多くの方たちに何も表示されていない小説を読ませてしまった……
申し訳ないです
──風紀委員室。
静かな空気を引き裂くように、突如として突き出されたマコトからの挑戦状。内容はまさかの麻雀。
条件は過酷だ。負ければカナが万魔殿に引き抜かれ、勝てば予算が三倍になるというハイリスクハイリターン──いや。
「ノーリスクハイリターンじゃない?」
机に肘をつきながら、ヒナが冷静に吐き出す。まるで数字の計算でもしているかのような口ぶりだ。
「ちょっと!! いくら私でも傷つきますよ!!」
カナがガタッと椅子を引き、机に手をつく。
「そうですよ委員長! お姉ちゃんがいなくなるなら、今から送別会でもするべきです!」
アコはカナを擁護するようでさらりと追い打ちをかける。
「その前提が間違ってると言ってるんですが!??」
もう止める気のないアコの発言に、イオリが腕を組んで首を傾げた。
「……でもさ、カナって麻雀できるの?」
「できますよ。七並べと同じですよね」
胸を張って答えた瞬間、ヒナの口角が引きつる。案の定、ルールの“ル”の字も知らなかった。
「今までありがとう、お姉ちゃん」
「カナといた数ヶ月、悪くなかったわよ」
「万魔殿に行っても頑張れよ!」
机を挟んで次々と告げられる“惜別の言葉”。しかも誰も涙ぐまない。
「違うなら違うって言えばいいのでは!???」
「違う」
「バカ」
「カス」
「バカ」
「虫けら」
「今バカが二回ありませんでした?」
眉間に皺を寄せるカナに、アコが真顔で返す。
「そんなんだからバカお姉ちゃんなんですよ!!」
「アコのは気持ちいい! もっと罵ってください!」
「きっしょこいつ」
場の空気はすっかり緩くなり、緊張感の欠片もない。
「ふふん……やっぱりこの委員会、私に対する愛情が重いですね」
「どの口が言ってんのよ」
ヒナが呆れ顔で吐き捨てる。
「というか……ルールも知らないのによく麻雀やろうなんて思いましたね」
「私もあまりルール分からないな。結構複雑じゃなかったっけ?」
イオリも麻雀のルールはよく知らないのか、心配そうにカナの方をチラリと見る。
「任せてください。簡単に言えば、数字を順番に並べたりするだけです」
「それ七並べの説明だろ」
乾いたツッコミが飛び交う中、アコが手を叩いた。
「はいはい、イオリもお姉ちゃんも落ち着いてください。ここに何故か都合よく麻雀スターターセットがあるので、ルールを覚えましょう」
「誰よそんなの置いてったの」
「さっきあのタヌキ置いていきましたよ」
「では……一応私は一通りのルールは分かるので、説明しますね」
すると、チナツが牌を整えながら、いつもの事務的な口調で話し始めた。
◆バカでも分かる!麻雀とは?
「ざっくり言うと、四人で行うカードゲームの複雑版みたいなものです。山から引いた牌(ハイ)を使って、自分の“手札”を完成させていく競技です」
「“完成”って、どうなればいいんですか?」
「“アガリ”の形、つまり三枚一組のセット(面子)を四つと、二枚一組のペア(雀頭)を一つ。これが基本形ですね」
「ふむ……つまりドラ〇エでいうパーティ四人と仲間モンスター一匹」
得意げに例えを出した瞬間、チナツの眉間に皺が寄る。
「全然違います」
淡々と切り捨てられたが、カナは全く堪えていない。
「まず、“刻子(コーツ)”は同じ牌を三枚そろえた形です。{例えば 東東東みたいなの」}
「ふむ……あ、つまりトリプル役満ってことですね!」
声だけは感心しているが、理解の深度は限りなく浅そうだ。
「全然違います」
チナツの語気が少し強くなる。
「これを他の人の捨て牌で作ったら“明刻(ミンコー)”と言います」
「明るい刻子……つまり陽キャってことですね」
「そんな意味は一切ありません」
静かな笑顔のまま、目だけが笑っていない。
「次に、“槓子(カンツ)”は同じ牌を四枚そろえた形。
{一萬一萬一萬一萬こういうのです」}
「四枚……つまり麻雀界の四天王」
「違います」
机の上で、チナツの指先がトン、と牌を揃える音が響く。
「これも他の人の牌を使って作ると“明槓(ミンカン)”です。手の中だけで作れば“暗槓(アンカン)”ですね」
「暗い槓子……陰キャですね」
「ちょっと黙ってろ」
イオリが机越しに冷たく刺す。
「“順子(シュンツ)”は同じ種類の数字が三つ連続している形です。{一筒二筒三筒 のように、数字の階段を作る感じですね」}
{「じゃあ一筒三筒五筒でもいいんですか?」}
「なんで二段飛ばしなんですか」
呆れの空気が委員室を覆った。
「この“刻子”や“順子”を四つ作って、最後に“雀頭(ジャントウ)”──同じ牌二枚、{例えば中中をそろえればアガリです」}
「ふむ……つまり雀頭は、パピコ」
「違います」
チナツの声が完全に棒読みになってきた。
「……と、これが超基本です。あとは役の組み合わせや点数計算が入りますけど、それはやりながら覚えてください」
そう締めくくると、チナツはため息混じりに牌を並べ直した。
一方、カナは説明の半分も理解していない様子で、にこにこと頷いている。
「しかしですね、ここが麻雀の複雑な所なんですが……“役”がないとアガれません」
チナツが机の上に並べた牌を指で軽く揃えながら告げる。
「役?」
カナは小さく首をかしげる。さっきまでの説明を聞いていたのか怪しいほど、純粋な顔だ。
「はい。麻雀は“ただ完成させれば勝ち”ではなく、決められた役の条件を満たしていないとアガれません」
「なるほど……つまり料理で言うと、ただ食材を皿に盛っただけじゃ料理じゃないってことですね」
例えは悪くないが、言い方がやけにドヤ顔だ。
「……まあ、例えとしては間違ってません」
チナツは渋々認める。
「そして、役には“リーチ”や“タンヤオ”、“ピンフ”など色々あります。たとえば──」
「リーチはあれですよね?犬を散歩させる際に使う」
「それは“リード”です」
「あっ、よくソシャゲの運営が目玉キャラを漏らしたり」
「それは“リーク”です」
チナツは微動だにせず、淡々と間違いを切り捨てる。その隣でアコは額を押さえ、イオリは無言で天井を見上げていた。
このやり取りは、今日中に何度繰り返されるのだろう。
「役は覚えるほど勝ちやすくなります。逆に言えば、知らないと一生アガれません」
「……ふむ、なるほど。リーチ、タンヤオ……エクスプロージョン……」
「最後なんか爆発したぞ」
イオリのツッコミも虚しく、カナは満足げに頷いていた。
「お姉ちゃん、その調子でいくと一局目で死にますよ」
「まあ役についてはとりあえずリーチしとけばいいと覚えておいてください」
「「はーい」」
素直なのか分かってないのか、二人の声が重なった。
「そして、アガり方についてですが……自分で引いた牌でアガるのが“ツモ”、誰かが捨てた牌でアガるのが“ロン”です」
チナツは再び牌を並べながら、淡々と続ける。
「それは何が違うんです?」
カナが手を挙げるようにして質問する。
「ツモは全員から均等に点をもらいますが、ロンはその捨て牌を出した人だけが失点します。つまり、ロンされた人は一気にピンチになるわけです」
「じゃあ、私とお姉ちゃんのタッグであのタヌキと闘うためには、なるべくロンをした方がいいですよね」
アコが少し悪い笑みを浮かべながら言う。
「そうなりますね」
「じゃあお姉ちゃん、なるべく“ロン”でアガるようにしましょう」
「分かりました」
カナは胸を張って答えるが、その声の軽さに、誰も本当に理解しているとは思っていなかった。
「でも、あのタヌキがまともに勝負すると思う?」
イオリが半眼で問いかける。その声色には、すでに半分以上の警戒と、残り半分の呆れが混ざっていた。
「ありえないわね。そもそも場所が万魔殿の執務室……完全に私たちがアウェーな空間で、アイツらが用意した牌で闘う……絶対イカサマしてくるわよね」
ヒナが腕を組み、机をコツコツと指で叩く。その音がやけに場を締める。
「「じゃあこっちもイカサマすればいいですね」」
アコとカナのセリフが完全に一致する。
「……姉妹で息ぴったりなのは分かったけど、言ってることの質が同じなのはどうかと思うわよ」
「え、でも相手だけズルして勝つなんてズルいじゃないですか」
「そうですよ。こちらも正々堂々とズルをすべきです」
アコとカナは悪びれもせずに胸を張り堂々と断言した。
「その“正々堂々”って言葉の意味でも調べてきたら?」
「……まあ、あのタヌキ共のことだから、勝負が始まる前から変な細工をしてくるだろうな」
イオリが牌の山を眺めながらつぶやく。
「まあ任せてくださいよ。私とアコのコンビネーションでネチョネチョにしてあげますから」
「卑猥すぎるだろ」
カナはやけに自信満々に、しかも余計な擬音を添えて宣言した。
「深く考えることなんてありません。勝てばいいだけですから」
「どっからその自信生えてくんのまじで」
「まあ……私は明日実況席から見ることになると思うけど……くれぐれも恥だけは晒さないでね」
「ふふっ……言われてますよアコw」
「あんたですよ」
アコの即答に、カナはなぜか得意げに鼻を鳴らした。
もはや誰も本気で止める気はない──いや、止めても無駄だと悟っているのだろう。
こうして、ろくな準備もしないまま、そして不安と期待が入り混じった空気の中で、
翌日の“風紀委員会 vs 万魔殿”麻雀対決の幕が、静かに上がろうとしていた。
今後はどんな話がみたい?
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ブルアカ本編のストーリーに介入
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ギャグ路線で暴走
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アコとカナの百合展開
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カナの空白の10年間