天雨カナという存在について   作:BRだんちょ 

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先生VSバカ

風紀委員の活動がひと段落し、麻雀勝負という一大イベントも無事(?)に終えた今日この頃。

制服姿のまま、カナは気の抜けた顔でゲヘナの街道をとぼとぼと歩いていた。

 

「あぁ……今日は何も破壊されずに終われそうですね……」

 

そんな独り言を漏らしつつ、ふと視線を上げると、周囲に点在するお洒落なカフェが目に入る。

 

「……この辺りはゲヘナにしては治安がいいですね。それに……カフェが多いですし」

 

カナは誰に言うでもなく呟いた。ふわりと香る甘い匂いに釣られるように、視線は自然と一軒のカフェの看板へと向かう。

 

 

◆◇◆ カップル限定! ◆◇◆

『イチゴメロンマンゴーバナナチョコサーモン納豆〆さばパフェ』

ご注文は「おふたり同時」でお願いします!

 

 

「……カップル限定……ふたり同時……」

 

看板の文言を口の中で繰り返す。

甘いのかしょっぱいのか、そもそも食べ物なのかも怪しい謎メニュー。しかし今のカナにとっては、そんなことより「ふたり同時」という文言が、妙に胸に引っかかった。

 

「……アコは今日は忙しいですし……チナツさんはお休み……ヒナさんは会議……イオリさんには……なぜかブロックされてましたし……」

 

人差し指で人数を数えるたびに、何かを思い出しては肩を落とす。

そんな中、カナはカフェの前でぴたりと足を止め、しばらく看板とにらめっこを続けた。

 

「……次にここを通りかかった人を捕まえることにしましょう」

 

カナは両手を腰に当て、まるでハンターのような目つきで通りの先を睨む。

と、その瞬間──

 

一人の男性が、特に警戒もなく、カナの前を通り過ぎようとした。

 

「捕まえました」

 

「えっ!? なに!?」

 

突然の宣言とともに手首を掴まれた男性は、目を白黒させた。

この時点でカナはまだ知らない。彼が“先生”であることを──

 

「すみません、お時間を取らせますが、今から私と付き合ってください」

 

「え!? つ、付き合う!? 私が!?!?」

 

突拍子もない言葉に、先生は頭を抱えそうになる。

だが、カナは真剣な眼差しで、例のパフェメニューを指差した。

 

「ああ、なるほど……そういうことか。実は私もあのパフェ、ちょっと気になってたんだよね」

 

ニコニコと笑う先生に、カナはほっと息を吐いた。

 

「理解が早くて助かります。では……カップルに見えるように、手を繋ぎながらお店に入りましょうか」

 

「えっ!? そこまでするの!?」

 

「不服ですか?」

 

「いや……まぁ、別にいいけど……」

 

先生が戸惑っている隙に、カナは手をがっしりと握った。

 

「では、行きましょう」

 

 

カフェの扉をくぐった瞬間、店員が満面の笑みで迎えた。

 

「いらっしゃいませ〜♡ おふたりはカップルさんですか〜?」

 

「はい、恋仲です」

 

「即答!?!?」

 

先生は思わず叫びそうになるが、カナの睨みが飛んできた。

 

「カップルらしい反応をしてくださいね? さぁ……そのまま抵抗せずに中に入ってください」

 

「これもう脅迫だよね!??」

 

店内は──見渡す限り、リア充たちの楽園だった。

 

イチャイチャと手を繋ぐペア、顔を近づけて写真を撮るペア、肩を寄せ合いながらメニューを見つめるペア……そしてその一角に、無言でぴったり寄り添うカナと、挙動不審な先生の姿が加わる。

 

「はい、ラブチェア席へどうぞ〜♡」

 

案内された席には、椅子が──一脚しかなかった。

 

「……椅子、一つしかなくない……?」

 

「当然です。“物理的に近づかなければ食事できないカップル”がコンセプトの店なんですから」

 

「なにその設計思想!?!?」

 

「……あまり動かないでください。今、重心がズレると私たち両方が転落します」

 

「そもそも座る椅子が一脚っておかしくない!?!?」

 

「黙ってください。ほら、手をこの位置に。腰に……」

 

「わざと密着させてるよね!?!?」

 

すると店員がにっこりと笑いながら告げた。

 

「では、“イチゴメロンマンゴーバナナチョコサーモン納豆〆さばパフェ”をお持ちしますね〜♡ おふたりで同時にスプーンを入れてくださいね!」

 

──数分後

 

テーブルに運ばれたのは、常軌を逸した──否、“食の倫理”そのものに喧嘩を売るような破滅的なビジュアルの一品だった。

 

その名も、《イチゴメロンマンゴーバナナチョコサーモン納豆〆さばパフェ》。

 

見る者を沈黙させる色と臭気。トロリとしたマンゴー果肉の上からチョコソースが粘度高く垂れ、納豆が発酵による意思を主張しながら糸を引く。その隙間にサーモンが横たわり、さらに底にはまるでとどめとばかりに〆さばが沈んでいた。最上段にはイチゴが鎮座し、甘さの皮を被ってこの狂気を“パフェ”と名乗る。

 

「美味しそう……!」

 

うっとりしたカナの声に、思わず先生は二度見した。

 

「ほんとに!?」

 

パフェから立ち昇る“納豆×チョコ×〆さば”の悪魔合体臭に顔をしかめつつ、カナは心底嬉しそうにそのカオスを見つめている。

 

その瞬間、カナがスマホを構え、シャッター音が鳴った。

 

パシャッ。

 

「ふふ……これを投稿したら……バズりそうですね」

 

「ははっ、女の子はこういうの、好きだもんね」

 

カナは満足げにスマホを構え、斜め上から“映え”を意識した完璧な角度で撮影を済ませた。

 

『#カップル限定メニュー』

 

画面に映し出されたタグに、先生は肩を震わせる。

 

「あと、“#彼氏の胆力が試される”と“#これ完食したらプロポーズしていいと思う”も追加ですね」

 

「なにそのタグ!?責任重大すぎない!?」

 

内心ヒヤヒヤしながらも、先生もまんざらではなかった。どこか照れたように咳払いをして、ポケットからスマホを取り出す。

 

「えっと……“#生徒と巨大パフェなう”とか……」

 

「“なう”がもうオジサンっぽいですね」

 

「うるさいなぁ!!ノリで乗っかってみただけだよ!」

 

そんな軽口を交わしながら、カナは早速スプーンを手に取り、パフェに突撃する。

 

「はむっ……うん、味は想像通りですね」

 

「想像できるの逆にすごい気が……」

 

先生が呆れたように眉をしかめる中、カナは意に介さず二口目へと進む。

 

「……はむ。うん。サーモンの脂と納豆の粘りが、チョコと融合して新たな乳化を──」

 

「食レポがまずそう!!」

 

「そんなに嫌そうな顔しないでください……はい、あーん」

 

「え、いやでも……」

 

「どうしたんですか。恋人らしいことと言えば定番のシチュエーションでは?」

 

「でも……その……間接キスに……!」

 

「なんですかそれ。よく分からないので早く食べてください」

 

「むぐっ!?」

 

スプーンを押し込まれた瞬間、先生の脳裏に警報が鳴り響いた。

 

(な、なにこれ……!?甘い……しょっぱい……ぬるい……冷たい……)

 

口内で繰り広げられる異常事態。チョコと納豆と〆さばが化学反応を起こし、サーモンの脂がメロン果汁と混ざり合い、乳化し始める。仕上げにイチゴの酸味が爽やかに──いや、追い打ちの如く襲いかかってきた。

 

「ぐ……ごほっ……ッッッ!!」

 

先生が涙目でむせ返る。

 

「どうですか? 愛の味、しました?」

 

「しないよ!!口の中で全ての食材が大喧嘩してる!!」

 

一方で、カナは涼しい顔のまま次の一口をすくっていた。

 

「……ふふ、サーモンとチョコが出会って、納豆が司会を務めるこの感じ、私は好きですけどね」

 

その言葉に、先生はハッとする。

 

(この強引さ……誰かに似てる気が……)

 

脳裏にふとよぎったのは、ゲヘナの風紀委員会のとある生徒。

 

(……アコだ……!)

 

「さて、次はこの層いきましょう。“バナナと納豆とチョコ”の三重奏です。今度は口を開けなくても、私が押し込むので」

 

「ちょっと待って!?もしかして君は──んぐっ!?」

 

再びスプーンが突入し、先生の理性は彼方へと吹き飛ばされた。

 

(ああ……口内で、食材たちが互いに拒絶してる……でもその中で一体感が生まれつつある……否!!気のせいだ!!)

 

口腔内のカオスに打ちひしがれながら、先生はごくりと飲み下す。

 

「……ふふ、完食ですね。これで晴れて“カップル認定”です」

 

「ぅう……君は……もしかして、アコと知り合い……?」

 

「ん? アコのことを知ってるんですか。流石は私の自慢の妹ですね。キヴォトス中にアコの可愛さが知れ渡っていたとは」

 

「やっぱり!!アコのお姉さんだったんだ!!私は“先生”で──」

 

ドゴォッ!!!

 

「……へ?」

 

爆音とともに、銀のスプーンが先生の顔の横をかすめ、後方の壁に鋭く突き刺さっていた。店内が一瞬、静寂に包まれる。

 

「……遺言を聞こうか」

 

「なんで!???」

 

 先生の悲鳴にも似た声が、店内に響いた。先ほどまでの穏やかな雰囲気が一変し、カナの表情は信じられないほど冷たく険しい。

 

「えっ……今、私の横をスプーンが……いやいやいや、待って、なに?なにか怒らせた!?!?」

 

「あなたが先生でしたか。アコを誑かそうとしてる愚か者……」

 

 その目は、今までのふざけた態度が嘘だったかのように、研ぎ澄まされた冷気を帯びていた。

 

「誑かしてない誑かしてない誑かしてない!!むしろこっちがいつも怒られてる側!!完全なる被害者側です!!!」

 

 先生は椅子から転げ落ちそうになりながらも、全力で否定しにかかる。手をばたばたと振り回し、もはや命乞いに近い勢いだ。

 

「ほう……?つまり、無実だと……?」

 

「そうだよ!私は先生だし、生徒に手を出すような真似はしないよ!」

 

 精一杯の正論をぶつけたつもりだったが──

 

「つまりアコに魅力がないと言いたいのですか???」

 

「どう弁明しても詰みじゃんこんなの!!!」

 

 まさに絶望のどん詰まり。

 

「なら……アコが首輪を持って先生の所に行ったのはどういう事なんですかね……???」

 

「部分的に合ってるだけに否定しづらい!!あれは……アコが賭け事を……!」

 

 先生は苦し紛れに口を開くが、言えば言うほど自分の首を絞めていく。

 

 カナは眉ひとつ動かさず、冷ややかに問いただす。

 

「……ふむ。つまり、アコがあなたに会いに“首輪”を持っていったのは、純粋な賭けの一環だったと」

 

「ち、違う!いや、合ってるけど違う!そもそもあの時も私は全力で止め──」

 

「アコがそんなことするわけないじゃないですか」

 

「してたの!してたんだよ!!あの子、可愛い顔して時々めちゃくちゃなの!!」

 

「証拠は?」

 

「え、えーと……メモリアルロビーを見れば……」

 

「自慢か????」←未所持

 

「滅相もございません!!!!」

 

 先生は勢いよく頭を下げ、床に額がつきそうな勢いで土下座する。

 

 その姿を数秒見下ろしてから、カナはゆっくりと立ち上がる。

 

「はぁ……今回ばかりは大目に見て──」

 

(……助かった……!)

 

 先生が胸を撫で下ろしかけた瞬間、

 

「苦しまずに殺してあげますので表に出てください」

 

「助かってなかったぁぁああああああ!!!!」

 

 絶望が喫茶店の天井を揺らした。

 

 カナは無言で椅子を引き、静かに立ち上がる。その手はポケットの奥に忍ばせた“何か”に触れているようにも見えた。

 

 そして──

 

「お姉ちゃん!!!」

 

 店の入口から声が飛び込んだ。

 

「「!?」」

 

 二人が同時に振り返ると、制服姿のアコが息を切らして立っていた。乱れた前髪と軽く汗ばんだ額が、全速力でここまで走ってきたことを物語っている。

 

「やっと見つけた……!」

 

「アコ?」

 

 カナが一歩踏み出すが、アコの表情はどこか不満げだった。

 

「アコぉぉぉぉぉぉぉぉ助けてぇぇぇぇぇぇ!!あの人が私の命を──」

 

 先生が泣きそうな声で叫ぶ。しかし、アコの口から出たのは予想外の言葉だった。

 

「二人が付き合ってるってどういうことですか!????」

 

「「は??」」

 

 まるで世界が一瞬停止したかのようだった。

 

 先生は床に正座したままゆっくりとアコの方を向き、カナも目を瞬かせる。

 

「……え、誰と誰が?」

 

「お姉ちゃんと先生です!!」

 

「「はああああっ!????」」

今後はどんな話がみたい?

  • ブルアカ本編のストーリーに介入
  • ギャグ路線で暴走
  • アコとカナの百合展開
  • カナの空白の10年間
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