──騒然とする卓上。
まさかの展開に、一瞬、場の空気が凍りついた。
「こんのド畜生がああっ!!!」
アコの絶叫が、実況マイクを通してキヴォトス全域に響き渡る。
ガンッ!!という乾いた音とともに、卓が揺れ、アコの点棒が無惨に吹き飛んだ。
「ぐぇぇ……っ! アコ!なぜェ……首を絞めるんですか!?」
カナは目を白黒させながら、首元を押さえてジタバタと暴れる。
「あなたが裏切ったからですよ!! どうしてこのタイミングで私をロンするんですか!? しかも跳満!!」
「いや、その……なんか……あそこは決める流れかなって……」
カナは申し訳なさそうに笑いながら、頭をぽりぽりとかいた。
「何が“流れ”ですか! ギャグの流れで人の点棒を吹っ飛ばさないでくださいよ!!」
叫びながら怒鳴るアコの背後では、解説のヒナとホシノが苦笑しながらも肩をすくめていた。
ざわめきと失笑が交錯する卓の周囲。しかし──。
「……おのれ……!!」
低く唸るような声が場の空気を再び凍らせる。
それはマコト。奥の瞳が怒気を孕み、机をドンと叩いた。
「私の……私の四暗刻単騎があっ!! 天雨カナ、貴様が味方にロンなどしなければ……っ!!」
「えっ、四暗刻単騎!? アコ、今の、命拾いだったんじゃ……?」
「だから!! たまたま上手くいっただけですってば!!」
アコが絶叫しながら反論し、隣のバカも立ち上がってわーわーと口を挟む。
その一方でマコトはなおも険しい表情で牌譜を睨みつけ、怒りを飲み込んでいた。
──本来であれば、六巡目には四暗刻単騎でのテンパイが成立していた。
それを、カナがアコの捨て牌をロンして潰した形となったのだ。
怒気に包まれる卓。だが、ホシノが静かに目を細める。
「……ちょっと待って……」
「どうかしたの? 小鳥遊ホシノ」
ヒナの問いにホシノは応じず、リプレイ映像をスロー再生する。
──そこには奇妙な光景が映っていた。
カナはアコの捨て牌を“見る前に”すでに視線を別の方向へと向けていた。
万魔殿チームの河を一瞥。
その直後に、捨てられた牌に反応するように「ロン」と宣言していたのだ。
まるで──“相手の待ち”を先に読んで、誘導していたかのように。
「まさか……カナが……?」
「実力を隠して──」
一瞬、ヒナが息を飲む。
ホシノもその目を鋭くし、カナの方へと視線を送った。
──だが。
「こんの下手くそ!! いくら私がお姉ちゃんを嫌いでも、予算がかかった試合でお姉ちゃんをロンなんてしませんよ!!」
「普通、心配するのは予算じゃなくて、お姉ちゃんの立場とか、進路とかそういうところでしょう!!??」
目の前で繰り広げられる、あまりにもくだらない大喧嘩。
机をバンバン叩きながら泣きわめくアコと、口を尖らせて足をじたばたさせるカナ。
その姿を見て、ホシノとヒナは静かに目を伏せた。
「……たまたま、かもね」
「……うん。たまたま、かも」
ホシノとヒナは、カナの“実力”について考えるのをやめた。
そんな空気の中──
「ええい黙れ!!お前達は追い詰められているという自覚はないのか!!」
マコトがついに堪忍袋の緒を切ったように、机を思い切り叩く。
普段の冷静な仮面は剥がれ落ち、今や怒鳴り散らす姿はまさに激情そのもの。
「私の四暗刻単騎を潰し、試合の流れを台無しにした張本人が……まだ能天気に騒いでいられるとは!! 天雨カナ!! この局で私が叩き潰してくれるわ!!」
その声に、イロハが目を細めて返す。
「マコト先輩、うるさいです。しかもセリフが完全にかませ犬のそれじゃないですか」
「ちがう!! もういい!! 次の親は天雨カナ!! お前からだろ!!」
「まあ確かに私ですね」
すっとカナが首をすくめて答えたその瞬間、隣から刺すような視線が突き刺さる。
「お姉ちゃん、次足引っ張ったらぶち殺しますから」
「Oh…ちょっと言葉が強くない……?」
あまりのストレートな殺害予告に、カナもさすがに顔を引きつらせる。
しかしそれも束の間、すぐに飄々とした態度に戻り、何事もなかったように手牌を整理し始めた。
──東三局
静まり返る卓上で、アコが真剣な声で問いかける。
「お姉ちゃん、もう普通にやっていては勝てませんよ。どうするんです?」
「心配いりません。私にはとっておきの秘策があります」
カナが自信満々に答えると、場に一瞬ざわめきが走る。
「秘策……?」
「マコトさん。スペシャルルールの──『テレフォン』を使わせてもらいますよ」
「なにっ!? ここでテレフォンだと!?」
マコトが立ち上がり、驚愕の声を上げた。
「え、なになになになに。テレフォンってなに? 初耳なんだけど」
困惑するアコに対し、カナはどや顔で横のモニターを指差した。
そこには本大会限定の“ローカル特別ルール”が、堂々と表示されていた。
⸻
【ローカル特別ルール】
・バカは参加不可
・万魔殿特権:バレないイカサマはイカサマではない。
・スペシャルルール:『テレフォン』
《風紀委員会は一度だけ、指定した人物に電話でアドバイスを求められる》
⸻
「ってことです」
カナが胸を張ると、アコが思わず絶叫した。
「なんでそんなバラエティ番組みたいなルールがあるんです!? ってかサラッとイカサマを正当化してますね!?」
「ん? アコ行政官にルールブックを昨日渡しただろ?」
「そんなゴミ、その日のうちに捨ててしまいましたよ!」
「なんてことを……!!」
マコトが怒りのままに机を再び殴りつける。
そして荒々しく立ち上がり、顔を真っ赤にして吠えた。
「貴様らの風紀委員会は、規律も読解力も破綻しているのか!? そんなだから予算が削減されるんだ!!」
「おおっと、これ以上喋るとルール違反で減点されますよ?」
「は!?」
カナがにっこりと笑いながら、手元の紙をひらりとめくってみせる。
⸻
【隠しルール】
・マコトが怒鳴ったらマイナス5000点
※(カナによる手書き)
「誰がそんなもん認めるかぁぁぁぁあああああ!!!!」
執務室に響き渡る怒声。
だがそれすらも、どこか滑稽に聞こえるのは、カナという存在がもたらす混沌ゆえか。
「さて──お遊びはここまでです」
カナはスッと姿勢を正し、手牌を整えると、静かに宣言した。
「そろそろ“テレフォン”を使わせてもらいます」
その言葉に、マコトのこめかみがピクリと跳ねる。
「おのれ……! 許さんぞ、天雨カナ!!」
「ふふ……文句はせいぜい、あの世とやらでほざくがいいです」
ピポパ♪
プルルル……プルルル……
ブツッ。
《ツーツーツー……》
「…………え?」
ピロン♪
通話できません:この番号は着信拒否設定されています
「「「「…………」」」」
「お前どんな人間関係送ってきたの?」
「お姉ちゃん……友達が……」
「テレフォンをする権利すらない人とか初めて見ました」
「……あ、あはははははは!!!」
突如としてカナが崩れ落ち、机に突っ伏したまま笑い始めた。
その笑いには明るさも余裕もなく、ただただ空虚で壊れたような響きがあった。
「ヤバいこの人ショックで精神壊れてる!??」
空気は完全に“放送事故”のそれだった。
一瞬、全員がツッコミを躊躇したほどの、あまりにもリアルなメンタル崩壊の兆し。
「一体誰に電話を──」
恐る恐る画面を覗き込んだアコが、表示された名前を読み上げる。
《銀鏡イオリ》
「委員会内でギスギスするのやめましょうよ!!!何したらブロックされるんですか!!!」
「ま……まだ……私には最後の手段が残っています……」
「なに!?」
カナはそう言うと、自分のスマホのマイク機能をONにする。
「Hey S〇ri!!」
『はい。ご用件は何でしょうか』
「…… 私の手牌を見てください。どう思います?」
『……あなたのようなバカに助言しても無駄です』
「ふあぁああああっ!?!?!?」
カナの断末魔が、万魔殿の天井を突き抜けた。
──そして。
地獄と化したこの麻雀勝負の場において、騒乱の中心に立つのはただひとり。
テレフォンに失敗し、Siriに拒否られた唯一の女──天雨カナ
「シテ…コロシテ…」ビクンビクン
机に突っ伏し、震える声でカナが呻いた。目は完全にイッている。
「いいからさっさと牌捨てろ!!」
マコトが叫び、ヒナも頭を抱えた。
カナはビクンと痙攣しながら顔を上げ、口元を引きつらせて呟く。
「はーい☆ なんちゃって〜」
「氏ね」
実況や生配信コメはうっとおしいので消しました☆
今後はどんな話がみたい?
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ブルアカ本編のストーリーに介入
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ギャグ路線で暴走
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アコとカナの百合展開
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カナの空白の10年間