紫龍のひーろーあかでみあ? 作:セカイノハンブン
どれだけ優れた能力があっても、恵まれた強個性であったとしても、
誰しもが望んだ未来へと進める訳ではない
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入試倍率驚異の300倍を誇る、雄英高校ヒーロー科。
推薦4名に、入試合格者36名の合計40名の狭き門をくぐり抜けようと全国からヒーロー志望の受験生がやって来る。
「ふぅ……」
校門をくぐり、通りの脇で
特徴的なのは、その彼の臀部。紫色の鱗に覆われた尻尾が生えており背びれとして紅い突起が一列に並んでいる。
緊張しているのか、その表情は硬く顔色も若干青白い。
「大丈夫?顔色悪いけど……」
「ッ…………?」
突然に掛けられた声に、竜一の肩が跳ねた。
慌てて周囲を見渡して、しかし首を傾げる。
声はすれども、姿は見えず。周囲を見渡しても、自分と同じ受験生ばかりであり後は、
「……服だけ?」
「やっほー。それで、大丈夫?」
「あ、ああ、うん大丈夫だ」
そう言って、両手を左右に開いてアピールする竜一。
彼の反応に納得したのか、服だけ浮いている誰かは大袈裟な身振り手振りを繰り出した。
「そっか!良かったよー、やっぱり緊張するよね。皆顔が硬いけど、君は顔真っ青だったし。あ、私は葉隠透ね。個性は透明人間だよ!」
「えっと……自分は、紫尾竜一。個性は…………」
「あ、その尻尾?蜥蜴の個性って事?」
「まあ、近いな。力が強かったり、頑丈だったりする」
「おおー、複合型って奴だよね?ヒーロー向きの強個性じゃん!」
「……まあな」
透明化している為に顔が見えないが、それでも天真爛漫な表情を葉隠は浮かべているのだろうと竜一は頷きを返した。
そのまま二人揃って試験会場へと向かう。
道すがらの話題は、中学の事であったり、これからの受験内容であったり。
「それじゃあ、紫尾君!お互い頑張ろうね!」
「ああ」
葉隠と分かれて、竜一は実技試験会場へと足を運ぶ。
試験内容は、ロボットの破壊。ポイントがそれぞれに1~3Pで割り振られ、討伐数がイコール受験生の成績へと直結する。
この試験内容に、竜一は僅かに眉をひそめた。
それは、試験内容の説明の際に眼鏡の男子が質問した内容の不備ではなく、その試験の形そのものへ。
ヒーローは、矢面に立つ職業だ。それがどんな個性であっても、
そこで、戦闘能力が最低限求められる。これが無ければ、肉盾になる事も難しい。
竜一自身、この点に否はない。戦わないヒーローと戦えないヒーローでは、全く意味合いが違うのだから。
だが、同時にこうも思う。
ヒーローを育成する学校に入学する時点でそこまでの戦闘能力を必要とするのか、と。
勿論、幼いころからヒーローを志した者ならば個性や体を鍛えている者も居るかもしれない。
だが、良くも悪くも今の社会は個性ありき。裏を返せば弱い個性や使い勝手の悪い個性、或いは無個性の場合、そもそもの努力を諦めてしまっている者が多い。
もしかすると、本人の気付いていない個性の扱いをヒーロー科で気付けるかもしれない。
もしかすると、個性は弱くとも戦闘のセンスはあるかもしれない。
そんな、IFを捨ててしまう試験ではなかろうか。
とはいえ、竜一がどう思った所で試験は変わらない。そもそも受かってもいないのだから、文句垂れてもそこに中身がない。
「はぁ…………」
気乗りしないままに、彼は試験へと臨む。
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「今年も結構な粒ぞろいだよな!」
「ええ。全体的なアベレージも高い。更に今年は、0Pの巨大ロボを倒した生徒もいる」
「撃破ポイント0だが……我々が見ているのは、そこだけじゃない」
入試が終わり、映像を見やる複数人の大人たち。
彼らの手元には試験に参加した受験生の実技試験による得点数が確認できる。
「倍率300倍を戦う相手同士だったとしても、彼らはヒーロー志望。時に、競い合う相手のみならず戦っていた相手であろうとも救う瞬間を求められる」
「だからこその、救助ポイントが割り振られてるんだけどね」
狭き門だからこそ、受験生にも留められる質は高くなる。
ただ、異を唱える者も居る。
「戦闘力を求められるのは分かるが、だからといって非合理的な試験だ……」
「お、イレイザーはご不満か?」
「少なくとも、無機物のロボット相手だけじゃ見えない実力もある」
「だからって、対人戦をこの規模でやるのは不可能でしょ?下手に暴れさせたら受験生だけじゃなくて、相手も傷つけかねない」
「分かってます…………単なる感傷ですから」
一悶着を挟みつつ、合格者の選別とクラス分けは進んでいく。
「とりあえず、クラスの実力差は伯仲に成る様に」
「互いが互いに意識して、磨き合う必要があるからね!」
「後は、個性の相性も見極めないと。流石に、訓練や授業中なら未だしも日常生活で支障が出るような場合は避けなければ」
「…………ん?」
大人たちが資料を片手に言葉を交わす中、一人が何かに気付いた。
資料へと目を落として、続いて受験生たちの映像を見る。
「んお?どしたよ」
「いや、コイツ……少し妙だと思ってな」
「おー、どれどれ?」
二人が見下ろした資料。
そこに書かれた少年は、複合型の個性を持つタイプ。戦闘向きで、筆記試験も合格基準を余裕をもってクリアしていた。
「んん?このリスナー、個性をマックスで使ってねぇな。いや、使わなくても余裕でクリアできる力量って事か?」
「反動がデカいか、周囲への被害を嫌っての可能性もあるが…………動きは消極的だな」
撃破と救助。その双方に対して、キチンと動いている。
だが、必死さというべきか“熱”が足りない。
「でもよ、ちょっと覇気が足りないだけじゃね?両方のポイントをバランスよく取って、合格ラインは超えてる。落とす理由がねぇだろ」
「…………」
ジッと覇気のない目が資料を睨む。
言われた通り、合格基準は満たしている。中学の素行も良好。寧ろ、推薦入試を受けていないのが不思議なほど。
「――――良いんじゃないかな?」
一人が声を上げる。
「どんな形であれ、彼は確りと結果を残した。それが、本人の意思にしろそうでないにしろ結果には報いるべきだと思うのさ!」
「…………ですが、やる気のない人間の割けるリソースはありません。それでも入学させると?」
「
思わぬ言葉だったのか、部屋の音が小さくなる。
皆が、次の彼の言葉を待っていた。
「彼の実力は、跳び抜けてる。本気で試験に当たっていたのなら主席は彼だったんじゃないかな。それでも手を抜いていたのは、手を抜いても合格できる難易度だったのか、或いはもっと別の要因か。迷える子供に一つの道を示すのもまた、先達の務めじゃないかい?」
その言葉で、趨勢は決まった。
ヒーローの本質は、お節介。時に
迷える子供に手を差し伸べるのもまた、ヒーローの性だった。
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「…………受かったか」