けてください、この二人、よってたかって私のことを」

 

 アケミのその言葉は、根源的な生命の危害に対する救いを求めているような、切迫したものがあった。

 

「皆までいうな。おいかなみ、その刃を離せ」

「くっ……!!」

 

 かなみは首筋から刃を離した。アケミは一も二もなくランスに駆け寄り、その胸によりかかった。

 

「かなみさん……」

「私はランスの忍者だから」

 

 かなみはややウルザにすまなそうな眼を浮かべ、ナイフを鞘にしまった。

 

「ふう……」

 

 ウルザは深呼吸をして、アケミに向き直る。

 

「申し訳ありませんでした。アケミさん。このような手段に訴え出るべきではありませんでした」

 

 ウルザは深々とアケミに頭を下げた。

 

「っ……。う、ううん。いいの、わかってくれれば」

 

 アケミは根源的な恐怖から解放されたからか、反射的にそう返した。

 

「いーや、俺様は許さん」

「……」

 

 ウルザは何を言われるかわかっているかのような表情で、ランスを見る。

 

「おしおきだ。この場で俺様がウルザちゃんとかなみに総統直々の、懲罰セックスをしてやる。特にウルザちゃんはこーいうときでもないとさせてくれないからな、特に念入りにやってやるぞ。がはははは」

「……。好きに、してください」

 

 ウルザは諦めた表情で、ランスを見る。体の力を抜き、受け入れる体制になる。

 

「よーし。素直だな。アケミちゃん、よーく見ておけ、俺様のパーティでいじめをするやつは皆こうなるのだ」

 

 ランスはおもむろにハイパー兵器を取り出し、ウルザとかなみに襲いかかった。

 

――

 

 あれから総計で9発ほど発散され、ウルザもかなみも限界までランスの性欲の捌け口にされた。

 

「あーえがったえがった。お前ら、これに懲りてもう二度といじめなんかするんじゃないぞ。がはははは」

 

 ようやくおさまりをみせたハイパー兵器を収納したランスは、最高に満足しきった表情で、キャンプに帰っていった。

 

「ゴメンな……」

 

 それから少し遅れて、アケミもランスの後を追っていく。

 

「ウ……、ウルザさん。平気?」

 

 かなみは横たわったまま、ウルザに話しかける。

 

「……っ…。大丈夫……ですよ。それよりも……すみませんでした。かなみさん。このような形で……、巻き込んでしまって」

「いいの……。心のどこかで、こうなるんじゃ……ないかって、わかっていたから」

 

 かなみも覚悟の上の行動だったようである。

 

「しかし……。犯され損というわけでも……。なさそうですよ」

 

 ウルザはようやく立ち上がり、下着をつけながら答える。

 

「えっ……」

「あの謝罪……。同情のつもり……、だったので、しょうが、あれが……っ、彼女の命取りです。本当に、そういう脇の甘さが、弱点ですね」

 

 ウルザはアケミの去った方向を見ながら、薄く微笑んだ。

 

――

 

 翌日、一行は昼過ぎにようやく祠の周囲にたどり着いた。信仰の中心だけあって、いくつか供物が備えられており、丁寧な管理が地元住民によって行われている。

 

「ここが、ツクシさんの言われていた祠ですね」

「多分ね……。さっき偵察に出たときも、集落の人が掃除したりしてたし」

「それにしちゃあ随分ボロっちいな。ほんとにこんなとこにいんのか?」

 

 ランスの言う通り、赤い屋根の下にある祠はところどころ朽ちており、建て直された形跡はない。

 

「数十年に一度、式年遷宮という形で祠を修繕して、御神体をそこに遷したりはいるらしいんですけどね……」

 

 道中、ウバメの森で出会った参拝客や、住民よりウルザはその情報を得ていた。

 

「ほんとかよ……」

 

 ランスはじろじろと祠を観察する。

 

「じょおー様のお墓があるところと、なんだか感じがにてる……」

 

 リセットはそれとなく、神秘的な雰囲気を感じ取っていた。

 

「ペンシルカウにある、カラーの歴代女王様の英霊があるというお墓……ですか? 確かに尊きものが収められているという点は共通していますが……」

 

 ウルザはリセットの気づきを興味深く受け取っている。ペンシルカウとはリセットの種族であるカラーの定住地であり、聖地である。

 

「うん……。なんだかふしぎで……、とてもシュッてなっちゃうような……そんなかんじ」

「まっ、とにかく、ここに俺達を転移させたやつがいるってこったろ。さっさと引きずりだそうぜ」

 

 ランスは乱暴に祠へ近づき、中を開けようとする。しかし、頑丈な鍵がかかっており、開きそうにはなかった。

 

「うがー! 開かんかこのっ!」

 

 びくともしない祠にランスは柱を蹴って悪態をつく。

 

「どうやら関係者でないと開けられなさそうですね……」

「それ、あんまりイタズラすると、神隠しに遭うっていう言い伝えがありますよ」

 

 アケミはランスへ冷静に指摘した。

 

「けっ。今の俺らの状況自体神隠しみてーなもんだろが」

「それは一体どういう……?」

 

 アケミは恐る恐る尋ねる。

 

「……。信じがたいでしょうが、私達は異世界よりやってきているんですよ。ですから、いわゆる神隠しにあってるのと同じようなものなのです」

 

 ウルザはどうせ知っているのだろうと、見透かしているかのようにアケミに言う。

 

「へ。へー……。雰囲気がどうも違うとは思っていましたが、そういうことなんですね」

 

 アケミはわざとらしくほうほうと頷きながら答えた。

 

「しかし……。どうするの? 来てみたはいいけどこれじゃあ何の手がかりも」

 

 かなみは原点に立ち返ってウルザに問う。

 

「とても安らげるところだとは思いますけど……」

 

 そよぐ秋風を感じながら、シィルはランスへのお茶を淹れながら素直な所感を述べた。ランスはコップをひったくるように取ってグビグビと喉を潤す。

 リセットは何の気なしに、てくてくと祠に近づき、つま先立ちをして、祠の入口に触れる。

 すると、不思議なことが起こった。しばらく、祠が光り輝き、リセットはただそれを見つめていた。

 

「リセットちゃん! 大丈夫!?」

「おいなにしてんだ、さっさと離れやがれ……」

 

 そんな声も全く届かず、リセットはとにかく数分間、その場から動かなかった。

 しばらくして光はおさまり、祠はもとに戻った。終わった頃にはリセットはポロポロと涙をながしていた。

 

「リ、リセットち」

「リセット! おい、お前、どうしたんだ」

 

 シィルよりも先にランスが、視線を合わせて、両肩を叩いてリセットを直視した。

 

「ないてた……の」

「は?」

「よくわかんないんだけど……、緑色のちっちゃい子? ポケモン……なのかな? が、下をみてポロポロないてたの……。それでね、いっしょに私もそこをみたら……、全部、ぜーんぶ建物とかが、ガレキの山になってて……」

 

 リセットは少しずつ、自らの視た内容を話す。

 

「ガレキ……か……。ね、リセットちゃん、それってどこの町とか、わかったりしないかな?」

 

 アケミが興味深げにリセットに尋ねた。

 

「わかんない……でも、わたしたちがいた世界? のとは……、違うとおもうの」

「……。つまりそれってウチ……、いや、私達の世界ってこと……? にわかには信じがたいけど」

「なんだかとても謎めいてますが……、貴重な手がかりになる気がします」

 

 ウルザはリセットの証言を丁寧にメモ帳に書き込み、自身の考察も書き加えた。

 

「そうなのか? なんか妙ちきりんな夢みたようにしか俺は思えんが……」

「で、でも、おとーさん! わたしはほんとーに見たんだよ! 何もいわなかったけどすごくこまってて、……こううまくいえないけど、とにかくかなしそうな眼だったの、みててとってもつらかった……」

「う……そ、そーなのか」

 

 リセットの涙ながらの余りに真の迫った訴えに。ランスも即座に否定は出来なかった。

 

「ウツギ博士も仰せになっていましたが、この世界では不思議なことも、よく起こるのです。でくから、一概に子どもの夢、想像として一蹴するのも考えものだと思います」

 

 ウルザは静かな口調でランスに言った。

 

「ふーむ……。しかし、こいつの言うことが本当だったとして、俺達にどうしろっていうんだ」

「それは……私にもわかりません。分かりそうな人に聞いてみる他ありませんね」

 

 アケミはこのやり取りを、深刻な表情で、思考を巡らせながら聞いている。

 

「アケミさん。どうされました?」

「ああいえ……。大したことでは」

 

 のぞきこんできたシィルに、アケミはすこし大げさに手を前に出して答えた。するとシィルは一粒のチョコレートを差し出した。

 

「シィル……さん?」

「お考え事があるようですから、甘いものでもと思いまして、ご迷惑、でしたか?」

「い、いえいえ。いただきます。どうも……」

 

 アケミはチョコレートを受け取り、それを噛み砕いた。じんわりと甘いものが口の中を支配する。

 

「おいしい、です。ヒワダで買ったやつ?」

「はい。お茶菓子にと思ってウルザさんの寄られたショップで私もついでに買い物をして。しかしここは凄いですねぇ。これだけおいしいお菓子が、あれほど手頃な価格で手に入るなんて……」

 

 シィルは素直に感動している。彼女のいた世界では菓子、特に洋菓子というのは庶民の口には中々入らないものであった。

 

「それがそんなに……、不思議なことなん、ですか?」

「元々地域差もあれ、手に入りづらくはあったんですが……、その……、戦争が起きてからはとてもおぼつかなくなるようになっていたみたいで。でも、ランス様は人類総統ですし、そうでなくても……ですから別なんですけど」

 

 シィルは言葉を濁しながら自分たちの世界の一端をほのめかす。アケミは言わんとした内容を察したような顔をする。

 

「ふーん……。もしかして、その、戦争とは関係なく、ケーキとか、そういうんもなかなか口に入らないものなのですか?」

「ランス様に限らず、この方たちはその、私たちの世界でも有数の地位に関わっている人ですからそうでもないですけど、その、ランス様といっしょになる前の私の生活を考えるとやっぱり、ここまで気軽にとは……」

 

 シィルはランスの奴隷となる前はゼスの一般市民の階級に属してはいたが、やはりそれでもここまで豊かな生活とはいま一歩いえなかった。

 

「そうなんか。なんというか、本当に私らとは何もかも違う世界から来たのですね……」

 

 アケミは口の中でチョコを溶かしながら、ゆっくり頷く。

 

「ねえ、アケミ……さん」

 

 シィルの話が落ち着いたところ、かなみが間に入った。

 

「何に悩んでいるのか、私にはわからないけど……。その、何かあるんだったら言ってよ」

「昨日、首筋に刃を立てた人にいわれてもねー……」

 

 アケミは内心悪い気はしないのか、わざとらしく自分の首に手刀を当てるようなジェスチャーをしながら、かなみに冗談半分に言う。

 

「えっ!? かなみさん、それって……」

 

 シィルは昨日のことについてはなにも聞かされておらず、驚いた視線をかなみに送った。

 

「うっ……。ご、ごめん。それは本当に。で、でも私はこれでもパーティーとして……、出来ることはしたいと思ってるの。それは分かって」

「もーそんなシリアスにとらえなさんなって。純情やねー……」

 

 アケミは素が出るのも構わずにカラカラと笑ってみせる。

 この数日の間に、アケミの内心には少しずつ変化が出始めていた。

 一行は妙な感情を抱えながら、祠を後にした。

 

――

 

 その翌日にようやく一行はウバメの森から出ることに成功し、34番道路に出た。

 

「ふー。ようやく出れたぜ。あの辛気臭くてくれー森」

「お疲れ様ですランス様、とくとく……」

 

 シィルは水筒からコップにお茶を注いだ。なみなみと注がれたのを見て、またランスは奪い取るようにそのまま口に流し込んだ。

 

「ふう。旨いうまい……。んで、次の街までどれくらいあるんだ」

「そうね……。案内板とか見た限りだと、そこまで遠くはないみたいよ。それに、見えるでしょ、あれが」

 

 かなみの言葉に従うかのように、一行は遠景を見る。そこには超高層のビルと、それに従うかのような高層ビルが何十棟も林立している。ランスたちが眼にしたことのない、巨大都市であった。

 

「この先にあるのはコガネシティ、日本い……、ジョウトで一番の大都会や、です! コガネデパートやゲームコーナーをはじめ多くの施設がこれでもかとばかりに並び立っているんですよ!」

 

 アケミは半ば興奮しているかのようにランスに説明する。

 

「ほー……。しっかしすごいな……。あれ首都ってわけでもねーんだろ。アケミちゃん」

「うっ……え、は、はい。そうです、けど、でも首都のタマムシやヤマブキにはない、人情や、暖かさがあの街には」

「なにそんなムキになってんだ……」

 

 必死の説明にランスがやや引き気味になっていると、ウルザが戻ってきた。

 

「おう、どうしたんだウルザちゃん」

「ええ。ウバメの森では電話がよく繋がらないことがあったので、ここで掛けてウツギ博士やオーキド博士から色々うかがったのですが……、とりあえず、もう少し調べてみるのであとでまた連絡するとお返事をいただきました」

 

 ウルザはポケギアの通話履歴を見せながらランスに話す。

 

「ふーん……」

「あの試験管とか……、リセットちゃんのこと?」

 

 かなみはウルザにうかがうように尋ねる。

 

「そうですね。いずれもすぐには確かなことは言えないみたいで……」

「けっ。博士つっても大したことねーな」

「いくら学者とはいっても、自分の専門というものがありますから……」

 

 ウルザはランスの軽口に対し、ため息をつきながらフォローを入れる。リセットはマイペースに通りがかった野生のヤンヤンマを捕まえようとおいかけっこをしていた。

 それから道路を少し進んで、日没となった為一行はキャンプを張ることにした。

 

――

 

 夕食を食べ終わると、ウルザは唐突に、相対する席に座っているアケミに対してパーティー一同を前にして尋ねる。

 

「アケミさん、よろしいですか?」

「な、なんですか?」

 

 尋問のときの風景を思い起こしたのか、アケミは少しだけ震えた声で応じる。

 

「なんだウルザちゃん。いじめはダメだって……」

「いじめではありません。これは尋問です」

 

 ランスの横槍に対し、ウルザはやや強い感情の籠った声で応じる。

 

「な、なんですか、私に聞きたいことって……」

「単刀直入にうかがいます。あなたはこの先にある、コガネシティのジムリーダー・アカネさんですね?」

「またその話……ですか」

 

 アケミは言葉とは裏腹に、少しだけ笑みを浮かべる。彼女自身頃合いだと思っているのかもしれない。

 

「先日の尋問の折……、ランスさんに……その、された後に、あなたは一言、ごめんな。と、私達に謝られましたよね。あれはどういう意味だったのですか?」

「何や聞いてたんかいな……。食えんやっちゃな……」

 

 アカネは視線を逸らして小さく呟いた後、ウルザに向き直って答える。

 

「単に、ランスさんにその……一方的に抱かれて、同情しただけ……よ」

「私が聞きたいのはそこではありません。あなたは普段、丁寧な口調ですが、その時にポルトガ……、いえ、コガネ弁がでていることを指摘したのです。これは今回だけでなく、これまでの会話で何度もそういう兆候は見られました」

 

 ウルザがいいかけたのは、ポルトガルというランスたちのいた世界にある都市の一つ。ポルトガル弁というコガネ弁と同じような独特な方言が行き交う、商業都市である。

 

「ウ。ウチかて、コガネ大学に通ってますもん。そら地がでますって」

「それに、これだけではありません。あなたは私達が異世界から来たという情報を得た際、あまりにも落ち着いていらっしゃいました。ハヤトさんやツクシさんが、まるで3年前の別の私を知っていたように……、ポケモンリーグの人間ならば”私達”を知っているからこその反応ではないのですか?」

 

 ウルザは机に手をやり、更に追及を重ねる。

 

「せやから、言うてるでしょ。私は新聞記者のタマゴなの。そんなことでいちいちオーバーリアクションとってたら中立な記事なんかかけないですって」

「そういう割に、ウバメの森でポケモンジムの日程について、詳しく知っていたことを訊ねたときは、随分と慌てていらっしゃいましたよね?」

 

 ウルザは淀みなく、アカネからの言葉に切り返した。

 

「フッ……。そろそろ、ええかな」

 

 諦めた。――否、機を得たかのように、そう言うとアケミはサングラスを外し、帽子を取り、ポニーテールをといて、尖ったおさげの髪に戻す。

 

「あっ……」

 

 かなみはまっさきに気づいた。既に偵察や情報収集で本来のアカネの容姿は得ていたためである。ウルザも当然おさえており、同じく真剣な、力の入った表情となった。他の一同はさすがに驚愕が隠せなかった。

 

「せや。……、ウチはコガネシティのジムリーダー、アカネや。ポケモンリーグからの命令で、あんたらのこと、探ってたんや」

 

―つづく―




ウルザの尋問シーンは、成功パターンも書いていましたが、彼女の行動がなんでもかんでもすんなりうまくいくのもなーって思ってこちらにしました。
そのパターンもこちらに書いておきます。



「わ……分かった。降参や……! さすがに自分のタマないなってまで、あんなアホ理事長に尽くすギリないわ」
「では、先程の質問に答えていただきますか」
「ウ、ウチはコガネシティジムリーダーのアカネや。理事長……、チャンピオンのワタルはんから、あんたらのこと調べて内実を報告するよう、密命があったんや」

 最低限のことは聞けたとばかりに、ウルザはふうとため息をつく。

「かなみさん。いいですよ」

 ウルザの言葉に従い、かなみはナイフを首筋から外し、鞘にしまった。

「理事長は……、ワタルさんは一体何を考えておられるんですか」
「さあ? ウチみたいな末端の一ジムリーダーにはわからん」
「そうですか……」

 ウルザはおとがいに手を当てて考えている。

「で、ウチをこれからどないするつもりや。追い出すんか」
「このパーティのリーダーはランスさんです。私にそれを決める権利はありません。それに、私達は単に、貴女の正体をはっきりさせたかっただけです。ですから、あなたの自由にしていいですよ」
「えっ……?」

 てっきり追い出されると思っていたのか、アカネは当惑した表情を見せる、

「ただ……、もし残るのであれば、もうしばらく、ランスさんや、ここにいる人たちの前では”アケミ”のままでいてくださいますか?」
「それは別に構へんけど……」

 どうして? と言わんばかりの表情をウルザに向ける。

「ジムリーダーであることを明かすには、もっとふさわしい場面があるでしょう?」
「……。コガネのジムで言えっちゅーんか」
「それもいいですが……。まあ、時が来ればわかりますよ」

 ウルザは謎めいた言葉を残して、かなみと共にキャンプへ戻っていった。一人残されたアカネは帽子を目深に被り直す。

「ま、命繋がっただけでも。儲けもんと考えな……」

 そう言って、やや遅れて同じ方向に歩いていった。
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