【悲報】マチアプしたら元親友のTS娘が来たんだが【結ホモ】   作:霧切キリコ

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押しかけヤンデレ

 

ピリリリリ、と甲高くけたたましい音が狭い部屋に鳴り響く。

 

 

「うるせぇ…」

 

 

あと5分だけ寝よう、と寝転がりながらスマホのアラームをスヌーズにすると、また目を閉じる。

5分後にまた鳴って、またスヌーズにする。

その繰り返し。

 

 

6回ぐらい同じ事をして30分が経った頃、やっと起きる意思が固まり、怠い身体を叩き起こした。

 

 

「…やっべ、そういやあいつが来るんだった」

 

 

一昨日、再会した元親友…仲直りしたから現親友か。

あの後、解散してから何気なく光に「改めてよろしく」とスタンプを送ると10秒も経たずに「明後日家行って良い?」という旨の返信が来た。

当然ながら、ズボラな俺は部屋の片付けを全く行っていない為、親友とはいえ人を自分の家に上げるのは憚れるのだが「別に良いよ」としつこく(かなり圧を感じた)光が言うため仕方なく了承した。

 

面倒だが、せめて座れるスペースぐらいは作ろうといつもより早起きしようとしたのだが、あいつが来ると言っていた時間が7時で…今は6時50分か。

 

うん、無理だな!

 

早々に諦めた俺はせめて着替えと歯磨きだけでもと寝床から立ち上がる。

 

 

…というか、そもそもこんな早い時間に来る方がおかしいんじゃないか、と思う気もしないことはない。

 

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

 

 

「これは…うん…中々、生活感が溢れてて良いと思う!」

 

「オブラートに包んでくれてありがとな」

 

 

光はきっちり時間通りに俺の家を訪ねてきて開口一番に絶句した顔でそう言った。

どうやら想像以上に俺の部屋が汚かったらしい。

これでも一応、大学のテキストとか必要な物の場所は全て把握しているのだが。

いちいち収納して、使いたい時に取り出すよりもそこら辺に置いておいた方が探す手間もなくなるし便利ではないだろうか?

 

「つまりさ、散らかしてるっていうより…置いてるわけよ」

 

「それは…食べ散らかしたお菓子の袋や、生ゴミも?飲み終わったお酒の缶もってこと?」

 

「…俺実は、少し部屋が汚れてる方が落ち着くんだよな」

 

「いや、これを少しとは言わないと思う…うわ、納豆のパックとかあるじゃん…全く、私がいないとすぐに散らかすんだから」

 

 

うえー、と苦虫を噛み潰したような顔で納豆パックをどこかへ放り投げる光。

 

おい!ゴミを投げるな!部屋が汚れるだろ!

 

そんなの今更じゃんみたいな顔で見やがって…ったく。

 

にしても、こうしてると昔を思い出すな。

光の家はいつも嘘みたいに綺麗なのに、俺の部屋はいつもぐちゃぐちゃで光が家に来る度に「どうやったらこんな短期間でこんなに散らかせれるんだよ」と軽蔑してきたんだっけ。

容姿や外面は良くなったが、こういうところは全く変わっていないらしい。

怠け癖は死んでも治らないということだろう。

 

って

 

 

「なんだよ、その格好」

 

「なにって、掃除するの。昔みたいにね」

 

 

いつの間にかエプロンと三角巾を装着し、家政婦さんのような格好になった光。

そうだった、光は毎回俺の家に来るたびに掃除を手伝ってくれていたんだっけ。

 

それにしても、ふむ。

 

「結構似合ってて可愛いな」

 

「へ!?…あ、ありがと」

 

まるでこの前見た家事代行モノのA◯みたいだ。

代行のお姉さんが四つん這いになって床を掃除してるところを後ろから襲いかかるみたいなやつ、あーいう馬鹿みたいなシチュエーション好き。

 

邪な気持ちを持って見ていると、いつの間にか光は更にゴム手袋とマスクを着用していた。

エプロンに三角巾にマスクにゴム手袋て。

 

「いやいや、それはやりすぎだろ!てかどこから持ってきたの、準備良すぎでは?」

 

「涼太の部屋を掃除するにはこれぐらいしなきゃでしょ。私の健康にも関わる」

 

そう言ってゴミ袋とハンディマモップを投げつけてくる光。

人の部屋を汚染地域みたいに言いやがって!

 

まあわざわざ掃除をしてくれる訳だし可愛いから許すか…

 

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

 

それから俺達は(ほとんど光が)とてつもないスピードで掃除をこなしていた。

まず服、生ゴミの下敷きになって埃まみれで悪臭が漂っているTシャツや、試着するのが嫌いなせいで買ったはいいもののサイズの合わず一年ぐらい着ないでいたものなんかが次々と光の手によってゴミ袋に詰め込まれていく。

しかしどうしてこの服のサイズが俺に合ってないって知っているんだろう?

次に使わない生活用品や落ちているお菓子の袋なんかも手際よく片付けていき、俺が適当に隙間掃除をしている間に気づいた頃には入居した頃と変わらないぐらいピカピカになっていた。

 

「すげー、床のべたつきもないし、下見なくても歩けんじゃん」

 

「それが普通なんだけどね」

 

家の物全部なくなったんじゃないかってぐらいスペースが出来ている。

これが断捨離ってやつか…

  

俺が一年ぶりのクリーンな家の光景に感動していると光が「お腹空いたでしょ?何か作るよ」と言ってくれるので台所を任せることにした。

掃除もして料理もしてくれるエプロン姿の光を見て、「奥さんみたいだな」と言うと動揺したのか包丁で指を切りそうになっていた。

おいおい、気をつけてくれよ。

 

「休みの日になんでこんなことって思ってたけど、なんか達成感やばいわ」

 

「んー?…ふふ、良いことじゃん」

 

包丁の小気味のいいトントン音が聞こえてくる。

なんだか賑やかでいいな、と思いながら掛け時計を見るとかなりの時間動いた気がしたのに、まだ起きてから1時間しか経っていなかったらしい。

何か手伝えることはないかと立ってうろうろしていると「待ってる間は気にせずスマホでもいじってていいよ?」と言われてしまった。

意訳すると邪魔だからどっか行けって事だろう。

京都言葉が上手いな。

 

お言葉に甘え、ソファに座って適当にネットサーフィンしているととあるニュースが目に入った。

 

『TS病、今年に入って既に15人が発症。前年の倍の見込みか』

 

どうやら最近TS病患者が増えているらしい、感染するものというわけでもなく突然変異のようなものでどうしてかかるのか、どうして増えているのか未だ何もわかっていないようだ。

光以外にも知り合いがTS病にかかるかもしれないのか。

 

ふと大学のうざい友人を思い浮かべた。

男だから毎回引っ付いてきてうざいだけだけどあいつが女になったらメスガキか…ありだな。

TS病にかからねえかな。

 

友人がロリっ娘メスガキになったところを妄想していると、インス◯の通知が来た。

送り主は…何故かタイミングよくその友人からだった。

普段はいきなり電話をかけてくるのに今日は珍しいな。

 

『よう色男!この前の美女とはどうよ?どうせやる事やったんだろこの野郎。まあそれは置いといて今日の夜飲まね?ちょっと大変な事が起こってさーまじやばいんだって」

 

うざ、なんだこいつ。

どうせ大したことない用事だろうがスルーすると面倒臭い。

だけど光がいるからな…

 

つっても夜はもう帰ってるかもしれないしどうするかな、と返事に悩んでいると真横から強烈な視線を感じることに気付いた。

 

 

「…ん?って、どわぁ!?」

 

 

視線の方向を見た俺は驚きのあまりソファからひっくり返った。

 

いやそれもそうだろう。

光が至近距離で包丁の切先をこっちに向けてきていたからだ。

 

 

「何してんだよ!危ねぇだろ!」

 

逆の方向に避けたから良かったものの、危うく刺さっていたかもしれない。

流石の俺もこれには注意すると、光は包丁を下ろしたが、心ここにあらずと言った状態で目に光がともっていない。

 

 

「それ…彼女?友達、どっち?」

 

 

「え?」

 

 

ゾッとするような低い声でそう言っているのがわかった。

え、俺なんでこんな詰められてるの?

 

 

「どっちかって聞いてるんだけど…」

 

「彼女って言ったら…?」

 

「真面目に聞いてるの。…いいからさっさと答えてッ!」

 

 

まるでひぐら◯みたいだな、とか茶化したらガチで刺されそうな雰囲気だ。

 

 

「友達!友達だよ、ほんとに。てか男だし、履歴見る?」

 

「…貸して」

 

 

今の光に出来るだけ近寄りたくなかった俺はスマホを投げ渡すと、光は鬼気迫った表情と物凄い速さでトーク履歴をスワイプしていった。

そうしていると次第に表情が柔らかくなっていき、満足したようにスマホを返してきた。

 

「ごめんね、私の勘違いだったみたい」

 

「お、…おう?」

てへぺろ、とさっきの事が丸で何もなかったかのように舌を出して笑う光。

こいつもこいつで情緒不安定すぎるだろ…

それに何が「勘違い」なのだろうか、俺には知る由がなかった。

てか聞くのも怖い。

 

修羅場を潜り抜けると、美味そうな料理の香りが鼻を通った。

 

「あ、ご飯できてるよ。食べる?」

 

「あっはい」

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

 

食卓につくと、味噌汁にしゃけの塩焼きにどれもこれもが朝食にしては豪華で美味そうだが、まず目に入ったのはあおさ入りの卵焼きだった。

形が綺麗で、あおさの良い香りが鼻腔をくすぐってきて、思わず涎が出てしまう。

 

「やっぱり光の作る卵焼きが一番美味しいな、まあ他のも美味しいんだけど」

 

「ふふ、ありがと。卵焼き、涼太の好物だもんね。ちゃんと覚えてるよ」

 

さっきの姿とは別人なぐらいご機嫌の光。

なんだかわからないが、いつもの調子に戻ってくれたみたいでよかった。

光はたまに意味のわからないところが地雷だったりするから怖い。

 

 

「それにさ、冷蔵庫に食材はあったけど、どうせ自炊面倒くさがってスーパーの弁当とかばっかり食べてるんでしょ?」

 

「…よくわかるな。真面目に自炊してたのなんか最初だけだよ。最初にカレー作るとこまでがピークだった気がする」

 

まあ、食材を入れたのは元カノなんだけどな。

というのは嫌な予感がするので言わないでおこう。

 

「…そんなことだろうと思った。食事はちゃんとバランスよく摂らないとダメだよ。ま、今日から私が作ってあげるからそこは心配しなくてもいいけどね」

 

「まあ、光の料理なら毎日食べたいぐらい美味いから今日みたいにちょくちょく作ってくれたら助かるけどな」

 

「うん、ちゃんと頑張って()()()()ね!」

 

ん?今の会話どこかすれ違ってないか?

気のせいだろうか。

 

まあそんなことは置いといて…こんな栄養があってバランスのいい食事はいつぶりだろうか。

やっぱり人の手料理を食べると頑張って作ってくれたんだな、と思うし愛情を感じてあったかい気持ちになる。

あまりにも美味かったため味わって食べようとすると、食べ終わるのにいつもの2倍以上がかかってしまった。

 

「ご馳走様、ありがとな」

 

「お粗末様でした!そんなに美味しそうに食べてくれると思わなかったから嬉しい」

 

「美味しそうというか、美味いしな実際」

 

「…ありがと」

 

素直に褒めると、分かりやすくそっぽを向いて赤くなった顔を隠すようにする。

照れ隠しがわかりやすい、可愛いやつめ。

 

 

流石に皿洗いまでさせるのは申し訳なかったので手伝おうとしたが、それもしなくていいと止められてしまった。

皿を落としたら怪我をするかららしい。

仕方なく任せたが、こいつは俺のことをダメ人間にするつもりなのだろうか?

 

またソファで座ってテレビでも見ていると、光が皿洗いをしながら声をかけてきた。

 

「ね、友達に誘われたんでしょ?行ってきても良いよ?」

 

「え、でも光はどうするんだ?夜には帰るのか?てっきりこれから2人で出かけたりするもんだと思ってたんだけど」

 

「うーん、実は今日体調が良くなくて。夜は帰ってくるの待ってるから、約束の時間まで2人で家でゴロゴロしない?」

 

「そうなのか?体調良くないのに悪いな、色々してもらって」

 

「いいの、私がやりたかっただけだから」

 

なんて良いやつなんだ。

でも夜は流石に帰ったほうがいいんじゃないかと思ったが、なぜか居座る気満々だったので何も言わないことにした。

光なら物を盗んだりとかしないだろうし、体調が悪いなら1人で帰らせるのも心配だしな。

 

別に遊びに行かない、という選択肢もあったが行かないとあいつがまた「どうせこの前の美女といるんだろ!俺にはお見通しなんだからな!チクショー!」とうるさいので光には悪いが行かせてもらうことにした。

 

はぁ…行ったら行ったで事細かく聞いてきてうざいんだけど…しょうがねぇか。

 

それにしても光のやつ、俺が行った後何して時間を潰すつもりなんだろうか?

 

 

 

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

 

大体のところは掃除したけど、残っているところがある。

ベッドの裏と、洗面所、排水溝。

 

ベッドの裏にはエロ本…はなかった。

彼は今では電子派らしいから、もう昔みたいにベッドの裏に隠したりしてないみたい。

そもそも、彼は一人暮らしなんだから隠す必要もないのだが。

 

次は洗面所、歯ブラシ置きには彼の使っている黒色の歯ブラシが挿さっている。

洗面所に置いてあるゴミ箱にピンク色の歯ブラシが捨ててあったけど…まさか、そんなことあるわけないよね?

 

同棲していた人の物…なんて、ふと嫌な考えが浮かぶ。

 

いや…考えるのはよそう、彼の物かもしれないし。

歯ブラシ置きに持ってきた自分の水色の歯ブラシを挿して、お風呂に向かう。

 

排水溝の蓋を開けると、大量の髪の毛が絡まっているのがわかる。

金色の毛もあるのがわかった、彼は今黒髪だけど…前は金髪だったんだろうか?

 

とりあえず浴槽や洗面所の水回りを掃除することにした。

 

やっぱり、私の知らない人と暮らしていたんだろうか?

 

いや、よそう。

まだ確信もないのに。

 

今日は楽しかったけど…朝は失敗してしまった。

まさか勘違いで彼に刃物を向けてしまうなんて。

 

でもご飯を食べてからは気にしなくなったみたいでよかった。

あと、一番美味しいって言ってくれたし。

 

これから毎日何を作ろうか、ワクワクで堪らない。

 

ふぅ…掃除も終わったら、本格的にやる事なくなっちゃったな。

 

時間は…20時かあ。

いつ帰ってくるかな、深夜回っちゃうだろうな。

 

テレビもスマホも…見たくないし、やっぱり一緒にいてって言うべきだったかな。

いや…私は多少の友達付き合いには目を瞑れる寛容な彼女になるって決めたんだから。

 

でも寂しいな…なにか彼を感じれるもの…あ。

 

部屋の中を歩いていると、彼のさっきまで着ていた部屋着を見つけた。

天啓を得たように閃いた私は彼の部屋着を持ってベッドに向かった。

 

 

「私って実は天才なのかな」

 

 

彼の服を着て、彼の寝床に入って毛布を被る。

全身が彼に包まれているように感じる。

 

ベッドの中はあったかくて、彼の…男の匂いがする。

 

「すぅぅぅぅぅ…お ぉ"ッ!?」

 

肺に取り入れようと、思いっきり鼻から吸い込むと、気を失いそうになってしまった。

やばい、一気に彼を取り込みすぎた。

こんなのODと変わらないじゃない。

 

「すぅ…すぅ…うッ"♡」

 

やばい、癖になっちゃう。

吸い込んで、吐いたらまた彼の成分が外に逃げちゃうのか切なくて、また吸い込む。

 

やば、これ…止まんないぃ…

 

 

 

 

 

私が正気に戻ったのは0時を回った頃だった。

扉が開く音、話し声が聞こえた。

 

え、もう帰ってきたの?

こんなとこ見られたらやば…え?

 

 

「え、ほんとに入っていいの?中にこの前の美女がいるんしょ?」

 

 

「いいつってんだろ、詳しいことは中で話すから」

 

 

 

気配がする。

 

彼と、もう一つ。

 

 

「んじゃ!お邪魔しまーす!!!うわ、部屋きれー。マッキーってこんな綺麗好きだったっけ?」

 

いつもの機械のような声が聞こえる。

甲高くて女だとわかる、馬鹿そうな話し方だ。

 

 

「いや…これはあいつが…って。うわ。何やってんだ…?光」

 

 

彼は女を連れて帰ってきた。

 

 

 

なんで?

 

 





『浅野 光』
ちゃっかり住み込む気でいる。
鍵を型とって合鍵を作るつもり。
私がいないと相変わらず何にもできないんだからムーブをしにきた。
他の女の影を感じると感情を抑えられず包丁を向けてくる模範的ヤンデレメンヘラ。

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  • 浅野光
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