仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ 作:Ryo-ka
十王学園長への取材を終えた俺は初星学園の門に向かって歩いていた。まさかこんなところで失踪事件の話題が出るとは思わなかった。十王学園長曰く、数日前にとある企業が開催する小さなイベントのゲストとして出演する予定だった初星学園のアイドルとプロデューサー達を打ち合わせに向かわせたところ連絡が取れなくなったそうだ。しかも、その企業ともそれ以来繋がらないらしい。いかにもグラニュートが絡んでそうな事件だ。俺はスマートフォンを取り出して一人の人物に電話をかける。
「あーもしもし。」
「やっほーハンティー!急に電話なんてどうかしたの?」
急にデケェ声が聞こえてビビった......相変わらずテンションが高い社長だ。俺が今スマートフォンの画面越しに話している相手は甘根 幸果(アマネ サチカ)。ショウマが居候しているなんでも屋「はぴぱれ」の社長だ。典型的なギャルみたいな性格だが、仕事の腕は超一流。俺も仕事に必要な情報収集をよく依頼している。
「あ、そうだ!ハンティーさ。後ではぴぱれに来てよ!」
「きゅっ急にどうした?なんかあったのか?」
「実はお得意さんから大量にお菓子貰っちゃってさ〜このままじゃウマショーが全部食べちゃいそうな勢いなんだよねーだからハンティーにもお裾分け。」
「俺は......甘いの苦手だし、」
「うん!知ってる知ってる。だからハンティーが好きそうなやつだけ持って帰っていいからさ!」
「おっおう......」
たしかにショウマだったらお菓子があればあるだけ食いそうだ。それで身体壊したら......心配だ。ただでさえ俺のせいでちょっと前まで体調悪かったらしいからな。
「まーぶっちゃっけ、ハンティーがうちに顔出す口実が欲しいだけなんだけどね。」
「は?どういうことだよ。」
「いや〜実はさ、ウマショーがハンティーの心配ばっかしてるんだよね。ほら、この間までハンティー怪我してたじゃん?元気な顔見せて安心させてほしいの。あ、ウマショーにはこのこと......内緒で!」
「......分かった。あとで寄る。」
「サンキューハンティー!で、なんでうちに電話してきたの?」
「あ、そうだ!実は......」
「なるほど......ハンティーが今取材してる先で失踪事件。」
「それで調べてほしいことがあるんだ。」
俺はベンチに座って十王学園長から受け取った資料のコピーを一枚一枚めくっていく。そこには失踪した数人の初星学園アイドル科の女子生徒達とそのプロデューサーのプロフィール。そして、失踪者が最後に確認されたイベント打ち合わせをした企業の住所などが記載された情報が載っていた。
「あとで今持ってる資料のコピーを送る。この企業について調べてくれ。」
「オッケー!分かった。情報が集まったらハンティーに連絡する。」
「おう、任せたぜ社長。」
そう言って俺は通話を切った。もし、本当にグラニュート絡みの事件だったら絶対に闇菓子になんてさせねぇ。どうにかして工場に送られる前に人プレスになった被害者達をグラニュートから取り戻させねぇと。とりあえずその企業の住所付近を実際に行ってみて聞き込み調査だ。俺がそう考えていると背後から視線を感じた。
「ん?」
視線の方へと慌てて振り返る。振り返った瞬間に女性の顔が視界に映った。
「ば!」
「うおおおおぉぉおおお!!!?」
ベンチから転げ落ちる。決してビビったとかそういうのではない。ただベンチが滑りやすい素材だっただけだ。俺は痛めた腰を摩りながらゆっくりと立ち上がる。そこには先ほど出会った篠澤広という女子生徒がいた。俺の姿が滑稽だったのかくすくすと笑う。
「おっお前......」
「やっほーハンティー......驚いた?」
「ハンティーって......なんでその呼び方知ってんだよ?」
「さっき電話、スピーカーだった、よ?」
そう言って篠澤広という女子生徒はスマートフォンの画面をいじるジェスチャーをする。
「マジかよ......」
「話してたのは、カノジョさん?」
「ちげぇよ!俺が世話んなってるところの社長さんだ!」
「ふーーん、そっか。で、ハンティー」
「ハンティーはやめろ!明らかに俺の方が年上だから辛木田さんだっ!」
「じゃあ、絆斗。」
「......はーー分かったよ。もう好きに呼べよ。」
半ば諦めのように答えてしまった。コイツにはたぶんこういう上下関係とかそういうものは通じないのだろう。そういえば学園長のことを「おじいちゃん」って呼んでたな。コイツと話していると本当に調子が狂う。
「で、俺に何のようだよ。」
「ん、落とし物。」
「落とし物?」
「そう......おじいちゃんのところに行こうとして、慌ててカバンの中から物を取り出した時に落ちた。言おうとしたら、絆斗もう走ってた。わたしじゃ追いつけない。」
「そうか。わざわざ、ありがとな......」
そういえば確かにあの時、コイツは何か言おうとしてたな。まさかカバンの中の物を落としてたなんて。コイツはわざわざ俺を探して届けに来たってわけだ。感謝は......しねぇとな。俺は礼を言って篠澤広という女子生徒の手の中にあるソレを受け取った。俺は一体何を落としたんだ?ボールペンか?それともモバイルバッテリーか?俺は受け取ったものを自分の手を開いて確認した。チョコドンだった。
「ん?」
「わにゃ......」
涙を流しながらこちらを見上げている。チョコドンだ。俺が仮面ライダーヴァレンに変身する際に力を借りるゴチゾウだ。チョコドンだ。え?ええぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!!??!
「ちょっチョコドン!?!おっお前!何やってんだよ!」
「わにゃわにゃ......イートチョコ。イートチョコ。」
「イートチョコじゃねぇよ!なんで見つかってんだよ!」
「イートチョコ......」
「その子、カバンから落ちたあとずっと絆斗のこと探してた、よ?でも見つけられなくて泣いちゃった。ふふ、かわいい。」
なんでコイツは謎の生物を見ても驚かねぇんだよ。てか、ゴチゾウって見つかっても大丈夫なのか?いや、絶対大丈夫じゃねぇ。なんとかして誤魔化さねぇと。篠澤広という女子生徒はこちらをじーーーっと見つめる。
「で、その子......なに?」
「えーーっとその......あっあれだ!おもちゃだ!取材先で貰ったんだよ!」
「おもちゃ?触った感じ、無機物というより生物に近い感じ、だったよ?」
「さっ最近のおもちゃってスゲーんだよなー造りとか......」
ダメだ絶対誤魔化しきれねぇ。こっちを見つめているが合わせられねぇ。コイツには全部見透かされているようだ。篠澤広という女子生徒は俺の手の中にいるチョコドンをじっと見つめたあと、くすりと笑う。それはどういう意味の笑いなんだ。
「ふーーん、じゃあそういうことにしてあげる、ね。」
「うっ......」
「じゃあ、わたしと取り引き。」
「取り引き?」
「その子のこと秘密にして、あげる。その代わり......」
「その代わり?」
「放課後、時間ある?」