──ゲヘナ学園、放課後。
制服姿の生徒たちが廊下を行き交い、今日もいつも通りのカオスが学園内を包み込んでいた。
……少なくとも、その“時報”が鳴り響くまでは。
「テレレレレレンッ♪──ピンポンパンポーン!」
突如として校内全域に鳴り響く謎の効果音。
その直後、あちこちの街、教室や廊下、食堂の壁に設置された大型モニターが、一斉に“ある映像”を映し出した。
>【緊急生中継!風紀委員会 vs 万魔殿、麻雀決戦】
\\ ドン! //
「えっ」
「……えっ?」
「また何か始まったなゲヘナ!!!!」
モニターには、白黒の背景に謎のゴシック文字ででかでかと書かれたタイトルが。
『さあさあ、キヴォトス三億人の麻雀ファンの皆さま! 本日、万魔殿本部にて、“風紀委員会 vs 万魔殿”の命を懸けた麻雀バトルが開催されます! 実況は私、川流シノンがお送りします!』
「なんか聞いてた規模と違うんですが!?」
「心なしか懸けるものも誤解してるようですね」
アコとカナのコメントがマイクを通してキヴォトス中に響き渡る。
『さあ、挑戦者の天雨アコさんと天雨カナさん。お二人は血の繋がった姉妹ということで、万魔殿のえっと、誰でしたっけ。まあ息のあったコンビプレーを期待したいところです!カナさん!今の心境はどうですか?』
「おrrrrrrrrrrrrrrr」
「どんだけ緊張してるんですか!!!」
カナは緊張のあまり生放送にも関わらず盛大に吐瀉物を撒き散らす。
『うわぁっ!??だ、大丈夫ですか!?』
「問題ありません……ノープログラム」
「やめろそれバカっぽいから」
『しかし!思いがけないことで、コメント欄も盛り上がっております!!』
「え、こんなニコ〇コ動画見たいなコメント流れるの!?」
「おのれ万魔殿……!さては私たちの負けっぷりを盛大に晒して笑う気ですね!」
「負けっぷりというかお姉ちゃんがゲロを晒した時点で笑いものですけどね」
「きゃっ!アコったら……いじわる♡」
「生放送だって言ってるでしょうが!!」
その叫びすらもキヴォトス全土に配信。
もはやアコの恥とツッコミは公共財産と化していた。
──そして二人は万魔殿本部・特設麻雀ステージへ。
「へぇ、ここが私たちの運命を決める麻雀ステージ……」
「たかが麻雀の勝負をするにしてはやけに気合入ってますね」
ステージは、まるで本物の麻雀卓のような高級感溢れるデザイン。
その周囲には、万魔殿の構成員たちがずらりと並んでいる。
「気まずくないですかこの部屋」
「それは私も思ってます」
『おおー!凄まじい装飾品の数々!まさに決戦の舞台といった──』
「あんたもくるんですか!?」
「ここって部外者がホイホイ入ってきていいんですかね」
『細かいことはお気になさらず!!』
「ま、もうツッコミませんよ。めんどうですし。それより……肝心なあのバカタヌキはどこに?」
「さあ?それにしても……」
中央に据えられた豪華な自動卓。
金の装飾に黒曜石をあしらったゴリゴリに重厚なデザイン。
天井からはシャンデリア、床は赤絨毯。なぜか壁には謎の武器コレクション。
「ここ……麻雀会場ですよね?」
「拷問部屋の間違いでは?」
その時だった。
「キキッ!来たか!風紀委員会!!」
「あ、アコ。この武器かっこよくないですか?」
「お姉ちゃんは貧弱なんですからそんなの必要ありませんよ」
「だから聞けよ!!」
マコトが登場したにも関わらず、アコとカナはそっちのけで壁に展示されている武器を観賞する。
コメント欄ではマコトの認知度が低すぎるあまり困惑の声が多く挙がっている。
「おい!?貴様ら……私の登場を完全にスルーして何見てるんだ!!」
「ふむ……この斧、刃渡りは短いけど柄の重心が絶妙ですね。バランス型、万能寄りの設計……」
「お姉ちゃん、武器に詳しすぎて怖いです。どこで学んだんですかそんなの」
「お姉ちゃん歴十八年の知識です」
「何の参考にもなりませんでした」
「こらぁぁぁあっ!!人の話を聞けぇえええ!!なんで貴様らは麻雀しに来て武器を見てるんだ!!」
「むしろこの部屋に入って武器を見ない理由があるなら教えて欲しいです」
「というか……全部ものすごい値段がしそうなんですけど、もしかして削った予算をこれに費やしている訳ではありませんよね?」
「ギクッ……!ふ、ふん!!そんなことはない……」
「返事はもう少し元気にしないとですね?」
『おおっと〜!?開始前から早くもバチバチの空気が漂い始めております!これは血で血を洗う熱戦の予感!いや、もはや麻雀の“マ”の字もないですねコレ!』
二人が言い争っていると、背後から声が聞こえてきた。
「アコー!カナー!頑張ってねー」
「あ、ヒナさん」
「委員長もそういえば呼ばれていたんでしたね」
「うへ〜、おじさんもいるよ〜」
そして、何故かアビドス対策委員会のホシノまで解説席に座っていた。
「アコ、知り合いですか?」
「いえ、直接話したことは……」
「ちょっと待って」
すると、ヒナが身を乗り出しながらホシノの方に顔を向ける。
「小鳥遊ホシノ……あなたが何故……?」
「そんな怖い顔しないでよ風紀委員長ちゃん。だっておじさんは雀̶魂̶にコラボで登場したことあるし、ここの誰よりも麻雀については詳しいよ〜」
「……まあ……それは確かに」
「イロハ!!収集がつかん!早く来てくれ!!」
「はいはいー」
『さあ!解説役のお二人と、本日の主要人物が揃いました!!』
──ゴゴゴゴ……
大画面の映像が切り替わり、いよいよ場面は牌が並ぶ勝負卓へ。
「え〜っと……まず席順はこちらですね〜」
イロハが無駄にハイテクなホログラムパネルを操作して表示する。
• 東家:マコト
• 南家:アコ
• 西家:カナ
• 北家:イロハ
「さて、ルールのおさらいだ。今回の対局は《タッグ戦仕様》だ。互いの持ち点は個別に管理されるが、勝敗はチームごとのトータルスコアで決まる。お互いパートナーの手牌が分からない中、危険牌を切り、上手く相手をロンをしなくてはならない」
「ま、私にとっては普通の麻雀ですね」
「ほう?天雨カナ、随分自信があるではないか。攻略法でも見つけてきたか?」
「私とアコのコンビネーションで勝てないものなど存在しません。それを証明してあげますよ」
「お姉ちゃん……!」
コメント欄は案の定、だが場の空気は一変した。
「ふっ……楽しみにしているぞ、天雨カナ」
『さあ!いよいよお互い席に座り……東一局!!スタートです!!』
自動卓が低く唸り、金属のような音とともに牌が積まれていく。
それぞれに手牌が配置され、一巡目が始まる瞬間、早速アコとカナの目が怪しげに光る。
そう、イカサマである。
(アコ!欲しい牌があります!)
(了解……!何が欲しいですか?)
二人はアイコンタクトを瞬時に取ると、まるでお互いの言葉が分かるかのような連携をみせる。
「なんかあの二人やってない?」
「明らかにアイコンタクトとってたね〜」
ヒナとホシノは二人の動きを注意しながら観察する。
({白}ですか?)
(それですアコ!!)
アコは自信満々に白を捨てると、瞬時にカナが叫ぶ。
「チーーーーーッ!!!!」
{白發中}
「「「………」」」
見事なまでのチョンボに、マコトやイロハですら口を開け呆然とする。
「あんたは昨日何を学んだんですか!?」
「ぐはぁっ!!?」
アコはカナの後頭部をぶん殴り、カナの頭が麻雀卓にめり込む。
『おおっと!!カナさん迫真のチョンボ!!麻雀のルールすら分かっていなかったようです!!』
コメント欄はまさかの事態に大盛り上がりに。
「では……チョンボということで親のマコト先輩に4000点、私とアコさんに2000点ずつの支払いですね」
「くっ……私としたことが……!」
「もはやわざとでしょこれ」
「最初の持ち点は全員25000点からでしたので、現時点ではこうなりますね」
イロハが冷静にホログラム画面を操作し、最新のスコアを表示する。
• 東家:マコト 29000点
• 南家:アコ 27000点
• 西家:カナ 17000点
• 北家:イロハ 27000点
「くっ……私の打点が……!」
顔を伏せ、悔しげに震えるカナ。だが卓にめり込んだままなのであまり様にならない。
「お姉ちゃん。頭、ちゃんと抜いてから反省してください」
完全に風紀委員会が不利な状況。だが……マコトだけは何故か怒りをあらわにしていた。
「ぐうぅっ……!!!!私の国士無双十三面待ちが……!!」
※国士無双十三面待ちとは、点数96000点の一撃で終わらせるバカみたいな二倍役満のことです。
「なんか物騒なこと言ってるんですけどこの人!!?」
麻雀卓を握りつぶさんばかりの形相で呻くマコト。まるで“ロン”という一言が世界を破滅させる核ボタンか何かのように見えてくる。
その異様な気迫に、解説席のヒナとホシノも思わずモニターを二度見した。
「……開始一巡目で12種……妙ね」
「うへ……お互い様だね〜。イカサマが蔓延してるよこの卓……」
「カナ……!お前がチョンボなんてしなければ……!この世の麻雀の歴史に、マコト=ダブル役満伝説が刻まれていたというのに……!」
「いやー……惜しかったですねぇ、マコトさん。あと一巡で“あなたの勝ち”だったのに」
「ふざけるなぁあああああああっっ!!!!」
──怒号が万魔殿の天井を突き破らんばかりに響く。
「でも……お姉ちゃんがチョンボしてなかったら今頃ロンされてたかもしれないですね……」
「ふふん、命拾いしましたねアコ」
「ぐっ……絶対たまたまの癖に……!」
カナは卓にめり込んでいた頭をようやく引き抜き、顔にへばりついた牌をペリペリと剥がしながら笑う。
「まぁまぁアコ。人は失敗から学ぶのです。そう、失敗は未来への伏線──つまり私の成長は確定されている……!」
「いや、まず失敗の前に基本ルール覚えましょうよ!?」
そんなやり取りをよそに、自動卓が低く唸り再び牌を積み始める。
「改めて東一局、親は変わらずにマコト先輩ですね」
「ああ……しかし……」
マコトは冷や汗を流しながら手牌を整える。
(先程のカナのチョンボでかなり計画が狂った……!東一局の手牌は予め我々が用意した“完璧な型”だった。あの国士無双十三面待ちで早々に戦いを終わらせるつもりだった……!!)
目線を僅かに横にずらすと、イロハがさりげなく卓下の端末に指を走らせているのが見える。
(とはいえ、まだ終わっていない。我々万魔殿の最大の武器は──“情報”だ。このイカサマで自分のツモる牌を操作できる……!)
マコトはニヤリと笑って手牌から{六万}を切る。
「ふん!」
「なんか急に元気になりましたねあのタヌキ」
「よほど手牌がいいんでしょうか」
スッ…スッ…
特に何事もなく、手牌を捨てていくアコとカナ。
「お姉ちゃん、なんで牌を捨てる時にいちいち撫でるんですか」
「こうして触ることで牌と仲良くなれるんですよ。少しでも良い牌をツモれるように……ってお祈りするのが大事なんですよ」
「へぇーキモイですね」
「それほどでも」
「褒めてないです」
カナは全く気にしていない様子で一筒を愛おしそうに撫でて捨てる。
「キキッ!意味不明な事を……!それで私に勝とうなんて甘い!!ロンだ!!」
「ありゃ」
「そんな!?」
{一万二万三万一筒一筒一筒二筒三筒四筒東東東白白}
「自風牌【東】場風牌【東】で4800点だ」
カナ 17000→12200
マコト29000→33800
「点数が安くて助かりました……」
「もっと堂々と高得点を狙ってくると思ってましたが……以外にちまちまと削るタイプなんですね……」
手牌を卓の中心に戻しながらカナは興味深そうにマコトを観察していた。どこか底知れない笑みを浮かべつつ──その眼差しは鋭く、まるで対面の相手をデータとして解剖しているかのよう。
「キキッ!塵も積もれば山となる……我々のイカサ──プランは変わったが、お前たちに勝ち目は無い」
「今イカサマって言おうとしてませんでした?」
「言ってない!!!!」
マコトの声が裏返り、逆に怪しさを際立たせる。
『さあ!爆速で試合は進んでいきます!!東二局!!親はアコさんになります!!』
実況アナウンスが響く中、麻雀卓は再び静かに回転し、新たな局面が始まる。アコは勢いよく牌を取り、そしてすぐに顔を曇らせた。
{一万四万五万八万三筒七筒八筒三索四索東南西北 白}
(……うわ、配牌がかなり良くないですね……)
「キキッ!どうしたアコ行政官。お前からだぞ」
「わ、分かってますよ……」
(これじゃまともに闘えないですね……)
スッ…
アコは自分がロンされないように立ち回ることを選び、安全な牌を捨てる。
────4巡目
(キキッ!!いいぞ……アコ行政官の手牌はイロハの遠隔操作で使い物にならない牌ばかりがあつまる……!イロハ!あとどのくらいだ?)
マコトは心の中で品のない笑い声をあげながら、イロハに小声で確認を取る。
「六巡目で四暗刻がテンパイします。そこからはお好きに」
「キキッ!勝ったな……!」
すると、アコとカナのバカ姉妹の方にも動きがあった。
(アコ!欲しい牌があります!)
(なんの牌ですか?)
{(五索です!)}
(くっ……!私もまだ持ってませんね……!でも私なら……ここできっとツモれるはず!!)
──{五索}
(引きましたよお姉ちゃん!!)
(ナイスですアコ!!)
(受け取って下さいお姉ちゃん!!これが私からお姉ちゃんへの……最高のパスです!!)
スッ…{五索}
「ロン」
「「「は???」」」
全員の目線が集中する中、カナがゆるりと手牌を倒す。
{一索二索三索四索六索七索八索九索東東東白白 五索}
「三元牌【白】、混一色、一気通貫、ドラ。12000点、跳満」
「よっしゃあ」
「何してくれてんだお前ぇぇぇぇ!!!」
「ぐはぁっ!?だから
「味方にロンする奴がありますか!?この裏切り者!!」
『いまのは見事な跳満炸裂!!風紀委員会、いや“アコ姉妹”にまさかの連携崩壊!?カナ選手、容赦ありません!!』
カナ 12200→24200
アコ 27000→15000
今後はどんな話がみたい?
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ブルアカ本編のストーリーに介入
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ギャグ路線で暴走
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アコとカナの百合展開
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カナの空白の10年間