あー死ぬなこれ(諦め) 作:クイーンズの坊や
初投稿です
「左から失礼するよ!」
「うがっ!?」
鋭い風切り音。いつの間にか数人の仲間が吹き飛ぶ。
「なんだコイツ!? 速いぞ!?!?」
「カラフルなクソデカゴキブリみたグベッ……!?」
「ゴキブリなんて! 確かに蜘蛛も不快害虫だけどさぁ!! 失礼しちゃうよ全く」
彼は考える。なるほど確かにアリウス生の練度は良い、数も揃えてある。キヴォトスの中でも軍事力という点であれば上位に来るだろう。しかし悲しいかな、彼女達はどこまで行っても子供で、未熟。
故に以前のアビドスの時とは違ってスパイダーマンは余裕綽々であった。適当にウェブで吹き飛ばしそのまま壁に貼り付けたり地面に張り付けたり。普通に肉弾戦を仕掛けて捻じ伏せたり。
ウェブで1人を捕まえて、その1人を振り回して一掃したり。遊び半分でやったって勝つ事は出来るだろう。
銃を持った集団相手にウェブと肉弾戦だけで勝てるわけないだろ! 蹂躙クロスも大概にしろ! だって?
「なんで銃弾を避けられるんだよ!! 無理だろ普通!!!!」
「僕って結構”センス”が良いからかな!」
お前スパイダーマンのゲームとか映画を見て来いよ、余裕で銃持ったヴィラン集団を制圧してるんだよスパイディ。やっぱりスパイダーセンスがインチキだと思う、あれズルだよズル。
「というかそもそも速すぎて狙えな――」
「君たちちょっと数多くないかな? 僕としては諦めてほしいんだけど――」
「またやられた!! 衛生兵ー!!」
「――君達思ったより賑やかだね!?」
顔面ウェブ貼り付けからの投げ飛ばし。シンプルパンチにシンプルキック。戦車をスポンジのように引き裂くハルク、そんな彼と張り合えるほどのパワーは手加減しても尚生徒達相手には過剰余りある。
「クソ! ピョンピョン動き回られて狙えない!!」
「そもそも爆破が失敗した時点で撤退するべきだったんだ!!」
残念なことに、ミサイルは不発で事前に仕掛けられていた爆薬も解除された。周囲の建物はほぼ無事。つまりスパイダーマンにとっては最高に戦いやすい地形。上に消えたかと思えば後ろからウェブが飛び、味方は空へと連れ去られいつの間にやら磔に。
「む、無理だ! 不利すぎ――」
「っと、これであとは……うへぇ、まだまだ結構な数居るなぁ」
これ一人で相手するの辛いなぁ、早く”先生”が何とかしてくれないかなぁ……なんて項垂れながらも、スパイダーマンは止まらない。推定ヴィラン相手には容赦なんてしない。
確かに余裕ではあるが、絶対になんかある。これ以上の一波乱が絶対になんかある。スパイダーセンスとかではなく前世のオタク知識と、今世の経験の合わせ技による予想――予言である。
「殺人ミュータントか殺人ロボか、核爆弾とかもあるかな? ミサイル2本目? なんにせよ嬉しくないねほんと」
突き刺さったミサイルの上に着地して一呼吸置きながら彼はボヤく。出来ればさっさと逃げてくれれば良いのになぁって。
”すごい……これが、スパイダーマン”
打って変わって、”先生”はキヴォトスに来てから初めて自分以外の人間の大人の凄まじさに驚嘆していた。マスクで顔を隠してこそいるが、ゲマトリアのような異形の頭ではないだろう。マスクを脱げば、性別は違えど自分のような普通の人間。そんな気がしていた。
「”先生”、彼の事を見たことが無かったのですか?」
”うん……ハスミは会ったことがあるの?”
「えぇ、何度か。キヴォトスの治安維持組織なら大抵は関わりがあると思います」
”確かに、ヴァルキューレだったり風紀委員の子達から話を聞くことが多かったかも”
パワーもテクニックも正に人外。正直、まだ人間の範疇で動くことが多い生徒達よりも彼の方が人外感が強い。
「”先生”、動ける正義実現委員は全員集めました、一般生徒の混乱も”先生”の指示のおかげで収まりつつあります」
”そっか、それじゃあ私もしっかり働かないと――お願いアロナ”
《任せてください先生!》
銃声が響く。いやまぁさっきからしこたま撃たれてるからずっと銃声が響いてる訳だけどさ、銃声の種類が違うんだよね。確かこれは――やっぱり、正義実現委員会の正式採用銃の銃声だ。
「あの陣形に動き。これはすごい、”先生”と敵対して無くて良かったよ本当に」
ウェブシューターのボンベをリロードしつつ、戦場を俯瞰して観察する。注意深く観察して行動しろ、だね。
さて、実際の所”先生”のお陰で半分くらいは何とかなってそうだ。つまり僕が集中するべきは未だに僕に執着する雑兵と――
「おっと」
スパイダーセンスに従って首を少し傾けた。すると、ついさっきまで脳天があった位置を1発の大口径弾が通り過ぎて行くのが見える。
「――処理するべきは、雑兵とスナイパーって事かな」
幸いにも被弾は少ない。とはいえそこそこ怪我してるのにここまで動き続けられてるのは流石にアドレナリンの恩恵が大きい。つまりアドレナリンが出てるうちに動き回るべきってワケ。
「という訳でごめんねっとッ!」
「うぎゃぁッ!?」
スナイパーからの2発目をそこら辺に居た子で受け止める。うん、同じ場所からの射撃に間違いないね。
「よいしょっと! さて、スパイディ行きま――!?」
両手で掴んだウェブを思いっ切り引っ張ってパチンコの要領で射出され――あっぶない!! マジか飛翔中の僕を狙って来るか!! 腕良いねスナイパーちゃん! もしかしてお父さんがホークアイだったりするかな?
「まぁとりあえず、親愛なる隣人のお届けだよ!」
「撃て!! 撃て!! 撃ギャ――ッ!?」
「なんなんだよコイツは!?」
突入と同時にウェブでの拘束。これでまずは5人。確かに訓練はされてるけど結局数を揃えられる量産型ってとこかな? アイアンマンの作った
さてと、次は隣の建物に居る奴ら――
「っと……」
轟音、遅れて衝撃波。頬を掠めただけだってのに、結構大きめにマスクが裂けちゃった。ハンドメイドなんだぞこのマスク……僕が夜なべしてミシン動かして作ったんだぞ?
まったく困っちゃうね……まぁ、とりあえずこれくらいの傷なら、ちょちょいとこれまた僕の作ったナノマシンで直せるから良いんだけどね。
さてと。隣の建物の前に、対物ライフルなんて物騒なモノ振り回してくれてるあっちからかな。発砲位置と僕の勘によればざっと300m先……見えない、移動してるのか?
「――ま、問題は無いかな。シニスター・シックスを相手にするよりは何百倍もマシだしね」
グッと腰に効くストレッチを少しだけして、さっき無理に回避をしてから絶妙に痛み始めた腰を少し労わる。さて、改めて――
「スパイディ、行きまーす!」