仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ 作:Ryo-ka
俺の取材先で失踪事件、どうやら俺に気分転換ってのはないみたいだな。
何があろうと闇菓子になんてさせねぇ。奪われた人プレスを取り戻して、グラニュートを...ストマック社のやつらをぶっ潰してやる。まずは手始めに失踪事件のきっかけになった怪しいベンチャー企業について調べねぇと。
あーそうだ。気は乗らねぇが、その前にアイツにこれを届けねぇといけないんだった。社長の頼みごとは断れねぇよな......
日付が変わって俺は今、一つの建物の前に立っていた。青色の柱が何本も立つ平屋のような建物。ここは、俺に改造手術をした酸賀 研造(スガ ケンゾウ)の研究所だ。ここには複雑な思い出が溢れている。できれば一人でここに来たくなかったんだけどな。社長からの頼みだ、仕方がない。俺はドアを開けて階段を降りて地下室へと向かった。
「ちゃーーす。」
地下室へ下りると「アイツ」を探し始めた。辺りを見渡すが酸賀がいた時と部屋の中は変わっていないようだな。なんかよく分からない難しい本や未確認生物についてまとめられたファイルが本棚から溢れて机の上に積み上がっている。部屋の隅っこにはメスやハサミが置かれているが、あまり思い出したくない。
あれを使って改造手術されたんだよな。流石に麻酔なしはヤバかったな。途中から意識がなかったし終わったあと、酸賀にラーメン食べに行くかと誘われたが腹を切られたあとに飯食う余裕なんてなかったな。
「おーい。いねーのか?」
「......」
「おーーい」
「だる......聞こえてる。」
声がした方へと目線を落とすと黒いソファの上にうつ伏せの状態になったソイツがいた。ソイツは自分の顔の上にアイマスクのように乗せていた帽子をとった。俺の方に目線を向けるとため息をついて再び帽子を顔に乗せる。
「おい!」
「はぁ......何しに来た?」
「社長からの頼まれごとだ。」
「幸果から?」
社長の名前を振った瞬間に起き上がりやがった。髪をかきながら立ち上がったソイツは俺のことを見下ろす。コイツはラキア・アマルガ。仮面ライダーヴラムだ。元々はストマック社のバイトだったが、バイトになったのもストマック社への復讐のためらしい。それでショウマと打ち解けあって今は、まぁ力を貸してくれてるって感じだな。
だが、コイツはグラニュートだ。俺はまだ完全に信用してはいねぇ。コイツには世話になったからな。俺の上に座ってきたり、矢をぶっ放してきたり......まぁ、俺がいない間にショウマと戦ってくれてたのは事実だ。それに免じて大目に見てやろう。
「ほらよ。」
俺は社長からラキアに渡すように言われていたものを手渡した。袋のわりには重いように感じたが何が入っているんだ?受け取ったラキアは結ばれていたリボンを解いて一つ取り出した。ビー玉ほどのサイズの赤い球体だ。
「なんだそれ?」
「これは......石だな。」
「石?あーグラニュートは石食べるんだっけか?」
他にも色とりどりの球体状の石がジャラジャラと入っていた。どうやらアクセサリー用の天然石らしい。確かにお土産コーナーとかで売ってるよな。こういう袋に詰め放題とかで。ラキアはその天然石を一つ口の中へと運んだ。一見、そういうカラフルなお菓子を食べているように見えるが実際は石なんだよな。
「......悪くないな。ツマミにはちょうどいい。幸果に礼を言っておいてくれ。」
「は?それくらい自分で言えよ。」
「それもそうだな。」
少し鼻で笑うような言い方でラキアは言った。なんか無性に腹が立つな。俺はコイツを見ているのが嫌になって目線を逸らすと机に置かれた一冊の本を見つけて手に取った。可愛らしい動物が描かれた子供向けのひらがな練習帳だ。
「なんだこれ。」
「おい、人のものに勝手に触るな。」
ラキアは俺が持っていたひらがな練習帳を取り上げた。
「わっ悪かった。......文字、練習してんのか?」
「この世界にいるなら必要だと思ってな。」
「へーーなんなら俺が教えてやろうか?」
「だる、お前に教わるくらいならショウマや幸果に頼む。」
再び少し鼻で笑うような言い方でそう言われた。馬鹿にされてる気がする。いや、確実にコイツは俺のことを馬鹿にしている。今、確信した。グラニュートとかそういうの関係なしでコイツの性格とウマが合わないんだ。コイツとうまくやっていける未来が見えねぇ。
「なぁ、」
「あ?なんだよ。」
「ショウマは元気か?」
「気になるなら顔出してやればいいだろ......俺が見た感じ、元気そうだったぞ。」
「そうか......」
ラキアはそう呟くと少し口角を上げて安堵のため息を吐いた。コイツもショウマのことが心配なんだな。コイツとはウマが合わねえがショウマのことがほっとけないってのは同じらしい。仕方ねぇな。ショウマのためだ、コイツのことは我慢するか。「仲間」、だしな。
ラキアがいる研究所をあとにした俺はスマートフォンを片手に街を散策していた。社長から昨晩もらった資料を片手にベンチャー企業があった住所を探す。駅から歩いて三十分ほどで到着した。駅を中心に広がる繁華街の端、どうやらここらしい。俺は小さなビルを見上げた。周囲の建物から伝わる寂れた雰囲気。壁が雨で黒く汚れている。古めのビルのようだ。見た感じ、十数年前に建てられたのか?ビルの前に貼られた赤い「テナント募集」の張り紙に目がいった。
「まいったな......」
俺が一人ビルの前で呆然としていると赤いママチャリに乗ってコチラに向かってくるおばちゃんと目が合った。スーパーの帰りなんだろう。両方のハンドルに食材がはち切れんばかりに入ったレジ袋がぶら下げられている。さらにエコバッグも肩にかけている。とりあえず話しかけてみよう。
「あのーすみませーん。このビルについてなんですけどー」
「このビルは二年くらい空き家だよ!!ちょっとアタシ急いでるから!」
「あ、ありがとうございます......」
あのおばちゃん、止まりもしなかったな。そのまま俺はおばちゃんの大きな背中を見送っていた。いや、なんだこの時間。てか、おばちゃん速いな。ま、予想通りって感じだな。やっぱりこのホームページに記載されてる住所は適当に空き家の物件の住所を載せただけだ。これでますますこの企業が怪しくなってきた。
「とりあえず、情報整理と初星学園にも......」
その時だ。俺がスマートフォンを取り出して画面を見つめる視界の端で何か黒い人影が横切った。すぐにスマートフォンを下ろして黒い人影が横切った方へ目線を向ける。さっきのビルの横にある路地裏だ。
「なんだ、今の。」
俺はすぐに路地裏へと入っていった。さっきから気になっていたんだ。ママチャリで通っていったおばちゃん以外、繁華街の端とはいえ人の気配がなさすぎる。生活音の一つもならない。本当に寂れてるんだ。こういう場所には......路地裏の奥へと進んでいくとビルとビルの間にできた開けた場所へとやってきた。
「今日の分だ。」
「これだけか?工場へ送るには数が少なすぎる。」
「あぁ、もう少し回収をしてから工場に送ろう。」
ビルの壁から顔を半分覗かせる。そこには黒いフードを被った二人組がアタッシュケースを開けて男女の声で会話をしている。間違いねぇ、ストマック社のエージェントだ。てことは、あのアタッシュケースの中身は人プレス!俺はカバンからヴァレンバスターを取り出して銃口をエージェントが持つアタッシュケースへと向けた。
バァン!!
「誰だ!!」
命中したみたいだ。弾丸は人プレスが入ったアタッシュケースを持っていた手の甲へと当たり、エージェントはその場にアタッシュケースを落としてしまう。エージェントがコチラに向かって銃で弾丸を撃ち始めた。ヴァレンバスターにチョコドンを装填する。
「いくぜ、チョコドン!」
「わにゃ!」
『チョコ!』
『Set!チョコ!Set!チョコ!』
レバーを大きく開いて閉じる。もたもたしてる時間はねぇ。そこからヴァレンバスターを持った手を大きく振りかぶって地面へと銃口を押し当てた。
「変身!!」
ヴァレンバスターのトリガーを引くと同時に銃口を中心に地面に液状のチョコレートが広がっていく。溶けたチョコレートが俺の全身を覆って各部位の装甲を作り出していった。
『チョコドン!パキパキ!』
俺は視界を塞ぐ銀紙をすぐに剥がし、俺に向かって銃を構えながら走るエージェントの顔面にその剥がした銀紙を勢いよく押し当てた。
「なっ!前が!」
「へへ!見えねぇだろ!」
視界を塞がれて必死に剥がそうとするエージェントの腹に向かって勢いよくドロップキックを放った。そのままドミノ倒しのように後ろにいた小柄なエージェントも倒れてしまう。人プレスは絶対取り戻す。グラニュートの好きにはさせねぇ!それが俺、「仮面ライダーヴァレン」だ!!