仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ 作:Ryo-ka
三体になったベロルス達は笑い終えると一斉に俺達に向かって襲い掛かってきた。ただでさえ、一体でも面倒くさいのに!俺に向かって殴りかかってきたベロルスの分身の拳を間一髪でかわす。腰に巻きつけたヴラスタムギアのレバーを上下させて拳に氷塊を纏わせた。
『フローズン!』
「うおりゃ!」
「あははっ!」
何度もベロルスの分身の身体に拳を叩きつけるが効いているように感じねぇ。攻撃を喰らうことを楽しんでいるのか不気味にずっと笑ってやがる。本当に気味が悪いやつだ。
「くそ!」
「あれーもう終わりー?それじゃーオレの番だね。」
ベロルスの分身はそう言って指をパチンと鳴らすと周囲の錆び付いたクギや鋭いガラスの破片とかが浮かび上がり、ベロルスの分身の右腕を覆うように集まっていた。まるで棘付きボクサーグローブだ。「いっくよー!」と右腕をぐるぐると回して俺に殴りかかる。その攻撃は避けることができたが、避けた瞬間に別の場所からものすごい速さで飛んできた太い鉄パイプが俺の後頭部に直撃した。
ガンッ!!
「ぐあっ!!」
「あはは!引っかかったね!」
「絆斗!」
脳が揺れる。叩かれた後頭部が熱い。思考が一瞬できなくなる。そのせいでうまく立っていられず、膝から崩れ落ちた。相手が待ってくれるわけもなく、ベロルスの分身は棘付きグローブで俺の顔面を思いっきり殴りつけた。鋭いガラスの破片や釘が皮膚の中へとめり込んでいく。衝撃で吹き飛ばされた俺は廃工場の柱へと背中から叩きつけられた。
「ぐっ!!......あっあ...が。」
「いえーい!決まった!」
「絆斗、待ってて!俺がいますぐそっちに!」
「赤ガヴ!オレの相手はキミだよ!他のところに行っちゃダメ!」
俺の方へ駆けつけようとするガヴの前にベロルスが立ちはだかる。たぶんあれが本体だ。立ちはだかった瞬間にガヴホイッピアで切り掛かった。ベロルスはそれをくるっと華麗にかわす。
「おっと!いきなりは危ないな。」
「そこをどけッ!!」
「いやだね。」
ベロルスはニヤッと笑う。ガヴホイッピアが静かに震える。ガヴは無言でガヴホイッピアを構えると次々とゴチゾウ達を装填してガヴホイッピアの先端から大量の武装したホイップ兵達が横一列に生まれ始めた。
『デコレーション!!』
『デコレーション!!』
『デコレーション!!』
『デコレーション!!』
『デコレーション!!』
それぞれグミ、ポテトチップス、マシュマロ、チョコレート、キャンディーの計五体の武装したホイップ兵達がベロルスに向かって一斉に走り始めた。ベロルスは五対一を楽しんでいるのかはしゃぎながらホイップ兵達の相手をしている。その間にガヴは腹部の赤いガヴからケーキングゴチゾウを取り外し、アイスクリームのゴチゾウ『ブリザードソルベエ』を取り出した。
『どうすんべえ』
「アイツを...倒す!」
『いくべえ』
赤いガヴの上顎を開き、ブリザードソルベエを食わせるとレバーを回転し始めた。ガヴの身体から白い冷気が溢れ出していく。
『イート!アーイス!イート!アーイス!』
ピンク色のボタンをガヴホイッピアの持ち手を使って勢いよく叩きつけた。ブリザードソルベエのコーンの部分が三つに展開し、中から別の顔が飛び出す。ガヴを中心に円を描くようにアイスクリームが出現し、ガヴの身体へと装着されていった。
『ヨオオオオォォオ!!』
『ブリザードソルベ!ヒエヒエ』
『カッキーン!』
変身した瞬間に腹部の口から吐き出させたガヴガブレイドを手に取って走り出した。走りながらブリザードソルベエのコーンのブレードを回転させ、口から吐いた冷気でガヴガブレイドの刀身に鋭い氷を纏わせる。右手には氷を纏ったガヴガブレイド、左手にはガヴホイッピアの二刀流でベロルスへと攻撃していく。
「そうだ!面白くなってきた!!もっと来て!!!」
「黙れ!!」
「ショウ...マ......」
「はいはい終わり終わり。あーあ、もうキミ飽きちゃった。」
俺の前に立つベロルスの分身はつまんなそうにため息を吐くと俺に向かってゆっくりと歩き始めた。ヴァレンバスターを向けて弾丸を放つが手が震えて引き金も引けねえ。ガヴとヴラムも来れねえ以上、かなりまずい状況みたいだ。死を覚悟したその時だ。ベロルスの分身の後ろに乱雑に置かれた物の中に見覚えがあるポスターがあった。
三人のアイドルが大きく写っている。広と星南と手毬のユニットの合同ライブポスターだ。
「なんで...あのポスターがここにあるん...だ......」
「あーあれ。次の『マト』だよ。」
「......は?」
「アイドル?っていうのは観客を幸せにするんだよね。それを利用させてもらおうと思って!観客の中に混ざって後ろから幸せそうな人間を静かにヒトプレスにしていく。観客達は遠くのアイドルに夢中で近くの人がいなくなろうと気づかない。ニエルブさんの改造手術で得た分身を使えば効率良く点数を稼げる。どう!すごくいい作戦でしょ!!」
「なん...だと......」
拳を強く握りしめた。モヤがかかったように虚ろとしてた頭にどんどん血が巡っていく。目を見開き、アイツら三人が必死で汗水流しながらレッスンをしている姿が脳内でフラッシュバックしていった。そして、怒りが込み上げてきた。
「......さねぇ。」
「うん?」
「許さねぇ!!うおぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉお!!!!」
「はっ!?」
さっきまで動かなかった足が途端に動かせるようになった。勢いに任せて、ベロルスの分身の腹部を掴むとタックルして突き進んでいく。ベロルスの分身は突然の俺の行動に困惑しているようだ。俺を引き剥がそうと棘付きボクサーグローブで俺の背中を何度も叩く。死ぬほど痛え!!それでも俺はベロルスの分身を掴んで離さずひたすら押し続けた。
「おい!離せ!!」
「アイツらの夢をテメェらのマトにされてたまるかぁぁぁあ!!!」
「どこに向かってるんだ!!」
俺が向かってる場所はただ一つ。ほら!少しずつもう一体の分身と戦っているイケスカねぇプリン野郎の姿が見えてきたぜ!!
「ヴラム!」
「あ?......おい、なんでこっちに向かってきてる!」
「お前が戦ってるソイツも俺に向かって投げつけろ!!」
「は?」
「いいからやれ!!!!」
「はーーだるっ。」
ヴラムは面倒くさそうにしながらも、腰に巻きつけたヴラスタムギアのレバーを上下させて右腕にエネルギーを溜めると目の前にいるベロルスの分身を殴りつけた。殴られた分身は吹き飛ばされて、俺に向かって突っ込んでくる。
『カップ...Ready』
『プディングクラッシュ』
「はぁ!!」
「うわーーーー!!!!」
俺に向かって突っ込んできた瞬間に俺は掴んでいたベロルスを突き飛ばし、自分が巻いているヴラスタムギアのレバーを何度も上下させた。
「気合い入れろよ二人とも!!」
『フリージング!』
『フローズン!!!』
『フリージング!!!』
「「何のつもりだ!」」
何度もレバーを上下させて氷を纏わせる技を使用する。ぶつかったベロルスの分身達の身体を急速に氷で覆わせて、凍らせていった。一瞬でベロルスの分身達の氷漬けの完成だ。
「「身体が凍って......動かない!」」
「今だ!やれ!ヴラム!!!!」
「だるっ......俺に命令するな。......あぁ、やってやる!」
『セット』
ヴラムはヴラスタムギアに装填していたプリンのゴチゾウを取り外した。ヴラムブレイカーへと装填し、弓を一気に引く。周囲に鋭い槍のような形状の矢が何本も出現して、氷漬けされたベロルスの分身達に狙いを定める。そして弓から指を放すと同時に飛んでいった大量が矢が氷漬けされたベロルスの分身達に突き刺さって貫通していった。
『ヴラムシューティング!』
「「ぐあぁあぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」」
「よっしゃー!!」
「今回ばかりはお前の作戦勝ちだな。」
「はっ!だろっ......人間の根性舐めんな、よ。」
バタッ!!
力が抜けた俺はそのまま受け身も取れないまま倒れてしまった。首を動かして本体と戦っているはずのガヴの方へ目線を向けた。今の時間でさっき出したホイップ兵達は全滅してしまっている。ガヴも腹部に装填していたアイスのゴチゾウが溶けてしまって、元のショウマの姿に戻ってしまっていた。
「ショウ...マ!」
「ショウマ!」
ヴラムが駆けつけようとするが、それに気づいたベロルスは再び両肩の犬の頭部の口を開き、黒い煙を発生させて分身を生み出した。分身はすぐさまヴラムに襲い掛かる。ショウマの元へ辿り着けない。身体がもう動かねぇ。なんとか動く腕を前に突き出して匍匐前進のように進もうとする。
「さぁ、分身を何度倒したところで意味はない。オレがいる限り何度でも復活する!」
「負けてたまるか!」
傷だらけのショウマはそれでも戦おうとベロルスの顔面を殴りかかった。それでも何のダメージも与えられない。蚊を手で払うように弾かれ、数メートル先まで飛ばされてしまう。地面に這いつくばったショウマはベロルスを睨みつけた。
「ぐあっ!!」
「もう強い眷属もいないみたいだね。残念、もう少し遊びたかったけど、そろそろ片付けといこっか。」
パチン
ベロルスは指を鳴らすと手を指揮棒のように構えて動かし始めた。周囲の廃車や割れたコンクリートの壁やドラム缶などの大きなガラクタが浮き上がっていった。あれを使ってショウマや俺達を押し潰す気らしい。
「じゃあ、バイバイ。」
「俺は......」
「うん?何か言い残すことがあるの?」
「俺はこの世界に来て...いろんなことを学んだ。この世界で出会った美味しいお菓子や食べ物は、作ってくれた人達の時間や食材になった生き物。たくさんの『命』でできている!だからこそ、大切な命に感謝を込めて『いただきます』っていうんだ。」
「ふーーーん......で?」
ショウマは身体を起こすとポケットからグミを取り出して袋を勢いよく開けた。俺がこの間ショウマにやったコーラのグミだ。
「でも、お前は違う。......人間やグラニュート!自分の快楽のためならどんな命も軽率に奪う!!お前のことが絶対に許せない!!!」
「それが最後の言葉でいいの?」
ショウマは袋からコーラグミを一粒摘み上げると「いただきます。」と言って、口の中へと運んだ。ベロルスはその様子を不快そうに見つめ、今すぐにでも宙に浮いているモノをぶつけたそうな顔をしている。
「口の中でコーラの甘みと苦味がシュワシュワと弾けながら広がっていく!!」
ショウマの腹部の赤いガヴの口が上下して上顎が思いっきり開くと一匹のゴチゾウが勢いよく飛び出してきた!!見たことがないコーラグミのゴチゾウだ!!
「シュワッチワー!!」
「君はコーラグミのゴチゾウだね。」
「シュワワァ!」
「うん、いこうか。......アイツをすぐに倒そう。」
ショウマは腹部の赤いガヴの上顎を開けて、コーラグミのゴチゾウを舌の上へと乗せて上顎を閉じた。レバーを回していくうちにショウマの全身をビリビリと黄色い稲妻のようなオーラを纏い始めた。背後からコーラが入ったガラス瓶が出現する。
『グミ!』
『イート!グミ!イート!グミ!』
「......変...身。」
ショウマの瞳が紫に発光し、赤いガヴのピンクのボタンを勢いよく叩きつけた。コーラグミのゴチゾウが雄叫びをあげると共に背後に出現したコーラの瓶の蓋がカン!といういい音を立てて外れ、中のコーラが噴火のように噴き出す!降り注いだコーラの液体がショウマの全身を覆っていった!茶色い液体の中から黄色の目がベロルスを睨みつけ、液体が装甲へと凝固していく。
『スパーキングミ!ジューシー!!!!』
見たことがない新しいガヴの姿。コーラみたいな色で全身に炭酸の気泡のようなマーク、雷のような鋭い棘状の装甲を身に纏っている。
「力が......ビリビリ湧いてくる。」
「へーー面白そうな姿になったじゃん。じゃあ続きといっこ......ぐっ!!?!」
次の瞬間。俺が瞬きをした時にはもう、ガヴは数メートル先にいたベロルスの顔面を握り潰すように掴んでいた。そのまま体重を乗せてベロルスの身体を思いっきり地面に叩きつける。今の一瞬であの距離を縮めたのか?
「速ェ......」
「なんて速さだ。」
「なっ!?なんでだ!!!!なんでオレが!!地面に顔を!!」
「続きなんてない。すぐに......終わらせる!!!」