仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ   作:Ryo-ka

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甘い幸せ、ミルクティー5

「何が第二ラウンドだァ?そっこーKOで終わらせてやる!!」

 

 イノシシのグラニュートは声を荒げながら俺に向かって突進を始めた。ヴァレンに変身できたが、身体中が痛ぇのは変わらねぇな。さっきのタックルをもう一度喰らったら今度こそお陀仏だ。ヴァレンバスターが白いチョコレートの弾丸を放つ。

 

「へっ!当たらねぇな!!ま!当たっても俺の熱で溶けちまうがな!!」

 

 放った弾丸はイノシシのグラニュートから外れてアスファルトの地面に着弾していき、溶けて白い大きなチョコレートの水溜まりを作っていく。やっぱり照準が合わねぇ!イノシシのグラニュートにダメージを与えられないまま距離がどんどん縮んでいく。

 

「さっきの姿の方が強いみたいだが!すぐ溶けちまって燃費が悪いなーーー!!」

 

「あぁ、そうだな......でも、それはお互い様だぜ!」

 

「......は?」

 

 次の瞬間、熱によって真っ赤に染まっていたイノシシのグラニュートの身体が白い煙を上げ始めた。「なっなんだ!?」とイノシシのグラニュートも困惑しているみたいだ。みるみると熱が引いて最初の姿が戻っていく。予想的中。

 

「なっなんだこれ!?熱が引いて......まっまさか!!?」

 

「自分で言ってたよな......自分の『脂肪』を燃焼させてるって!じゃあその脂肪が尽きたら熱攻撃は出来ねぇよな!!」

 

「くっくそ......!!」

 

「俺が話してる最中も脂肪燃焼を続けてくれてありがとな。おかげで、さっさと蹴りをつけられる!!」

 

「人間風情がぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 イノシシのグラニュートは再び突進を始める。さっきのような覇気は感じられない。自暴自棄って感じだ。俺はヴァレンバスターのレバーを展開し、エネルギーをチャージする。そしてイノシシのグラニュートが白い大きなチョコレートの水溜まりに入った瞬間、水溜まりから鋭い槍状になって硬化したチョコレートがイノシシのグラニュートの身体を貫通していった。

 

「ぐあっ!!」

 

 鋭いチョコレートの槍は次々と生成されていき、イノシシのグラニュートの身体を貫通して固定していく。これでアイツはもう動けねぇ。ヴァレンバスターのレバーを閉じて足を引きずりながら俺はイノシシのグラニュートに向かって歩き始めた。

 

「はぁ...はぁ......」

 

「ぬっ抜けねぇ!!」

 

「今のお前の熱じゃそのチョコレートは溶かせねぇぜ。」

 

「こんな!こんなはずじゃ!!」

 

 罠にかかったイノシシみたいにその場でジタバタとしている。エネルギーが溜まったヴァレンバスターの銃口をイノシシのグラニュートの身体へと押し当てた。ヤツの必死の命乞いも今の俺には届かなかった。

 コイツらのせいで何人の人間の未来や夢がなくなった?俺が想像できない数かもしれない。だから、俺が今出来ることはこれだけだ。深く息を吸って瞼を閉じ、引き金を引いた。

 

「嫌だ!!嫌だぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああ!!!!!」

 

 

「......じゃあな。」

 

 

 

『チョォコドォオンンーーーーーー!!!!!』

 

 

 

「ぐぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

ドガァァアァァァァアアァァァアァアアアン!!!!!

 

 

 

 

 

 一発のチョコレートの弾丸がイノシシのグラニュートの身体にスッと入っていった。そして身体の中に入った瞬間に膨張を始め、その身体は風船のように爆発と共に弾け飛んだ。近距離で射撃した俺もそう爆発による爆風に巻き込まれて一二メートルほど先に飛ばされてしまった。

 

「はぁ...はぁ......死ぬとこだったぜ。」

 

 地面に倒れた俺は上体を起こして周囲を見渡した。イノシシのグラニュートの姿はもうない。代わりに怯えたように手を振るわせるトカゲのグラニュートの姿があった。

 

「あっ相棒!!うっ...嘘だろ!!」

 

「そういや、テメェもいたな。」

 

「ひっ!」

 

「......」

 

 ダメだ。もう動けねぇ。身体が言うことを聞かねぇ。俺が攻撃してこないことに気づいたトカゲのグラニュートは怯えるをやめて俺の元へと歩み寄ってきた。

 

「まっまさか動けねえのか?......いっ今がチャンスだ!相棒の仇ぃぃぃぃい!!!」

 

 トカゲのグラニュートは少し興奮気味にそう叫ぶと長い尻尾をムチのように振ろうと勢いをつけた。攻撃を避けねぇと。でも、そんな体力も残ってねぇ。

 

「死ねぇぇぇえぇぇぇぇぇえ!!!!」

 

「くそ......」

 

 

『カッキーン!!』

 

「はぁ!!」

 

 トカゲのグラニュートの長い尻尾のムチが振られたその時だ。俺の前に分厚い氷の壁が現れて、その攻撃から守ってくれた。トカゲのグラニュートは「イッテェ!!!」と言いながら尻尾を元に戻して後退りした。この攻撃は......背後に視線を向けるとそこには『ブリザードソルベ』の姿になったガヴとヴラムの姿があった。

 

「大丈夫、絆斗?」

 

「お前ら......」

 

「こっぴどくやられたみたいだな。」

 

「んだと!!」

 

「言い返す元気があるなら平気だろ。」

 

 やっぱりコイツはいけすかねぇ奴だ。ガヴに変身したショウマが肩を貸してくれたおかげで俺は立ち上がることができた。ガヴの肩から手を離して自分に力で立つ。三人でトカゲのグラニュートを睨みつけた。さっきまで俺を倒す気満々だった野郎が「ひっ!」と言って震えてやがる。

 

「三対一なんて聞いてねぇ!!」

 

「どうする?......二度と闇菓子に関わらないか。この場で俺達に倒されるか!!」

 

 ガヴの問いかけにトカゲのグラニュートは頭を抱えた。死にたくない。でも死んでも闇菓子は辞めたくねぇって顔だ。トカゲのグラニュートが考え込んでいると別の方角を見つめ始め、「そうだ。」と呟いた。

 その方角に見ると路地裏を歩く高そうな赤い毛皮のローブを身に纏った黒いスーツの女性の姿があった。こちらに向かっている。アイツ、何を考えてやがる?

 

「あの女を人質にすれば!俺は逃げられる!!」

 

「なっ!」

 

「させるか!」

 

 ヴラムがヴラムブレイカーの矢を放った。しかし、トカゲのグラニュートの長い尻尾でペチンと跳ね返されてしまった。トカゲのグラニュートは自身の腹部の口から長い舌を女性に向かって伸ばした。

 

「逃げろ!!」

 

「うん?」

 

 俺達の声が女性に届いた時にはもう遅かった。トカゲのグラニュートの長い舌が女性の身体へと巻き付いた。白い長髪の女性は不思議そうな顔をしている。「やっやった!」とトカゲのグラニュートは嬉しそうだが、何かが変だ。数秒経って全員が異変に気づいた。

 

「なっなんでヒトプレスにならねぇんだ!!」

 

 混乱するトカゲのグラニュート。白い長髪の女性は緑色の瞳でトカゲのグラニュートをじーーっと見つめた。

 

「おい、ゲットゥ。何の真似?」

 

「なっなんで俺の名前を!!?」

 

「自分の主人と『マト』の区別もつかないの?」

 

「ヒッ!!」

 

 トカゲのグラニュートは何かに気がついたのか先ほど以上に怯えた顔を見せながら、ゆっくりと巻き付かせた長い舌を元に戻して女性を解放する。白い長髪の女性は解放された瞬間にスーツのシャツを捲った。そこにはグラニュート特有の凶暴な口が張り付いていた。

 

「アイツもグラニュート......」

 

 白い長髪の女性は腹部の口から生えてきた人型のクッキー状の何かを引き抜いた。女性の瞳が緑色に発光して異形へと変化していく。両肩と胸部に凶暴な犬のような顔。首からは錆びついた太い鎖をぶら下げ、全身に絡み付いている。西洋のような鎧のような身体に切り裂かれたような傷が大量にあるのも目についた。

 

「ベロルス様...!!」

 

「ベロルス?」

 

「おっお許しください!!姿が変わっていらっしゃったので気づきませんでした!!!」

 

「ふーーん。そうなんだ。」

 

 ベロルスというグラニュートの足元で膝を突き、何度も頭を下げている。ベロルスはその姿を見て少し笑うとトカゲのグラニュートを立ち上がらせ、どこからか槍形状の武器を取り出した。そしてその槍をそのままトカゲのグラニュートの腹部へと突き刺す。

 

「え?」

 

「今日から君達を解雇することにしたから。バイバイ。」

 

「えっええ......」

 

 困惑するトカゲのグラニュートの腹部にある口に槍を抜いては刺して抜いては刺してを繰り返す。俺達はその様子をただ茫然と眺めるだけしかできなかった。数秒経って死んだトカゲのグラニュートをそこら辺に投げ捨てた。すると、トカゲのグラニュートの手から数枚のヒトプレスがこぼれ落ちた。

 

「うーーんなんだこれ?」

 

「ベロルス・ヘルズゲート......そうか、思い出した。」

 

「ラキア、知ってるの?」

 

「あぁ、グラニュート界の有名な貿易商の跡取り息子だ。数年前に行方不明になったって一時期話題になってたが......まさか人間界にいたとはな。」

 

「へーーオレって有名人なんだ。親父はオレのこと心配してた?」

 

「膨大な額の賞金をかけて捜索してたはずだ。」

 

「そうなんだ。でも戻る気起きないなーオレは今の仕事に満足してるから。」

 

 そう言うとベロルスは落ちた数枚のヒトプレスを拾い上げて眺め始めた。太陽に透かして中の怯えた人間の表情を見つめて舌打ちをする。

 

「質の悪いヒトプレスだ。オレが本社に呼ばれてる間に小遣い稼ぎしようとしたな?」

 

 先ほどまでの子供のような無邪気さは感じられない。ヒトプレスをゴミを見るように嫌悪の表情を浮かべ......そして握り潰した。砕け散ったヒトプレスがアスファルトの地面に音を立てて落ちていく。

 

「なっ!」

 

「お前!!!」

 

 ベロルスは無邪気な笑みを浮かべている。その顔を見たショウマがベロルスに向かって走り出した。腹部についた赤いガヴに装填された『ブリザードソルベェ』のブレードを回転させ、冷たい息を吐き『ガヴガブレイド』の刀身に氷を纏わせた。

 

「ショウマ!!」

 

『シャリーン!』

 

「なんで割った!!」

 

「なんでって......じゃあ本社に渡して闇菓子にして欲しかったの?」

 

「そんなわけないだろ!!」

 

 ベロルスは右手を伸ばして指をオーケストラの指揮者のように振った。すると、周囲に散らばっていたドラム缶やゴミが宙へと浮かび上がり、ガヴを襲う。ガヴはガヴガブレイドを使って次々と切り裂きながらベロルス目掛けて進んでいった。

 

「オレはね。質の良いヒトプレスしか上に納めないようにしてるんだ。質の悪いヒトプレスはこうやって自分で処分してる。」

 

「ふざけるな......ふざけるなぁぁぁぁあぁぁ!!!」

 

『チャージミー!チャージミー!』

 

 ガヴは走りながら、腹部の赤いガヴのレバーを回転させて右足に冷気を纏い始める。そして、ピンク色のボタンを強く叩いて空中へと飛び上がった。その姿を見てベロルスはニヤッと笑うと近くの駐車場に停められていた自動車を数台ほど宙に浮かせて自身を守る盾にした。

 

『アイスブレイク!!!』

 

「はぁあぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 ガヴは空中で蹴りを放ち、自動車を次々と貫通していくがベロルスに辿り着く前に勢いが失われてしまい地上へと着地してしまった。貫通された自動車がどんどん落下していく。

 

「今日はこれでおしまいにしよう。」

 

「逃すか!!」

 

「オレはいいけど、オレが本気で戦うと後ろのお友達が死んじゃうよ?」

 

 そう言ってベロルスは俺を指差した。ガヴも俺の方へ目線を向けた。クソ......俺がショウマの足枷になっちまってる。ガヴが再びベロルスの方へ向けた。しかし、そこにはもうベロルスの姿はなかった。

 

「待て!どこに行った!!クソ......うっ...うっうあああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!!!」

 

 ブリザードソルベェが溶けて、ショウマは元の人間の姿へと戻ってしまう。膝から崩れ落ちて周囲の街にショウマの慟哭が響き渡った。あんなに怒るショウマの姿を見るのは初めてだ。

 あぁ、ダメだ。意識が持たねぇ。アイツを逃したのは俺の...せいだ。もっと...強くならねぇと。俺はそのまま気を失ってしまった。

 

 




ベロルス・ヘルズゲート

 ストマック社における去年の人プレス仕入れで業績最優秀のアルバイト。他のアルバイトを従えて群れでヒトプレスの回収を行なっている。だが、ニエルブによって改造手術を受けたため、『部下がいらなくなった。』
 元はグラニュート界の有名な貿易商の跡取り息子だったが数年前に行方不明になっていた。しかし、人間界で人攫いをしていることが判明。人間のことを『マト』と呼んでいる。
 人間の姿は新しく新調した白い長髪の綺麗な女性。緑色の瞳が特徴。黒いスーツを着ているが、上から高そうな赤い毛皮のローブを羽織っている。このローブは上から渡された人間界の貨幣で先ほど購入したお気に入りのもの。
 
 怪人態のモチーフはギリシア神話に登場する冥界の番犬『ケルベロス』
固有能力は周囲の『モノ』を浮かせて自由に操作すること。浮かせたモノの重さと個数に制限はない。

 ストマック家の兄弟の名前が全員「舌」を表す言葉となっているようにベロルスも『ベロ』という舌を意味する言葉が名前に入っているのも実はこだわりポイント。
 

 
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