仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ 作:Ryo-ka
ゴールを目指せ
Good Luck.
健闘を祈る
雲一つない晴天。澄んだ空気に小鳥達の囀りが響き渡る。そして、地球儀のように回る今にも落ちてきそうな欠けた赤い月がこの『陸上競技場』を見下ろしていた。選手の親族や同じ部活動の仲間、友人達が次々と競技を見学するためにスタンドへと入っていく。
今日はここで女子陸上大会が行われる。出場する選手達がそれぞれストレッチや準備をするなか、一人の少女が廊下に設置されたベンチに座っていた。誰かを探しているのかキョロキョロと辺りを見渡してため息を吐く。そこに一人の男性が近づいてきた。黒いスーツに赤いネクタイをしている。
「浮かない顔をしてどうしたんだい?花海 佑芽選手。」
「え、どうしてあたしの名前を?」
佑芽はそう言って男性を見上げた。男性はポケットから自身の顔が貼られたIDを彼女に見せる。
「俺はこの大会の審判だからね。選手の名前は把握しているんだ。」
「それじゃあ!お姉ちゃん知りませんか!!!」
「お姉ちゃん......花海 咲季選手のことかな。」
「はい!!あと一時間で始まっちゃうのに会場にいないなんて絶対に何かあったんです!!お姉ちゃんは大事な大会に遅刻するような人じゃありません!!!」
佑芽はベンチから立ち上がって男性へと大きな声で訴えた。数秒経って佑芽は自分が熱くなり過ぎたことに気がついたのか「すっすみません......」と呟いて再びベンチへと座る。その姿を見た男性は懐から紫色の球体を取り出した。
「なんですかそれ?」
「見てて。」
男性は少し微笑えむと不思議そうな顔をする佑芽を見つめながら、その紫色の球体を指で弾いてハンドスピナーのように回転させた。
『ガヴ』
中に描かれている紫色のヒーローがアニメーションのように動き出す。すると、先ほどまで何も持っていなかった彼の手の中に色とりどりのグミが入った可愛らしい袋が出現した。佑芽は「えぇぇえぇえぇぇぇぇ!?!?」と廊下に響き渡るほどの大きな声で驚くと瞳をキラキラとさせながら男性を見つめた。
「これどうやったんですか!?!」
「ちょっとした手品さ。競技前に糖分の補給は大切だ。」
男性はそう言うと佑芽にグミが入った袋を優しく手渡した。「いいんですか!」佑芽は嬉しそうに頭を下げて礼を言うと紫色のリボンを解いて袋を開ける。紫色のグミを掴んで天井についた蛍光灯にかざして見せた。蛍光灯の光を吸収してグミがキラキラと光り始める。「きれーい。」佑芽はそう呟くと柔らかな肌触りがする紫色のグミを口に放り込んだ。口の中にぶどうのジューシーな甘みが広がっていく。
「おいしーです!!」
「それは良かった。お姉さんのことは上に確認をしてみるよ。君は本番まで英気を養っておくんだ。」
「はい!!!ありがとうございます!!」
「それじゃあそろそろ時間だから、俺はこの辺で......」
男性は腕時計で時間を確認すると来た道を戻ろうと佑芽に背中を向けた。「待ってください!!」背後から佑芽が彼を呼び止める声がする。男性はゆっくりと首だけを動かして振り返った。
「うん?」
「お姉ちゃんが来たかどうか確認したい時!どうすれば上の人に伝わりますか!!」
「その時は俺の名前を言えば伝わるはずだ。」
「名前?」
「俺の名前は万津 莫。またの名を『コードナンバー:7』だ。」
「こーど...なんばー??......万津さんですね!!分かりました!!ありがとうございます!!」
佑芽は深く礼をする。莫は彼女に手を振りながら、長い廊下を歩いて立ち去っていった。誰もいない廊下を莫はただ真っ直ぐ進んでいく。すると、彼の耳につけていた無線から声が聞こえてきた。莫は無線をつけた方の耳に添うように指をかける。
「こちら、コードナンバー:7どうかしたのですか?司令官ゼロ。」
「そちらの状況はどうだ、セブン。」
「今のところ問題はありません。あ、そういえば......」
莫が通信している相手の名前は『ゼロ』。莫が所属する極秘防衛機関『CODE』の司令官だ。CODEに所属するエージェントの使命はただ一つ。他人の夢へと潜入捜査し、『ナイトメア』の悪夢を未然に防ぐこと。莫は懐から先ほど使用した紫色の球体を取り出した。この球体の名前は『カプセム』夢の力が封じ込まれた特別なものでミッションを遂行するエージェントの力になるアイテムだ。
「このカプセムはなんですか?普段のカプセムとは...何か違うような感じがします。」
「ふむ......どうやら、『夢』と『夢』が混ざって生まれたカプセムのようだ。」
「どういう意味ですか?」
「Oh...Sorry.君には関係のない話だ。それよりも油断は禁物だ、セブン。ナイトメアはすぐそこまで来ている......ほら、君のすぐ後ろに。」
「え......」
莫は反射で後ろを振り返る、そこには......
「ばーーー!!!」
「うわぁぁぁぁあぁぁ!!!」
「驚いた?」
そこには三つ編みをした可愛らしい女性が手を挙げて笑っていた。本気で驚いた莫は尻もちをついて倒れてしまったが、咳払いをしてズボンについた埃を払いながら何事もなかったかのように立ち上がる。
「おやすみございます、セブン!」
「なんだ、ねむちゃんか......おやすみ。無敵のエージェントを驚かせるなんて、やっぱり君は魔性の女だね。」
「えへへへ。今日の私は......」
ねむは莫の前でくるっと回るとタンポポの花のような大きな黄色のポンポンを両手に持ったカラフルなミニスカートを履いた可愛らしいチアリーダーの姿へと変身した。その場でポンポンを振りながら軽くジャンプをして見せる。これには莫もその可愛さにメロメロだ。
「みんなを応援するチアリーダーです!」
「おー!!似合ってるよ!!ねむちゃん!さすが好感度ナンバーワン国民的美少女!どんな衣装も着こなしてしまう!」
「セブン、この夢の夢主さんは?」
「花海 佑芽という少女だ。彼女の夢が『ナイトメア』の手によって悪夢にされつつある。異変として起きているのは彼女の姉である花海 咲季さんがまだ会場に到着していないこと。」
「それについては私の方で調査を行った。」
無線からのゼロの声をねむちゃんにも聞こえるように莫はボタンを押してスピーカーへと切り替える。ゼロの指示に従って、ズボンからCODEのエージェントに支給される『ゼッツフォン』を取り出した。画面にはこの陸上競技場を中心としたマップが映し出されている。
「ゼロが調査だなんて。珍しいですね。」
「Just a whim.たまには悪くないだろ?どうやら、花海 咲季が乗っている電車が遅延を起こしているようだ。」
「ただの遅延、それなら無事に到着できそ.....」
莫が安堵のため息を吐いてそう呟いたその時だ。彼の言葉を否定するかのように廊下に設置されたスピーカーから大音量でキーンコーンカーンコーンと学校のチャイムのような音が響き渡った。あまりの大きさに莫とねむは耳を塞いでしまう。続いて楽しげな女性の声で放送が始まった。
「なに...これ。」
「まもなく本日の大イベント!!『チキチキ!命懸け!?!トップスピードレース』が始まります!出場する選手はトラックに集まってください!!」
「レース......?」
「どうやら夢が歪み始めてきたようだ。ナイトメアのお出ましだ。」
「急ごう!」
莫は廊下を走り出した。ねむも慌てて莫を追いかける。長い長い長い長い暗い暗い暗い暗い廊下をひたすら走って走って走って走って、何度も何度も何度も何度も何度もドアを開けて開けて開けて開けてようやく陸上競技場のトラックへと辿り着いた。先ほどまでの快晴とは打って変わって今にも大雨が降りそうな曇天の空だ。遠くでゴロゴロと雷が鳴っている。それなのにスタンドにいる観客達は無言で口角を限界まで上げて、笑顔で呆然と拍手をしていた。異様な光景だ。
「セブン......」
「ねむちゃん、俺の後ろに下がってて。」
「それでは選手の入場です!本日の優勝候補!『チャンピオンナイトメア』です!!!」
女性の声とともに高らかに不協和音のファンファーレが鳴り響く。行進する楽器の頭をした演奏隊の真ん中を異形の存在が笑いながら入場してきた。鍛え上げられた筋肉の化け物。所々から筋肉がはち切れて、赤い繊維が髪のように垂れ下がっている。そして何よりトロフィーの形をした頭から生えた大量の悍ましい口が金色のメダルを貪り食っているのが特徴だ。
「ナイトメア......」
「あっははははは!!あっはははは!!!この私!チャンピオンナイトメアの入場よ!」
莫はチャンピオンナイトメアの前に立つと取り出した『ゼッツドライバー』を胸に押し当てて、装着した。赤い『インパクトカプセム』を握る。その姿を見たチャンピオンナイトメアは指をパチンと鳴らした。すると、陸上競技場のスタンドの壁に設置された大きなモニターに砂嵐が映った後、マップが映し出される。
「なんだ......あれは。」
「いい?一度しか説明しないわ!ルールは簡単!スタートの合図と共に陸上競技場を飛び出して42キロ先のゴールを目指して走る!」
「......」
「どう?すっごく簡単でしょ!」
「その前にお前を倒す。」
「へーーそれじゃあ......」
チャンピオンナイトメアが再び指を鳴らすとマップからどこかの駅の映像へと切り替わった。八両編成の赤い電車が駅を出発する様子が映し出されている。電車の窓から一人の赤い髪の少女がいる。
「まさか!」
「そう!夢主の姉の花海 咲季よ!これから走るコースのゴールにはこの電車を爆発させる起爆装置が設置されてるの!私が先にゴールしたら起爆装置のボタンを押す。そうすれば電車は周囲を全て巻き込んでドッカーーン!!」
「ナイトメアによる悪夢は現実にも影響を及ぼす。」
ゼロの言葉を聞いてねむは莫の方へ顔を向けた。
「それって。」
「あぁ、現実世界の電車も爆発事故を起こす。」
走行中の電車が爆発。そうなると都内の交通に大きな被害が生まれ、混乱が起きてしまう。それだけではない周辺の住民や乗客の命が脅かされてしまう。莫は少し考えた後、チャンピオンナイトメアに向かってこう言い放った。
「分かった。その勝負受けて立つ。」
「そうこなくっちゃ!」
「俺は無敵のエージェント。必ず先にゴールして起爆装置を破壊する。」
莫はそう言うと胸に装着したゼッツドライバーに赤いインパクトカプセムを装填した。寝癖のように飛び跳ねた緑色のレバーを押し込む。
『インパクト!』
『メツァメロ!メツァメロ!』
左手の親指を口元に押し当てる。ゼッツドライバーから心臓の鼓動のように音が鳴り響く。目を開いて声を出す。
「I'm on it.」
さぁ やろうか
パチン!
「変身!!」
口に添って動かした左手の指を鳴らし、ゼッツドライバーに装填させたカプセムを指で弾いて勢いよく回転させた。心臓が動き出す。莫の身体がゼッツドライバーを中心にどんどん黒煙が包んでいき、全身の筋肉がミシミシと音を立てながら肉体を変化させていく。形成された黒い身体のラインにまるで全身を流れる血流のように赤い液体が巡っていった。
『グッドモーニング!ライダー!』
『ゼ・ゼ・ゼッツ!』
複眼が徐々に赤色に侵食されていく。これがコードナンバー:7万津 莫が変身する悪夢を駆逐する無敵のエージェント。『仮面ライダーゼッツ』だ。
『インパクト!』
「ミッションを遂行する。」
広!お誕生日おめでとう!!!
生誕ミニライブすごく良かったです!!!
まさか、演出プランΩが発動するとは......やっぱり篠澤さんは唯一無二のアイドル!俺達の予想を圧倒的に超えていくぜ!!
あと全然関係ないんですけど、『仮面ライダーヴラム ルートストマック』を観て「これが正史じゃなくて本当によかった。」と思いました。庄司浩平さんがイケメン過ぎて...演技が良すぎて(目が良かったです。)...身長が高すぎて...コーヒーゼリーのゴチゾウが欲しくなりました。