──昼休み後。
「……というわけで、生徒同士の口論は、私の一声で一応収まりました」
風紀委員室の真ん中で、なぜか正座して淡々と報告するお姉ちゃん。その顔には反省の色なんてこれっぽっちもない。
さっきまで銃声と爆発音すら響いてた現場から戻ってきた人の態度じゃないんですけど!?
「“警察呼んでもらっていいですか?”って言ったの、どこのどいつでしたっけ……?」
思わず低い声で問い詰めると、ヒナ委員長も呆れ顔で口を挟んだ。
「一瞬、責任押し付けて逃げようとしてたようにしか見えなかったけど」
「違います。まさか銃を所持してるとは……想定外でした」
真顔で答えるお姉ちゃん。いやいやいや、ゲヘナ舐めてますよね!?
「ゲヘナ舐めてるんですか!??」
私の怒声が響いたけど、お姉ちゃんはケロッとしたまま。はぁ……もう慣れてきたのが悔しい。
⸻
ようやく平穏が戻った──と思ったのも束の間。
「ヒナ委員長、ちょっといいですかー!」
慌てた様子の後輩が駆け込んできて、手にした書類をぶんぶん振っていた。
「またカフェテリアの注文書で変な数字が……。『焼きそばパン10万個』って……」
「……誰ですか、こんなの書いたの!?」
私が声を上げる横で、ヒナ委員長は額に手を当ててため息。
「はぁ……また誰かのイタズラか、バグか。書類、持ってきて」
「よし、私が確認──」と立ち上がりかけたその瞬間。
「……見せてください」
横から、いつの間にか立ち上がっていたお姉ちゃんがスッと書類を受け取った。
数秒じっと眺めたかと思うと、急に饒舌になって理路整然と語り始める。
「これはですね、4桁までの発注単位しか受け付けないはずの欄が、システムバグで0埋めされてる可能性が高いです。たぶん注文フォームに“や”って入れた瞬間に、焼きそばパンがオートコンプリートされたんでしょうね。しかもIMEがクソなので直前の変換履歴が──」
「え、ちょ、ちょっと待って!?なんでそんなことわかるんですか!?いつものポンコツはどこに……?」
目の前にいるのは、さっきまで「狩り」とか言ってたお姉ちゃんと同一人物ですか!?
「要するに、これはバグと人的ミスの合わせ技です。今後は注文フォームにフィールド制限をつけてください」
……完璧な説明。しかも無駄にカッコいい。
ヒナ委員長が感心したように口を開いた。
「……カナ、思ったよりやるわね」
「よく言われます」
お姉ちゃんは当然のように微笑む。
「いやいやいやいや、聞いたことないですよ!?誰が言ってたんですかそれ!?妄想で過去捏造しないでください!!」
即座にツッコむ私をよそに、お姉ちゃんはさらにのたまう。
「アコ、私のことは“完璧天才お姉ちゃん”と呼んでください」
「そうですね、“絶壁天災お姉ちゃん”」
「え?“超絶美人お姉ちゃん”?」
「残念です……姉妹という括りさえなければぶっ飛ばしてたんですが」
横でヒナ委員長が咳払いして笑いをこらえてるのが見えた。
「とにかく、書類の件は助かったわ。……今だけは、感謝しておくわよ」
「一時的な評価でも、十分嬉しいです。アコの尊敬の眼差しも感じましたし」
「はい?どこの平行世界ですか?」
お姉ちゃんはそんな私のツッコミすら満足げに受け流し、制服の裾を整えながら立ち上がった。
「本日は十分に満足しましたので、これにて帰宅します」
「えっ、もう帰るんですか!?」
「何かありましたら、モモトークにご連絡ください。即時対応します。多分」
「“多分”て何ですか!?ちゃんと帰れるんでしょうね!?」
「当然です。私は記憶力に定評のある“完璧天才お姉ちゃん”ですから」
……胸を張って颯爽と帰っていく背中を見送りながら、私は深いため息をついた。
(ほんと、この人……心臓に悪い……)
──そして数分後。
私はモモトークの通知を見て、嫌な予感がした。
どうやら地図アプリを片手に、その場でぐるぐる回ってたらしい。……いや、三半規管にエラーって何? 医者行ってくださいよ。
そして、次に届いたのは──
「アコ、偶然、銀行でショーをしている覆面レスラーの方を見かけました。面白い街ですね」
……と、例の淡々とした文章と画像。
(……銀行……ショー……覆面レスラー……?)
添付された写真を開いた瞬間、私は全身が総毛立った。
「Damn it!!!」
指が勝手に動いて英語で打ってた。いやもう反射。
すぐに続けて送る。
『そこから動かないで!!絶対に関わらないで!!!それ覆面レスラーじゃなくてガチの銀行強盗!!!』
スマホを持つ手に力が入る。
なんで……なんでこうなるんですかお姉ちゃん!?!?
⸻
数秒後。電話。もちろん私から。
「もしもし、私です」
落ち着いた声で出るな! こっちは心臓バックバクなんですけど!?
『お姉ちゃん!?今どこに……ってか、絶対余計なことしないでくださいよ!!』
「いえしかし……仮の風紀委員として、この騒動を見過ごすのは──」
(やめろおおおおお!!!!)
『お姉ちゃん、ちょっと待ってください。今の写真……よく見たら便利屋68が写ってます!』
「便利屋68……それは、どういった存在なのでしょう?」
はぁ……ほんとに知らないんですか……。
『ゲヘナ屈指の不良グループです。町のあちこちで騒ぎを起こしてて、被害が絶えません!』
「なるほど……つまりアコにとっては敵、という認識ですね」
『そうです!!お姉ちゃん……は、心配ですけど、これは捕まえる絶好のチャンスです。お姉ちゃんは今や、風紀委員の仮メンバーでもあるんですから』
……声が震える。
自分でも驚くくらいに、必死だった。
「……つまり、アコはこう言いたいんですね。“風紀委員会として、相手を見定めろ”と」
『はい。敵と判断したら即・拘束です!』
「そして、便利屋68が大人しく投降するようなら──」
『その時は、風紀委員らしく始末してください』
……口走ってから、自分でもハッとした。なんでそんな過激なこと言ってるの私!?
けど……抑えられなかった。
⸻
お姉ちゃんは冷静に周囲を見ているらしかった。
電話越しに伝わってくる落ち着きが、逆に怖い。
「アコ。これは“ショー”です」
『何故!?!?』
「……いえ、普通の銀行強盗にしてはやり口が単純すぎますし、何より怪我人が誰ひとりとして出ていないのは不自然です」
『そ、そう……ですか……?』
言われてみれば──いやでも、でも……!
「便利屋68については詳しくありませんが、首謀者である覆面の5人組も……明らかに演出過多です。何が起こるのかまだ分かりませんが、もう少し様子を見ましょう」
……冷静なお姉ちゃんの声。
私はスマホを握りしめたまま、どうしようもない不安で胃が痛くなっていった。
今後はどんな話がみたい?
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ブルアカ本編のストーリーに介入
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ギャグ路線で暴走
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アコとカナの百合展開
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カナの空白の10年間