仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ 作:Ryo-ka
都心の駅から歩いて十五分。少し寂れた小さなビルの三階の小さな事務所のドアを一人の黒いスーツを着た男が深呼吸をしてノックをする。ドアの向こう側から男性の声で「どうぞ。」と言われ、男はドアを開けた。
「本日はお越しいただきありがとうございます。」
部屋の中には二人のスーツを着た男が席に座って紙の資料をめくっている。優しそうな笑みを浮かべながら席にすわるように促した。
「いえ、こちらこそお仕事の依頼をいただきありがとうございます。本当に何と礼を言えばいいのか......」
スーツを着た男は向かい側の席に座るとそう言って仕事の依頼主である男二人に深く礼をした。その姿を見た眼鏡をかけた細目の男は「いえいえ、そんな頭を下げないでください。」と言って焦った様子でスーツを着た男に顔を上げさせる。もう一人の太った男が「お互いウィンウィンというわけですな。」と呟いた。なんだかその言葉には何か裏があるようで、不思議と口角が上がってニヤけているように見える。
「本日は担当アイドルの方は一緒ではないのですか?」
「はい、今日に限って体調を崩しまして......すみません。イベント当日には良くなってるはずです。」
「そうですか......では、打ち合わせはまた後日にしますか?」
眼鏡をかけた細目の男は残念そうにそう言うがスーツ姿の男は首を横に振って「いえ、打ち合わせなら一人で大丈夫です!」と大きな声で返答した。依頼主二人は困惑しながらため息を吐いて、打ち合わせを続けることにした。アイドルと一緒が良かったのだろうか?太った男は頬に肘をつきながら、男の写真が写った資料を眺め始めた。
「えーーっと。貴方の名前は確か......」
「はい。極月学園から来ました。プロデューサーの辛木田 絆斗です!本日は...よろしくお願いします。」
そう明るく元気に答えた絆斗は二人の男を目の奥で強く睨みつけた。
そこから少し離れた場所を二人の男が歩いていた。そして目的の場所へと到着したのかカラフルなパーカーを着たショウマが立ち止まった。「ここか?」とラキアがテナント募集!!と大きな看板が立てられた小さなビルを見上げる。
「うん、ここだ。......見つけてくれてありがとう。」
ショウマは微笑んで手のひらの上に乗せたキッキングミゴチゾウの頭を撫でた。キッキングミゴチゾウは役に立てたことがよっぽど嬉しかったのか、ショウマの手のひらの上でぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「絆斗の方もそろそろ始まってるはず。俺達もヒトプレスを取り戻そう。」
「あぁ。」
『ヴラスタムギア』
ラキアはヴラスタムギアを取り出すと腰に押し当て、巻き付けた。ピンク色のゼリーのゴチゾウを取り出すとヴラスタムギアの天面に逆さにして装填する。ショウマもパーカーのお腹のチャックを勢いよく開く。腹部から生えた赤いガヴと呼ばれる口が露出し、上顎を開けてポテトチップスのゴチゾウを舌の上へと乗せた。
『カップ...オン』
『スナック!』
ガブッ
『イート!スナック!イート!スナック!』
上顎を閉じ、ガヴの赤いレバーをくるくると回し始めると同時にショウマの上空から透明なビニール袋が被さった。その中を徐々にポテトチップスが満たしていく。ラキアも同様に透明なゼリーカップが現れ、ラキアを覆い被せると中がピンク色の液体が下から上へと満たされ始めた。
そして準備が整った二人は目的地であるビルを睨みつけ、こう呟いた。
「「変身。」」
ショウマの目が紫色に発光する。自身の腹部にあるガヴの横に取り付けられたピンク色のボタンを強く叩いた。ザクザクチップスゴチゾウが雄叫びを上げ、前方向へと身を乗り出した。
ショウマの身体が人間から異形の姿へと変化していく。両目に当たる位置にある二つのじゃがいもが半分に割れ、断面から複眼が露わになる。ポテトチップスのような鎧が装着され、両手に持った二本の剣を強く握った。その姿はまさに鎧武者。
『ザクザクチップス!ザックザク!!』
ラキアは自身の腰に巻きつけたヴラスタムギアのレバーを下に倒す。中央のパネルが展開し、ラキアを覆っていた透明なゼリーカップが外れ、硬化したピンク色のゼリー状の液体が砕け散り、姿が変わったラキアの身体へと装着されていく。
『ゼリー・ヴラムシステム』
仮面ライダーガヴと仮面ライダーヴラム。変身した二人は再びビルを見上げた。ガヴへと変身したショウマは二本の剣『ザクザクチップスラッシャー』の刃を擦り合わせ、「よし、行こう!」と走り出そうとするが、ヴラムに変身したラキアがそれを静止した。
「待て、俺が先に行く。」
ヴラムは鎌状の武器である『ヴラムブレイカー』を取り出すとヴラスタムギアのレバーを上げた。
『カップ...Ready』
ヴラスタムギアから二本のイバラ状のピンク色の触手が伸び、ラキアの心臓へと巻きついていく。そしてレバーを下げると同時にラキアの心臓をイバラ状の触手が強く締め付けた。ラキアの心臓の動きが止まり、ヴラムの姿は透明となった。
「うっ!!」
『インビジブルゼリー』
「ヴラム......」
誰もいないはずのテナント募集になった小さなビル。その三階の部屋でストマック家の眷属であるエージェント達はアルバイト達から集めたヒトプレスを仕分けをしていた。幸せな人間を閉じ込め圧縮したヒトプレス、これをグラニュート界へと持ち帰り『闇菓子」と呼ばれる中毒性の高いお菓子の原材料とするのだ。
「今回はこのくらいか。」
「そうだな。ストマック社へと持ち帰ろう。」
部屋の中にいるエージェントの数は四人。透明になったヴラムは敵の数、部屋の構造を確認すると自身が持っているプリンのゴチゾウをガヴの元へと送った。その間にエージェント達がいる部屋から一番離れた部屋へとたどり着き、透明化を解除した。心臓が再び動き出す。息を切らしながら自身の胸を手で押さえつけた。
『ゼリーオーバー』
「はぁ...はぁ......だるっ......」
ガヴの元へとたどり着いたプリンのゴチゾウは敵の数と部屋の構造を伝えた。
「エージェントの数は四人。あそこの窓の部屋だね。それなら......作戦がある。ヴラムに伝えて。」
「ぷるっ」
プリンのゴチゾウは頷くと再びヴラムの元へとやってきて、息が整ったヴラムにショウマが考えた作戦の内容を小声で伝えた。作戦の内容を理解したヴラムは「分かった。......よし、行くか。」と呟くと再びヴラスタムギアのレバーを上げ下げし、透明化した。
『カップ...Ready』
『インビジブルゼリー』
透明化したヴラムはエージェント達がいる部屋の前へと向かった。ドアは完全に開いた状態になっている。そこから物音を立てずに静かに侵入した。エージェント達を避け、ヒトプレスが入っているアタッシュケースが集められた場所へとたどり着くとガヴの合図がくるまで待機する。
そして外にいるガヴはエージェント達がいる部屋の窓を見上げると落ちていた小石を持ち上げ、窓に向かって勢いよく投げつけた。
コンッ
窓に石がぶつかった音を聞いて不審に思ったエージェントのうちの一人が「何の音だ?」と言って窓を開け、下を覗き込んだ。下を覗き込んでも誰もいない。エージェントはおかしいなと首を傾げ、窓を閉めようとしたその時だ。
(今だ...!)
次の瞬間、透明化状態のヴラムが集められたアタッシュケースを三つほど持ち上げて窓の外に向かって投げつけた。
「なっ何!?」
「何が起こっている!!」
アタッシュケース達が宙に浮かび窓の外へと落下していく。突然の事態に唖然とするエージェント達は窓に向かって身を乗り出すほどの勢いで駆けつけた。落下していくヒトプレスがアタッシュケース達。
(よし。頼んだぞ、ガヴ。)
「俺に任せて!」
物陰へと隠れていたガヴは両手に持っていたザクザクチップスラッシャーの柄の部分をガヴのピンク色の部分へと勢いよく押し当てた。ザクザクチップスラッシャーの刀身部分同士をぶつけ合わせる。バラバラに砕け散ったチップス状の刀身達は風に舞う桜吹雪ようにガヴの意思によって上空へと舞い上がった。
『ザクザクチップス!フィニッシュ!!!』
アタッシュケース達が落下するであろう地点の上空へチップス状の刀身達が集まっていき、絨毯のような形状となった。アタッシュケース達を優しくキャッチして地上へと着地する。ガヴは全てのアタッシュケースが無事だということを確認するとエージェント達がいる三階を見上げた。
「赤ガヴだと......!!」
「全部無事だよ!!ヴラム!!」
「あぁ......」
『ゼリーオーバー』
透明化を解除したヴラムは鎌状の武器であるヴラムブレイカーを振り回し、一人のエージェントを背後から斬りつけた。斬りつけられたエージェントはその場に倒れ、ヴラムはそのエージェントを足で踏みつけた。困惑しながらも他のエージェント達は銃をヴラムに向けて構える。
「ぐあっ!」
「一体!いつからここにいた!」
「はぁ...だるっ......ヒトプレスを取り返した以上、ここからは俺の時間だ。」
仮面ライダーガヴの魅力の一つといえば、変身するフォームの能力と地形を活かした多彩なアクションシーンですよね!ガヴらしい最高にカッコイイ戦闘シーンを書けるよう頑張ります!