個性『超パワー』(嘘偽り無し) 作:殴る蹴るの暴行よ。
千葉の都心に取り残された山中。
そこに佇む寂れた格闘道場…………その家屋の中で、いま正に命をかけたやりとりが行われていた。
年端も少しばかり過ぎた少年が、遥か年上の屈強な男に、純然たる暴力を叩き込まれていたのだ。殴る、蹴る、頭突き、引っかき、噛みつき。
あらゆる暴力と言う暴力を用いて暴行の限り尽くす男……少年は、それを必死ながらも熟れた手つきで避けていく。
はたから見れば極悪人による拷問かなにかと間違わられそうだ。
だが、これを行う者達が、親と子の間柄だと知られたら、それはそれでドメスティックバイオレンスで家庭裁判所すらすっ飛ばして刑事事件沙汰の大事件だろう。
「フン!!デリャァッ!」
「うっぷ!あっぶねぇ!?」
父親の一撃一撃、それら全てが洗練させ子の情など投げ捨てたほどの正確無慈悲に急所を突く攻撃。そして、クセを知り尽くしているとは言え、それをどれも間一髪ながら確実に避けきる息子。
どちらも並大抵の人間でないことは確かだ……すると、道場の壁に乱雑に立てかけられたタイマーがピピピピッと鳴り響く。
それを観ると、父はにやりと笑いながら自らの息子へ賞賛を投げかける。
「よくここまで持ったな。流石だ、我が息子よ!」
「ふっっっざけんな……ぜぇはぁ……親父がぁ……とっくに限界だっつーの……」
「アーハッハッハ!結構な事だ!」
何笑ってんだこのドグサレ野郎が!?……息子は、心の中でそう父親に対して暴言を浴びせた。言葉が絞り出る状況なら、間違いなく当人にぶつけていたであろう言葉だ。
父は時間を見計らって、自らの息子へ再び立ち上がることを強要する。
「よし、もう休んだな?ここからは『個性』を使え……その代わり……こちらも少し本気で行こう。」
そう言って、父は地面に自身の腕を突っ込む……すると、道場の床をぶち破り、中においてあった二つの鋭く尖ったオノを取り出す。
「コイツを持つのは久々だなァ……」
そう言って、オノの刃を擦り合わせる……それを見た息子は、怒りを飛び越えた唖然をも通り過ぎ、一周回ってまた怒りが溢れ出す。
「このクソ親父斧出してきやがった!?」
「俺が
「俺どころか大抵の相手には過剰だろう――――」
次の瞬間、倒れていた少年の足の間にオノが投げられ、股の間に突き刺さる。
「ガァァァァァ!?!?!?!?」
危うく去勢されかけた少年は、またもや悲鳴にもならぬ悲鳴を上げる。だが、実の息子のそんな姿を見てもなお、何の良心も痛まないのか父はもう片方のオノを振り下ろさんとする。
流石の少年も、実の父の横暴に耐えきれないのか抗議とともに罵声を浴びせる。
「このバカクソ親父!死んだらどうする!?」
少年のその問いに、父はその顔色一つ変えずに言い切った。
「この程度のコトで死ぬのなら今死なせてやった方が親切だ」
「アンタそれでも人の親か!?」
この親父、稼ぎの少ないロクデナシにして、ヒトデナシである。
少年は情け容赦なく振り下ろされたオノの兜割りをなんと地面を蹴り上げて避けると、ふらつく足元を制御し、地面を踏みしめて目の前の
「親父、個性アリなんだな?」
「二言はねェ。」
「んじゃあ……後悔すんなよ……!!」
少年は、父の胸を張った言葉に息を飲み干し……自らの身体に宿った異能を、超常を、『個性』を発動させる。
身体に赤色の光が血管の様に宿り、目元に涙ラインを浮かべる……そして、身体から放たれるは、同じく血液のような鮮血色の稲妻。
バリィバリィ
唸る電撃が、身体を痺れさせ、力を増させていく……特に首元に纏わるデンゲキは凄まじく、その稲妻の幻影が、正にヒーローの如く真っ赤なマフラーを幻視させた。
「へぇ、
「いィ・く・ぞォ・ク・ソ・親ジィィィィィ!!!」
瞬間、少年――『明石 達彦《アカシ タツヒコ》』は地面を蹴り上げて瞬足で駆け寄りながら拳を振り上げる。
それに応えるように、達彦の父親――『明石 辰宮《アカシ タツミヤ》』もまた、笑みを浮かべて拳を握りしめて、迎え撃つ。
二つの力を込めた拳が交じり合う……次の瞬間。
「ゴラァァァァァァァ!!!!アンタらいつまでやってんの!」
激しい爆音が響き渡り、その衝撃で少年が守っていた稲妻がほどかれ、力が抜けたように地面に叩きつけられる。先ほどまで圧倒的強者の風格を漂わせていた父でさえ耳を塞いでビクビクと震え始める。
「へぶっ!」
「ま、不味い!?かーちゃんだ!!」
次にガラリと扉が開き、現れるのは少年との血の繋がりを感じさせる女性……即ち、達彦の母親であり、辰宮の嫁。名は
その麓には、オレンジ髪をサイドテールを纏めた、何処か困惑気味な表情を浮かべた少女――達彦の幼馴染。拳藤一佳が居た。
「折角一佳ちゃんが遊びに来てくれてんのよ!?それをあんたらは道場の中でボコスカボコスカ殴り合いしてぇ!!」
「ち、違っ!こ、これは必要な修行で!」
「べ、別に客人を蔑ろにしたわけじゃねぇって!」
「あ、あははは……ごめんなぁ?邪魔しちゃった……よな?」
拳藤の少し寂しげな、申し訳無さ気のある一言と、言い訳を続ける男らしくない二人の姿に、鬨のスイッチが入ったのか、彼女は腕をぽきぽきと鳴らす。
そして、先程まで威勢のよい
「あんたら……いい加減に!!」
そして、二人の脳天に拳骨が振り下ろされた。
「しんさいなァッ!!!」
「「いっでェェェェェェ!!!」」
「あんたら!いつも!いつも!他人気にせず!身勝手ばっかしてぇ!」
「「いだだだっ!やめてくれよかーちゃぁぁぁん!!」」
母強しとはよく言ったもので、母親に何事も強くでれない二人は、鬨に一切の反撃も許されないまやまボコボコに殴りつけられる。
「あ、あのぉ……もうその辺で……」
拳藤としては、この先の
まさかそんな場で