仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ   作:Ryo-ka

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怒りのスパーキングミ5

 地面に叩きつけられたベロルスを置いてガヴはヴラムの方へと走り出す。地面を勢いよく蹴りつけると、さっきと同じように次の瞬間にはヴラムと戦っていたベロルスの分身の顔面を蹴り飛ばしていた。

 

「ぐあぁ!!」

 

 ベロルスの分身は蹴り飛ばされた勢いのまま廃工場の壁を突き破っていく。数秒後に壁の向こう側から爆発音が聞こえてきた。ガヴはヴラムの無事を確認するとガヴガブレイドを構え、今の間に立ち上がったベロルスの本体に向かって投げ飛ばす。まるでメジャーリーガーの豪速球のような速さで投げ飛ばされたガヴガブレイドをベロルスは間一髪で交わすことができたが、ベロルスの頬に擦り傷ができてしまう。手で頬を触り、手のひらに広がった血を見て手を震わせた。

 

「オレの顔に...よくも!!!」

 

 怒りの形相を露わにしたベロルスはガヴがいる方に顔を向け、睨みつけるがそこにガヴの姿はない。周囲を見渡して必死にガヴを探す。どこにも見つからない。そして背後から流れる声に気がついて振り返る。

 

『チャージミー!チャージミー!』

 

「なっ......」

 

 腹部の赤いガヴのレバーを回転させるのをやめ、ピンク色のボタンを勢いよく叩きつけた。赤いガヴの上顎が思いっきり開くと同時にコーラの瓶が現れる。今にも破裂しそうなコーラの瓶。蓋からコーラが漏れ出ている。ゴチゾウの雄叫びを合図にコーラの瓶が倒れ、電流を纏ったコーラの濁流が勢いよくベロルスに向かって噴き出した。

 

『スパーキングミショック!!!』

 

「ぐっ!ぐぁぁあぁぁあ!!!!」

 

 ベロルスは両腕をクロスさせて身を守ろうとするが、電流を纏ったコーラを浴びた瞬間にベロルスの全身が震え始めた。感電したのかビリビリと身体から火花が散る。ベロルスはそのまま膝から崩れ落ちるように地面にバタッと倒れていく。倒したのか?俺がそう思った瞬間、ベロルスは地面に手をついてガヴを見上げた。

 

「まだだ!まだオレの力はこんなものじゃない!!オレが負けるわけがないんだ!!!!」

 

「アイツ、まだ立ち上がるのか......」

 

 ベロルスは膝をつきながら立ち上がると自分が持っている力を全て使って指揮者のように指を構え、振り回し始めた。周囲の廃車や巨大な瓦礫、廃工場の折れたコンクリートの柱。今までの数倍以上の大きさと量のモノを浮かび上がらせ始めた。どうやら切迫詰まっているらしい。それらを全てガヴに向かって投げつけていく。

 

「グチャグチャになって消えろ、赤ガヴ!!!!!!!!!」

 

「ショウマ!!」

 

「消えるのは......お前だ!」

 

 ガヴはそう言うとベロルス目掛けて飛び上がった。投げつけられていく廃車や瓦礫を次々と蹴って飛び移りながら、ひたすら全速力で前に向かって進んでいく。瓦礫を飛び移りながら勢いを殺さずに前へと進む姿はまるでスーパーボールみたいだ。......この表現で合ってんのか分かんねーけど。ものの数秒でガヴはベロルスが投げつけたモノを全て潜り抜けて、ベロルスの目の前までやってきた。

 

「そん......なグッ!!」

 

 ベロルスの腹部をガヴは目にも止まらぬ速さで何度も殴りつけ、ベロルスは後方に向かって吹き飛ばされてしまった。ベロルスは思いっきりドラム缶に背中を打ちつけられ倒れてしまう。もう虫の息だ。あぁなったら助からねぇ。ガヴは地面に俯いて倒れるベロルスにゆっくりと近づいていった。途中で合流したオレンジ味のグミのゴチゾウを掴み取り、腹部の赤いガヴに装填した。

 

『グミ!』

 

『イート!グミ!イート!グミ!』

 

「はぁ...はぁ......」

 

『キッキングミ!』

 

 ガヴの右足にブーツの形をしたオレンジ色のグミのアーマーが生成された。ベロルスは上半身を上げ、ガヴを見つめると小声でうわ言のようなことを言い始める。ガヴはその姿を見下ろしながら、腹部の赤いガヴのレバーに手をかけた。それを見て「待て!!」とうわずった声でベロルスは声を上げ、両腕を前に伸ばして静止させようとする。だが、ガヴはレバーを回転させる手をやめない。

 

「わっ分かった!オレの負けだ!!闇菓子にはもう関わらない!もっもう人は攫わないし......殺さないィ!!」

 

『チャージミー!チャージミー!』

 

「だから頼む!!殺さないでくれ!!」

 

『チャージミー!チャージミー!』

 

「頼む......頼む!!」 

 

『チャージミー!チャージミー!』

 

「死にたくないんだ!!!!!!!」

 

『チャージミー!チャージミー!』

 

「見逃してくれ!!!」

 

「......黙れ。」

 

「ヒィィ!!」

 

 この時のショウマの感情は変身してるせいで見えないが、俺には言動からどんな顔をしているのかなんとなく分かるような気がした。あんまりショウマにはしてほしくない顔だ。アイツは美味いもん食って、無邪気に幸せそうにしてる笑顔が一番だ。

 ガヴは必死に命乞いをするベロルスを無視して自身の赤いガヴのピンクのボタンを勢いよく叩きつけた。右足のオレンジ色のグミブーツにエネルギーが溜まっていく。アイツはショウマの許容範囲をもうとっくに超えちまったんだ。どんなに命乞いをしようと今のショウマには『選択肢』も出してもらえねぇよ。ガヴは上空に飛び上がると右足を突き出して、蹴りの態勢に入った。ベロルスはもう逃げる余力もないみたいだ。

 

 

『キッキングミキック!!!!』

 

 

「嫌だ!嫌だ!嫌だぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁ!!!!!」

 

 ベロルスの断末魔が廃工場の中でこだまする。クズみてぇな敵とはいえ、流石にこんな悲鳴をあげられると胸が痛え。ガヴの足に踏み潰されたベロルスはそのまま爆発を起こし、廃工場の外まで噴き出すほどの爆風が巻き起こった。これで終わったんだ。そこで俺の意識は途絶えてしまう。俺っていつもこんなんばっか......だな。最後まで見てられねぇ。

 

 

 

 

 

 少しずつ意識が戻っていく。遠くから誰かの声が聞こえてきた。最初はぼんやりとしていたが次第にはっきり聴こえるようになってきた。目を擦って視界をはっきりさせていく。ぼんやりでも分かるこの雑貨に溢れたカラフルな室内は......

 

「またご贔屓にー」

 

「はーいお疲れ様でーす!あ、もうすぐ雨が降るらしいんで気をつけてくださーい!」

 

「はい!そのために傘持ってきたんで!では!これで!」

 

 ドアが閉まる音がする。俺は目をゆっくりと開きながら、上半身を起き上がらせた。どうやら俺ははびぱれのソファで寝てたらしい。身体には包帯が巻かれている。窓の方を見ると日が沈んで夜になっている。そんなに寝てたのか?俺が周囲を見回しているとテーブルに肘を乗せてぼーーっとしているイケスカねぇアイツと目が合った。俺の姿を見て、鼻で笑うとキッチンの方へ声をかけた。

 

「おい、バカが起きたぞ。」

 

「あ?誰がバカだって!イッテェェ!!?!」

 

 声をあげたら脇腹が超痛ぇぇぇえ!!限界突破した筋肉痛みたいな痛みだ。腹を抑える俺の姿を見てまたラキアの野郎は笑いやがった。そういうお前こそ顔に絆創膏つけてんじゃねぇか!!!俺がソファから立ち上がろうとしているとショウマと社長がやってきた。なんか部屋の中から美味そうな匂いがする。

 

「おはようハンティー!ラーメンの出前頼んだんだけどハンティーも食べるよね?」

 

「らっラーメン?」

 

「うん!幸果さんが頼んでくれたんだよ!絆斗も食べるよね!」

 

「あっ......うん。」

 

 ショウマがいつも通りのショウマに戻ってる。現実だと何時間も経ってるが、俺の中だとあの廃工場から一瞬でここまで場面転換したみてぇだ。この間の時間に何が起こったのか。どうやってここまで運ばれたのか俺は知らねぇ。とりあえず、今俺が感じてるものは......空腹感!

 

「ちょうど腹減ってたんだよなー!何ラーメンだ?」

 

「豚骨だよ。炒飯も餃子もあるって!」

 

「やりー!」

 

「おい、このラーメンとかいう食べ物。器の方が美味そうだな......」

 

「「食べちゃダメ!!?!」」

 

「それ借り物だから!あとで返すから!!」

 

「はぁ......だるっ。」

 

「じゃあ、社長!ゴチになりまーす。」

 

「え?あーーハンティーの分は自分で払ってね。」

 

「俺だけ奢りじゃねぇのかよ!!?!」

 

「あったりまえじゃん!!!」

 

 俺だけ自分で払うのかよ......もう一回同じソファに座ってショウマ達の姿を見つめた。出前でとった料理をどんどんテーブルの上に並べていく。テーブルいっぱいの美味いもん。ダチや仲間、家族と一緒にテーブルを囲むんだ。それで今日あったことを話す。やっぱりこういう日常が一番幸せだよな。そう改めて実感した。

 

「ハンティーも手伝って!」

 

「おう!何すればいい?」

 

「じゃあ冷蔵庫の中に飲み物があるから、コップも持ってきて!」

 

「任せとけ!」

 

「あっ......雨。」

 

 ショウマがそう言って窓を見つめた。結構な大雨だな。さっきまで全然降る感じなんてしなかったのに。窓の外側に水滴がついて曇っていく。ショウマはそれを指でなぞって円を描く。遠くからゴロゴロと雷の唸るような音が聞こえてきた。

 

「うわー天気予報だと小雨のはずだったのに。」

 

「こりゃ結構降るぞ。あっ......やべ!」

 

「どうしたの絆斗?」

 

「傘持ってきてねー!雨に濡れながら帰るのは勘弁だな。最悪、電車止まるかも......」

 

「ハンティー傘貸そうか?」

 

「マジか!助かる!」

 

 雨が止む気配はない。豪雨の音を紛らわすようにラキアがテーブルの上に置いてあったテレビのリモコンを手に取って、テレビをつけた。地上波のニュース番組。相変わらず失踪事件についてが取り上げられている。あんまり今はそういうニュースは見たくねぇんだがな。ラキアも同じ気持ちらしく呟くようにこう言った。

 

「他のに変えるか?」

 

「そうだ......あっ待て。」

 

「続いては芸能ニュースです。初星学園、一夜限りのユニット結成。街中のファンの声を調査してみました。」

 

「やっぱこのままで。」

 

 

 

 

 

 雨の夜。濡れたアスファルトの道路に行き交う自動車のライトが反射する。賑わう繁華街とは対照的に細い路地裏を一人のボロボロな女性が建物の壁に手をかけながら歩いていた。ガヴ達に敗北したベロルスだ。白い髪に赤い血が滲んで滴っていく。途中で足元に落ちてあったレジ袋に足を取られて、倒れてしまった。

 

「痛い...痛い......助...けて。寒い...寒い......」

 

 そう言ってベロルスはうずくまった。雨が止むことはない。死に損ないの彼の体温を次々と奪っていく。すると路地裏の奥、暗闇からピチャピチャと水たまりの上を歩く足音が聞こえてきた。音がする方に反射で顔を上げる。そこには丸い眼鏡をかけた茶髪の男性の姿があった。

 

「こっ酷くやられたみたいだね。ベロルス君。」

 

「その......声、ニエルブ、さん...です...か?」

 

「君の生命力には目を見張るものがある。でも、このままじゃ君は死んじゃうね。本当に、残念だよ。」

 

 ニエルブがそう呟くとベロルスはニエルブの足を掴んだ。ニエルブの服が水と血で染みていく。ベロルスはニエルブを見上げてこう言った。

 

「お願いします!オレを助けてください!!なんだってします!!だから......死にたくありません!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ニエルブの口角がわずかに上がった。眼鏡の位置を片手で戻してしゃがむとベロルスの肩をポンポンと優しく叩いた。

 

「その言葉が聞きたかったんだ。実はね、僕の『研究者仲間』が面白いものを作ってね。どうしても僕はそれを使って「あること」をしてみたいんだ。でも、実験になってくれる人がいなくて......ねぇ、今なら君の命救ってあげるけど。どうする?」

 

 ニエルブがそうベロルスに言うと先ほどまで死にかけだったベロルスの顔に生気が戻っていく。そして口角を限界まで上げ、顔から血を流しながら悍ましい笑みを浮かべてみせた。雷が落ち、濡れたベロルスの顔に雷の光が反射する。

 

「はい!!お願いします!!」

 

 

 

 

 

 初星学園の寮。とある一室に一人の女子生徒が窓の向こう側の雨を眺めていた。スマートフォンの画面をつけて時間を確認する。もうこんな時間か。そう思ってベッドの上へと寝そべった。スマートフォンの写真フォルダをぼーーっと眺めていると自分と姉が写った写真が目に入った。姉は勝ち誇った顔でトロフィーを持っていて、その横にいる自分は悔しそうな表情を浮かべている。

 

「お姉ちゃん......次こそは絶対勝ってやるから覚悟しろーー!!」

 

 そう言って少女は画面の中の大好きな姉を指差して、くすくすと笑うとスマートフォンの画面を消した。暗い天井を見上げながら目を閉じた。

 

「よし!明日はお休みだからゆっくり休むぞー!」

 

 少女は深呼吸をして深い夢の世界へと落ちていく。夢の中でくらい大好きな姉に勝ってみたい。眠る彼女の上をどこからかやってきた美しい蝶はゆっくりと飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、美しい『悪夢』の世界へ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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