【VRMMO】天才少女は裏ゲームモードを征く~『Pit Coffin』-Game Mode:Underground Struggle-~   作:環状線EX

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『WEST GATE』

 

 セントラルを中心に各方角に東西南北とエリアが分かれていて、セントラルから離れれば離れるほど難易度は下がる。

 初期リス地点は比較的セントラルから離れた位置に設定されているため、プレイヤーは基本中央への移動をすることとなる。

 そして例にもれず、機体の強化を終えた私もトレーラーにトゥエルブを乗せて移動していた。

 

 しかし道中にはムニンが湧く。

 

「──ッ!」

 

 トゥエルブの大剣で押しつぶしたのもこれで五回目だ。

 移動してから一時間と経っていないことを考えると遭遇率は余程高いだろう。

 戦闘に足を止めて、尚且つ補給も必要。

 基地から基地へと移動するような経路を取ってはいるものの、余裕は少なかった。

 

「これ本当にたどり着くのか」

 

 ついそう声に出してしまうほど。

 ただ、僅かにでも進めば距離は縮まる。

 これに耐え忍び移動すれば、確実に目的地は見えて来た。

 

「『WEST GATE(ウエストゲート)』」

 

 西エリアとセントラルエリアとつなぐ、いわば関所。

 堅牢な門がそこにあった。

 そして門番も掻くやと言うように二つの『AHRM(アールム)』が門を守るように立っている。

 そこへ近づくと当然ながら声を掛けられた。

 

「とまれ」

 

 制止の指示に素直に従う。

 機体に乗っているのとは別に一人の男がこちらに近づいて来る。

 すでに窓は開けているので声は聞こえる。

 

「『AHRM(アールム)』を持っての入場は許可証がいるぞ」

「許可証?」

 

 その言葉に心当たりがなくオウム返しをすれば、男は顔を顰めた。

 いかにも面倒だと言う顔だ。

 

「ウエストゲートに関わらずだが、入場に際しての決まりがある。『AHRM(アールム)』を持ち込むのであれば、許可証がいる」

 

 「逆に言えば身一つなら、余程のことが無きゃ許可証はいらない」と続けられれば私にもわかった。

 『AHRM(アールム)』はアングラにおいての武器とも言えるもの。

 セントラルは大陸連合があるだけあって、不安要素を持ち込まないようにしているのだろう。

 武装解除した状態であれば、基本は止めないのだろう。

 

「まあ、そもそもその反応じゃ、許可証はないだろうからそいつは持って入れないぞ」

 

 トレーラーの後ろを指さして言った。

 確かに、彼の言う通りだろう。

 まさか、トゥエルブを持たずにここを通るわけにもいかない。

 

「許可証を手に入れるなら。連合主催の大会に出ることだな。そこで上位入賞できればここを通れる」

 

 不機嫌になりながらも丁寧に説明してくれる男を他所にどうしたものかと考える。

 正直、男の言う通り連合主催の大会とやらに参加するべきか。

 そんなことを考えていた時に、不意にある考えが浮かんだ。

 

「そう言えば、何かあったら見せろって言ってたな」

「あ?」

 

 呟いた私に怪訝そうな声を洩らす男を他所に私はポケットを弄った。

 

「あった。これ、シーミンのサイン。いや、流石にダメか」

「シーミン?」

 

 なんだそりゃと言った表情を見せる。

 男に見せたのはシーミンのサインがホログラムで浮かび上がると言ったちょっとしたアイテム。

 浮き上がった半透明の青色のサインは筆で描いたような見た目だった。

 想像するなら、信長のサイン……確か花押だったか。

 彼女に似合わない達筆のそれは、とても美しくも感じた。

 まあ、何と書いてあるかはよくわからんが。

 信長は「麟」であったと言うし、必ずしも名前に関連するわけでもないだろう。

 

 とは言え、サインを見て訝し気な顔をする男。

 なんだかとても恥ずかしい行動をしてるような気がする。

 とてつもない勘違いと言うか。

 例えば、シーミンにそこまでの影響力がないとか。

 

「……トリプルワンのシーミン。いや、無理なら──」

「いや、まて、シーミンってあのシーミンか!?」

 

 ただ、空気に耐えかねてひっこめようとした時、男は何かに思い至ったように言った。

 先ほどからシーミンシーミンと連呼しているのだから、男の中の情報を繋ぎ合わせるのは十分であったと思いつつも、とにかく話が進んだことに安堵する。

 

「ちょっと待て。今、データベースと照合する」

 

 勝手に納得を見せて、勝手に機器でサインを読み込んだ彼は頷く。

 

「本物だな。……だが、お前どうやって、そんなんもらったんだ?」

「何をって、セントラルに行くって言ったら、面倒ごとにはこれを使えって」

 

 男は声を出さず驚いて見せるも、私には「そんな簡単に」と言ってることは簡単にわかった。

 ただ、こちらの疑問は解消されていない。雑談もそこそこに口を開く。

 

「それで、通れるのか?」

「ああ。許可証としては十分だ。まさか、この目で見るとは思わなかったがな」

 

 そこまでかとも思う反面、以外にもホイホイと自分の名前を語らせない一面も彼女にはあるのは少しの間一緒に居てなんとなくわかっていた。

 シーミンの中で分かりにくい線引きがあって、時折それに触れると急に真顔で語り始める。

 その中の一つが、自分の名前に対する事柄なのだろう。

 

「じゃあ、通してもらうぞ」

「いや、待て」

「まだ何か」

「許可証の代わりになるとは言ったが、通行量は払ってもらうぞ。シーミンのサインってことで50パーセントOFFだ」

「クーポンか」

 

 つい口に出してしまったものの、シーミンと連合側に課された契約によって通行量の50パーセント払うことになっていると言う。

 正直意味が分からなかったが、男も詳しいことは知らないらしい。

 大体、対応方法を教えられていただけだと言われた。

 

「まあ、金をとるのはトリプルワンの自警団と変わらんか」

「あんな奴らと一緒にするな」

 

 よくわからない男の返しに答えを見つけられぬまま、ゲートを通る。

 やはりここでもムジムラのポケットマネーが役立つ。

 ムジムラ様様だ。

 

 

 

 

 

 ◆

 

「結構デカいな」

 

 ゲートを抜けた先でそんな声を洩らす。

 目の前に広がっていたのは街だ。

 街の名前は「ウエストゲートタウン」。そのままだ。

 近代的、と言うよりはSF風味の強い街並みを見渡した。

 

 近未来的な建物の並びだと言うのになぜか簡素な印象を受けるのは居住区的な側面が薄いからだろうか。

 軍事施設を思わせる建物も多くある。

 

 ゲームの判定的にはこれ全体が基地と捉えれているらしい。

 それに実際、補給を始めとする諸々をここで済ませることが出来るようだ。

 

 ただ、休憩もそこそこに一度街を出た。

 アングラ運営側からしてみても、セントラルを目指すような構図を作っているらしくムニンは中央に行く方が強くなるようだ。

 まあ、既存のゲームのようにレベルが違うとかそう話ではないとは言うが。

 

「まあ、やってみれば分かるだろ」

 

 トゥエルブを基地経由で格納庫から引っ張り出して出撃する。

 ご丁寧にカタパルトが用意されているのでそれを使わせてもらった。

 身体にかかる負荷に耐える。

 だが、アルテミスの時ほどではないと内心笑い飛ばした。

 

 そしてセーフエリアから出ればすぐにムニンを発見する。

 

「補給なしでどれだけ行けるか」

 

 そんなことを呟いて、加速した。

 視界に映るのは犬のように四足で歩行するムニンが三体。

 そして、人、性格には猿に近いだろう形態の物が一体。

 

 犬型の方が速度が速く先に接近する。

 そこを大剣で薙ぎ払った。

 三頭が脚を地面から遠く離し舞う中で、すでに猿型は追いついている。

 

 速度はない物の猿特有の応用の聞く動きでこちらに接近した。

 すでに止まってしまっているが故にこちらの大剣の速度も威力も初撃と比べれば高くない。

 それを察してか、器用に体を動かしこちらの攻撃を避ける。

 ただ、こちらの攻撃はこれで終わりなはずもなく、すぐに大剣を放り出す。

 猿型はそれを何とか避ける。その先で私は短剣を振るった。

 セフワンの頃とは比べ物にならないその刃はムニンの活動を制止させる。

 

「大剣の扱いはまだまだか」

 

 結局、大剣を手放しての短剣での接近戦。

 こちらがなれているとは言え、使いこなせれば手数が増えることは明確なのだ。

 大剣の扱いは目下の目標として私の頭に居座っていた。

 

 

 

 ◆

 

 ムニン相手にひと暴れした後、私は街に戻っていた。

 ウェストゲートタウンと言うだけあって、四方のセントラルへつながるゲートに隣接する街。

 人口密度はそれなりに高い様だ。

 

 そして酒場ともなれば非常にうるさい。

 

「不肖ウルシマッカ、行きます!」

 

 酒場の中央のテーブルに仁王立ちし、ゴクゴクとジョッキを傾ける少年。

 見たところ高校生くらいの見た目。

 ゲームの中とは言え、アングラと言う事を加味してその見た目は現実とそう離れたモノでもないだろう。

 そして、そんな彼はガヤガヤと騒ぎ立てる男たちに囲まれていた。

 

「ガハハッ飲め飲め」

「一気!一気!」

「お前ウルシ何とかじゃなくて、「マイク」だろうが!」

「良い飲みっぷりだ!若いの!」

 

「あほらし」

 

 カウンターでミルクを飲みながらそんな声を洩らした。

 こんなにうるさかったらホットミルクが台無しだ。

 

「お~なんだ?姉ちゃん。そりゃミルクか?」

「ああ。私はお子様だから。酒は──」

「まあまあ、せっかくのアングラなんだから飲め!飲め!」

「いや、私は飲まっ──おぼぼぼぼぼっ」

 

 酒臭いおっさんに絡まれて振りほどこうと手で制せば、無理に酒瓶を押し付けて来た。

 口に押し当てられた酒は大半が流れ落ち、だが、相当量が口に入って……。

 

「おら!もっともってこい!」

「お!良いですねぇ!そこのお嬢さん!よし!僕にも持ってこい!」

 

 私は知らないうちに、テーブルの上で少年と肩を組んで叫んでいた。

 

「お!良い飲みっぷりだぞ!NA!」

「マッカも飲め!飲め!」

「ガハハハッ!!」

 

 そして……

 

「「オロロロロッ!!!!」」

 

 少年と二人並んでぶちまけていた。

 いや何でゲームでここまで再現されてんだ。

 そんなことを思いながら表現規制されないそれから目を逸らした。

 

「アイツら、私たちを酔わせて全部払わせやがって!」

「僕のお小遣いが……!」

 

 同時に膝をついて嘆く私たち。

 ん?いや待て。

 

「アンタ誰?」

「酷い!?」

 

 私の言葉に少年はそんな声を洩らした。

 確かにキツイ言い方だったかもしれない。

 ただ、彼は元の表情に戻していった。

 

「僕の名前はシン・ウルシマッカ!凄腕『AHRM(アールム)』使いです!」

「その名乗り流行ってんの?」

「?」

 

 シーミンの自己紹介を思い出してそう呟けば、ウルシマッカは首を傾げた。

 と言うか。

 

「マイクじゃないの?」

 

 プレイヤー名は「マイク」となっているだけにそう呟いた。

 

「いいえ。僕のことはウルシマッカ。いえ、相性のマッカと呼んでください」

「いや呼ばないけど」

 

 何、距離を縮めようとしてるんだ。

 距離と言い、無駄に高いテンションと言いどうにも合わない。

 

「まあ、いいです。それで、貴方は?」

「NA」

「なるほど」

 

 何がなるほどなのかは知らないが、これ以上話すのも面倒になって来たので立ち上がる。

 多分一緒に居ると疲れるタイプだろうと本能が告げていた。

 ただ、適当に彼に別れを告げようと考えていた時、不意に彼は言った。

 

「そうそう。ところでNAさん。僕と手合わせしませんか?」

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