仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ 作:Ryo-ka
「では、本日の打ち合わせはここまでにしましょう。」
「はい。では、当日はよろしくお願いします。」
俺はそう言って深く礼をして立ち上がった。時間としては二十分くらいか?打ち合わせってこんな短いものなのか。それともコイツらがグラニュートで、人を誘き寄せるためだけの打ち合わせだから中身がないのか。にしても、眼鏡の隣にいた太ったアイツは終始やる気がなかったな。
とりあえず、ここからが本番だ。俺はドア付近までやってくると再び二人に礼をして背を向けた。二人は小声で何かを話合っている。ドアノブをガチャッと握ると共に、俺はカバンの中に手を伸ばした。
「仕方ねぇ。まぁ、一人でもやっておくか。」
グチャ
太った男の声でその言葉が聞こえた瞬間、カバンからヴァレンバスターを取り出して背後に向かって弾丸を放った。「いてぇぇえ!!」という太った男の悲痛な声が響き渡る。振り返るとそこにはスーツのワイシャツをめくり、腹についた悍ましい口から長い舌を出した二人の姿があった。
「やっぱりテメェら...グラニュートか!」
「くそ!なんだコイツ!」
「上が言ってた『グラニュートハンター』って奴だな!!ゲットゥ、コイツやっちまおうぜ!」
「あぁ、イーノ。」
二人の男は腹部の口から生えてきた人型のクッキー状の何かを引き抜いた。あれを引き抜くことで元の化け物の姿に戻るはずだ。引き抜いた瞬間に二人の姿がみるみる異形の化け物へと変化していき、眼鏡をかけた男はトカゲのようなグラニュートに、太った男はイノシシのようにグラニュートになった。
「よくも騙しやがったな!グラニュートハンター!!」
「テメェらこそ、アイドルやプロデューサーを騙して攫ったじゃねぇか!」
「うるせぇ!」
「くそ......ぜってぇぶっ潰す!!」
『ヴラスタムギア』
カバンから取り出したヴラスタムギアを腰へと巻きつけ、チョコフラッペのゴチゾウを手に持った。上のホイップクリームが兄の『フラッペ一郎』下のフローズンドリンクが弟の『フラッペ二郎』だ。俺は一郎のストローをくるくるとかき混ぜた。そうすると一郎曰く、強くなるらしい。
「いくぞ、一郎!二郎!」
「よっしゃ!かますで〜」
「はい、任せてください!絆斗さん!」
かき混ぜた二人を腰に巻いたヴラスタムギアの天面部分に勢いよく装填した。
『『フラッペ!』』
『オン』
左腕を前へと突き出し、右拳を強く握りしめる。
「変身!」
強く握った右拳を勢いよく振り下ろしてヴラスタムギアのレバーを倒した。ヴラスタムギアの扉が展開し、周囲の空気が冷気を帯び始める。飛び散った吹雪が俺の全身を覆っていって氷の結晶を作り出していった。俺を覆った氷の結晶が割れていく。そして完全に割れて砕け散った時、新しい仮面ライダーヴァレンの姿!『フラッペカスタム』のお出ましだ!!
『『フラッペーーーカスタム!!シャリシャリ!!!』』
「かかってこい!」
俺は挑発するようにそう言うとイノシシのグラニュートがこちらに向かって突進し始めた。上体を低くし両腕の二本のツノを槍のようにしている。まさに猪突猛進って感じだ。俺は避けずに待ち構え、タイミングを見計らって跳び箱の要領でイノシシのグラニュートの背中に手をついて飛び越えた。
「なっ!?」
「馬跳びってやつだぜ!!」
飛び越えて着地した瞬間にヴラスタムギアのレバーを上げて下ろした。右脚に鋭いトゲの形状をした氷塊を纏わせて、イノシシのグラニュートの背中をその足で蹴り付けた。
『フローズン!』
「ぐあぁぁ!!」
「イーノ!お前...よくも俺の相棒を!!」
奥で見ているだけだったトカゲのグラニュートが相棒がダメージを受けたことで怒りに任せて、俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。再びヴラスタムギアのレバーを上げ下げし、今度は両腕に鋭いトゲ状の氷塊を纏わせる。ボクシンググローブみてーだ。その場で小刻みに飛び跳ねて、間合いに入ったトカゲのグラニュートの上半身に拳を叩きつけていく。
『フリージング!』
「ワン!ツー!」
「ぐはっ!!」
攻撃の隙は与えねぇ。何度も何度も氷塊を纏った拳をぶつけていく。そして最後の一発を決めてトカゲのグラニュートは膝から崩れ落ちて、倒れてしまった。よし、あとはトドメだけだ。俺はヴラスタムギアのレバーを上げ下げし、右足を上げて床を思いっきり踏みつけた。踏みつけた箇所を中心に部屋全体が氷で覆われていく。床の上にいるコイツらも一緒に凍らされて動けなくなったはずだ。現に倒れたトカゲのグラニュートは動けないでいる。
『フローズン!!!』
「くっ...そ......」
「これで終わりだ。」
俺が二人にトドメを刺そうとしてヴラスタムギアのレバーに手をかけたその時だ。
ジューーーーーーー
「あ?」
入口の方から音が聞こえて振り返る。大量の白い湯気を上げながらイノシシのグラニュートの全身を覆っていた氷が溶け始めている。それだけじゃねぇ。部屋全体の氷が水になってきやがった。
「なっなんだこれ......アッツ!?!」
「俺はな〜全身に溜め込んだ脂肪を一気に燃焼させて体温を上げられるんだ。高温状態の俺に氷なんて気かねぇぜ!!」
まるでサウナの中にいるみてぇだ。フラッペカスタムの冷気が無効化されてやがる。そして、イノシシのグラニュートの身体を覆っていた氷が完全に溶けきると同時にイノシシのグラニュートは俺に向かって突進し始めた。全身が赤くなっている。しかもさっきよりも速い!!これは飛び越えることも避けることもできな......
「必殺!超特急猛進ッ!」
次の瞬間、俺の身体はイノシシのグラニュートの突進を直で喰らってしまった。イノシシのグラニュートは俺を掴んだまま壁をぶち破って外へと飛び出した。ここは二階だ。落下していく。落下する途中でイノシシのグラニュートは俺を突き飛ばし、俺はそのまま受け身も取れず背中から地面に叩きつけられた。
「ぐぁあぁあぁああ!!!」
「いい気味だぜーーーー!!!!!」
俺を突き飛ばしたイノシシのグラニュートは着地し、地面に叩きつけられた俺を見下ろしながら高笑いをした。変身してなかったらマジで死ぬところだった。全身が痺れるように痛え。立ち上がろうとするが、ヴラスタムギアに装填されている一郎と二郎の様子がおかしい。
「アカンで!アカーーーン!!!!」
「すっすみません!絆斗さん!もうム......」
「おっおい......どうした!おい!」
一郎と二郎はそう言い残すと地面に向かってポタポタと液体となって溶けていってしまった。最悪だ。俺の身体の装甲も消滅して、完全に元の姿に戻ってしまう。フラッペカスタムは時間制限がある。さっきのイノシシのグラニュートの高熱を直で受けたせいで、変身できる時間が短くなっちまったんだ。
「おっ?なんだ〜元の弱っちい人間の姿に戻っちまったのか???」
人間の姿に戻った俺をイノシシのグラニュートは鼻で笑うと小石を蹴飛ばすように蹴り飛ばした。俺の身体が地面に転がっていく。
「ぐっ!!ああぁ......!!」
フラッペのゴチゾウはもういねぇ。ショウマに頼んでもっと用意しておくべきだった。ゴチゾウ達がいるカバンの二階にある。倒さなきゃいけねぇグラニュートも二体。
「そろそろ相棒の氷も溶けたころだぜ。相棒が降りてきたらテメェはゆっくり殺してやる。」
イノシシのグラニュートは地面に倒れた俺を覗き込みながら頭をポンポンと叩いた。腹が立つ。今すぐにでもぶん殴ってやりてぇ。それなのに戦えねぇ!!!クソッ!!
「グラニュートハンターを倒したとなりゃ〜上から貰える闇菓子は大量間違いない!!『あの人』の下で働く意味もねぇ!!」
「はぁ...はぁ......あの人?」
「まぁテメェには関係ねぇ話だ。ヒトプレスになった人間どもも俺達に感謝してるはずだぜー」
「......はぁ?」
「才能もねぇくせにくだらねー夢に縋ってよ。俺達は奴らに最後の希望をやったんだ!おかげで上質なヒトプレスになってくれたぜ!!幸せなまま最期を迎えて闇菓子になるんだ!!アハハハハハハハハハ!!」
「何が......」
「あ?」
「何が幸せだッ!!!」
拳を握りながら地面に手をつく。火傷と二階から落下したせいで全身が痛え。それでも!俺は立ち上がらないといけねえ!!身体を起き上がらせて膝をついた。足の筋肉が痙攣している。それでも!コイツらだけはぶっ倒さねぇと気がすまねぇ!!!
「才能がねぇ?素質がねぇ?ふざけんじゃねぇ!!夢ってのはな!お前らには分からねぇかもしれねぇがよ!!誰だって持つ権利があんだよ!追いかけていいもんなんだよ!!」
「......何言ってんだお前?」
「それを......テメェらのせいで偽りの夢に踊らされたまま終わっちまう!!そんなことはぜってぇさせねぇ!!!!アイツらの夢は俺が命に変えてでも取り戻す!!!」
俺は震えながら立ち上がり、ヴァレンバスターの銃口をイノシシのグラニュートに向けた。何発も弾丸を放つが全ての弾丸が外れて壁やドラム缶に当たっちまう。うまく......狙いが定まらねぇ。まるで初めて変身した時みてぇだ
「そんなに死にてぇなら殺してやるよ!!!うおーーーーーー!!!」
イノシシのグラニュートは両腕をぐるぐると回しながら再び突進を始めた。もう絶対避けられねぇ。
「く...そ......」
瞳を閉じ、諦めそうになったその時だ。
「「「わにゃーーーーーーー!!!!」」」
「なっなんだ!?!痛え!!」
イノシシのグラニュートに向かって二階の壁の穴から本やコップなどのいろんなモノがどんどん降り注いでいった。イノシシのグラニュートは突進をやめて上を見上げる。そこにはゴチゾウ達がどんどんモノを運んではモノを投げ落とす姿があった。
「お前......ら。」
「わにゃ!」
一匹のゴチゾウが二階から飛び降りて俺の頭にぶつかった。
「いて!」
「わにゃ!」
頭を手でおさえながら地面を見下ろすと白いチョコレートのゴチゾウが何かを訴えかけている。でもなんか色がちょっと違う。
「お前はチョコドン......いや、この間ショウマが食べてたミルクティー味のチョコのゴチゾウか?」
「わにゃ!」
「二階から飛び降りたのか、命知らずな奴だな。」
「わにゃ!わにゃにゃわにゃ!」
何を言っているか分からない。でも言いたいことは伝わった。そうだよな、お前達が諦めてねぇのに俺が諦めてちゃいけねぇよな。俺は頷くとヴァレンバスターのレバーを展開した。すると、ミルクティーのチョコドンが自分から入ってヴァレンバスターに装填された。
『チョコ!』
『Set!チョコ!Set!チョコ!』
ヴァレンバスターのレバーを大きく開いて閉じて心臓の位置に銃口を突きつけた。大丈夫、まだ戦える。
「いくぜ......チョコドン。」
息を深く吸って目の前にいるイノシシのグラニュートを強く睨みつけ、呟くようにこう言った。
「変身。」
ヴァレンバスターのトリガーを引くと同時に銃口から弾丸が飛び出し、俺の身体へと直接着弾した。心臓の位置を中心に溶けて液体状になった白いチョコレートが俺の全身を覆って各部位の装甲を作り出していった。
「ぐっ!ああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁ!!!!」
『チョコドン!パキパキ!』
俺は視界を塞ぐ銀紙をゆっくりと剥がす。変身した俺は自身の身体を見下ろした。いつもと色が違う。全身が真っ白いヴァレン、見たことがない姿だ。
「なんだぁ?その姿は?」
「俺もわかんねー」
「でもな、これでまだ戦える。さぁ、第二ラウンドだ......」