個性『超パワー』(嘘偽り無し) 作:殴る蹴るの暴行よ。
そんなこんながありつつの日の夕飯の席……用意された4つの席に、達彦、辰宮、鬨、拳藤の4人が腰掛ていた。達彦と辰宮は皿の上に文字通り山盛りにされた唐揚げに目を光らせる。
「うぉ!唐揚げだ!」
「かーちゃんいい事でもあったのか?」
「一佳ちゃんが来てるんだから腕によりをかけるのは当たり前よ!」
「あの、ありがとう御座います。私の分まで用意して貰っちゃって……」
「なぁに言ってるのよ一佳ちゃん。いつもの事じゃない!あの愚息を世話してくれてるお礼よ!拳藤さん家も知らない仲じゃないんだし、遠慮しないで!」
「それじゃあ……!お言葉に甘えて。」
「今俺ナチュラルに罵倒されたんだけど……」
流れるような罵倒を食らった達彦を捨て置いて、4人は手を合わせていただきますの挨拶をしてご飯へと手を付ける。
辰宮と鬨は、食べ盛り育ち盛りな事もあって美味しそうに唐揚げを頬張り、ご飯をかっ込む拳藤と達彦を見て、頬を緩ませる。この光景も子供の頃からの伝統だ。
拳藤は元々幼い頃に格闘技を学びにこの寂れた道場にきた門下生だった。当時から人がほとんどいないことも相まって、同年代の達彦と共に、拳藤は師範代である辰宮から達彦ほどではないが、かなりハードな鍛錬を課されてきた。
だがその甲斐もあって拳藤は着々と力をつけていき、また同年代で近所ということもあって、達彦とも学校やクラスが同じ事が多く、まるで双子の姉弟の様に一緒に育ってきた。
幼馴染とは簡単に言っても、厳しい
「ところで、受験勉強は順調?」
「ヨユーだぜ!」
「ウソ付けよ達彦。模擬試験判定ギリギリだった癖に。」
「ぐっ!……」
達彦は拳藤からの図星に思わず咥えた箸を噛み締める。鬨からの冷ややかな視線が痛く感じる。
「アンタそんなので大丈夫なの?
雄英高校……個性と言う超常能力を用いて悪事、犯罪を行う社会の敵――ヴィランに対する実力行使を目的とした職業、ヒーローを育て上げる育成機関だ。
ヒーローはこの超人社会になくてはならない存在。
ナチュラルボーンヒーローであり、日本の治安の要とも言われるNO1ヒーロー。平和の象徴、オールマイトやフレイムヒーローエンデヴァーが、その証ともいえよう。
ヒーロー飽和社会とは言われても、悪の目は幾ら潰しても消えないのだが、ヒーローは居るに越したことはないのだ。
達彦、そして拳藤もそんなヒーローを目指すために雄英高校へ挑戦しようという学生の一人だ。
とは言っても、雄英高校は腕っぷしだけではなく学力も必須……それを考えると、達彦は少し不安が残るようではあるが。
「だ、大丈夫だって!任せとけって!」
「本当にぃ〜?」
「まぁでも、実技試験は二人とも突破確実だな!なんてったって俺が育ててんだからな!」
そう言って自慢げに親指で自分を刺す辰宮。……しばらくの静寂の後、達彦も拳藤も鬨も無視して唐揚げを食べ始める。
「ちょっ!お前ら!?俺の扱いどーなってんだよ!?一応元プロヒーローだぞ!?」
「元じゃん。」
「元でしょ。」
「ぐぅっ!」
「ふふっ。」
そう、辰宮も元プロヒーロー……『鬼人ヒーロー アーク』としてブイブイもヴィランをぶっ飛ばしていた過去がある。鍛錬の際に取り出した斧も、ヒーローやってた頃に使っていた武器だ。
今は一線を退いて寂れた道場でお山の大将気取っているが、それでもヒーローと力を信頼されているのか、重要な案件のときは呼び出されることもあるのだを
「で、でもまぁ真面目に師範代にはお世話になってます。おかげで個性の訓練も自由にやれるし。」
「一佳ちゃん……!!」
「一佳ちゃん。無理して肩持たなくてもいいのよ?」
「そうだぞ一佳。この親父直ぐ調子乗るから。」
「大黒柱の威厳!!!!」
辰宮は、あまりの自信の威厳の無さに打ちひしがれるのだ。
鬨はそんな辰宮を捨て置いて、達彦と拳藤にある忠告を授ける。
「けど、あんたらは龍臣みたいになっちゃ駄目よ?」
鬨がその名を口にした途端、明らかに場の空気感が変わる……緊迫、と言うほどではないにしろ、どこか引き締まる感覚だ。
拳藤は少し寂しげな顔をしながら、鬨に問いかける。
「龍臣兄さん。まだ帰ってこないんですか?」
「えぇ、全く音沙汰無し……。」
……明石龍臣。達彦の兄であり。拳藤としても同じ道場の門下生……兄弟子にあたる男だ。
辰宮は、うなだれた状態からそっと立ち上がり飾られた拳藤一家と、龍臣を含んだ明石一家が並んで写っている写真を眺める。
「ケッ。龍臣の奴……漸くヒーローになったと思ったら、急に音信不通になりやがって……」
生きているのか、死んでいるのか分からない息子……親としては、たとえどちらであろうが、キチンと連絡が欲しいものだ。息子からは、特に。
拳藤も同じだ。拳藤にとって龍臣は兄弟子……達彦と同じ様にに水も甘いも経験してきた仲間。それに、拳藤は達彦と共に幼い頃龍臣と約束したのだ……お互いに、必ずヒーローに成ると。
そして、龍臣はその約束に違わずヒーローになり、拳藤と達彦も今その道を進もうとしている。
拳藤もできることなら龍臣にあってもっと話がしたいのだ。
「……なら、尚更ならねぇとな。ヒーローに。」
不意に口を開いたのは、達彦だった。
「龍臣兄ぃに何があったのか知るためにも……龍臣兄ぃとの約束を果たすためにも、何が何でも成るぜ。俺はヒーローに。」
達彦の覚悟の宣言……それに対して、拳藤はすこし横槍を入れる。
「いや、ほれ適切じゃないだろ?」
「?」
達彦の顔をのぞき込みながら、拳藤は笑って言う。
「俺が、じゃなくて。俺達が、な!私も忘れんなよ!」
「……だなっ!」
そう言って二人は拳を重ね合わせる。
それを、親二人は温かい目で見守る……この光景を、できることなら龍臣にも見せてやりたい。そう思うのが親心だ。
やがて二人は夕飯を食べ終えると、手を合わせて挨拶をする……そうすれば、さっそく続きだ。
「よっしゃ拳藤!一手頼む!」
「おいおいいきなりだな……とは言いつつ、私もちょっと体が訛ってる!付き合うよ!」
そう言って2人は立ち上がり、さっさと道場の方へと向かう。その跡を見て、辰宮は少しの笑みを浮かべてつぶやいた。
「日本の未来は明るいなぁ……っと、ジジ臭い事を言っちまった。」
「私もアンタももう年寄りだよ。」
「いや!?まだわけぇだろ!?」
鬨の言葉に、辰宮は汗を流しながら反乱するのだった。