【悲報】マチアプしたら元親友のTS娘が来たんだが【結ホモ】   作:霧切キリコ

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少し遅くなりました。
某FPSにのめり込んでいたせいです。


あなたらしさ

 

レンが女になって相談に来てから1週間が経った。

光の助けを借りたことは結果的には悪くなかったのかもしれない。

二人はそれなりに良い関係を築けて…いないな。

光はレンに事あるごとに「品がない」「女性としての自覚を持ちなさい」とキツくダメ出しをしているようだし、それに対してレンも反抗しようとする物だから、常に二人の仲は険悪と言ってもいい。

それに名前すら呼び合っていない。

「あなた」や「アンタ」とお互いを呼び合っている。

 

まあそれも追々。なんとかなるだろう。

 

そんな事よりも、

 

「いつまで家に居座るつもりなんだ?2人とも」

 

なぜか俺のベッドで横になりながら小説を読んでいる光。

もう一方は我が物顔でソファに足を伸ばして座りながらテレビを見ているレン。

 

「大事な用とやらはいいのか?光は」

 

「んー?ここでもできるから大丈夫」

 

そういうことではないのだが。

 

「レンは…たまには大学行った方が良いんじゃないのか?」

 

「あー?5回まで休めるから大丈夫っしょ!」

 

そういうことではないのだが!

 

やんわりと帰って欲しいということを伝えたつもりなのだが、こいつらには伝わっていないらしい。

この1週間、光は台所とベッドを占領しているし、レンはソファを占領しているから俺は床で寝る羽目になっている。

光は前みたいに一緒に寝ようとしつこいし、レンは寝相が悪すぎて起きたら上に乗っていることなんて事がある。

それに対して光がブチギレるまでがワンセット。

 

いつからここはシェアハウスになったのだろうか。

 

空いているソファのスペースに座って『居候 追い出し方』と検索する。

出てきた対処法は、「家の鍵を変える」「管理会社に相談する」

 

ほう…どうしようかなと割と真剣に考えているとレンが腹を足でゲシゲシとしてきた。

 

「痛ってぇな…なんだよ。事実だろ」

 

「いいや、俺はちゃんと理由があるんだからな!そこのイカれ女は知らないけど。ほら、見ろよ」

 

差し出してきたスマホの画面を見ると、そこには『【速報】男さん路上ライブ中にTSしてしまうwwwwww』という内容のスレ。

スクロールしていくと、見慣れた光景の画像がいくつも出てくる。

 

路上でギターを持って歌っている金髪の男…これは明らかにレンだ。

徐々に縮んでいき、髪が伸びていく。

そこにははっきりとレンがTSする瞬間が写っていた。

 

「このスレとか、YouTub◯とかTwi◯te◯とかでもめっちゃ拡散されてるみたいでさ。あとなんか俺迷惑な路上ライブしてるやばいやつって有名人だったらしくて住所まで晒されちゃって、ほとぼりが冷めるまでとてもじゃないけど家に帰れそうにないんだよね!てか今帰ったら刃◯の家みたいになってそうじゃない?」

 

 

…なんて運が悪いんだ、こいつは…!

 

確かに今のこいつはか弱い女の子だ、更に炎上中と来た。

ネットにはやばいやつが沢山いる、こんな状態のこいつを無理矢理追い出したりなんかしたら最悪の場合…いや、考えるのはよそう。

 

「しょうがない…ほとぼりが冷めるまでだからな」

 

そう言うと、レンは水を得た魚のように跳ね上がって引っ付いてくる。

相変わらず調子のいいやつだ。

 

「やたー!さっすがやさしー!愛してる!」

 

バキッ!

 

今なんかベッドで変な音がしたような、気のせいか?

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

「俺、服が欲しい」

 

「あ?」

 

時間はあっという間に過ぎ、お昼の時間になり光の手料理で食卓を囲っているとレンがそんな事を言った。

 

「服だよ服、前着てた服とかマッキーの服じゃもうサイズ合わないし…イカレ野郎は女っぽい服しか持ってないから俺の趣味じゃないし」

 

「そんな心配しなくても最初から私の服は貸さないよ。汚いもん」

 

「汚いってなんだよ!お風呂は毎日入ってんだろ!」

 

 

確かに今のレンの服装は俺の服だから当たり前なのだがオーバーサイズすぎる。

ショートパンツはベルトでもしてないとずり落ちてきそうだし、Tシャツは捲らないと手が隠れててうざったそうだ。

 

「まあ…いつまでも俺の服を着られるのも面倒臭いしな。行くか?」

 

「え、買ってきてくれないの?」

 

「お前のサイズに合う服がわからないんだから来てもらわないと困る」

 

「えーーー…だって俺、炎上中だよ?」

 

露骨に嫌そうな顔をするレン。

どうやら炎上して人目につくところに行くのに躊躇いがあるらしい。

 

 

「それにサイズなんか適当にSSで買ってくれたらいいじゃんーそれでいけるっしょ!お金払うからさー、一生のお願い!!」

 

出た、こいつの一生のお願い。

人生に何回一生のお願いをする気なんだろうか。

ちょっと前はバイトをクビになって金欠だからと飯を奢ってもらうのに一生のお願いを使っていた。

こいつの一生のお願いほど安い物はないとわかっているのだが、俺は頼まれたら断れないタイプなため、ついつい聞いてあげてしまっている。

 

「はぁ…わかった…」

 

仕方ない、適当に子供服でも買ってきてやるかと考えていると、唐突に光がドン!と食器を強く叩きつけるように置いた。

明らかに分厚い食器じゃなければ割れていそうなぐらいの力で。

 

「びっっっっくりしたぁ…なんだよ、いきなり」

 

「…涼太をパシリに使うつもり?お前が?」

 

 

不機嫌さを凝縮したような声。

まるでホラー映画を鑑賞した時のような身体の冷えを感じる。

 

「な、なんだよ。仕方ないだろ!だって俺炎上してるんだもん!そりゃあ囲まれるのは好きだけど…気持ち悪いロリペドのおっさんに囲まれるのは御免だね!」

 

「それはあなたが人様に迷惑をかけていたからでしょう?全部自業自得なのに、住ませてあげてるだけでも有難い筈なのにこれ以上涼太をこき使うの?」

 

「……た、たしかに」

 

「そんな事よりお前あのライブが迷惑行為って自覚あったんだな」

 

珍しく一方的にレンが言い負かされている。

いつもはどっちもどっちもだな、というか巻き込まれたくねえと思ってどちらにも肩入れせず我関せず傍観に徹してはいたが今日に関してはレンが悪いと思う。

心の中で光にいいぞ!もっと言ってやれ!と応援していると光の視線が俺の方に向いてきた。

 

え、俺?

 

 

「涼太もこいつを甘やかせすぎ。2人ともご飯食べるのやめて、そこに正座」

 

「え、俺は関係な」

 

「正座」

 

 

何故か関係ない俺も巻き込まれて1時間に渡る説教をされる事になった。

解せない。

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

「マスクとかつけたけど大丈夫だよな…?バレないよな?」  

 

マスクをつけて帽子を深く被って不審者のようにキョロキョロしながら歩くレン。

たかが迷惑行為で炎上してる一般人の癖に俳優や女優のオフみたいだ。

まあTS病のこともあって時の人みたいなものかもしれないが。

 

「有名人気取りかよ、うざ」

 

散々絞られた俺達は結局一緒に服を買いに行くことになり、大型ショッピングモールに来ている。

光は誘ってはみたが洗濯や晩御飯の準備に忙しいらしく、ここにはいなかった。

まだ14時だというのに、一体どんな料理をするつもりなんだろうか?

 

「ううー…まだ足が痛い…」

 

「お前のせいで俺も痛い。ったくなんで俺まで…」

 

足の痺れがまだ止まらない。

どうやら光は俺がレンを甘やかしている事が気に入らなかったらしい。

そもそも、レンと仲良くしている事自体が気に入らなそうだが。

 

「お、ここの店がいい!」

 

飾られている服を見ながら2人で歩いているとストリート系を主に取り扱っている店舗に勢いよく入って行くレン。

女になってからも服の趣味は変わらないみたいだ。

 

「ちょっと試着してくる!」

 

「これメンズだけどサイズ合うのか…?って、聞いてないか」

 

LAのロゴが入った黒のジャケットとダメージジーンズを持って試着室に向かうレン。

近頃はジェンダーレスだし、メンズライクコーデもあるし別に悪くはないのだが、今の可愛いレンには前みたいな服装は似合わない気がする。

 

 

「一番小さいやつにしたからなんとか着れたけど…どうよ!結構似合ってない?」

 

満を持して試着して出てきたレンはなんというか…服を着ているというより、服に着られているというか。

 

「うーん、もっと他にも良いやつがあるんじゃないか?」

 

「えー!結構似合ってると思うんだけどなぁ…じゃあ他のも着てみる!」

 

遠回しに他の店に行こうと言ってみたが、また他の服を持って試着室に走って行った。

それとパタパタと走り回るもんだから店員さんがちゃんと躾けろよと言わんばかりに睨んできた。

 

「マッキー、これどう?」

 

「うーん」

 

ブカブカの黒のパーカー、下がショーパンとかなら似合うかもしれないが足を出すのは恥ずかしいらしい。

 

「これは!?」

 

キャラクターの入った白のTシャツと緑のカーゴパンツ、上はともかく下が全く似合わない。

 

「うーん」

 

「うーーーーー!どれなら似合うんだよ!!!」

 

俺がどれも微妙だなと首を傾げると癇癪を起こしたようにポカポカと俺の胸を叩いてくるレン。

全く痛くない。

 

「だから2階にある子供服の店にしとけって。ちゃんと女の子の服もあったぞ」

 

「やだ!!!!!俺は女の子の服なんて着ないの!」

 

怒り方は子供じゃねぇか。

 

「仕方ないだろ、なっちまったんだから女の子に」

 

さらっとそう言うとレンは拳の連打アタックを止めて俯く。

 

今何かまずいことでも言っただろうか、「大丈夫か?」と声をかけるとレンは絞り出したように

 

「……女の子になったからって、女の子になろうとしなくても良いだろ?」

 

「え?」

 

「身体が女の子になったからって、女みたいに振る舞わなきゃいけないのかな?自分の好きなファッションとか趣味とか我慢して…話し方も変えて…それってほんとに()なのかな?」

 

「……!」

 

そう言われてハッとする。

もしかしたら俺はとんでもなく酷いことを言ってしまったんじゃないかと。

光だって今はそうだが、最初は女になっていたことを病んでいたはずだ。

こいつは変わらず明るいけど…ほんとは気にしてるはずだって分かってたのに…軽率だった…! 

女の子になったんだから、ってこいつは男なのに、俺がそれを言っちゃダメだろ…!

 

 

「ごめん、デリカシーがなか」

 

 

「なんてな!」

 

 

「は?…いってぇ!」

 

すぐに謝ろうとすると、レンから痛烈なデコピンを食らった。

俺が額を抑えていると、レンは悪戯成功!と、したり顔。

 

 

 

「冗談に決まってんでしょー。なんか1人でしんみりしちゃって〜くすくす」

 

前言撤回、こいつは光と違って何も考えてない!

少しでも悪いなと思ったこっちがアホだった。

 

「このメスガキ…!」

 

「くすくす…へ?マジギレ?大の大人が!?」

 

お前俺の一個上だろうが!

 

理解(わか)らせてやる…!」

 

「ふぇぇ!?かわいい冗談なのにぃ…!」

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

 

騒いでいた俺達は案の定店から追い出され、頭に来た俺はレンを無理矢理子供服の店に連れて行き、イチゴ柄のキャミソールを無理矢理着せることにした。

着せたのはおばちゃんの店員さんだが。

ニコニコで良く似合ってるねー!と言っていた。

当の本人はかなり不服そうだが。

 

「なんだよこれぇ…!」

 

「はは、すげー似合ってんじゃん。かわいいよ」

 

「やだー…なんかスースーするし、透けてない?これ」

 

「もう買っちまったんだわ、我慢しな」

 

実際メスガキ感が増して似合ってると思う。

普通に褒め言葉ね、これ。

着たい服が着れないのは不憫だと思うが、メンズのサイズはこいつに合わないんだから仕方ない。

あと俺の心を裏切ったから残当。

 

「はー…まさかロリコンが一番身近にいたとはなー」

 

「なにがだよ」

 

「だってさ、この服ぜってーマッキーの趣味でしょ。やっぱあのイカれ野郎に手を出さないのってそういうこと?…やだー!もしかして俺狙われてる?」

 

何を言うかと思えば人を茶化さないと死ぬ病気にでもかかっているのだろうか、こいつは。

女になった方がうざさが軽減されるかと思ったが、前よりもうざくなっている気がする。

あと光の事をイカれ野郎って言うな。

 

「はぁ…どうとでも言ってくれ。メスガキに付き合うのは疲れる」

 

「何がメスガキだよ!俺は男なんだからせめてオスガキだろーが!」

 

ツインテールをぶんぶんと振り回して怒るレン。

なんも怖くないし、ガキが駄々こねてるだけで可愛いだけだ。

 

「ふっ。あんまし変わらないだろ、それ」

 

「ムキー!」

 

⭐︎★⭐︎★

 

レンの服を買うという目的を終えた俺達は帰り道を歩いていたが、「甘い物食べたい!」と言い出したレンに付き合って近くのケーキ屋に入っていた。

 

こいつはケーキとか甘いものがそこまで好きじゃなかった気がするのだが、女の子の身体になって食の好みも変わるのだろうか?

たしか女性ホルモンがうんたらかんたらで女性の方が男性よりも甘いものを好むと聞いたことがある。

 

「あ、ケーキは付き合ってくれたマッキーへのお礼でもあるからなー。あとは…まあ、癪だけどあいつにもやるか」

 

「珍しいな。お前がお礼なんて」

 

「服は買ってもらったからな。趣味じゃないケド」

 

なんでもよかった俺はレンに任せると、イチゴのショートケーキやチョコレートケーキを目で追った後、売れ残っていた4号のホールケーキを選んだ。

「誕生日でもないのにホールかよ」と言ったら「俺がしばらく涼太の家に住む記念日」という事らしい。

 

何の記念日だよ!と突っ込みたかったが多分こいつの事だから選ぶのが面倒臭くなって大きいのを買えばみんなで食べれていいじゃん的な理由なんだろう。

 

ウキウキな様子のレンを店員の女の子が微笑ましそうに見ながら「妹さんの誕生日ですか?中学生くらいかな、プレートにお名前書きます?」と聞いてきたのは少しウケた。

 

 

「タイプのお姉さんだったのに…うう…」

 

「男だったら多分相手にされてないんだから逆に可愛がってもらって良かったんじゃないか?」

 

「うるせえ!はぁ…今日一日で男のプライドが粉々にされた気分…」

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

 

「ただいま…あれ、光はいないのか」

 

ケーキを手土産に帰宅したものの、光はどこかへ出かけてしまっているようだった。

机には置き手紙があり、端正な字で『晩御飯は冷蔵庫の中にあるので温めて食べて下さい』と書いてあった。

 

「ちぇ、折角ケーキ買ってきてあげたのになー。まあいいや、いつ帰ってくるかわかんないし切り分けといてやろーっと」

 

「先に晩御飯食べないのか?まあいいけど」

 

そう言ってレンはケーキを中から取り出したが、さっき見た時よりも形が少し崩れている気がする。

雑に持ち運んだからだろうな、俺が持てばよかった…

 

「切り分けるやつ持ってくるわ」

 

そもそもケーキを切り分ける道具なんてあったかな?と思って久しぶりに台所を見に行くといつの間にか見覚えのないパレットナイフが包丁ケースに収納してあった。

光が買ったのだろうか?他もよく見ると、買った覚えのない調理器具が置いてある。

 

「ほら…って、お前ケーキ切り分けれるのか?」

 

「できるわ!流石に舐めすぎね」

 

ケーキにナイフを差し込んでいくレンだが、たどたどしい手付きで明らかにやり慣れていない。

 

「怪我しないか?大丈夫か?」

 

「だいじょーぶだって!黙って見てろっての」

 

見てるだけでも不安になる手つきだった為、代わろうと近寄ると手で静止されてしまった。

 

「怪我しても知らないからな」

 

「しないってば!」

 

火がついたようにサクサクと切っていくが、そもそもちゃんと切り分けられているのだろうか。

真ん中から一直線に切っていたように見えたけど、その時点で失敗してないか?

 

「よし…できた!」

 

無事に切り終えたのか、ドヤ顔でこっちを見てくるレン。

しかしこれは…

 

 

「誇らしそうな所悪いけど…これのどこが三等分なんだ?」

 

「え?」

 

 

明らかに一般的なケーキ三等分ではなかった。

例えるなら、そう小学校で習った速さの公式を覚える時に使う「みはじ」の図みたいな感じになっている。

 

「たしかに…?」

 

その事に全くピンときていないようで、逆に心配になってくる。

 

「…じゃあ十字にして四等分にしとくか」

 

「あ、ほんとだ!三等分じゃねえじゃん!どうやったら三等分になるんだっけ?」

 

「昔誕生日の時とかにケーキで祝ってもらったことなかったか?その時に切り分けてるとこ見たろ」

 

「へ?…あー、うん。たしかに」

 

頷いてはいるが、絶対わかってない。

ったく、手のかかるやつだ。

 

まあでも…こいつと一緒にいるのは悪くないな。

 

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

 

 

「ただいま…と言っても、もう寝てるかな」

 

 

色々()()があった私は昼からはほぼ一日外に出ていた。

折角片付けたというのにお菓子のゴミやらでまた部屋が散らかっていて、床で彼が仰向けで眠っている。

 

「…またこんな所で寝て…」

 

私がベッドを占領してしまっているとはいえ、あの時のように一緒に寝てくれればこんな硬くて冷たいフローリングで眠る羽目にはならないのに。

起こさないように上から毛布をかけてあげると、小さい寝息が聞こえてくる。

 

「かわいい…」

 

安らかな寝顔だった。

思わず唇を近づけそうになってしまいそうになる。

 

それは駄目だ。

 

初めては彼の方から奪って欲しい。

 

名残惜しいが離れると、ソファで横たわっているもう一つの物体が目に入った。

 

今私が、最も警戒している害虫。

 

 

「…まっきー…」

 

 

そいつは寝言で彼のあだ名を呟いていた。

夢で彼と何をしているのだろうか。

 

「……」

 

…やっぱり許したとはいえ、今日一日彼をこいつが独り占めしていたと思うと虫唾が走る。

必要な買い物以外に何かしてはいないだろうか。

例えば、手を繋いだりとか、その先も…?

 

いや、こいつに彼への恋愛感情はないはずだ。恐らく。

 

ああでも、気持ち悪い…

 

暫く住むと聞かされた時は、本当に怒りで狂ってしまいそうだった。

努力してやっと彼の理想の女になれて、やっと二人の楽園を築けると思ったのにこんなに早く邪魔が入るなんて。

 

「こいつのどこが…私と違うの?」

 

なんで、こんな奴が彼の大切な友人なんだろう。

 

どうして彼は私といるよりも、こいつといる時の方が楽しそうな笑顔を見せるんだろうか。

 

「……!」

 

そう思っていると、無意識にその細い首に両腕を添えてしまっていることに気づいた。

 

殺すのはダメだ、まだ何もこいつから得ていないのだから。

 

だから今は耐えるだけ。

 

私はこいつを踏み台にして完璧になるのだから。

 

でも、不安になる。

 

もしバレてしまったら?

 

私はもはや彼専用の愛玩人形。

 

当に何もないことを知ってしまった彼は、

 

私を愛してくれるのだろうか?

 

 

 

⭐︎★⭐︎★

 

 

 

俺は綾瀬レン。

俺は綾瀬レン。

 

大学は2回生。

趣味はギター…ゲーム、酒、煙草。

 

性別は男。

恋愛対象は…女。

 

うん。

 

大丈夫。

 

今日の()()()は不自然に思われてないよな?

 

 

俺は男の、綾瀬レンのはずだよな。

甘いものなんか好きじゃなかったのに…久しぶりに食べたケーキは凄く美味しく感じた。

感情も、価値観も好物も…女になってからどんどん捻じ曲げられていく気がする。

それを受け入れてこのまま時間が進んだとして、それは俺なのだろうか?

 

いや、違う。

それはもう、綾瀬レンという名前の違うナニカだ。

 

メス堕ちなんて、絶対したくない。

 

俺は絶対、男だ。

 

「あれ…いつの間にこんな…」

 

深夜の4時、自己問答を続けていると気づけばそんな時間だった。

 

お茶でも飲もうかと俺はソファから立ち上がると、何か柔らかいものを踏んでしまった。

下で寝ているマッキーの手…かと思えば、添い寝をして心地良さそうにしている光さんの手だった。

 

「まあ、いっか…」

 

こんな時間にわざわざ起こすのも憚られる。

 

冷蔵庫を開け、2Lのお茶のペットボトルを取り出すとバイブ音が鳴った。

 

慌ててスマホを開くと、通知が大量に来ていることに気づいた。

送り主は…お父さん?

 

『これ、お前か?』

 

というメッセージと共に送られてきたのはつい今朝俺がマッキーに見せた写真と同じもの。

どうやら、ネットニュースで流れてきたようで、バレてしまったみたいだった。

 

どうしても伝える決心が出なくて、バレたくなかったのに。

 

『もしそうなら すぐに帰ってきなさい』

 

息子を心配してくれている父親の文章といった感じだ。

 

俺のお父さんは優しい。

出来の悪い息子であることを理解してくれていて、どんな変なことをしても怒られたことなんてないし、今回の事もきっと心配してくれているだけだ。

 

でも、行くのが怖い。

 

もし、俺の息子なんかじゃないって言われたら?

 

肉親に拒絶されたら、自分を保てるのかな。

 

でも…マッキーはちゃんと俺の事を視てくれてるはずだ。

 

だから大丈夫。

お父さんは分かってくれるはず。

 

それに、こんな事でウジウジしてるなんてらしくないよな!

前向きだけが、取り柄なのに。

 

なんて。

 

「なのに、どうして止まらないんだろう」

 

お茶を注いだコップを口に持って行こうとするとおかしいぐらい震えて。

 

シンクにポタポタと、零れ落ちた。

 

虚勢のメッキが剥がれるのも、あと少し。

 





まだ終わらないですけど、一応ルートによって大きく話変わるので先にどっちルートが見たいかとかでアンケート機能を使わせて頂きます!特に考えずに適当に入れてくれたら嬉しい(使ってみたかっただけ)

選ばれた方は幸せになります。

どっちルートを先見たいですか?

  • 浅野光
  • 綾瀬レン
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