【悲報】マチアプしたら元親友のTS娘が来たんだが【結ホモ】 作:霧切キリコ
あの後…
別にその場で化粧直しだってできたが、感情が抑えきれず自分が何をしてしまうかわからなかった為一度日を改めたかったというのが理由だ。
それもこれも私から逃げた彼が悪いのだが、無理矢理襲って嫌われるのは嫌だ。
しかし、私の事を嫌っていなかったという事が知れたのと…再び連絡先を交換できたので大収穫だ。
それにこれから時間はたっぷりあるのだから。
次は彼の家に入れてもらおう。
見た目が変わったとはいえどうせズボラな彼の事だから家の中だってまともに掃除もしていないだろうし、私が片付けてあげないと。
二年ぶりに晴れやかな気分になった私は帰り道を歩きながら、昔の事を思い出していた。
◯⚪️◯⚪️
俺は…『浅野光』は優秀だった。
自他共に認める疑うまい事実だと思う。
勉強は毎回学年トップ争いをするし、運動も苦手なスポーツだってない。
けれど、天才ではない。
普通の家庭なら、それでよかったのかもしれない。
けど俺は、天才でならなければならなかった。
俺の家は昔から続く由緒正しい家柄で、「浅野グループ」と呼ばれる日本では知らない者はいない財閥の子として産まれたのだ。
トップ争いではなく、トップを取らなければならない。
俺にはそれができなかった。
俺より3つ下の弟は、全てを完璧にこなしていたというのに。
だが父さんや母さんは天才の弟がいても、まだ優秀の俺に期待をしてくれていた…ある事件が起こるまでは。
弟も昔は「兄さん」とよく後ろをついてきていたのに自分の方が優れていると気づいたのか今となってはすれ違う度に鼻で笑われるという始末だ。
そんな家庭環境で何故俺が壊れないで済んだのか。
それは彼の存在があったからだ。
『牧村涼太』、俺が生涯付き添うと決めた相手。
彼はある日、父親の転勤で俺の家の隣に引っ越してきた。
お隣さんということで、外で何度か顔を合わすたびに彼は俺に絡んできた。
「なあ、名前、なんていうんだ?」
絡まれるたびになんだこいつ、と思っていた。
敬語も使えない、身だしなみも整えない、はっきり言って品がない。
家も多少裕福ではあるようだが財閥の御曹司たる俺への無礼を親が注意しない辺り相当に甘やかされているようだし俺とは違う世界の人間だ、関わるメリットがない。
一瞬でそう判断した俺は、最初は彼に絡まれても全てを無視していた。
だが彼には効いていないようで、むしろ負けじと事ある度に絡んできたのを覚えている。
「昨日の7時ぐらいにやってたロボットアニメ見た?すげー面白かったんだよな」
「…」
「また無視?強情な奴だなー。言っとくけど、お前が俺と話してくれるまで絶対諦めないからな!」
「…馬鹿なやつ」
そんな俺達の関係に変化が訪れたのは小学校高学年に入ってからの事だった。
俺の全てが狂ってしまった事件が起こった。
いつものように使用人に車で送迎してもらっている最中、前から来たトラックと衝突してしまったのだ。
向こうがスピードを出していたのもあり、運転していた使用人は死んでしまって俺だけが生き残っていた。
俺だけでも生き残ったことに母は泣いて安堵していたが、事はそう簡単には終わらなかった。
そう、後遺症だ。
俺は今、1人を除いて全ての人間の外見が黒い影のように見える。
細かく言うと、黒いモヤモヤに大きい目が2つついている人型のナニカといった感じだ。
声もテレビで良く匿名の人に使われる機械音声のように聞こえ、正しく認識できない。
医者によると、事故で頭を強く打ったことで知覚障害が起こってしまっているらしい。
両親は最初、なんとかして治そうと俺を引っ張って色んな精神病院に連れて行ったが、効果はなかった。
そもそも、俺の手を繋いでくれているのが本当に両親であるのかすら認識できないのだから。
そんな日が続くと、やがて父さんも母さんも俺を見離した。
家の近くに別荘といえば聞こえはいいが、小さな家を建ててそこに俺を隔離した。
中学までは使用人が俺の世話をしてくれていたから困る事はなかったが、よほどの事がない限り家族は誰も会いに来ない。
学校も恥だからと、エリートが通う小中高一貫の私立から公立に転校させられた。
その時点で俺は壊れかけていたが、残っていたプライドが自分が不登校になる事を許さなかった。
いつか病気が治れば、それまでここでトップを取り続ければまた母さんや父さんが認めてくれる。
そう思って俺は学校に行くことにした。
しかし、弱みを握られたくなかった俺は、この病気のことは学校に隠していた。
「ジャア、自己紹介をしてもらいマショウ」
転校初日、黒い影の担任がいつもの機械音声でそう言い、俺は教室に入った。
入った瞬間、俺は猛烈な吐き気に襲われる。
理由はすぐに分かった、大量の黒い影の視線…ボソボソと聞こえてくる機械音声のような気持ちの悪い話し声、その全てがおぞましくて、とても小学生の俺が耐えられるものではなかった。
でもここで倒れたら、俺は負け犬だ、なんとか根性で気を失うことは避けたが、声が出なかった。
「あ、お…なま…」
自分の名前を言えば良いだけなのに、声が詰まって出ない。
そんな俺に担任が心配して声をかけてくる。
「どうしたんデスカ?大丈夫?」
「ひっ!!」
悪意はないのだろうが、今の俺には恐怖でしかない。
もう嫌だ。
怖い、逃げたい、誰か助けて…!
そんな時だった。
彼が来たのは。
怯えて小さく震えているといきなり教室の扉が開いた。
振り向くとそこには
「遅刻しましたー…って、浅野じゃん!」
「……え」
機械音声ではない聞き覚えのある声、そこにいたのは確かに俺が散々見下していた『牧村涼太』その人だった。
見間違いじゃない、彼だけは、前と同じような普通の人間に見えた。
それからだった、俺が彼と一緒に行動するようになったのは。
「どういう風の吹き回しだよ?前まで散々無視してきたのにさー、今は俺としか話してないじゃんか」
「別に良いだろ、涼太と一緒にいる方が落ち着くんだよ」
「なんか…素直になりすぎて気持ち悪い!」
俺が通うことになった公立の小学校には彼もいた。
しかも、同じクラスで。
彼からしたら、不思議でならなかっただろうが俺はもう自己紹介の時以来、牧村涼太と一緒にいることでしかまともな精神状態を保てないようになってしまっていた。
どうして彼の事だけ正常に認識できるのか未だにわからないが、それは彼が俺の事を純粋に家柄も関係なく接してくれていたからだとそう結論付けた。
それに、精神病でもある以上俺の深層心理がそうさせているのだろう、勉強や習い事も関係なく、最近見た面白いアニメとか、何気ない事でも馴れ馴れしくも普通の友達のように話しかけてくる彼を無意識に信用していたのかもしれない。
中学に上がると、彼は前よりも暗くなったが俺には関係なかった。
暑い日も寒い日も、来る日も来る日も彼と一緒に居続けた。
たまに、「俺とだけじゃなくて他の人とも話した方がいいと思う」と彼は言ったが、彼以外の人と話す必要性も感じられないし、そもそも彼以外をまともな人だとは認識していなかった。
その頃の俺の願いは彼とずっと2人だけの世界にいたい、それだけだった。
彼を愛している。
これが親愛なのか、恋なのかわからない。
少なくとも、自分が男である限り、親愛の域を超えることはないのだろう。
そう思っていた。
高校生になった頃、『TS病』なんてものが流行っているのを知った。
どうやら、男が女になってしまう病気らしい。
「やだなー俺、女になるのは。まだDTも捨ててないのにさ」
高校生にもなると、そういうことにも興味が出てくるようで涼太はよく「彼女が欲しい」「童貞を捨てたい」というのを連呼するようになった。
彼からそういうことを聞くたびに、胸が痛む。
あの黒い影と彼が交わる姿を想像すると吐き気がしてくる。
それに彼女ができたら、きっと俺と過ごす時間が少なくなるだろう、それだけは嫌だ。絶対に。
「はは、涼太が女の子か…可愛くなるのは間違いないだろうな」
「何言ってんだよ!どう考えても俺よりもお前の方が可愛いだろ、あーあ。女の子になったら俺のDT貰ってくれよ!光」
「……っ!何言ってんだ」
彼は冗談で言ったのだろうが、その言葉がどうも忘れられなかった。
俺が彼女になって、俺が彼の童貞を奪えれば、彼の願いを叶えてあげれさえすれば…
でも、俺は男だ。
TS病にさえかかれば…ずっとずっと彼と一緒にいられる。
でもそんな上手いこと発症するわけが、と思っていたがそんな嘘みたいな出来事が起きた。
「なんだ…これ…」
朝起きて鏡を見ると、そこには知らない女がいた。
髪は長く、胸があり、下半身にはあるはずのものがなくなっていた。
俺はこれを神様が後押ししてくれているのだと感じた。
浅野光は牧村涼太と結ばれるべき運命、そう神様が言っているのだと。
すぐに、彼に連絡すると思った通り焦った様子で彼は俺に会いにきた。
とはいっても、彼がこの状況をすぐには受け入れられるとは思っていなかった。
「おまえ…光…か?」
だが、一目見て俺のことを浅野光だと言い当てた。
やっぱり彼は俺の運命の相手だ。
「メッセ…見たんだろ?そうだよ…俺、光だよ」
それから俺は、急に女になってしまったことを受け入れられず精神を病んでしまったという
一人でいるのか辛いよ、と言うとほとんど住み込みで俺の家にいてくれるようになった。
「おい、光、風呂沸いたぞー」
「ああ…その、なんだけど。お風呂、一緒に入らないか…?」
「な、お、おまえなぁ…風呂ぐらい1人で入れよ!」
「…そうだよな…ごめん」
あの手この手で、彼に手を出してもらおうとお風呂上がりに鉢合わせるようにしたり、出来るだけ密着したりして女の身体を感じてもらおうとしたが、彼が俺に手を出すことはなかった。
女になったら彼の事が本当の意味で手に入ると思っていたのに、それが悔しくて、夜に枕を濡らすこともあった。
そうしていると、彼が寝室に入ってきて、手を繋いで添い寝をしてくれる。
「光…俺が側にいるから、何があっても味方だから」
「…っ…ぅん…」
添い寝だけで身体を重ねることはなかったが、それでも今まで感じたことがないぐらいの幸せだった。
痩せてはいるが、確かに男だとわかるゴツゴツとした手、彼の温もりと優しい匂い。
それは麻薬のように俺の脳を蕩けさせていた。
好き。
幸せ。
愛してる。
彼と過ごした夏休みの日々で俺はすっかり心身共に雌にされてしまっていたが、俺はまだ満足できていなかった。
まだ足りない、本当の意味で彼を手に入れたい。
彼に俺のことを好きにさせたい。
友達としてじゃなくて、恋人として、家族になりたい。
そうなるには、このままじゃダメだと思った。
夏休みが終わる頃に、俺は彼に宣言した。
「ありがと…涼太。俺…いや、私、受け入れるよ。この身体」
彼を手に入れるには、
だから
彼の好きなタイプは知っていたから、そうなるように努力した。
濃い化粧は好きじゃないと言っていたから、ナチュラルメイクを勉強した。
スタイルのいい女の子が好きだと言っていたから、ジムに通って毎日走ることにした。
女の子らしい可愛い子が好きだと言っていたから、彼の好きな恋愛リアリティーショー番組を吐き気を我慢しながら視聴した。
彼は、「女の子」が好きだから、見た目が女の子でも中身が「男」の俺は彼にとって「男の子」だから。
だから俺は…私は完璧な「女の子」になるために今も勉強し続けている。
全ては、彼と結ばれるために。
学校に通う事に決めたが、恋愛テクニックとして「押して駄目なら引いてみろ」という物を知った私は学校では彼と過ごす時間を減らすことにした。
黒い影と話すのは辛いし苦しいが仕方がない、これも全て彼の事を思えば我慢できた。
「ソレにシテも、浅野さんってカワいいヨネー」
「ふふ…そうかな」
「それナー?これで元々男の子ナノ信じられナインですケドー」
何を言われても愛想笑いで適当に肯定しておけば会話は成立する。
私は他の人と話してはいるが、視線は常に視界に映る彼を見ていた。
私が楽しそうな雰囲気を出していると、彼は寂しそうな顔をする。
休み時間に話に行くと、わかりやすく嬉しそうな表情をする。
いつも隣にいて当たり前だった私が他の人と話して楽しそうにしているから嫉妬してくれているのかもしれない。
そう考えると嬉しくて嬉しくて仕方がなかった、もう少しだ。
もう少し頑張れば、彼は私に落ちてくれる。
「男の子」としてじゃなくて「女」として見てくれる。
しかしある日、私と彼がいつもの様に談笑していると黒い影が二人の世界に入り込んでくるように話しかけてきた。
内容は下品極まりないものだった。
胸がどうとかどこが感じるのとか、心底下らない。
それよりもとっとと離れて欲しかった、気分が悪くなってくるから。
しかし、最後の言葉だけは無視できなかった。
「ナア?俺ともヤらせてクレヨー。牧村のなンかよりモット気持ちよくさせてやレルぜ?」
…気持ち悪い。
彼以外から向けられる性欲がこんなに気持ち悪いものだなんて、知らなかった。
ゲラゲラ、と黒い影の下品な笑い声が脳に響いて不快だ。
こいつ、なんなんだ。
言い返そうと立ち上がろうとしたその時だった。
「ふざっけんじゃねぇ!!」
「ふガァッ!?」
激しい怒声と共に、黒い影が吹っ飛んだ。
一瞬どうなったかわからなかったが、恐ろしい形相で立ち尽くしている涼太を見ると、彼が殴ったんだと理解した。
彼が怒ったところは見たことあるが、殴ったところを見るのは初めてだった。
そうして彼は、吹っ飛んでいった陰に向かってこう言い放った。
「気持ち悪りぃ!光はなぁ!悩んで悩んで悩み抜いてやっと今を受け入れたんだ!自分が同じように女になって今みたいなこと言われてみろ!人の気持ちもわからないなら小学校の道徳からやり直してこい!クソが!」
「涼太…」
聞いたことのないくらいの教室内を響かす大音声で。
私を守ろうと、その一心で。
なんでもかんでも暴力で解決しようとする人は好きじゃなかったが、彼が私の為に戦おうとしてくれる所は…かっこよかった。
彼はいざとなれば立ち向かえる、強い男だった。
そんな彼を見ていると私はなぜか、下腹部がキュンっと疼いたのを感じた。
その後、すぐに止めに入ってきた担任に私が事情を話してもお咎めなしという訳にもいかず、彼は1ヶ月の間出席停止になってしまった。
ごめんね、と謝ったが逆に謝るなと怒られた。
優しい、好き。
彼の確かな愛情を感じられて幸せだった、この時までは。
出席停止が終わった頃、いつもの様に話しかけると彼がいつになく神妙な面持ちで言った。
「学校で話すのはやめないか」と。
理解ができなかった、嫌われたのかと思った。
でもちゃんと理由があって、彼は全く引かないと言った様子だったから私も仕方なく納得はしていないが了承することにした。
周りの目なんて、元から気にしていないのに。
少しでも2人の時間を減らすのは辛かったが、外ではいつも通り話してくれるというのなら仕方ない、今となってはそれは間違いだったが。
思えばこの時が分岐点だったのかもしれない。
学校で彼と話すことがなくなって、色々とすれ違うことが増えた。
一緒に帰ったり登校することがなくなったり、テスト勉強や用事があるからと会うことも少なくなっていた。
決定的だったのは、私と話さなくなった内に彼が他の友達を作っていた事だ。
忌々しい黒い影と、彼が楽しく談笑するところなんて見たくなかった。
それがどうしても許せず、平静を保てなくなった私は、「私以外とは縁を切って欲しい」と迫ってしまったのだ。
すると彼は、凄く面倒くさそうな顔をしてから
「女みたいなこと言うなよ、誰と関わろうが俺の勝手だろ」
その通りだった。
誰と関わろうが彼の勝手だ…でも、
だから思わず、口に出てしまった。
「私は女の子だよ…?みたいってどういうこと?」
私がそう言うと、彼は笑ってから。
「いや、お前は
「は、?」
その時、世界が暗転した。
頭がクラクラと揺れて、平衡感覚を失ったようにそのまま崩れ落ちそうになった。
私は、女の子じゃない?
もう少しで彼は私に落ちてくれると思っていた。
全て勘違いだった。
彼の好みになろうとした。
全部全部、彼の求める「女の子」になろうとしたのに、私はまだ彼の中で「男」の「浅野光」のままだった。
彼は私のことを、一度だって女として見てくれたことはなかったんだ。
そう思うととにかくもうその場から離れたかった。
だから言ってしまった。
「少し、距離を置こう」
と。
それから私達は、卒業するまで…いや、今さっき再会するまで一言も会話を交わすことはなかった。
彼の方を見ても、気まずそうに視線をずらされ、話しかけようとすると友達とどこかへ行ってしまう。
連絡しても未読のままだった。
当然だ、こんな重い奴、面倒臭くなってしまったんだろう。
でもきっと、いつか話しかけてくれるはずだ。
彼は大学に行くだろうから、盗み見た進路希望先の紙を見て私もそこを受験しようと決めた。
地元の私立、私のレベルからかなり下げているので入るのは容易だった。
学部も学科も、全て同じにしたのに。
しかし、彼はそこにいなかった。
仕方なく彼の友達に聞くと、直前で進路を変え東京の大学に進んだようだった。
目の前が真っ暗になった。
そんなに、私のことが嫌だったのだろうか。
何も言わずに東京に行ってしまうなんて。
もう会える可能性は低いのかもしれない。
会えるとしたら、彼がいつか地元に帰ってきたとき。
でも、でも。
……そんなの、嫌だ。
絶対に許さない。
女の子だと意識されていなかった、だからなんだというのか。
もっと努力すれば良いだけの話じゃないか。
容姿を更に磨いて、ファッションも彼がよく好きだと言っていたインフルエンサーの着ていた服を真似して、彼の持っていたHな本から男が喜ぶ仕草やして欲しいことを勉強した。
月日が経って、自分の姿を鏡で見た。
髪は茶髪にして、ボブカットにしてふわふわパーマをかけた。
ゆるふわ系女子が好きだと言っていたから。
服装は足が出るものや、タイトなものを選んだ。
身体のラインが浮き出ていて、肌面積が多い、特に足はえっちで好きだと言っていたから。
体型は痩せすぎないことを意識して、バランス良く鍛えた。
痩せすぎていると心配になるけど、細くてスタイルがいい子が好きだと言っていたから。
頭のてっぺんから、足のつま先まで全て見て、完璧だと思った。
もうこれで、私は彼の理想の「女の子」になれる。
その頃にはすでに大学を休学していた。
家族が私にお金だけ渡して育児放棄をしていたのに初めて感謝をしたかもしれない。
そのおかげで、どんな手段を使っても彼を追いかけることができるから。
もういつでも準備はできている。
私は東京に向かい、彼がどこの大学に通っているかということだけは知っていたからそこの近くに部屋を借りることにした。
大学に突撃しても良かったが、そんなことをすると彼に嫌われてしまう。
あくまで偶然を装って再会する方法。
色々考えたが、彼が常日頃「彼女が欲しい」と言っていたのを知っていたからマッチングアプリを使っているんじゃないかと思い、すぐに登録することにした。
私の病気は画像も関係なく人間が黒い影に見えてしまうため、探し続けているとすぐに分かった。
『りょう』という名前の男。
見た目はまるっきり変わっていたが、『りょう』だけは普通の人間に見えた。
彼が、涼太だ。
まさか本当にこんなアプリを使っているなんて、もしかしてもう既に私以外の女に童貞を奪われてしまったんじゃないかと心配になってしまったが、彼が相当なヘタレだということは知っているから、多分…大丈夫だ。
それに、自分で言うのもなんだが美少女の裸を見ても襲ってこなかったような人なんだから。
私はすぐに「いいね」を送り、メッセージを送った。
ああ…ようやっと、会える。
だめだ、興奮しちゃ。
ちゃんと元親友同士が偶然再会しましたって体を装って、感動の再会って感じを演出しないと。
私が追いかけてきた事を知ると、彼はきっとまた私を面倒がって遠ざけようとしてしまう。
そんなことさせない。
私は君だけの、完璧で理想の「女の子」なんだから。
『浅野 光』
沙◯の唄の主人公に似ている病気を持っている。
『牧村涼太』以外とは絶対に恋愛も友情も育むことはない。
彼女からすれば『彼』以外は化け物にしか見えないから。
『彼』に認められるために、理想の「女の子」を目指して毎日努力をしている。
努力家系ヤンデレヒロイン。
ちょっと属性過多すぎんよ〜