仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ 作:Ryo-ka
今は広をここから逃すことが最優先だ。バッグからヴァレンバスターとヴラスタムギアを取り出す。広が目の前にいるけど、正体とか気にしてる暇なんてねぇ。ヴラスタムギアを腰に巻きつけ、フラッペいずゴチゾウを装填した。
『ヴラスタムギア』
「生きとったんかワレー!」
「今度こそ倒し切ります!」
『『フラッペ!』』
『オン』
「広、俺のバッグ持って逃げろ。」
「え......でも、絆斗は?」
「いいから!」
俺は肩からかけていたバッグを広に預ける。少しキツい言い方になったが広は不安そうな表情を浮かべながら、渋々頷くと急ぎ足で俺の背後に逃げていった。こういう時に腰をぬかさねぇ肝が据わったやつで良かった。広も逃すことができたし、こいつとのケリをつけるだけだ!
「あれー逃しちゃうのー?」
「当たり前だ!追わせねぇ。」
不気味に笑うベロルスがゆらりゆらりと揺れながら俺に向かって近づいてくる。俺は拳を引きいてヴラスタムギアのレバーに向かって勢いよく振り下ろした。
「変身!!」
ヴラスタムギアの扉が展開し、俺の全身を大きな氷の結晶が覆う。変身が完了した瞬間に氷の結晶を砕いてベロルス向かって走り出した。ベロルスの身体を掴むと広が逃げた方向とは逆方向に押し続けた。
「うおおおおおおおおお!!!!」
「あははは!あっははは!!!!そうすると思ったよーー!!」
なんでずっと笑っていやがるんだ!!そうすると思った?まるで俺がお前の思い通りに動いてるような言い方しやがって!俺が腰のホルダーに装填していたヴァレンバスターに手をかけたその時だ。押されていたベロルスが指をパチンと鳴らすとどこからか発砲された銃弾が俺の肩に命中する。
その衝撃でベロルスから手を離してしまう。俺から解放されるとベロルスは左足を軸に回し蹴りを放ち、くらった俺はゴミ袋の山に突っ込んだ。
「ぐあっ!!」
「一発命中!」
ベロルスがそう言うと路地裏の角から見たことある銃が宙を浮きながら、ベロルスの元へとやってきた。そうだった、コイツは物を自由に浮かせる能力が持ってるんだった!
『ベイクマグナム』
「ニエルブさんがくれたんだ。いい銃でしょー?」
酸賀が作ったベイクマグナム。確か、マーゲンってヤツも持ってやがったな。酸賀のヤロウとんでもない置き土産をしていきやがった。ベロルスは俺を見下ろすと自分の両腕を叩き始めた。何のつもりだ?すると、上空に大きな黒い『パキパキ』という文字が出現する。それに向かって銃口を向けて乱射し始めた。文字はバラバラに砕け散り、その破片が俺目掛けて雨みたいに降ってくる。
嫌な予感がする。目の前に落ちてきたその破片の表面を覆っているチョコレートが割れ、中が赤く音を立てながら発光しているのを見た瞬間にヴラスタムギアのレバーを何度も上げ下げした。頼む、間に合え!!!
「3」
『フローズン!』
『フリージング!』
「2」
『フローズン!!!』
『フリージング!!!』
「1」
「ばーん」
ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアン!!!!!!!!
破片が全て爆弾のように破裂して爆炎を巻き起こしながら黒煙が立ち上っていく。その黒煙を絆斗のバッグを持って逃げる広は振り返って見上げた。バッグの紐をきゅっと握りしめる。
「絆斗が、いるところ......」
広が持つバッグの中がモゾモゾと何かが動き始めたのに気づいた広はバッグをすぐに開けた。すると、中からチョコレートのケーキのゴチゾウやゴチゾウ達が一斉に飛び出して広の手のひらの上に登って何かを身振り手振りで訴え始めた。
「前にみた子?たくさんいる、ね。」
「「「わにゃ!!わにゃにゃにゃわ!!!」」」
「絆斗が心配なの?」
「「「わにゃ!!!」」」
「わたしも、いっしょに、いこう。」
何かを決意した広はゴチゾウ達を連れて立ち昇る黒煙を目印に来た道を戻り始めた。
黒煙が少しずつ収まっていき、俺は中から足を引きずりながら外へと歩き出した。フラッペいずの能力で爆発する寸前に氷の壁を作ったおかげで何とか致命傷は避けられた。身体の至る所が火傷みてぇに痛いがこんなものはかすり傷だ。
「あれーまだ生きてるんだ?しぶといねー」
「はぁ...はぁ......テメェには...言われたくねぇよ!!!」
俺は痛みを置いて走り出す。ベロルスは笑いながら楽しそうに俺から逃げ始めた。離れんな!急いで追いかける。建物の外階段をダンダンと音を立てながら登っていき、今は使われていない廃墟になったアパートの外廊下までやってきた。
「待ちやがれ!!」
「こっちだーよー!」
ベロルスは逃げながらベイクマグナムの銃口がついた上顎を上げて、チョコルドゴチゾウを装填する。マズイ!ぶっ放すつもりだ。ベロルスはベイクマグナムの上顎を閉じる。
『セット!』
「させるか!!」
ベロルス目掛けて勢いよく飛びかかる。俺に突き飛ばされたベロルスは背中から床に向かって倒れていくが平気そうな顔をしてベイクマグナムの銃口を床に向けた。何をするつもりだ?引き金を何度も引いて銃弾を放っていく。銃を撃った反動で体勢を立て直し、起き上がると俺の腹部に銃口を突きつけた。
「なっ!!」
「ばーん」
引き金を引いて銃弾が発射される。腹部のアーマーから血のように火花が激しく散った。腹部を押さえながら後退りするとベロルスは再びベイクマグナムの上顎を上下させた。左膝を上げ、ベイクマグナムの上顎を叩きつけて上げる。俺はすぐさま一郎を引き抜くとヴァレンバスターへ装填した。
「いくぞ一郎!」
「いくでいくでいくでー!!」
「がんばってあんちゃーん!」
レバーを閉じて銃口にエネルギーを溜め始める。引き金を引いて思いっきりぶっ放した。強力な赤いエネルギー弾がベロルス目掛けて放たれる。このままいっけぇぇぇぇえぇぇえ!!
「くらえベロルス!!!!」
「......」
ベロルスは赤いエネルギー弾が命中する寸前、外廊下のフェンスを越えて飛び降りた。赤いエネルギー弾はベロルスに当たることはなく、長い外廊下と壁に焦げ目を残しただけだった。急いでフェンスからベロルスが落ちた先を前のめりに見下ろす。
「あのヤロウ!逃げやが......」
「やっぱり見下ろすと思ったよ。」
見下ろした先には宙に浮かせた赤い自動車の屋根の上に乗っかったベロルスの姿があった。赤い自動車の屋根を蹴って飛び跳ねると外廊下に着地する。上げたベイクマグナムの上顎を左足で蹴って閉じる。銃口が黒いエネルギーを溜め始める。
『ベイキング!』
「まずい!!」
「さっきのお返し!!!」
『フルブラスト!』
避ける隙もなく黒いエネルギー弾が俺にぶつかって爆発した。衝撃でフェンスを突き破って身体が落下していく。落下してばっかだな!!でも、二度あることは三度あるって言うよな!!学習してねぇわけがねぇ!!俺はヴァレンバスターにドーナツのゴチゾウ、ドーマルを装填するとレバーを閉じて地面目掛けてぶっ放した。
『ドーナツ!』
『ドォォォォオマルゥゥゥウ!!!!』
放たれた巨大なドーナツがクッションの代わりになって衝撃を吸収した。俺が無事着地したことを確認したベロルスは舌打ちをするとフェンスから飛び降りてヒーローのように着地して、ベイクマグナムを俺に向けた。引き金を引こうとした瞬間、上空に浮いていた大きなドーナツが落ちてきてその穴にスポッとはまってしまう。
「は?なにこれ?」
「どーだ!動けねーだろ!」
次から次に大きなドーナツがベロルスの体にはまっていき、身動きを封じ始めた。どんどん締め付け強くなる。ついには手に握っていたベイクマグナムを手放してしまった。必死に壊そうとしているがそう簡単には壊れない。これでアイツの動きはしばらく封じられるはずだ。
「こんなふざけたモノでオレを捕まれたつもりなのー?笑わせるね!!」
ベロルスは大声で笑いながら仰反ると腹部を拘束していたドーナツを突き破ってビターガヴガブレイドが飛び出した!!飛び出して地面に落下したビターガヴガブレイドを宙に浮かせて、自分を拘束しているドーナツを次々と切り裂いていく。これは想定外だ!俺はベロルス目掛けて走り出す。
ドーナツを全て切り落としたベロルスはビターガヴガブレイドを手に取るとチョコルドをビターガヴガブレイドに喰わせて俺に向かって斬撃を放った。
「ほら!逃げろ逃げろ!!」
俺はベロルスに向かって走りながら斬撃を避けて、スライディングをしてベロルスの背後へと回る。ベロルスも背後をとられたことに一瞬驚くが、すぐに振り返ってビターガヴガブレイドを構えた。
「背後をとったからって何ぃ??そんなんでオレに勝ったつも......」
「背後をとることが目的じゃねぇよ。これが欲しかったんだ!」
ベロルス目掛けて二つの銃口を向ける。右手にはヴァレンバスター、左手にはさっきベロルスが落としたベイクマグナムだ。まさか俺がこれを使うことになるとはな。
「それはニエルブさんがオレにくれたものだよ!返せぇぇ!!!!」
「誰が返すかよ!......言いたかねぇが。力借りんぞ、酸賀!!」
ヴァレンバスターにチョコドンを装填してレバーを開閉し、ベイクマグナムの上顎を二回上げ下げする。二つの銃口がそれぞれエネルギーを溜め始める。俺の姿がどうにも気に入らないらしい。身体を震わせながら、ビターガヴガブレイドを構えると腹部の黒いガヴのレバーを回転させ始めた。
『BEAT YOU!BEAT YOU!』
「返せ!返せぇぇぇぇえ!!」
『チョコ!』
『ベイキング』
「いっけぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえええ!!!!!!!」
『チョコドォォォオン!!!』
『フルブラスト!!!』
二つのチョコの弾丸を放つ。弾丸が二重螺旋を描きながらベロルスに向けて突っ込んでいく。ベロルスの叫びがこだまし、宙に浮かせたビターガヴガブレイドを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたビターガヴガブレイドが弾丸と衝突し、再び爆発起こす。爆風が視界を防ぐが俺は次の弾丸の準備を始めた。爆風の中からこちらに向かってくる足音がする。
「まさか!」
「人間如きが!!!マトのくせに!!!」
爆風の中からベロルスが飛び出してきた。予想はしてたが、本当に爆風の中から突っ込んでくるとはな。ベロルスは腹部の黒いガヴのボタンを叩きつける。ベロルスの回し蹴りが俺の顔面に飛んでくる。俺は反射でベイクマグナムの銃口を向けた。
『チョコルド!エンド!!』
「うおぉぉおぉおおぉ!!!!」
ベロルスの回し蹴りがベイクマグナムに直撃し、内部の基盤が剥き出しになってそのまま粉々に砕け散ってしまう。壊れちまった。でも、これで隙が作れたはずだ。ベロルスが舌打ちをして、もう一度レバーを回転し始める。俺もすかさず、ヴラスタムギアのレバーを上げてフラッペいずゴチゾウのストローを回転させ始めた。お互いの足がエネルギーを溜め始める。俺がレバーを下ろした瞬間にボタンを叩きつけた。
『『フラッペいずボルテックス!!!』』
『チョコルド!エンド!!』
「オレはここでオマエを潰す!!!!全員殺す!!!!」
「そんなことは絶対させねぇ!!!」
お互い上空へと飛び上がり、蹴りの体勢に入る。俺は両足を揃えてドロップキックを放った。お互いの力がバチバチと音を立ててぶつかり合う。一瞬全てが真っ白になるほどの光が覆い再び爆発が巻き起こった。
「......」
俺が地面へと着地した瞬間にフラッペいずゴチゾウが溶け切ってしまった。身体を覆っていたアーマーが粒子となって消えていく。無理もない。逆にここまでよく耐え切ってくれたな。
「ありがとな、一郎。二郎。」
目が痛ぇ。砂埃が目にでも入ったか。広は......ちゃんと逃げられたか?ボロボロになりながら脇道に向かって歩いているとヴァレンバスターが手元にないことに気がついた。さっきの爆風で飛ばされちまったか?あとでゴチゾウ達と一緒に探さねぇと。脇道まで来て、道路標識が立てられたポールにすがる。今日はもう疲れたな......俺がため息を吐くとどこから足音が聞こえてきた。
「はぁ...はぁ......何勝った気でいるの?オレはまだ生きてるよ!!」
「やっぱり渋てぇな、テメェは。」
「あれ?あれあれ?元の弱っちぃ人間に戻ってるじゃん!!!もう変身できないのかなー?」
「あぁ、そうだ。」
今の俺にはヴラスタムギアで変身するためのフラッペいずゴチゾウもヴァレンバスターもねぇ。今あるのは一人の生身の人間だけだ。
「逃げないのー?ほら、余裕ぶっこいてないで尻尾巻いて逃げなよー」
「俺はもう逃げねぇ。」
俺はベロルスを強く睨みつける。歩みは絶対に止めない。ベロルスは手を震わせて後退りをする。
「なんで逃げないの?逃げなよ!弱っちぃ人間らしく泣きながら!背を向けて!怯えろ!ほら!!ほら!!」
「逃げねぇよ。テメェを必ずぶっ潰す。」
「変身もできないの??戦えないのに?意味が分からない意味がわからない!!!ただのマトが...生きがってんじゃねぇぇぇぇぇえぇ!!!!!!」
バァン!!!