仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ   作:Ryo-ka

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絆斗とラキア、二人の協力でたくさんのヒトプレスを取り返すことができた。

絆斗のピンチに駆けつけた俺達の前にベロルスというストマック社のアルバイトが現れた。アイツはヒトプレスを俺達の目の前で......俺はアイツを許せない。次の犠牲者が出る前に絶対に倒さなきゃ!!

絆斗、ラキア、ゴチゾウのみんな。俺に力を貸して!




怒りのスパーキングミ1

 なんでも屋『はぴぱれ』、真剣な表情でテーブルの上に並んだゴチゾウ達にショウマは声をかけていた。その姿をキッチンの近くの椅子に座った幸果とラキアが心配そうに見つめる。

 

「ありがとう、みんな。次はこの地域のパトロールを......」

 

「ウマショウ......あれからずっとあんな感じ。」

 

「無理もない。目の前でヒトプレスを割られたんだ。」

 

 ヒトプレスは割れてしまうと修復は不可能。中に閉じ込められた人間は死んでしまう。握り潰されたヒトプレス、ガラスの破片のように細かく砕け散ってアスファルトの地面に落ちていく。あの光景が焼き付いて離れない。

 ショウマはゴチゾウ達に指示を出し終えると「みんな、頼んだよ。」とため息混じりに呟いた。それに応えるようにゴチゾウ達は声を上げ、急いだ様子で窓やドアの隙間から外へ向かっていく。

 

「ベロルス......俺と同じ目をしてた。」

 

「ラキアン。同じ目ってどういうこと?」

 

 幸果がそう尋ねるとラキアは椅子から立ち上がり、はぴぱれの部屋の中の壁にかけられた鏡の方へ目を向けた。鏡の中の自分と目が合い、人間の姿のベロルスの顔を思い出す。

 

「アイツ、闇菓子に手を出してない。」

 

「え!?どういうこと!」

 

「闇菓子を食ってるやつは目を見れば分かる。」

 

 ラキアは自分が出会ってきた他のアルバイトのグラニュートの顔を思い出していった。どのグラニュートも目を見開き、何か物欲しそうな不安そうな顔をしている。「早く闇菓子を食いたくて仕方がない。」そんな顔。だが、ベロルスは違った。闇菓子に手を出していない健常者の目。その目の奥に狂気を孕んでいる。

 

「アイツは人間のことを『マト』と呼んでいた。質の良いヒトプレスは上に納めて、質の悪いヒトプレスは自分で処分......まるでゲーム感覚だな。」

 

「じゃあそのベロ...なんとかってやつは闇菓子が食べたいとかじゃなくて!純粋に人を攫って点数稼ぐことを楽しんでるってこと!!?」

 

「まぁ、そうなるな。」

 

「......ヤバイ奴じゃん。」

 

「あぁ、だから......ショウマの逆鱗に触れたんだろうな。」

 

 そう言ってラキアと幸果は再びショウマの方へ目線を向けた。ゴチゾウ達全員がパトロールに行ったことを確認したショウマはゆっくりと椅子に座った。息を吐きながらテーブルに溶けるように突っ伏す。二人から見ても疲弊していることが分かる。

 

「ウマショウ!一回ちゃんと休みなよ!」

 

「休む......そうだ、絆斗は!」

 

「そういえば......最近見ないねハンティー。」

 

「結構怪我してたから......もしかして!」

 

 ショウマは慌てて立ち上がると「ちょっと絆斗の様子見に行ってくる!」と言って勢いよくはぴぱれのドアを開けた。すると、ドアの向こうでドアノブに手をかけようとしていた絆斗と目が合った。ショウマはビックリして後退りする。

 

「うお、ビックリした......」

 

「はっ絆斗......」

 

「ハンティー怪我大丈夫なの!?」

 

「あぁ!三日くらい家でずっと休んだからだいぶ治ってきてな。」

 

「もう少し、休んだ方がいいんじゃないのか?」

 

 流石のラキアも絆斗のことを少しは心配しているようだ。無理もない。イノシシのグラニュートの高温の放熱を近距離で受け、二階から受け身も取れないまま落下したのだ。普通の人間なら完治まで数ヶ月はかかってしまうだろう。いくらグラニュートの器官を体内に取り入れ、回復力が上がっているとは言え三日で完治とは言えまい。

 

「そろそろ溜まった仕事しねぇとヤベェから今日から復帰!!取材先に行く前にゴチゾウ達の補充しようと思ってな。」

 

 絆斗はいつも通りの気さくな笑顔でそう言うがコートの長袖からチラリと見える血が滲んだ包帯や頬に貼った絆創膏を見ると全員言葉が詰まった。ショウマは少し間を空けたあと「うっうん。分かった。」と了承してゴチゾウ達に声をかけた。しかし、誰も反応しない。

 

「あれ......そっか...全員パトロールに行っちゃったんだった。......ごめん、絆斗。」

 

「あっそうか......変なタイミングに来て悪かったな。」

 

「うんうん。」

 

「じゃあ行ってくるわ。」

 

 絆斗はそう言うとバッグからコンビニで買ったであろうレジ袋を取り出して、ショウマに手渡した。中を覗くとグミやチョコレート、キャンディー駄菓子など様々なお菓子が入っていた。少し驚きつつショウマは絆斗を見つめた。

 

「これって......」

 

「あんま......無理すんなよ。」

 

 それを聞いてショウマはレジ袋の持ち手部分をくしゃっと握って俯いて「うん。」と呟いた。そして絆斗は三人がいるはぴぱれを後にした。駅に向かって歩き始める。数分経って我慢していた身体の痛みに耐えられなくなって数秒立ち止まった。

 

「いってぇ......」

 

 

 

 

 

 

 初星学園のレッスン室。合同ライブに向けて三人の女子生徒がレッスンを行なっていた。歌詞を確認しながらマイクに声を乗せていく。曲がラストのサビを終えるとトレーナーが椅子から立ち上がり「そろそろ休憩にしましょうか。」と三人に声をかけた。広が息を切らしながら壁に寄っかかっていると手毬がやってきた。

 

「相変わらず体力ないね。はい......水。」

 

「ありがと、手毬......優しい、ね。」

 

「ちっ違うから!その......同じステージに立つなら足を引っ張らないでほしい...だけ。」

 

 手毬は広から目線を逸らしてそう言った。広は「ふふっ」と笑うと手毬から渡されたペットボトルの蓋を開けて水を飲んだ。その姿を見て手毬が呟く。

 

「でも、入学した時と比べたらだいぶマシになったんじゃない?」

 

「へへっやった。手毬に、褒められた。」

 

「褒めてない!!!」

 

 二人が会話している姿を横目に星南は微笑むとレッスン室を後にした。外に出ると廊下にはこちらに向かって歩くコート姿の男性と目が合った。絆斗だ。

 

「あら?」

 

「ちゃっす。練習、頑張ってるか?」

 

「えぇ、順調よ。二人とも張り切ってて私も上級生として負けてられないわ。」

 

「一番星の姿を後輩達に見せねぇとな。」

 

「ふふっ、そうね。それと...辛木田さん。行方不明になっていた生徒やプロデューサー達が戻ってきたわ。」

 

「そうか!それは良かったな!」

 

 絆斗は安堵のため息を吐くと元気そうに笑った。しかし、星南は絆斗の長いコートでは隠しきれない数の包帯や絆創膏を悲しそうに眉をひそめて見つめていた。

 

「辛木田さん、ありがとうございます。」

 

「礼にはおよばねぇよ!救けたのは俺じゃなくて『仮面ライダー』だからな!」

 

「仮面ライダー......いいえ、それでも聞いてほしいの。もし、このまま生徒達が見つからなかったら初星学園は存続の危機に陥っていたでしょう。」

 

「......」

 

「私達じゃ手の打ちようがなかった。それなのに外部の人間であるあなたは協力してくれた。それだけじゃないわ。解決の糸口を見つけて初星学園を救ってくれた。」

 

「だから、それは仮面ライダーが......」

 

「初星学園の十王学園長の代わりに言わせてください。本当にありがとうございました。感謝しても仕切れません。」

 

 星南は深く頭を下げた。初星学園の一番星が自分に頭を下げている。こんな姿を他の生徒達が見たらどう思うのだろうか。絆斗が慌てて顔を上げるように促す。

 

「どっどういたしまして......こっこれでいいんだろ!だから頭あげてくれよ!」

 

「だから、この礼は私達で返すわ。そうでしょ、リーダー。」

 

 星南はレッスン室の方へと振り返った。ドアの向こうから広が顔を出している。絆斗と目が合った瞬間に「えへへ」と笑って手を振った。

 

「あれ、気づかれてた?やっほー絆斗。」

 

「広。いつからいたんだ?」

 

「うーーん。仮面ライダーってとこらへん、から?」

 

「だいぶ前から見てたんじゃねぇか!!」

 

「それじゃあ、インタビューを始めましょう。私達の一夜限りのユニットについて!!」

 

 

 

 

 

「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど。」

 

「どうしたの手毬?」

 

「なんで私と十王会長にしたの?」

 

「そうね、一夜限りとはいえユニットを結成するのだもの。聞かせてほしいわ。リーダー。」

 

「リーダー......なんだかそう言われると、照れる、ね。うーーん。『歌』かな。」

 

「歌?」

 

「うん。ダンスは遠くの人にはモニターを通してでしかはっきり見えない。でも、歌は違う。マイクを通してライブに来てくれたファンのみんな全員に届けることができる。」

 

「それが...理由?」

 

「それと......似たもの同士、だからかな。」

 

「似たもの同士?」

 

「うん。」

 

「ふふっ、でも広が言いたいことはなんだか分かる気がするわ。」

 

「そうですか?」

 

「それじゃあ、そろそろレッスンに戻ろう。辛くて楽しい練習が待ってる、よ。」

 

 

 

 

 

 

 数日後、どの企業よりもいち早く、より正確な情報で絆斗が書いた記事がネットニュースへと掲載された。掲載された瞬間、SNSを中心に大勢の人間によって拡散されていく。初星学園のアイドルを応援するファンや生徒達に大きな衝撃を与えることとなった。

 

「嘘!?広ちゃんと手毬ちゃんと星南先輩が一夜限りのユニット結成!?!」

 

「なにそれなにそれ!星南先輩、卒業ライブも控えてるのに!凄すぎるよ!」

 

「ふむむ、予想外のユニット結成ですのー」

 

「なんかいいかも。」

 

「うおー!持ってくれよー!俺の財布ーー!!!当たってくれーー!!」

 

「行ぎだいぃぃぃぃぃいぃぃい!!!!!」

 

「推しと推しがユニット結成???幻想じゃねぇよな...!?」

 

「もう披露する曲のリストも公開されてる!『Luna say maybe』がある!嬉しいなー私この曲で手毬ちゃんのファンになったから絶対ナマで聴きたい!!」

 

「広様は『サンフェーデッド』か!あの曲は素晴らしいからな!!みんなも聴いてくれよ!!」

 

「星南先輩は『Choo Choo Choo』だって!去年のHIFすごかったなー!!」

 

「最後の曲は知らない曲だ......」

 

「まさかオリジナルの新曲!?!」

 

「ライブが終わった後に各音楽サイトで配信予定......今してくれ!!!!頼むよ!!!」

 

 

 

 

 

 トップアイドルへの道は実に険しい。何度も高い壁が立ち塞がるだろう。心が折れそうになることもあるだろう。それでも夢に向かって彼女達は進み続ける。自身の限界を越えて高みを目指す。切らす息、滴る汗、心臓の痛みも心地良い。自分が選んで目指したその道は辛くて、楽しいものだから。

 

 

「土砂ぶりの豪雨の中でも、わたしたちは歩みを止めない。轟音の中、叫ぶように歌い続けよう。」

 

 

 

 

 

 

篠澤広・十王星南・月村手毬

 

ユニット名『Say-rain』

 

 

 

 

 

 

 

 

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