仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ   作:Ryo-ka

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 ちゃっす、フリーでライターやってる辛木田 絆斗だ。

 俺を育ててくれた師匠の死の黒幕が俺に改造手術をした酸賀だった。アイツは俺を実験体にするために師匠を......

 ショウマ達のおかげで新しい力を手に入れた俺は酸賀との決着をつけることができた。

 それでも俺にはまだやることが残ってる。母ちゃんを誘拐したあのグラニュートを見つけることだ。アイツだけは絶対に俺の手で復讐する......

 とりあえず、今は少しでも身体を休めねぇと。アイツらにも散々、心配かけちまったしな......

 


ホワイト&ヴァレンタイン1

 都内の商業ビルの5階にある喫茶店。そこで俺はとある人物と待ち合わせをすることになっていた。左手に巻いた腕時計で時間を確認する。約束の時間より20分早いが、あの人のことだ。もう先に到着してるだろう。店内に入って周囲を見渡す。暖色の照明とクラシックな内装、壁に飾られたたぶんお洒落だと思われる絵画。最近流行りのレトロ喫茶って奴だ。こういう雰囲気の喫茶店は嫌いじゃない。

 

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

 

 カウンターからやってきた女性の店員に話しかけられた。俺が何て言うか考えていると店の奥から「辛木田くーん!こっちこっち!」と聞き覚えのある声が代わりに答えてくれた。女性の店員も察したのか軽く会釈をして奥へと戻っていく。同じように俺も軽く会釈をして知人が待つ席へと向かった。特徴的な黒い天然パーマをした赤い眼鏡を掛けた男性がホットコーヒーを飲んでいる。

 

「久しぶりだね辛木田くん。元気にしてた?って......どうしたの、その包帯!?」

 

 右手に巻いた包帯を見て驚く。まぁそうだな。久しぶりに会った知人が包帯巻いていたら気になるに決まっている。だからと言って自分が巷で話題の仮面ライダーで人間を攫うグラニュート達と戦っていることをバラすわけにもいかない。咄嗟に返答を考える。あ、そうだ。

 

「バイクで転倒しちゃいまして。右腕をちょっと......」

 

「ありゃーそれは大変だ。お大事に。」

 

「まぁ気にしないでくださいよ。すぐ治るんで!」

 

 なんとか誤魔化すことができたと思った俺は席へと座った。俺の向かい側の席に座っている人は砂藤 週矢(サトウ シュウヤ)という人物だ。大手新聞社が運営するネットニュースサイトの編集部で働いている。芸能人のスキャンダルから若者に流行している動画までSNSを中心に人々が食いつくようなネタを発信をしている。元々は師匠の知り合いで仕事をよく依頼されていた。砂藤さんと会うのは久しぶりだ。前に会った時は師匠と一緒だったっけ......

 

「......今日は仕事の依頼でしたよね?」

 

「あぁ、そうそう。仕事の依頼!でも辛木田くん怪物の調査をしてるって聞いたんだけど、そっちはいいの?」

 

「あー気分転換も必要かなって思いまして。」

 

「まぁそうだね。最近、失踪事件とか怪物の目撃情報とか気が滅入っちゃうようなニュースばっかだからね。なら、今回の仕事は辛木田くんの気分転換にはピッタリかもね〜」

 

「うっす!ありがとうございます。で、何の仕事ですか?」

 

 砂藤さんはカバンから黒いノートパソコンを取り出してとあるサイトの画面を見せてきた。私立の学校のホームページだ。学校の名前を目で探す。あった。

 

「初星...学園?」

 

「そう、初星学園。辛木田くん知ってる?」

 

「名前は聞いたことありますよ。国内最大のアイドル養成校、でしたっけ?」

 

「元々知名度あったんだけどね。去年の5月くらいから一気に注目されるようになってSNSでは結構話題なんだよ。チケットが取れないとか、ぬいぐるみが争奪戦だーとか。」

 

「へー今が旬って感じなんすね。」

 

「話が早いね。辛木田くんには初星学園について取材に行ってほしいの。他社に負けないようなネタ期待してるよ〜」

 

「砂藤さんは行かないんすか?」

 

 俺がそう尋ねると砂藤さんは「ははは」と乾いた声で笑ってコーヒーを飲み干した。「辛木田くんも何か頼みなよ。今日は奢るから。」と言ってテーブルに置かれた店員を呼ぶためのブザーを鳴らす。

 

「こんなおじさんが行ったら若い子の元気にやられて干からびちゃうよ。辛木田くんみたいな若い子が行かないと。」

 

「ははは」

 

 こういう時の返答に困る。愛想笑いでどうにか誤魔化した。このあと砂藤さんと打ち合わせをして取材内容を決めていく。初星学園へのアポは取ってくれているらしい。数時間ほど打ち合わせをして喫茶店で解散した。自室に戻って取材内容をまとめる。こういう仕事は久しぶりだ。気合いを入れていかないと。

 

「見ててくださいよ、師匠。」

 

 

 

 

 

 取材当日、俺はバスを降りて、初星学園の門の前へとやってきた。いやデカすぎんだろ。取材日までの数日間、ホームページやSNSの情報を見て調べていたが実際に来ると圧倒されてしまう。肩にかけたカバンから取材用のメモ帳やカメラを取り出す。その時にカバンの中にいたゴチゾウ達と目が合った。酸賀の一件が終わったからと言ってグラニュート絡みの失踪事件が減ったというわけじゃないからな。定期的にショウマ達がいるなんでも屋「はぴぱれ」に顔を出して、差し入れにお菓子を持って行ってゴチゾウを受け取っている。

 

「お前たち、バレないように静かにしとけよ。」

 

 小声でゴチゾウ達にそう言うとゴチゾウ達は理解したのか「わにゃ」と鳴いてうなづくとカバンの奥底へと戻っていった。相変わらず聞き分けがいい奴らだ。カバンを閉めて周囲を見渡す。この学園の生徒であろう学生達が俺の方をチラチラと見て話している。カバンに向かって話しかけている不審者だと思われたか?

 

「あの人、プロデューサー科の人かな?すっごいイケメンじゃない?」

 

「スカウトしてるのかな?柄シャツとコートが似合っててかっこいい〜」

 

 プロデューサー?そういえばこの学園にはプロデューサー科っていう専門大学があるんだったか。中高一貫でさらに大学まであるとなると、そりゃここまで大きな敷地が必要となるわけだ。左手に巻いた腕時計で時間を確認する。今回の取材相手の一人であるこの初星学園の学園長、十王邦夫(ジュウオウ クニオ)さんという人物への取材まで1時間くらいあるな。取材までの待ち時間は自由に学園内を見て回っていいって言われたけど......

 

「仕方ない、行くか。」

 

 時間は有効活用しないとな。俺はカバンを元の肩の位置に戻して初星学園の門をくぐった。昼の時間帯だからだろうか。大勢の女子生徒達とすれ違う。その度にこちらを見られる。やっぱり部外者が校内にいると気になるよな。首から事前に渡された入門許可証をかけておいて正解だった。入ってすぐに立派な屋内プールと体育館がある。その奥にはグラウンドがあるんだっけか。しばらく歩いて学園内を見て回っていると木々が生い茂った道へとやってきた。穏やかな暖かい風で揺れる葉と葉の隙間から日差しが影の中へと形を変えながら差し込んでいく。

 

「綺麗だな......」

 

 思わずカメラで写真を一枚撮ってしまう。写真を確認すると我ながらよく撮れている。少し明るさを加工すれば記事に載せられる写真になるかもしれない。そう考えてその写真を眺めていると一人の女子生徒が写ってしまっていることに気づいた。やべ、顔がハッキリと写ってる。無許可でその人を撮影するのは肖像権の侵害ってやつだ。ちょうどその女子生徒がこちらに向かって歩いてきたので謝ろうとして声をかける。

 

「.........」

 

「あ、すんません。俺が撮った写真に写っちゃったみたいで、すぐ消しま.....」

 

「......」

 

俺の声が聞こえていないのか見向きもせずに通り過ぎてしまう。何か様子がおかしい。その女子生徒は息切れをしながら真っ青な顔をしていた。酔っ払いのように左右ゆらゆらと揺れて脚は産まれたての子鹿のように震えている。

 

「おい、あんた大丈夫か?」

 

「............きゅう。」

 

バタッ!!

 

「!?おっおい!しっかりしろ!おい!」

 

 

 

 

 

「ん...んん......」

 

 数分後、俺の目の前で倒れたその女子生徒は目を覚ました。横になっていたベンチから上半身を起き上がらせて周囲を見渡す。そして別のベンチに座っていた俺と目が合った。

 

「お、目ぇ覚ましたか。保健室に連れて行った方がいいと思ったんだけど、場所分かんなくてさ。」

 

「だれ?......プロデューサーの人?」

 

「ちげぇよ。この学校の人間じゃねぇ。」

 

「じゃあ、不審者?」

 

「それもちげぇ!ほら!」

 

 俺はポケットから自分の名刺を取り出してその女子生徒に手渡した。女子生徒は受け取った名刺をじーーっと見つめる。

 

「フリー、ライター?辛木田 絆斗......変な苗字、だね。」

 

「うるせぇ。」

 

「わたし、篠澤......広。」

 

 その時、先ほどの暖かい風が篠澤広という一人の女子生徒のクリーム色の長い髪を揺らす。茶色の瞳が光を反射してオレンジ色の宝石のように輝く。透き通った透明感のある真っ白い肌。どこか儚げで神秘的な雰囲気を漂わせる少女。

 

 俺は今日、篠澤広という変なアイドルと出会った。

 

 

 

 

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