仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ   作:Ryo-ka

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怒りのスパーキングミ3

 今は使われていない町外れの廃工場。山積みされた壊れた自動車、周囲からは錆びた鉄のような異臭が漂う。俺とショウマ、そしてラキアはゴチゾウに案内されるままベロルスがいるこの廃工場へとやってきた。三人で壁の裏に身を潜めながら、顔を出して周囲を見渡すが人っ子一人いないように感じられる。

 

「いかにもグラニュートがアジトにしそうな場所だな。」

 

「気をつけて。どこから攻撃してくるか分からないから。」

 

「とくにお前はまだ怪我も治ってないんだろ。今からでも帰ったらどうだ?」

 

「んだと......!」

 

 確かに怪我はまだ完全に治ってねぇ。それでも、俺だって戦える。ラキアの言葉にカッとなって立ちあがろうとした俺を隣にいるショウマが腕を掴んで止めた。

 

「二人とも......ケンカしないで。」

 

「わっわりぃ......」

 

 俺の腕を掴むショウマの手は無意識だとは思うがかなり強かった。ショウマも必死なんだ。立ち上がりかけた俺は壁に寄っかかりながら再び身を潜めた。元はといえばコイツが煽るようなことを言うからだ。ラキアの方へ目線を向けると遠くを見張っていたラキアの目が一気に見開いた。

 

「おい、避けろ!!」

 

 ラキアはそう言うと俺とショウマを半ば強引に突き飛ばした。自分も逆方向へと避ける。そして次の瞬間、デカいドラム缶が俺達がさっきまでいた場所に向かって突っ込んできた。ドガッ!!という音を立てて壁にぶつかったドラム缶からコポコポとオレンジがかった透明な液体が溢れ出してくる。

 

「なんだよこれ......この匂いは...」

 

「まだ何かくるよ!」

 

 ショウマの声でハッとして上を見上げるとペンチやドライバー、錆びた包丁が降り注いできた。なんとか避けることができたが俺は見逃さなかった。降り注ぐモノの中にあった火がついたライターが先ほどぶつかったドラム缶から溢れ出した液体の中へ落ちていく様子。急いで二人に「逃げろ!!!」と声をかける。

 でも、少し遅かった。

 

 

ドガァアァァァァアァァァアァァァァアァァアアン!!!!!!!

 

 

 激しい爆風。立ち昇る黒煙。廃工場の中に燃え広がった赤い炎。やっぱりさっきの液体はガソリンだったか。吹き飛ばされて倒れた俺達はゆっくりと立ち上がった。くそ......気に入ってたコートが燃えて黒くなっちまった。

 

「はぁ...はぁ......二人とも....大丈夫?」

 

「あぁ、なんとかな。」

 

「へーやっぱりこれくらいじゃ死なないか。」

 

 聞き覚えがある声がする方へと顔を向ける。高そうな赤い毛皮のローブを身に纏った黒いスーツの長い長髪の女が爆発に巻き込まれた俺達を見て、ニヤニヤと楽しそうに笑っていた。

 

「ベロルス......!!」

 

「テメェ!!」

 

「気づかれるまえに殺して、ランゴ社長達に褒めてもらおうと思ったのになーー残念。」

 

「なんで......」

 

「なんであの時、自分の仲間のグラニュートを殺した!」

 

「なんでって......いらなくなったからだよ。オレはずっとそうしてきた。」

 

 ベロルスは至極当然かのように話し続けた。ダメだ。コイツは話が通じねぇ。フリーライターの仕事の中でこういう奴には何度も話を聞いたことがある。自分の夫を手にかけたことを必死に隠す主婦もいたが、コイツは隠そうともしねぇ。命を奪うことに何も躊躇がねぇやつだ。

 

「やっぱりあの噂は本当だったか。」

 

「噂?」

 

「貿易商の息子は親の金を使って邪魔な奴を始末している......昔の記事にあった。」

 

「うーーんその噂は半分合ってて半分間違い...かな。正解は『オレが殺した奴を親父の力で隠蔽した』だね!」

 

「なんて野郎だ......お前はここにあるゴミ以下だな。」

 

 ラキアはベロルスを睨みつけながらそう言い放つがベロルスは口角を思いっきり上げて不気味に笑うと首を横に振った。

 

「ラーゲ9...ヴラムだっけ?君もグラニュートなら知ってるでしょ?グラニュート社会は『力』による圧倒的支配!オレは力がある家に生まれ、生まれ持った力という才能があった。つまり、誰よりも自由に生きる権利がある!!」

 

「それが...命を奪うことなのか!」

 

「そうだよ!」

 

 ベロルスはそう言うと服をめくり、腹部の口から人型のクッキー状の何かを引き抜いた。ベロルスの瞳が緑色に発光して異形へと変化していく。戦闘態勢に入ったってことだ。俺とラキアはヴラスタムギアを腰に巻き付けて、ショウマはパーカーのチャックを開いて腹部を露出させた。

 

「二人とも...いくよ。」

 

「あぁ...」

 

「おう。」

 

 俺はチョコフラッペのゴチゾウを取り出すと一郎のストロー部分を回転させて勢いよくヴラスタムギアに装填した。

 

「アイツ!いてこますでーー!!!」

 

「許せません!」

 

『『フラッペ!』』

 

『オン』

 

『ケーキ!』

 

『カップ...オン』

 

『イート!ケーキ!イート!ケーキ!』

 

 

「「「変身!!!」」」

 

 

 俺とラキアはヴラスタムギアのレバーを振り下ろす。ショウマは腹部のガヴのピンクのボタンを勢いよく叩きつけた。ショウマの頭上から絞られた白いホイップクリームが降り注ぎ、イチゴを乗せてケーキを形成して切り分けられると各部位の装甲に変化し装着される。

 

 

『『フラッペーーーカスタム!!シャリシャリ!!!』』

 

『プディング・ヴラムシステム』

 

『ケーキング!アメイジング!!!』

 

 

「さぁ!!楽しく殺し合おうか!!!」

 

「お前を倒して......俺達が勝つ!」

 

『ガヴホイッピア!』

 

 仮面ライダーガヴに変身したショウマはスピア形状の武器である『ガヴホイッピア』を構えるとベロルス目掛けて走り出した。ベロルスは手を指揮棒のように振り下ろした。あの攻撃がくる。

 周囲の廃工場の壊れたモノがガタガタと揺れ始め、ガヴに向かって襲い掛かった。ガヴはガヴホイッピアのホイップ部分を強く押して、自分に向かってくるモノに向かってホイップクリームを何発も放つ。

 

「はぁ!!」

 

『ホイップパーティー!』

 

 ホイップクリームが人の形へと変形し、槍を持った『ホイップ兵』が出現した。数体のホイップ兵が槍をくるくると回転させて降り注ぐモノを全て弾き飛ばしていく。

 

「へー面白いね!でも流石にこれはどうかな!!」

 

 ベロルスは両手を広げて勢いよくパン!と手を叩く。先ほど見ていた山積みになっていた数台の廃車が宙を舞い、蚊を潰す要領でホイップ兵達を潰し始めた。廃車の裏側部分から潰されたホイップ兵達の白いホイップクリームがポタポタと滴り落ちていく。

 

「なっ!!」

 

「俺達もショウマに続くぞ!」

 

 ヴラスタムギアの天面のフラッペのゴチゾウ達を外し、チョコドンを天面へと押し当てた。ヴラスタムギアの中へと吸い込まれていき、ホワイトチョコの拳銃『チョコドンガン』が出現した。二丁拳銃のガンマンスタイルで走り出す。

 

『プルイン!』

 

『チョコドンガン!』

 

「いくぜーー!!」

 

「おい、待て。」

 

 俺が走り出した瞬間にヴラムに変身したラキアが手を掴んできた。

 

「なっなんだよ急に......」

 

「お前も来い。」

 

「は?」

 

 ヴラムはため息を吐くと俺を掴んだ腕とは反対の腕から青い触手を出した。廃工場の屋根を見つめ、骨組みの鉄の棒目掛けて巻きつけた。そのまま俺の腕を掴んだまま上昇を始める。何を考えているんだ?ある程度の高さまでくると振り子のように前後に揺れて勢いをつけ始めた。

 

「おっおい!なんだよこれ!......まっまさか!!」

 

「そのまさかだ。行ってこい!!!」

 

「嘘だろーーーー!!!?!」

 

 かなり勢いがつくとヴラムは俺をガヴとベロルスがいる場所に向かって投げ飛ばした。俺の身体が廃工場の宙を舞う。奇襲にしては危なすぎんだろ!!!あーーーくそーー!!こうなったらやるしかねえ!!!

 

「気合い入れろよ一郎!」

 

「高すぎんやろーーーー!?!?!」

 

「あっあんちゃーーーーん!!!!」

 

『チョコ!』

 

 一郎をヴァレンバスターに装填しレバーを閉じる。銃口に赤いエネルギーが集中していく。ベロルス目掛けてヴァレンバスターとチョコドンガンを構えて同時に引き金を引いた。反動で少し後ろに下がってしまう。

 

『チョコ!!』

 

『チョコドンバースト!!!!』

 

「いっけぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇ!!!!!!」

 

 二発の弾丸がベロルスに向けて真っ直ぐな軌道を描き、ベロルスの身体へと命中した。爆発のせいでベロルスの姿は見えないが強力な技二発同時に喰らったんだ!ただじゃおかねぇはずだ!!そして......俺も。悟った顔で下の地面を見つめる。この高さから落ちたら痛えんだろうなー

 

「うおーーーーー!!!落ちるーー!!!!」

 

「絆斗!」

 

 ガヴはガヴホイッピアのホイップ部分を押して、俺が落下するであろう地点に大量のホイップクリームの山を作った。そのまま落下して俺はホイップクリームの中へと沈んでいく。なんとか怪我なしで着地できたが周りが雪景色よりも真っ白だ。ホイップクリームを掻き分けて外へ出る。

 

「大丈夫?」

 

「まさか人生でホイップクリームに埋もれることがあるなんてな。」

 

「いい経験ができたじゃないか。」

 

「ラキア、テメェ......」

 

「そういう話は後にしてもらえる?」

 

 身体中についたホイップクリームを払い落としながら、ガヴの横に立つ。後ろからやってきたヴラムも合わせ、三人が同じ地点に集まると立ち昇る炎の中から黒い人影がゆっくりと近づいてくる姿があった。ベロルスだ。傷一つついてねぇ。

 

「マジかよ......」

 

「あの攻撃を喰らってもか。」

 

「うーーん。ハンデおーわり!」

 

「ハンデ?」

 

「三対一の時間は終わり。ここからは『オレ達』がいく。」

 

「どういう意味だ?」

 

 ベロルスは両腕をクロスさせてて力を込め始める。唸り声と共に両肩の犬のような顔の口が開き、口の中から黒い煙がモクモクと吹き出し始めた。吹き出された黒い煙は人の形となって、数秒後にはベロルスと同じ姿へと変貌した。

 

「なんだと......」

 

「「「どう?これで三対三だ。」」」

 

「ベロルスが三人......」

 

「ニエルブさんの改造手術のおかげだ。これで部下もいらない。一人だけで楽しめる。」

 

「ニエルブ!!絆斗......これって。」

 

「あぁ、あの芸術家を狙った美術商のグラニュートと同じってことか。しかも本体含めて三体もいやがる......」

 

「「「さぁ!これでまだまだ遊べるね!!アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

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